講談社選書メチエ作品一覧

桃源郷――中国の楽園思想
講談社選書メチエ
仙人になって不老長生を得たいという願い。世俗を離れ思うがままに暮らしたいという隠逸への憧れ。古代の理想郷=華胥氏の国――。中国最古の詩集『詩経』にあらわれた「楽土」から陶淵明の「桃花源記」まで、中国の精神文化を考えるうえで欠かせない「楽園」の思想を読み解く。
【目次】
はじめに──楽園の夢想
第一章 仙界の夢想
1 不老長生の希求
2 仙界への疑念
3 魏晋哲人の神仙観
第二章 隠逸の願望
1 隠逸とは何か
2 高潔から愉楽へ
3 自分らしく生きる
第三章 古代の楽園
1 楽土
2 鼓腹撃壌──古代の泰平の世
3 華胥氏の国
第四章 地上の楽園
1 庭園
2 隠れ里
第五章 桃花源
1 陶淵明の「桃花源記」
2 それぞれの桃花源
おわりに──今、桃花源を求めて
あとがき

ブリティッシュ・ロック 思想・魂・哲学
講談社選書メチエ
ハイデガーの実存の「開け」の概念とロック。「新たな霊性を啓くメディア」としてのロック。テクノロジーとロックの関係、新たな芸術ジャンルとしてのロックなど、思想の側からロックという「現象」を深く読み解く未曾有の論考。
【目次】
第一章 ロックの歴史
1 はじめに ロックとはなにか
2 ロックの誕生 ロックンロールに始まる
【略】
8 ピンク・フロイドとイエス
9 EL&Pとジェネシス
10 カンタベリー・ロックとその系譜
11 パンク・ロックの勃興
12 ヘヴィ・メタル・ロックの逆襲とパラノイア的心性の問題
13 ロックの巨大産業化とサブジャンルの複雑化
14 ロック・ジャンルのトライブ化
第二章 ロックという哲学思想
1 ニーチェ的経験からはじまる
2 〈悲劇〉としてのロック
3 ロックは「意志」の産物である
4 ロックを歌う「声のきめ」
5 「声」と「気分」の密接な関わり
6 自己開示を導くものとしてのロック
7 ロックを語ることの「自己表出」性
第三章 ロック・霊性を啓くもの
1 神秘主義思想とロック・ミュージシャン
2 アレイスター・クロウリーとジミー・ペイジ
【略】
6 シュタイナーの「音階体験」理論とロック・コード・スケール
7 ロックとオレクシス(絶対を希求する欲望)との結びつき
第四章 現代アートのなかのロック
1 ロック的な美意識の誕生
2 レコード・ジャケットのアート感覚 ヒプノシスの世界
3 ロジャー・ディーンとマーカス・キーフの仕事
4 アートスクール出身のロック・ミュージシャンたち
【略】
8 ブライアン・イーノとヴィデオアート
第五章 ロックの歌詞の世界
1 歌詞を通してロックを探る
2 ラブソング
【略】
6 内省的なメッセージを持つ歌詞 「エピタフ」
7 「スターレス」をめぐって
8 「天国への階段」のメッセージ
9 歌詞の文学性
第六章 ライフスタイルとしてのロック
1 ヒッピー・カルチャーとロングヘア
【略】
6 ドラッグ・カルチャーとロック
第七章 ロックは滅んだか
1 ロックは音楽ではない?
2 アンチ・ミュージシャンとしてのブライアン・イーノ
【略】
5 デジタル・テクノロジーがロックに引導を渡したか
第八章 ロックの未来形
1 ロック・スピリットの帰趨するところ
2 音楽シーンの衰退?
3 ロックの未来形?
あとがき
索引

戦国大名の「外交」
講談社選書メチエ
戦国大名たちは合戦だけをしていたわけではない。 和睦や軍事同盟、領土交渉という「外交」を、 活発に行って戦国時代を生き抜かんとしていた。 武田信玄・今川義元・北条氏康による 名高い「甲駿相三国同盟」の成立の舞台裏をはじめ、 文書と交渉者「取次」が飛び交う、 外交の現場を生々しく描き出す。 最新の戦国期研究の成果がここにある! (講談社選書メチエ)

朱子学
講談社選書メチエ
中国、朝鮮そして日本においても支配的な思想だった朱子学。「性即理説」「理気二元論」などのキーワードは語られますが、その哲学的な核心を、平易に解説することは、十分になされてきませんでした。本書は、前提となる専門知識なしでわかるように、「学とは」「性とは」「理とは」……と、基本的なところから、朱子学という学問の核心に読者を誘います。
【目次】
はじめに
第一章 「学」について
第二章 「性」について
第三章 「理」について
第四章 「理」について 続き
第五章 「心」について
第六章 「善」について
コラム
1 朱熹という人
2 朱子学のテキスト
3 「理」という言葉の歴史
あとがき

人はなぜ傷つくのか 異形の自己と黒い聖痕
講談社選書メチエ
「人はなぜ傷つくのか? それは、人が人になるためだ」。ブラック・ジャックを始めとするマンガ、「ゴジラ」を始めとする映画、テレビドラマに見られる「ブラックな」キャラクターなど、日本文化固有の「傷」の表象の彼方に、文化の固有性を超えた普遍的な人間の実存の表象を見る。ユング、河合隼雄の業績を継ぐ、ユング派心理学の意欲作。
【目次】
まえがき
序 章 傷を生きる精神学
第一章 異形の自己
第二章 癒されぬ個性化
第三章 純粋にして強靱な意志──『Happy!』より
第四章 黒い超自我
第五章 「傷」が呼び寄せるもの──『カフーを待ちわびて』より
第六章 異類としてのアンドロイド──《さようなら》より
終 章 「原傷‐黒い聖痕」
あとがき

漢方医学
講談社選書メチエ
中国にもない日本独自の医学=漢方。近代西洋医学とも融合しながら世界でもユニークな治療実績を重ねつつあるその世界を、「虚・実」「気・血・水」など東洋思想に基づいた世界観から実際の治療の現場にいたるまで、第一人者が解説する。(講談社選書メチエ)
中国にもない日本独自の医学=漢方。
近代西洋医学とも融合しながら世界でもユニークな治療実績を重ねつつあるその世界を、「虚・実」「気・血・水」など東洋思想に基づいた世界観から実際の治療の現場にいたるまで、第一人者が解説する。

日独伊三国同盟の起源 イタリア・日本から見た枢軸外交
講談社選書メチエ
融通無碍な「反共」イデオロギーから、友敵関係による対外政策を作り出す構造が生まれ、ついには、実質的意味を持たず、破壊的な結末へと至る「空虚なる同盟」が結ばれてしまった。日本とイタリアの外務省に注目することで、枢軸外交が機能不全と自己崩壊に帰着する、その過程と構造を生々しく浮き上がらせる、画期的研究!
【目次】
はじめに
第一章 日伊外務省と反共主義的国際観──対外政策のイデオロギー的背景
第二章 同床異夢の枢軸形成──現実政治の蹉跌
第三章 同盟抑制の機能不全──対外政策決定過程の構造的崩壊
おわりに
注

古代ギリシアの精神
講談社選書メチエ
ソクラテス・プラトン以前の「ギリシアの古層」とは? オイディプスの悲劇の本当の読み方とは? 合理性、魂、そして自由をめぐる思考の核心! 社交を尊び、戦場で神を感得し、悲劇的世界観を物語に読み込む。そんな古代ギリシア人たちの精神を、ヘロドトスやトゥキュディデス、ギリシア悲劇や叙事詩などのテクストから喚び起こし、ギリシアの古層にある思考に光を当て、さらには現代の哲学的問題へと思考を深める。私たちの内なるギリシア人と出会う旅への誘い。
【目次】
まえがき
I 社交的存在
宴会/ソクラテス‐プラトン問題/神々/フィリア(友愛)/ヘシオドスとイオニア
II 悲劇的世界観
ソロンとクロイソス/ギリシア的言語観/ラカンの解釈/精神分析における主体/オイディプスとスフィンクスの謎/隠喩/ペルシア人とギリシア人
III アリストテレス──運と合理性
i テュケー(運)
合理的説明/アキレウスと亀/ツキュディデスにおけるテュケー/意味の生成/カントのカテゴリーと物自体/自由と能力仮説/現象の運動
ii 弁証法
三段論法/プラトンの想起説/アリストテレスの弁証論/中庸/本質の再定義
IV 魂
自然/魂の定義/栄養的魂/プラトンの『テアイテトス』の議論/共通感覚/異種感覚の区別/時間の判別/判別者とは何か/指示対象なき指示は可能か/共通感覚の「標準的解釈」について/非標準的解釈の利点/クオリア(感覚質)という疑似問題/思惟
あとがき
人物コラム
ディオゲネス
ヘシオドス
アナクシマンドロス
パルメニデス
アウグスティヌス

弁証法とイロニー 戦前の日本哲学
講談社選書メチエ
田辺元と保田与重郎を二つの極に、ハイデガー・ベンヤミンらと同時代の思想的営為として戦前日本の思想を読み解く比較哲学史の試み。
戦前期、「近代」を問う日本の知識人たちは何を思想的課題とし、何を思考し続けていたのか。田辺元の「弁証法」と保田与重郎の「イロニー」を二つの極に、三木清の「人間学」・萩原朔太郎の「デカダンス」の思想を媒介項とすることにより戦前期昭和思想の思想地図を大幅に書き換える。同時に、ハイデガー・ベンヤミンらと同時代の思想的営為として世界の哲学思潮の中に戦前期昭和の思想を位置づける画期的著作。
【目次】
プロローグ──なぜこの二つの語なのか
第一章 田辺元の弁証法、あるいは発出論批判
第二章 架橋的思索者としての三木清
第三章 イデオロギー論とイロニー──三木清と保田与重郎の交わるところ
エピローグ──比較哲学史のすすめ
注
あとがき

民俗と民藝
講談社選書メチエ
柳田國男と柳宗悦。
かたや「常民」の暮らしに目を見開き、かたや民藝運動によって、生活の中の美を求める。
二人の交錯を描く力作!
柳田國男の民俗学と柳宗悦の民藝運動──。
異なる方法、言葉遣いで展開されたそれらを、成長させた土壌は同じひとつのものだ。
それを本書で著者は、〈原理としての日本〉とよぶ。
時期を同じくしながら、交わることの少なかった二人の仕事によりそい、二人の輪唱に誘う力作。
【目次】
まえがき
第一章 失われた民謡
第二章 農民から「常民」へ
第三章 文明開化に抗するもの
第四章 民俗学の対象、日々を生きる喜び
第五章 工藝の発見
第六章 暮らしの器
第七章 木喰上人を求めて
第八章 民藝運動というもの
第九章 民俗学と民藝運動
第十章 常民を想って
第十一章 南の島に在るもの
第十二章 魂が住む家
第十三章 籾種を携えて海を渡る
第十四章 穀霊の宿るところ
第十五章 生の工藝化としての「本能」
第十六章 〈民藝〉を産む〈民俗の記憶〉
あとがき

フィリピンBC級戦犯裁判
講談社選書メチエ
マニラの惨劇と戦犯達の苦悩、そして裁判と恩赦をめぐる、語られざる現代史。
「BC級戦犯」の歴史にあらたな光を当てる実証研究。
独立国家として歩み出したフィリピン政府は、戦後の国際状況と対日関係、そして激しい国民の怒りを前に、この裁きに、どのような意義を見出し、困難に直面したか。
一五一名の被告は、いかにして裁かれ、獄中を過ごし、そして処刑、恩赦に至ったか。
日比両国の数多くの資料と当事者たちの証言を丹念に検証し、これまで様々に語られてきた戦犯裁判という問題に、実証の光を当てる試み。
【目次】
はじめに
第一章 フィリピン人の対日感情──一九四五年の原風景
第二章 独立国家としての挑戦──フィリピンの対日戦犯裁判
第三章 モンテンルパの時代──関係性の修復に向けた模索
第四章 恩赦──「怒り」と「赦し」の狭間で
おわりに
注
あとがき
略語表
写真出典一覧

国家とインターネット
講談社選書メチエ
グローバリゼーションの時代、国家とメディアの関係は敵対か、はたまた共存か? IT技術は〈人間〉への福音か、それとも呪いか? ──来るべき世界における権力・メディア・人間の関係を根底から考察する。
【目次】
まえがき
序 章 ネットを〈創造〉したのは誰か
第一章 三つの担い手
第二章 国家とイノベーション
第三章 国家とその《外部》
第四章 新自由主義国家とインターネット
第五章 アラブ動乱とソーシャル・メディア
第六章 インターネットの軍事化
終 章 過剰露出される社会
さいごに──二一世紀は二〇世紀の遺産を食いつぶすだけなのだろうか
註
主要参考文献
謝辞

卒業式の歴史学
講談社選書メチエ
なぜ私たちは卒業式で涙するのか?
《蛍の光》《仰げば尊し》から《贈る言葉》、J-POP卒業ソング……なぜ歌うのか? 東京大学第1回卒業式から全国の小学校まで、歴史の記録から見えること
「最高の卒業式」を目指し、教師と生徒が努力を重ね、みんなでともに歌い、感動し、涙する「感情の共同体」が達成される。この、日本独特と言える「儀式と感情との接合」は、いついかにして生まれたか。
涙の卒業式、この私たちにとって当たり前の光景の背景には、明治初期以来の学校制度構築の歴史が横たわっている。
日本の近代と教育をめぐる、新たな視角!
【目次】
序章
特別な三月/涙の社会性・文化性/社会化される涙/涙の適時性と規範性/涙の歴史性
第一章 卒業式のはじまり
日本最初の卒業式/天覧卒業式のはじまり/視線の交響空間/東京大学第一回卒業式/御真影と軍楽/夜の卒業式/鎮守祭りか縁日か/官立・公立学校の卒業式/キリスト教学校の卒業式/女学校卒業式/卒業式への批判
第二章 試験と証書授与──儀式につながる回路
勉学開始と終了の儀式/学制と試験/試験の厳格さ/学校にかかわる人々にとっての試験/試験のクライマックスとしての証書授与/「国王の巡幸」/「卒業生徒」の様相/儀式化の萌芽
第三章 小学校卒業式の誕生
淵源としての師範学校/師範学校初の卒業式/モースの見た卒業式/師範学校令以前の官立師範卒業式/長野県師範学校の卒業式/ラッパと兵式体操/官立師範学校附属小学校の卒業式/公立小学校における卒業式の成立/群れから「一同」へ/娯楽と啓蒙/「卒業生」の意味変容
第四章 標準化される式典──式次第の確立
季節と結びつく卒業/学級の成立/村の祝祭から国家の祝祭へ/祝日大祭日儀式と卒業式/式次第の定型化/忠誠競争としての唱歌/ふるまいの規格化/生徒の学年と唱歌の対応/卒業式歌の誕生/記憶を創造する集団/卒業式の輸出
第五章 涙との結合──儀式と感情教育
均質性への接近/子守児童と卒業式/松本尋常高等小学校子守学級の卒業式/卒業式の「批評」/感情への着目/卒業式による感情教育/集団の記憶と感情の結合/記憶の義務/「感情の共同体」へ/団結の代名詞/(略)
第六章 卒業式歌──「私たちの感情」へ捧げる歌
卒業式歌の現在/唱歌への無理解/唱歌教育の命運をかけて/明治十年代の卒業式に歌われた歌/愛国歌《蛍の光》/《蛍の光》と「同情」/声の近代化/明治二十年代前半の卒業式歌/卒業式歌と国家/わが師の恩/(略)
終章
「芽をふく子ども」/「呼びかけ形式」の卒業式/フィクションの中の卒業式/心情の歴史と卒業式/学校的心性の浸透
注
参考文献
あとがき

穢れと神国の中世
講談社選書メチエ
誰が、いつ、どのように生み出したのか?
穢観念と、排除される他者、そして生まれる<われわれ>という意識。中世史の一大テーマに挑む意欲作!
列島に共通して見られる、出産と死を「穢」とみなす民俗習慣。その起源の探求は九~十世紀に制定された『延喜式』に行き当たる。その他数多くの史料を、当時の息づかいがわかるように参照し、「穢」という不可思議な意識と、社会秩序感覚が生み出された過程を明らかにする。
さらに、神国という<われわれ>意識、つまり国家意識の萌芽を見出さんとする挑戦的な歴史学の試み。
【目次】
序 章
出産・死をめぐるしきたり/しきたりの由来/二つの筋書き/〈われわれ〉意識の歴史へ
第一章 清浄なるものを探る
先学はどう考えてきたのか/「キヨメの都市的構造」とは/治承二年冬、六波羅/邪気と神気/跳梁する魑魅魍魎、戦う人々(1)/跳梁する魑魅魍魎、戦う人々(2)/邪気・神気と穢/「穢悪き疫鬼」の正体/清浄なるもの
第二章 秩序が動揺した時に
何が起こるのか/如何なる意味があるのか/春日社の場合/もう一つの事件/全てを終わらせるために/石清水八幡宮の場合/絶対の終点/怒れる神の分布/神々の正体/もう一つの枠組み
第三章 秩序を維持するために
「清目」/「清目」が「重役」である理由/儚い「重役」/注連縄・清祓/日々の取り組み/取り組みの広がり/取り組みのバラつき/東と西/もう一つの方法/排除の論理
第四章 〈われわれ〉意識の形成
嘉保三年夏、京/嘉保三年三月/知る動機と〈われわれ〉の条件/弘安の神領興行と「甲乙人」/馴染み深い事態/鎌倉の位置/位置の変化/蒙古軍が襲来するということ/神国の系譜/〈われわれ〉の形成と〈他者〉の変貌
結び
変わらぬ秘訣
注
あとがき

意味・真理・存在 分析哲学入門・中級編
講談社選書メチエ
世界の現代哲学の主潮流をなす分析哲学の、決定版入門シリーズ、登場! フレーゲ、ラッセルからクリプキー、クワインにいたる現代哲学のスターたちの議論をふまえつつ、おもしろく、かつ深く、分析哲学的な思考を展開。論理的に厳密に考えること、真に哲学的に考えることの魅力にあふれた、おすすめの一冊。
世界的にみれば、現代哲学の主潮流は、あきらかに分析哲学にあります。しかしながら、我が国では、いまひとつ人気が出ない。論理思考であることも要因のひとつかもしれませんが、なによりも、これという入門書がない。そこで、世界の分析哲学シーンの最前線で活躍する著者が、わかりやすく、おもしろく、かつ本格的に分析哲学の入門書を書く、というのが本シリーズの狙いです。
第1弾『分析哲学入門』は、「妻の分析」など、日常的なことがらを分析的に考え、好評を得ました。
本書では、フレーゲにはじまり、ラッセル、ウィトゲンシュタインを経て、クリプキー、クワインへといたる、現代哲学史のスーパースターたちの議論をふまえつつ、意味とはなにか、存在とはなにか、真理とは何か、といった哲学の根本問題に迫ります。
現代哲学のトピックをわかりやすく網羅しながら、分析哲学の世界に招待する、決定版中級編!
【目次】
はじめに
第1章 分析論
1の1.概念分析と論理構造
1の2.ムーアの未決問題
1の3.分析のパラドックス
第2章 意味論
2の1.意義と指示対象
2の2.分析性
2の3.還元主義
2の4.意味についての懐疑論
2の5.意味の外在主義
2の6.水と双子水
2の7.言語的分業
第3章 内包論
3の1.外延の組成原理
3の2.信念の文脈
3の3.外延性の破綻
3の4.メタ言語
3の5.文との関係としての信念
3の6.命題
3の7.可能性、必然性
3の8.可能世界
3の9.文の内包
3の10.語句の内包
第4章 真理論
4の1.真理の蛇足理論
4の2.真理の対応理論
4の3.真理の理論の問題点
第5章 存在論
5の1.ラッセルの記述理論
5の2.存在論的コミットメント
5の3.固有名の非記述性と固定指示
5の4.発話の文脈とキャラクター
5の5.現実性
5の6.存在とは何か
5の7.メタ概念としての存在
第6章 同一性論
6の1.同一性の定義
6の2.同一性と構成
6の3.同一性と存続
6の4.同一性と必然性
6の5.同一性と偶然性
6の6.言語的転回から個体的転回へ
参考文献
あとがき

江戸幕府と国防
講談社選書メチエ
三代将軍家光以降、鎖国政策をとってからは、18世紀後半まで異国からの脅威は日本になかったと思われているかもしれません。が実際はさにあらず。鎖国時代にも、通商を求める葡国や英国船の来航があったのです。全国的に沿岸警備体制は維持され、とくに長崎は軍事力を背景とした防衛システムがありました。実は江戸時代を通じて、異国船問題は幕府レベルの重要な問題でありつづけたのです。幕府の国防を史資料で解き明かします。
【目次】
プロローグ
第一章 異国船来航への備え
1 家光政権による沿岸警備体制の構築
2 ポルトガル使節船来航への対応
3 現実対応から見えた課題
第二章 異国船問題と幕府外交姿勢の硬直化
1 将軍代替わりと南蛮船対応方針の祖法化
2 幕府外交姿勢の硬直化
3 政治・政策的境界の明確化
第三章 新たな異国船問題と幕府の論理
1 通商不安定化に対する綱吉政権の模索
2 正徳新例と沿岸警備体制強化
3 吉宗政権と「唐船」打ち払い
第四章 日本を取り巻く環境の変化と幕府対外政策
1 異国船問題の重点移動
2 対馬海峡の危機
3 対馬沖漂流外国船への宗家と家斉政権の対応
4 レザノフの長崎来航
第五章 危機意識の高まりと有事対応の変化
1 蝦夷地の紛争と長崎
2 御船頭による長崎警備についての献策
3 長崎奉行の問題意識と幕府の判断
4 有事対応の変化
エピローグ
註
あとがき
索引

吉田神道の四百年 神と葵の近世史
講談社選書メチエ
徳川将軍も頼りにした「神つかい」吉田神道。「吾国開闢以来唯一神道是也」と謳い、全国の神社を支配下に収めた彼らの、盛衰を描く

イスラムと近代化 共和国トルコの苦闘
講談社選書メチエ
「世俗化」=「近代化」、「イスラム」=「反動」では、ない。「共和国トルコの父」ケマル・アタテュルクによって否定されたはずのイスラムは、なぜその後も長く生き残ったのか。幾重にも複雑に絡まった糸を解きほぐし、イスラム世界における近代化の問題を「脱イスラム」のフロントランナー、トルコ共和国の歩みから読み解く。
【目次】
序章 オルハン・パムクと「東洋vs.西洋」
第一章 トルコ共和国成立前後における改革とイスラム
第二章 ポスト・アタテュルク時代のイスラム派知識人
第三章 一九五〇~七〇年代のイスラム──ヌルジュとトルコ‐イスラム総合論
第四章 第三共和政下のイスラム──ギュレン運動、公正発展党
終章 ふたたび「東洋vs.西洋」
引用出典一覧
関連文献
あとがき
執筆者紹介

ピアニストのノート
講談社選書メチエ
音楽とはなにか? 音楽をえんそうするというとはどういうことか? 沈黙と時間と音楽と、どのような関係を結ぶのか? 人間と音楽は、どのような関係を結ぶのか?
質問:あなたは翡翠で楮(こうぞ)の葉を彫刻した男のことをお話になっています。この作品が完成すると人々はそれを本物の葉と区別することができなくなりました。「演奏家の手によって、楽譜に書かれた音符が実際の音になる。この両者の変化には、どこか違いがあるのだろうか?」あなたはこの質問にどうお答えになりますか?
答え:岩壁にきざまれた仏典にならって、譜面を石の塊に刻むこともできるかもしれませんね。ピアニストは、これとは別の演奏=解釈の段階に至ります。絶えず音符を解読し、それらの音符の彼方へ行き、再び音符に戻ってきます。解釈=演奏の射程の方がはるかに大きいのです。というのも、音符の彼方への旅をする過程で、演奏家は自分自身の過去および人類全体の過去を訪れるからです。それだけでなく、遠い未来に冒険しなければならない場合さえ出てくるでしょう亜。しかしながら、演奏家が何をしようとも、音符から離れることはできませんし、繋がれ、音符に釘付けされたままです。この点においては、何にも繋がれていない、作曲の方法にすら繋がれていない作曲家とは異なっています。いざとなれば作曲家は、作曲の法則を自分で変更することもできるのですから。作曲家の人生(あるいは紙)だけが、彼のほとばしる創造の勢いを変更したり、切り詰めたりすることができるのです。
【本書においてめぐらせられる思考】
創造者=作曲家と解釈者=演奏家の違いについて
楽譜と演奏者の関係について
現代の芸術、および芸術家の堕落について
シューベルト最晩年のピアノソナタについて
愛・死など著者の個人的な生と音楽の関わりについて

ソシュール超入門
講談社選書メチエ
『一般言語学講義』。言語=システムの謎を巡る孤独な戦いの記録である。今なお輝きを失わない20世紀思想の源流を改めて問い直す。