講談社学術文庫作品一覧

円仁 唐代中国への旅
講談社学術文庫
慈覚大師円仁の著わした『入唐求法巡礼行記』は、日本最古の旅日記で、世界三大旅行記の一つともされる。五台山への巡礼、長安資聖寺での生活、廃仏毀釈の法難。9年半にわたる円仁のさすらいと冒険の旅の記録は、唐代動乱の政治や庶民の生活を克明正確に描写する。本書は、この旅行記の魅力と歴史的価値を存分に論じるライシャワー博士畢生の研究の精華である。

蛇
講談社学術文庫
縄文土器においてすでに、活力溢れる蛇の造形が数多く見られる。蛇に対する強烈な畏敬と物凄い嫌悪、この二元の緊張は注連縄(しめなわ)・鏡餅(かがみもち)・案山子(かかし)など数多くの蛇の象徴物を生んだ。日本各地の祭祀と伝承に鋭利なメスを入れ、洗練と象徴の中にその跡を隠し永続する蛇信仰の実態を大胆かつ明晰に検証する意欲的論考!
古代日本は蛇信仰が盛んであった。縄文土器にも活力溢れる蛇の造形がたくさん見られる。蛇に対する強烈な畏敬と物凄い嫌悪、この二元の緊張は注連縄(しめなわ)・鏡餅(かがみもち)・案山子(かかし)など数多くの蛇の象徴物を生んだ。日本各地の祭祀と伝承に鋭利なメスを入れ、洗練と象徴の中にその跡を隠し永続する蛇信仰の実態を大胆かつ明晰に検証する意欲的論考である。

トマス・アクィナス
講談社学術文庫
理性優位の時代に、科学は、また宗教は、人間の生といかに係わっていくのか。本書は、中世最大の思想家トマス・アクィナスの理性と信仰の総合へ向かう思索の軌跡を、伝記や『神学大全』等の著作に拠りつつ論証する。「恩寵は自然を破壊せず、むしろこれを完成する」というトマスのテーゼに、21世紀への解が示される。

ファラデ-
講談社学術文庫
ファラデーの法則(電気分解の法則)やファラデー効果(磁気光学効果)に名を残す19世紀の実験科学の天才ファラデー。高等教育も受けない製本職人から身を起こし、偉大な発見を重ねたその清貧の生涯を、躍動感あふれる英国ヴィクトリア朝時代の科学史を背景に描く好著。

古道
講談社学術文庫
人の歩行が途絶えると道はたちまち藪に埋れてしまう。しかし人々は、祭祀の道具や生活の跡をみちばたに残していった。さらに古い道は、食物を拾い、カモシカやイノシシの後を追った跡に重なる。消えた古道を発掘し、人々の生きた証しをたどるロマンあふれる藤森考古学の傑作。

戦後世界政治史
講談社学術文庫
戦後世界の道程をたどり直す
東西冷戦、ソ連邦の崩壊、EUの台頭……
未曾有の惨禍をもたらした第二次世界大戦後、不戦を誓い平和を希求して、国際連合が設立された。しかし、体制・民族・宗教間の相剋のもと、「戦後」もまた戦乱の絶える暇のない半世紀であった。
新世紀の到来を間近にひかえた今、世界政治の現在を確認し、向かうべき方向を探るために、戦後世界政治の軌跡を検証する。
●主な内容
・「自由」・「平等」・「平和」への道
・国際社会と国際平和組織
・国際連合
・冷戦のはじまりから熱戦へ
・緊張緩和(雪どけ)のはじまり
・アジア・アフリカ諸国の台頭と国際平和
・東西両陣営における「多極化」の動き
・ベトナム戦争と米・中、米・ソの接近
・核兵器の実験・製造・使用の禁止と軍縮問題
・「東欧革命」とソ連邦の解体
・冷戦終結後の国際関係

光は東方より
講談社学術文庫
松江から熊本へ。日本での生活体験が広がるにつれ、小泉八雲の日本理解も哲学的思索へと深まってゆく。
古来、日本人は樹や泉、鏡などの中に「霊的なるもの」を感じ、信仰の対象にしてきた。その日本の文化と精神の流れを、メタフィジカルな次元で捉えようとする。
『九州の学生たちと』『博多にて』などの佳作を中心に、東方の国日本を巧みに描いた味わい深い作品集。

唐詩の風景
講談社学術文庫
唐詩の舞台となった中国の壮大な風土を長安・洛陽・揚州・鎮江・蘇州・杭州・南京の7地域に分類し、日本の歌枕にあたる「詩跡」の豊かなイメージを解説する。
杜甫と長安城南、李白と南京、白居易と杭州など詩人と風土との緊密な結びつきを語り、原文・訓読文に現代語訳を付した必読の好著。

ヨ-ロッパの祭と伝承
講談社学術文庫
待降節・復活祭・万霊節と生活に豊かな彩りを添えるキリスト教の四季の祭──その中には多神教で土俗的なケルトやゲルマンの遺習が脈々と息づいている。
ウォーダン、ペルヒタなど、ゲルマンの魔群や精霊のその暗き世界に、希望と光、祈りと願いの結晶としてキリスト教がはいり込む。本書は、年間行事の紹介を通して、西洋文化の深層を明らかにした労作である。

南方文化の探究
講談社学術文庫
昭和10年代、太平洋戦争が激化するなか、琉球諸島の民俗学的研究に命を懸けた社会学者がいた。家族制度、財産制度、言語・風俗……。あらゆる方面に視線を配り、「紀行文的研究論文」として発表、上梓した。拝所の探索、祭りへの参加等、人々との交流を通し、臨場感あふれる筆致で貴重な写真と共に収録した好著。

疾走するモ-ツァルト
講談社学術文庫
モーツァルトのかなしさは疾走する。涙は追いつけない。……小林秀雄を代表とする「日本人の耳がとらえたモーツァルト」の系譜を考察、その音楽の魅惑を深淵、微妙性、謎などのキーワードによって解明する。惜しみない愛着と創見に満ちたモーツァルト論。

新約聖書の英語
講談社学術文庫
西洋人が伝統的に受け入れてきた新約聖書の教えは、現代の日常的英語表現の中にも息づいている。それらはいったいどんなかたちであらわれるのか、そしてどんなニュアンスを秘めているのか?英米人の平均的な考え方が浮き彫りになる新聞、雑誌、小説等に広く材をとり、新約聖書を淵源とする表現とその背景にあるものを探る。

プリニウス書簡集
講談社学術文庫
2千年前、ローマは爛熟と頽廃を内に孕みつつなお、地中海の覇者として君臨した。その陰に祖国の未来を疑わず、人間の崇高性を信じ続けた貴紳達がいた。本書はその1人プリニウスの2百余通の手紙を所収。ベスビオス火山と大プリニウスの死の記述など、史料的価値と同時に時空を超えて深い共感を呼ぶ。名訳で読む清冽な書簡集。

古代史を解く鍵
講談社学術文庫
昭和47年、高松塚が発掘され、美しい壁画が話題をさらった。いつ描かれたのか、被葬者は誰か、絵の意味は何か、数々の議論、異論、暴論が噴出する。著者は「暦」に関する深い理解と、図像に対する詳細を極めた研究により、縦横無尽の論を展開し、高松塚の謎を解明する。

生と死の現在
講談社学術文庫
いま生と死のかかわる民話が生まれるとしたら、私たちが病いや死に直面したとき否応なく付き合わざるを得ない現代医療の現場においてではないだろうか。民間信仰から最先端医療まで、病いと医の現場に隠された「現代の民話」を患者や家族の側から探る癒しの文化論。

明治日本見聞録
講談社学術文庫
ドイツのカイザーの王子たちを教育した英国婦人E・ハワードは、明治34年日本に招かれ、元薩摩藩主島津家の5人の子息の教育を託された。本書は、その興趣溢れる養育体験記であり、激動する明治のすがたを伝える回想記でもある。また、当時の上流社会の家庭の様子と日本の風俗や日本人の気質が愛情こめてほのぼのと語られる。

アリストテレス 心とは何か
講談社学術文庫
師プラトンをはじめとする先哲の諸研究を総括・批判し、独自の思索を縦横に展開した本書は、心について論じた歴史上最初の書物である。難解なことでも知られるこの書の翻訳に、気鋭の哲学者が挑戦。分かりやすさ・読みやすさを主眼に訳出し、理解を深めるため懇切かつ詳細な訳注と解説を付した。アリストテレス哲学の精髄、新訳で文庫界に初登場。

天正遣欧使節
講談社学術文庫
日本で初めてヨーロッパを見た少年たち
秀吉の時代の燦然たる一大壮挙
秀吉の時代、13歳の少年たちが、日本で初めて、ルネサンス華咲くヨーロッパを訪れた。ローマ教皇やスペイン国王に拝謁し、市民らの熱狂的な歓迎を受ける。8年半の旅の後、帰国した日本はキリシタン禁制の世。はたして、少年たちの行く末は?日欧交渉史の第1人者が、使節行の足跡を辿り、豊富な史料を駆使し、その歴史的真相を解明する。

プラトンの学園 アカデメイア
講談社学術文庫
古代ギリシアに、900年余にわたって存続し、西洋的学問の源泉となる学園があった。その名は「アカデメイア」。その精神像は周知の通りだが、はたして具体的身体像はいかなるものであったか?古典文献を渉猟しつつ、実像に迫る。

平安の春
講談社学術文庫
藤原氏栄華の礎(いしずえ)を築き、数々の美徳をそなえた好人物とされる師輔(もろすけ)の真の姿を浮彫りにし、専制君主白河法皇の激しくも淋しい生涯に迫る……。後宮の栄光に溢れた優麗典雅の生活あり、争いに敗れ鄙(ひな)に隠栖する悲しき女性も垣間見える。平安の都を舞台に繰り広げられる人間模様を、多くの文献の読み込みと深い洞察で語る学術エッセイ。