講談社学術文庫作品一覧

ヨ-ロッパの祭と伝承
ヨ-ロッパの祭と伝承
著:植田 重雄
講談社学術文庫
待降節・復活祭・万霊節と生活に豊かな彩りを添えるキリスト教の四季の祭──その中には多神教で土俗的なケルトやゲルマンの遺習が脈々と息づいている。 ウォーダン、ペルヒタなど、ゲルマンの魔群や精霊のその暗き世界に、希望と光、祈りと願いの結晶としてキリスト教がはいり込む。本書は、年間行事の紹介を通して、西洋文化の深層を明らかにした労作である。
南方文化の探究
南方文化の探究
著:河村 只雄,解説:河村 望
講談社学術文庫
昭和10年代、太平洋戦争が激化するなか、琉球諸島の民俗学的研究に命を懸けた社会学者がいた。家族制度、財産制度、言語・風俗……。あらゆる方面に視線を配り、「紀行文的研究論文」として発表、上梓した。拝所の探索、祭りへの参加等、人々との交流を通し、臨場感あふれる筆致で貴重な写真と共に収録した好著。
疾走するモ-ツァルト
疾走するモ-ツァルト
著:高橋 英夫,解説:田辺 秀樹
講談社学術文庫
モーツァルトのかなしさは疾走する。涙は追いつけない。……小林秀雄を代表とする「日本人の耳がとらえたモーツァルト」の系譜を考察、その音楽の魅惑を深淵、微妙性、謎などのキーワードによって解明する。惜しみない愛着と創見に満ちたモーツァルト論。
新約聖書の英語
新約聖書の英語
著:西尾 道子
講談社学術文庫
西洋人が伝統的に受け入れてきた新約聖書の教えは、現代の日常的英語表現の中にも息づいている。それらはいったいどんなかたちであらわれるのか、そしてどんなニュアンスを秘めているのか?英米人の平均的な考え方が浮き彫りになる新聞、雑誌、小説等に広く材をとり、新約聖書を淵源とする表現とその背景にあるものを探る。
プリニウス書簡集
プリニウス書簡集
著:國原 吉之助
講談社学術文庫
2千年前、ローマは爛熟と頽廃を内に孕みつつなお、地中海の覇者として君臨した。その陰に祖国の未来を疑わず、人間の崇高性を信じ続けた貴紳達がいた。本書はその1人プリニウスの2百余通の手紙を所収。ベスビオス火山と大プリニウスの死の記述など、史料的価値と同時に時空を超えて深い共感を呼ぶ。名訳で読む清冽な書簡集。
古代史を解く鍵
古代史を解く鍵
著:有坂 隆道
講談社学術文庫
昭和47年、高松塚が発掘され、美しい壁画が話題をさらった。いつ描かれたのか、被葬者は誰か、絵の意味は何か、数々の議論、異論、暴論が噴出する。著者は「暦」に関する深い理解と、図像に対する詳細を極めた研究により、縦横無尽の論を展開し、高松塚の謎を解明する。
生と死の現在
生と死の現在
著:立川 昭二,解説:向井 承子
講談社学術文庫
いま生と死のかかわる民話が生まれるとしたら、私たちが病いや死に直面したとき否応なく付き合わざるを得ない現代医療の現場においてではないだろうか。民間信仰から最先端医療まで、病いと医の現場に隠された「現代の民話」を患者や家族の側から探る癒しの文化論。
明治日本見聞録
明治日本見聞録
著:エセル・ハワ-ド,訳:島津 久大
講談社学術文庫
ドイツのカイザーの王子たちを教育した英国婦人E・ハワードは、明治34年日本に招かれ、元薩摩藩主島津家の5人の子息の教育を託された。本書は、その興趣溢れる養育体験記であり、激動する明治のすがたを伝える回想記でもある。また、当時の上流社会の家庭の様子と日本の風俗や日本人の気質が愛情こめてほのぼのと語られる。
アリストテレス 心とは何か
アリストテレス 心とは何か
著:アリストテレス,訳:桑子 敏雄
講談社学術文庫
師プラトンをはじめとする先哲の諸研究を総括・批判し、独自の思索を縦横に展開した本書は、心について論じた歴史上最初の書物である。難解なことでも知られるこの書の翻訳に、気鋭の哲学者が挑戦。分かりやすさ・読みやすさを主眼に訳出し、理解を深めるため懇切かつ詳細な訳注と解説を付した。アリストテレス哲学の精髄、新訳で文庫界に初登場。
天正遣欧使節
天正遣欧使節
著:松田 毅一,解説:瀬 弘一郎
講談社学術文庫
日本で初めてヨーロッパを見た少年たち 秀吉の時代の燦然たる一大壮挙 秀吉の時代、13歳の少年たちが、日本で初めて、ルネサンス華咲くヨーロッパを訪れた。ローマ教皇やスペイン国王に拝謁し、市民らの熱狂的な歓迎を受ける。8年半の旅の後、帰国した日本はキリシタン禁制の世。はたして、少年たちの行く末は?日欧交渉史の第1人者が、使節行の足跡を辿り、豊富な史料を駆使し、その歴史的真相を解明する。
プラトンの学園 アカデメイア
プラトンの学園 アカデメイア
著:廣川 洋一
講談社学術文庫
古代ギリシアに、900年余にわたって存続し、西洋的学問の源泉となる学園があった。その名は「アカデメイア」。その精神像は周知の通りだが、はたして具体的身体像はいかなるものであったか?古典文献を渉猟しつつ、実像に迫る。
平安の春
平安の春
著:角田 文衛
講談社学術文庫
藤原氏栄華の礎(いしずえ)を築き、数々の美徳をそなえた好人物とされる師輔(もろすけ)の真の姿を浮彫りにし、専制君主白河法皇の激しくも淋しい生涯に迫る……。後宮の栄光に溢れた優麗典雅の生活あり、争いに敗れ鄙(ひな)に隠栖する悲しき女性も垣間見える。平安の都を舞台に繰り広げられる人間模様を、多くの文献の読み込みと深い洞察で語る学術エッセイ。
ヒュ-モアとしての唯物論
ヒュ-モアとしての唯物論
著:柄谷 行人
講談社学術文庫
人間は現象しか認識しえないにもかかわらず、その限界を越えて考え語ってしまう。カントのいう「超越論的批判」を踏まえて、著者は、有限な人間の条件を超越し、同時にそのことの不可能性を告知する精神的姿勢こそが「唯物論」であり「ヒューモア」であると説く。柄谷理論の新展開を示す主要論文を集成。
霊と肉
霊と肉
著:山折 哲雄
講談社学術文庫
「精神」と「身体」のもう1つ原初的な関係として「霊」と「肉」の世界に踏みこむ試み。変身、魔と仮面、中世往生死の思想、霊魂転生、祟り、穢(けが)れ、浄土などをキーワードに、人間の心性を規定している原型と変型を描出する。仏教世界の二十八部衆とはなにを象徴しているのか、メドゥサの邪眼とはなにか……。さらに、地獄観を手がかりに、ヨーロッパ、中東、アジアの冥界の差異をも明らかにする刺激的論考。
学校と社会・子どもとカリキュラム
学校と社会・子どもとカリキュラム
著:ジョン・デュ-イ,訳:市村 尚久
講談社学術文庫
デューイの教育思想と理論は戦後日本の教育に大きな影響を与えた。シカゴ実験室学校の成果を踏まえ、あるべき学校の理想像を構想し、学習の内容・方法・運営を具体的に提示する。学校は家庭や近隣の社会を縮約した小社会で、教育は子どもの経験から始まるという活動主義の教育実践論を展開。子どもの個性と自主性を重んじたデューイの学説は、現在の教育荒廃状況に十分対応できる実効性をもっている。
ラ・プラタの博物学者
ラ・プラタの博物学者
著:ヘンリ-.ウィリアム・ハドスン,訳:長澤 純夫,訳:大曾根 静香
講談社学術文庫
「パンパ」とよばれる大草原が広がる南米のラ・プラタ地域は、ハドスンが青少年期を過ごした土地である。その地をこよなく愛し、自然や野生生物の観察に明け暮れた彼の熱情は、やがて当地の大自然を美しく歌い上げた本書となって結実し、博物学者としてのハドスンの名声を不動のものとした。原典にちりばめられた博物画家スミットによる味わい深い挿画を完全収録し、待望の新訳で贈る博物誌の名品。
宇津保物語・俊蔭 全訳注
宇津保物語・俊蔭 全訳注
著:上坂 信男,著・解説:神作 光一
講談社学術文庫
『源氏物語』をやがて生む素材に満ちた『宇津保物語』は、日本最古の長篇物語として物語文学に大きな影響を与えた。本書は、特に重要な「俊蔭」巻を、現代語訳、語釈、余説で詳細に解読する。俊蔭──俊蔭の娘──仲忠──犬宮と一家四代にわたって継承される琴(きん)の伝承譚と、時の権門源正頼の娘あて宮をめぐる16人の求婚譚の2本立ての物語が展開する。貴族から庶民に至る人間模様を生き生きと綴る好編。
ザビエルの見た日本
ザビエルの見た日本
著:ピ-タ-・ミルワ-ド,訳:松本 たま
講談社学術文庫
日本人の西欧文化受容に重要な役割を演じたフランシスコ・ザビエル。1549年に来日すると、旺盛な行動力で布教に邁進した。その間、スペインのイエズス会や友人宛に手紙を書き送る。いわく、日本人は知識に飢えている。神の存在に興味を示し説教に真剣に聞き入っている。いわく、日本はキリスト教伝道にふさわしい国だ……。書簡から、ザビエルの心情とその目に映った日本人像を読みとる好著。
顔の現象学
顔の現象学
著:鷲田 清一
講談社学術文庫
われわれがある人を思い浮かべるときには、その人の名前とともに、その人の顔、その人の後ろ姿や歩きっぷり、言葉遣いなどをも想起する。これらのほとんどを取り外してもその人に思いを馳せることはできるが、ただ顔を外しては、その人について思いをめぐらすことはできない。他人との共同的な時間現象として出現する曖昧微妙な〈顔〉を、現象学の視線によってとらえる。鷲田現象学の豊潤な収穫。
唐詩
唐詩
著:村上 哲見
講談社学術文庫
中国古典詩の最高峰といわれる唐詩。本書では、唐詩が作られた7世紀初めからの約300年間を初唐・盛唐・中唐・晩唐の4つの時期に分け、それぞれの時代情況と詩の関係を考察する。例えば、初唐後半を支配した則天武后は文芸に理解を示し、科挙の試験に詩を加えた。以後詩作が知識人の必須の教養となる。盛唐に杜甫・李白を生むゆえんである。漢詩、中国古典愛好家必携の書き下ろし文庫オリジナル。