講談社学術文庫作品一覧

密教とマンダラ
密教とマンダラ
著:頼富 本宏
講談社学術文庫
「NHK市民大学」のテキストに加筆修正した、決定版入門書。真言宗・天台宗という日本の密教を、世界の仏教史中に位置づけ、歴史、教義の概略、大日如来をはじめとする数多くのほとけを体系的に紹介。諸経典をふまえて密教諸尊を視覚的に配置したマンダラについて、代表的な胎蔵マンダラと金剛界マンダラを中心に、種類、構造、思想、それぞれのほとけのマンダラにおける役割や、マンダラの多様な展開について、平易に解説する。 「NHK市民大学」の同名の講座テキストに加筆修正した入門書。真言宗・天台宗という日本の密教を、世界の仏教史のなかに位置づけ、その歴史、教義の概略、大日如来をはじめとする密教で信仰される数多くのほとけを体系的に紹介。諸経典をふまえて密教諸尊を視覚的に配置したマンダラについて、代表的な胎蔵マンダラと金剛界マンダラを中心に、種類、構造、思想、それぞれのほとけのマンダラにおける役割や、マンダラの多様な展開について、平易に解説する。
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イザベラ・バードの旅 『日本奥地紀行』を読む
イザベラ・バードの旅 『日本奥地紀行』を読む
著:宮本 常一
講談社学術文庫
日本観光文化研究所所長時代に行われた幕末・明治期の紀行文を読む講義のうち、昭和51年9月から52年3月まで全7回の『日本奥地紀行』の講義録。一英国人女性旅行家が目をとめた不思議な国「日本」の事象をきっかけに、その資料的価値、バードの視点の出色さを指摘するにとどまらず、著者自身の比類ない観察眼と聞き取り調査に裏打ちされた該博な見識が縦横無尽に紡ぎ出され、宮本民俗学の入門書ともなっている。 日本観光文化研究所所長時代に毎月行われた講義のうち、昭和51年9月から52年3月まで全7回の『日本奥地紀行』の講義録。講義は幕末・明治期の紀行文を通して民衆社会や世相史を読むというもの。一英国人女性旅行家が目をとめた不思議な国「日本」の事象をきっかけに、その資料的価値、バードの視点の出色さを指摘するにとどまらず、著者自身の比類ない観察眼と聞き取り調査に裏打ちされた該博な見識も、圧倒的説得力を持って縦横無尽に紡ぎ出され、宮本民俗学の入門書ともなっている。
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市民の科学
市民の科学
著:高木 仁三郎
講談社学術文庫
公害、薬害、巨大事故。 我々のあずかり知らぬところで進行し甚大な被害をもたらす悲劇は、なぜ繰り返されるのか。 それを防ぐため、専門的能力を持たない市民に何ができるのか。 科学者として生涯、原発の危険性を訴えつづけた著者は、市民が国家・企業・アカデミズムからも独立して専門的批判の能力を組織・維持・育成する方策を構想し、その実践報告とともに本書を遺した。 3・11後の日本に向けた最もポジティブな提言。 【本書の内容】 ■第一部 市民の科学  第1章 市民と科学――序にかえて  第2章 専門的批判の組織化について    はじめに    1 独立な批判とその組織化    2 西ドイツにおける独立研究機関    3 日本の状況と課題  第3章 原子力資料情報室    1 オルターナティブとしての市民の科学    2 原子力資料情報室    3 市民の目からの評価  第4章 プルトニウムと市民のはざまで ■第二部 市民にとってのプルトニウム政策  第1章 プルトニウム利用政策を問い直す  第2章 プルトニウム軽水炉利用の中止を提言する       ――プルサーマルに関する評価報告  第3章 解体核兵器からのプルトニウムをどう処分するか?    1 次の世代と結ぶ    2 オルターナティブ・ノーベル・プライズ    3 若い人たちは「理工」離れか    4 学校が始まった    5 突然の暗雲をバネにして    6 学校のこれから ■おわりに 「市民の科学」のこれから――高木学校によせて   あとがき 解 説(金森 修)
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五十音引き中国語辞典
五十音引き中国語辞典
著・編:北浦 藤郎,著・編:蘇 英哲,著・編:鄭 正浩
講談社学術文庫
中国語は漢字で表記されるが、中国語の辞書は発音(ピンイン)の順に配列されているため、その語が中国語ではなんと読むのかがわからないと、直接検索することができない。また、読みが複数ある語も少なくない。そもそも発音がわからない初学者には、中国語は、アルファベットを用いる語学にくらべ、ひとまず辞書を引くというハードルが高く感じられる。そこで通常、漢字の部首索引を経て、ピンイン順の掲載箇所を調べることとなる。ところで、簡体字とはいえ、同じ漢字であるからして、いっそのこと、日本語の音読みで引けたらどんなに簡便であろう、という趣旨で、音読み「あいうえお」順に見出し語を配列した、きわめてユニークな初学者用中国語辞典。「家」は一般の中国語辞典では「ji`a」で引くが、本書では「か」から引ける。
全線開通版 線路のない時刻表
全線開通版 線路のない時刻表
著:宮脇 俊三
講談社学術文庫
まもなく完成というところまできて、国鉄末期に建設が中止された、幻のローカル新線。開通を待ち望んでいた著者が、計画上の沿線をたどり、風景を見、路盤に立ち、関係者へのインタビューを行ったルポタージュに、架空の時刻表を添えた「線路のない時刻表」。取り上げた各線の工事再開は困難に思われたが、その後、第三セクター方式により7線すべてが開業。本書は開業までの経緯と新線の乗車記を加えて刊行された「全線開通版」。
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イギリス 繁栄のあとさき
イギリス 繁栄のあとさき
著:川北 稔
講談社学術文庫
今日、イギリスから学ぶべきは、勃興の理由ではなく、成熟期以後の経済のあり方と、衰退の中身である――。産業革命を支えたカリブ海の砂糖プランテーション。資本主義を担ったジェントルマンの非合理性。英語、生活様式という文化遺産……。世界システム論を日本に紹介した碩学が、大英帝国の内側を解き、歴史における「衰退」を考えるエッセイ。(講談社学術文庫) 今日、イギリスから学ぶべきは、勃興の理由ではなく、成熟期以後の経済のあり方と、衰退の中身である――。 産業革命を支えたカリブ海の砂糖プランテーション。資本主義を担ったジェントルマンの非合理性。英語、生活様式という文化遺産……。 世界システム論を日本に紹介した碩学が、大英帝国の内側を解き、歴史における「衰退」を考えるエッセイ。
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バルセロナ、秘数3
バルセロナ、秘数3
著:中沢 新一
講談社学術文庫
秘数3と秘数4。3は、結婚とエロティシズムの数であり、2と1がひとつになって運動を生み出し、世界を作る。一方で、4は3が作り出した世界に、正義と真理、均整と均衡を与える。秘数3と秘数4の対立と闘争が、西欧キリスト教文明のダイナミズムを生み出してきた。このふたつの秘数を都市の四次元空間で統一し、よろこびを生み出す幸福のバルセロナ紀行です。(講談社学術文庫) 西欧にダイナミズムを与えてきた秘数3と秘数4の対立。 海と空の間に漂流する都市の高次元空間に鳴り響く、幸福な調和の旋律を聴く! 秘数3と秘数4。3は、結婚とエロティシズムの数であり、2と1がひとつになって運動を生み出し、世界を作る。一方で、4は3が作り出した世界に、正義と真理、均整と均衡を与える。秘数3と秘数4の対立と闘争が、西欧キリスト教文明のダイナミズムを生み出してきた。このふたつの秘数を都市の四次元空間で統一し、よろこびを生み出す幸福のバルセロナ紀行です。 ※本書の原本は、1990年に単行本、1992年に文庫版が、中央公論新社より刊行されました。
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日本風景論 新装版
日本風景論 新装版
著:志賀 重昂
講談社学術文庫
明治の大ベストセラー。明治期の地理学者による、日本を地理学的に解説した初期の書籍であり、詩情豊かな文章でこの国の風土を讃えるものです。科学的・実証的な論述でありながら、日本文学の古典を豊富に引用し、明治画壇きっての名手である樋畑雪湖・海老名明四の挿画とあいまって、日本の自然の美しさを述べた古典的名著です。日本人の景観意識に重要な変革を与えた記念碑的作品です。(講談社学術文庫) 明治期の地理学者による、日本を地理学的に解説した初期の書籍であり、詩情豊かな文章でこの国の風土を讃えるものです。 明治27年に、日本でもっとも多く読まれた書籍です。 科学的・実証的な論述でありながら、日本文学の古典を豊富に引用し、明治画壇きっての名手である樋畑雪湖・海老名明四の挿画とあいまって、日本の自然の美しさを述べた古典的名著です。 日本人の景観意識に重要な変革を与えた記念碑的作品です。
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江戸幕府崩壊 孝明天皇と「一会桑」
江戸幕府崩壊 孝明天皇と「一会桑」
著:家近 良樹
講談社学術文庫
薩摩、長州を中心とする反幕府勢力が、武力で倒幕を果たしたという「常識」は本当か。第二次長州戦争は、なぜ幕府の敗北に終わったのか。王政復古というクーデタ方式が採られた理由とは。強烈な攘夷意思をもつ孝明天皇、京都の朝廷を支配した一橋慶喜、会津藩の松平容保、桑名藩の松平定敬。敗者の側から、江戸幕府体制がいかに、そしてなぜ崩壊したかを描き出す。(講談社学術文庫) 薩摩、長州を中心とする反幕府勢力が、武力で倒幕を果たしたという「常識」は本当か。第二次長州戦争は、なぜ幕府の敗北に終わったのか。王政復古というクー デタ方式が採られた理由とは。 強烈な攘夷意思をもつ孝明天皇、京都の朝廷を支配した一橋慶喜、会津藩の 松平容保、桑名藩の松平定敬。 敗者の側から、江戸幕府体制がいかに、そしてなぜ崩壊したかを描き出す。
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日本書紀の世界
日本書紀の世界
著:山田 英雄
講談社学術文庫
日本書紀はどのような経緯で成立したのか。編纂者は誰か。なにをめざしたのか。書名の謎から、全30巻の内容と特徴、そして奈良時代から現代までの研究の歴史まで、日本書紀を読むうえで必要な事項を、過不足なく、的確に解説。コンパクト、かつもっとも信頼できる入門書の決定版! (講談社学術文庫) 『日本書紀』は、誰もが知る日本の最初の正史です。舎人親王らの撰で、720年に完成、全30巻からなる、ということくらいは、教科書的な知識として知られているでしょう。では、いったい、どのような性格のテキストなのか、ということになると必ずしも知られているわけではありません。 古来、『日本書紀』の成立に関しては、おびただしい研究がなされてきました。明らかなことは、中国の当時のいくつかの文献から、引用し、改変して、編者たちが本文を構成していったということです。 本書は、この、「成立論」の変遷を的確に追い、また、後半では、各巻の内容と特徴を明快に説明していきます。 さいごには、奈良時代から戦後に至るまでの研究史も簡明に整理して紹介します。 「日本書紀」の研究は、細かく専門的になりがちですが、本書は、『日本書紀』というテキストの全体像を、多くの読者にわかる形で説き、いまだに古びるところのない、きわめて優れた解説書であり、入門書です。
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しぐさの日本文化
しぐさの日本文化
著:多田 道太郎
講談社学術文庫
日常の出来事や風俗から日本文化をとらえる評論で知られる著者の真骨頂ともいえるエッセイ集。「ものまね」の芸に惹かれる心性、「しゃがむ」姿勢と文明との関係、指などによる身振り語ともいえるような身体化されたかたちや動作など、日本的なしぐさ、ことに「低さ」に通じるしぐさの数々から、深い意味を洞察する。(講談社学術文庫) 日常の出来事や風俗から日本文化をとらえる評論で知られる著者の真骨頂ともいえるエッセイ集。「ものまね」の芸に惹かれる心性、「しゃがむ」姿勢と文明との関係、指などによる身振り語ともいえるような身体化されたかたちや動作など、日本的なしぐさ、ことに「低さ」に通じるしぐさの数々から、深い意味を洞察する。
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天狗芸術論・猫の妙術 全訳注
天狗芸術論・猫の妙術 全訳注
著:佚斎 樗山,その他:石井 邦夫
講談社学術文庫
江戸時代の談義本2作を、読み易い訳文とともに文庫化。いずれも、宮本武蔵『五輪書』とならぶ「剣術の秘伝書」であり「人生の書」でもある。「天狗芸術論」は、剣術者が深山で天狗に出会い、老荘や孔子・孟子、仏教思想をまじえて「芸術」すなわち「武芸」と「心術」の核心に触れる。「猫の妙術」では、どんな猫も敵わなかった大鼠を、一見のろまな古猫が簡単にやっつけてしまう。若い猫たちと家主の剣術家は、古猫に教えを乞う。 滑稽さの中に教訓と風刺をまじえて江戸時代中期に流行した「談義本」の祖とされる佚斎樗山が著した2作を、読み易い訳文と注を併載して文庫化。 いずれも、学術文庫のロングセラーである宮本武蔵『五輪書』とならぶ「剣術の秘伝書」として知られるが、剣術のみならず「人生の書」でもある。 「人は動物なり。善に動かざる時は必ず不善に動く。・・・種々に変転して止まざるものは人の心なり。」と始まる「天狗芸術論」は、奥義を極めたいと深山に入った剣術者が天狗たちに出会い、老荘思想や孔子・孟子、仏教思想をまじえて「芸術」すなわち「武芸」と「心術」の核心に触れる話。「学問剣術ともにただ己を知るをもって専務とす。」と言い残して、大天狗は去る。 「猫の妙術」では、勝軒という剣術家の屋敷に住みつき、どんな猫も歯が立たなかった大鼠を、一見のろまな古猫がなんなく銜えてやっつけてしまう。そこで、若く元気な猫たちと勝軒は、この古猫に教えを乞う。修業とは、また、教えを授かるとはどういうことなのか――古猫は語る。 神戸女学院大学名誉教授で武道家の内田樹氏が巻末解説を執筆。
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醒睡笑 全訳注
醒睡笑 全訳注
著:安楽庵 策伝,その他:宮尾 與男
講談社学術文庫
誓願寺法主の安楽庵策伝が江戸初期に編纂し、板倉重宗京都所司代に献呈した笑話集。うつけ・文字知顔・堕落僧・上戸・うそつきなど、多様な庶民の登場人物がつくる、豊かな笑いの世界。のちの落語、近世笑話集や小咄集に大きな影響を与えた。慶安元年版・全8巻42章311話の翻刻文に、現代語訳、語注、鑑賞、解説を付した、はじめての書。(講談社学術文庫) 江戸期を代表する笑話集、これまで未刊だった版本の全訳注が登場。落語の原点がここにある。 誓願寺法主の安楽庵策伝が江戸初期に編纂し、板倉重宗京都所司代に献呈した笑話集。うつけ・文字知顔・堕落僧・上戸・うそつきなど、多様な庶民の登場人物がつくる、豊かな笑いの世界。のちの落語、近世笑話集や小咄集に大きな影響を与えた。慶安元年版・全8巻42章311話の翻刻文に、現代語訳、語注、鑑賞、解説を付した、はじめての書。
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日本の食と酒
日本の食と酒
著:吉田 元
講談社学術文庫
日本人は何を食べていたのか。本書は京都・山科家の日記や奈良・興福寺の文書をひもとくことで、中世の公家と僧侶の食生活を再現し、その背景をなす製法の歴史へと接近する。中世から近世にかけて日本酒としてのかたちを整えていく酒。醤(醤油)、味噌、納豆といった大豆発酵食品……。日本の食文化を最も特徴付ける発酵技術と発酵文化の歴史を追い、その原点に迫る。これが日本食の原型だ! (講談社学術文庫) 日本人は何を食べていたのか。本書は京都・山科家の日記や奈良・興福寺の文書をひもとくことで、中世の公家と僧侶の食生活を再現し、その背景をなす製法の歴史へと接近する。中世から近世にかけて日本酒としてのかたちを整えていく酒。醤(醤油)、味噌、納豆といった大豆発酵食品……。日本の食文化を最も特徴付ける発酵技術と発酵文化の歴史を追い、その原点に迫る。これが日本食の原型だ! 
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ローマ五賢帝 「輝ける世紀」の虚像と実像
ローマ五賢帝 「輝ける世紀」の虚像と実像
著:南川 高志
講談社学術文庫
ネルウァからマルクス・アウレリウスまで5人の「賢帝」が続いた約100年間は、ローマ帝国の最盛期とされ、「人類が最も幸福だった時代」と呼ばれる。しかし、たとえばハドリアヌス帝は、同時代の人々には非常に憎まれた暴君だった。また、賢帝を輩出した「養子皇帝制」も、かえってそのために水面下での激しい権力闘争を生じさせていたのである。繁栄の陰の部分を描きつつ、この時代が最盛期であった理由を解明する。 紀元96年に即位したネルウァ帝に始まり、トラヤヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウス、マルクス・アウレリウスの5人の「賢帝」が続いた約100年間は、ローマ帝国の最盛期とされ、イギリスの歴史家ギボンにより「人類が最も幸福だった時代」と呼ばれる。 しかし、たとえばハドリアヌスは、同時代の人々には非常に恐れられ、憎まれた「暴君」だった。また、有徳の「賢帝」を輩出した麗しい制度とされる「養子皇帝制」も、実子にたまたま恵まれなかったことから採用された場当たり的な制度であり、かえってそのために水面下での激しい権力闘争を生じさせてもいた。 著者は、こうした「輝かしい時代」の陰の部分にこそ、この時代が最盛期であった理由を解き明かす秘密がある、という。そして、碑文などの文献史料を手掛かりにして、歴史上の人物の経歴や職歴、親族関係、宗教などの個人情報を詳細に分析する「プロソポグラフィー的研究」により、明るい「平和な時代」のイメージとは相容れない、皇帝と元老たちをはじめとした帝国の政治エリートたちの暗闘を解き明かしていく。1998年刊の講談社現代新書の文庫化。
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鎌倉と京 武家政権と庶民世界
鎌倉と京 武家政権と庶民世界
著:五味 文彦
講談社学術文庫
中世とは、地方武士と都市庶民の時代だった。武士擡頭の契機となった保元の乱に筆を起こし、源頼朝とその前後の政治史をふまえて読み解く、一貫した歴史の視座。生活の場(都市・農村・家)と、その場での営為(芸能・文学・宗教・政治)から明かされる、自我がめざめた「個」の時代の相貌。十二世紀後半から十四世紀前半にかけての中世像が鮮やかに甦る。 保元の乱から鎌倉幕府滅亡へ―― 武士の擡頭とともに中世は幕をあけた 中世とは、地方武士と都市庶民の時代だった。武士擡頭の契機となった保元の乱に筆を起こし、源頼朝とその前後の政治史をふまえて読み解く、一貫した歴史の視座。生活の場(都市・農村・家)と、その場での営為(芸能・文学・宗教・政治)から明かされる、自我がめざめた「個」の時代の相貌。十二世紀後半から十四世紀前半にかけての中世像が鮮やかに甦る。 ※本書の原本は、1988年5月、小学館より「大系日本の歴史」第五巻として刊行されました。本講談社学術文庫は、1992年12月に同社より刊行された、小学館ライブラリー版を底本としています。
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幻の東京オリンピック 1940年大会 招致から返上まで
幻の東京オリンピック 1940年大会 招致から返上まで
著:橋本 一夫
講談社学術文庫
東京が招致しながら、自ら返上した1940年のオリンピック。「皇紀2600年記念」として構想されたこの大会は、招致のためのヒトラーやムソリーニとの取り引き、満洲事変への厳しい国際世論など、最初から戦争と政治に振り回された。また、「満州国」は参加できるのか、天皇の開会宣言は可能なのか、など問題山積みのまま、準備は遅れに遅れる。そんな中、招致に尽力したIOC委員・副島道正は「返上やむなし」と腹を決める。 東京がオリンピック招致に成功したのは、今回の2020年で実は3回目である。1940年(昭和15年)に開催が予定されていた第12回オリンピック東京大会は、開催都市が自ら大会を返上した史上唯一のケースとなり、「幻のオリンピック」と呼ばれることとなった。 日本国内でも当初から「皇紀2600年記念」の国家行事として構想されたこの大会は、激しい誘致合戦に勝つためのヒトラーやムソリーニとの取り引き、満洲事変と国連脱退に対する厳しい国際世論、拡大する日中戦争のなかで起こり始めるボイコットの動きなど、最初から戦争と政治に振り回されていた。また、開催しても「満州国」は参加できるのか、天皇の開会宣言は可能なのか、など問題山積みのまま、準備は遅れに遅れていた。そんななか、招致に尽力したIOC委員・副島道正は、あえて「返上やむなし」と腹を決める――。 関東大震災からの復興をアピールし、名乗りを上げてからわずか5年で招致に成功しながら、返上に追い込まれるまでの経緯と関係者の苦闘を、長くスポーツ報道に携わった著者が描き出す。 『幻の東京オリンピック』(1994年・日本放送出版協会刊)の文庫化。
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富士山の自然史
富士山の自然史
著:貝塚 爽平
講談社学術文庫
なぜあの場所に富士山があるのでしょうか? その場所は、地球の構造線、トラフ、火山帯のちょうど交点です。三方向からの大きな力が集結し、単独で聳える日本の最高峰ができました。250万年前から現の重要なイベントを追跡することで、日本の地形の成り立ちを解明します。氷河期と間氷期の海水面の変化、火山灰の堆積、地殻変動、風雨による浸食作用……が地形を造ります。ロングセラー『東京の自然史』の姉妹編です。 昨年には富士山が世界遺産(文化遺産)に選定されました。なぜあの場所に日本一高い山が聳えているのでしょうか? 富士山が立つ場所は、地球の構造線、トラフ、火山帯のちょうど交点です。三方向からの大きな力がそこに集結し、あのように単独で日本最高峰ができあがったのです。 第四紀(250万年前から現在まで)における重要なイベントを追いかけることで、日本の地形の成り立ちがわかってきました。氷河期と間氷期の海水面の移り変わり(最大で100m以上)、火山活動による火山灰の堆積、地震などによる地殻変動、風雨による浸食作用も万年のスパンでみれば、大きなものです。 本書はロングセラー『東京の自然史』の続編です。より短く、エッセイ色が強く、読みやすい本に仕上がっています。
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パンの文化史
パンの文化史
著:舟田 詠子
講談社学術文庫
豊かに実る穀物を、収穫しては挽いてこねて焼く。 そうして出来た固形物を、本書は「パン」と定義する。 この「パン」作りを、人類は遥か五千年以上前から繰り返してきた。 古来から食べものそのものを意味する特別な存在だったパン。 メソポタミア文明から現代ヨーロッパまでを、膨大な資料と調査に基づいて一望する。 貴重な写真図版も多数収録。 世界各地・諸民族・各家庭で多種多様に継承された、パンの姿と歴史と文化が、この一冊に。 日本語で書かれた、ほぼ唯一の、パンの文化人類学。
科学の解釈学
科学の解釈学
著:野家 啓一
講談社学術文庫
科学への無批判の信奉と全否定とをともに排し、ハンソンとクーンに代表される「新科学哲学」、クワインの「知識の全体論」、ウィトゲンシュタインの「アスペクト知覚論」を三本の柱に、「自然」を解読する解釈学的営為としての科学の再生を訴える。科学哲学に本来課せられた役割の「科学的理性批判」の回復を謳う、斯界の第一人者による刺戟的な論考。 「科学主義」イデオロギーの専制を廃し、多元的な「知の共和制」の確立へ 科学とは万能なのか 科学への無批判の信奉と全否定とをともに排し、ハンソンとクーンに代表される「新科学哲学」、クワインの「知識の全体論」、ウィトゲンシュタインの「アスペクト知覚論」を三本の柱に、「自然」を解読する解釈学的営為としての科学の再生を訴える。科学哲学に本来課せられた役割の「科学的理性批判」の回復を謳う、斯界の第一人者による刺戟的な論考。 本書を見え隠れに導いている問題意識は、それゆえ、科学哲学という限られた領域においてではあるが、そこに見られる「科学主義」イデオロギーを剔抉し、科学哲学に本来課せられたはずの「科学的理性批判」という課題を遂行することによって、この批判的解体の運動を継承しようとするものである。そのような企図の全体を表示するために、私は「科学の解釈学」という呼称を選ぶことにした。――<本書「まえがき」より> ※本書の原本は、1993年10月、新曜社より刊行されました。本講談社学術文庫は、同書に三篇の論文を増補し、2007年1月に筑摩書房より刊行されたちくま学芸文庫版を底本としています。
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