講談社学術文庫作品一覧

江戸幕府崩壊 孝明天皇と「一会桑」
江戸幕府崩壊 孝明天皇と「一会桑」
著:家近 良樹
講談社学術文庫
薩摩、長州を中心とする反幕府勢力が、武力で倒幕を果たしたという「常識」は本当か。第二次長州戦争は、なぜ幕府の敗北に終わったのか。王政復古というクーデタ方式が採られた理由とは。強烈な攘夷意思をもつ孝明天皇、京都の朝廷を支配した一橋慶喜、会津藩の松平容保、桑名藩の松平定敬。敗者の側から、江戸幕府体制がいかに、そしてなぜ崩壊したかを描き出す。(講談社学術文庫) 薩摩、長州を中心とする反幕府勢力が、武力で倒幕を果たしたという「常識」は本当か。第二次長州戦争は、なぜ幕府の敗北に終わったのか。王政復古というクー デタ方式が採られた理由とは。 強烈な攘夷意思をもつ孝明天皇、京都の朝廷を支配した一橋慶喜、会津藩の 松平容保、桑名藩の松平定敬。 敗者の側から、江戸幕府体制がいかに、そしてなぜ崩壊したかを描き出す。
電子あり
日本書紀の世界
日本書紀の世界
著:山田 英雄
講談社学術文庫
日本書紀はどのような経緯で成立したのか。編纂者は誰か。なにをめざしたのか。書名の謎から、全30巻の内容と特徴、そして奈良時代から現代までの研究の歴史まで、日本書紀を読むうえで必要な事項を、過不足なく、的確に解説。コンパクト、かつもっとも信頼できる入門書の決定版! (講談社学術文庫) 『日本書紀』は、誰もが知る日本の最初の正史です。舎人親王らの撰で、720年に完成、全30巻からなる、ということくらいは、教科書的な知識として知られているでしょう。では、いったい、どのような性格のテキストなのか、ということになると必ずしも知られているわけではありません。 古来、『日本書紀』の成立に関しては、おびただしい研究がなされてきました。明らかなことは、中国の当時のいくつかの文献から、引用し、改変して、編者たちが本文を構成していったということです。 本書は、この、「成立論」の変遷を的確に追い、また、後半では、各巻の内容と特徴を明快に説明していきます。 さいごには、奈良時代から戦後に至るまでの研究史も簡明に整理して紹介します。 「日本書紀」の研究は、細かく専門的になりがちですが、本書は、『日本書紀』というテキストの全体像を、多くの読者にわかる形で説き、いまだに古びるところのない、きわめて優れた解説書であり、入門書です。
電子あり
しぐさの日本文化
しぐさの日本文化
著:多田 道太郎
講談社学術文庫
日常の出来事や風俗から日本文化をとらえる評論で知られる著者の真骨頂ともいえるエッセイ集。「ものまね」の芸に惹かれる心性、「しゃがむ」姿勢と文明との関係、指などによる身振り語ともいえるような身体化されたかたちや動作など、日本的なしぐさ、ことに「低さ」に通じるしぐさの数々から、深い意味を洞察する。(講談社学術文庫) 日常の出来事や風俗から日本文化をとらえる評論で知られる著者の真骨頂ともいえるエッセイ集。「ものまね」の芸に惹かれる心性、「しゃがむ」姿勢と文明との関係、指などによる身振り語ともいえるような身体化されたかたちや動作など、日本的なしぐさ、ことに「低さ」に通じるしぐさの数々から、深い意味を洞察する。
電子あり
天狗芸術論・猫の妙術 全訳注
天狗芸術論・猫の妙術 全訳注
著:佚斎 樗山,その他:石井 邦夫
講談社学術文庫
江戸時代の談義本2作を、読み易い訳文とともに文庫化。いずれも、宮本武蔵『五輪書』とならぶ「剣術の秘伝書」であり「人生の書」でもある。「天狗芸術論」は、剣術者が深山で天狗に出会い、老荘や孔子・孟子、仏教思想をまじえて「芸術」すなわち「武芸」と「心術」の核心に触れる。「猫の妙術」では、どんな猫も敵わなかった大鼠を、一見のろまな古猫が簡単にやっつけてしまう。若い猫たちと家主の剣術家は、古猫に教えを乞う。 滑稽さの中に教訓と風刺をまじえて江戸時代中期に流行した「談義本」の祖とされる佚斎樗山が著した2作を、読み易い訳文と注を併載して文庫化。 いずれも、学術文庫のロングセラーである宮本武蔵『五輪書』とならぶ「剣術の秘伝書」として知られるが、剣術のみならず「人生の書」でもある。 「人は動物なり。善に動かざる時は必ず不善に動く。・・・種々に変転して止まざるものは人の心なり。」と始まる「天狗芸術論」は、奥義を極めたいと深山に入った剣術者が天狗たちに出会い、老荘思想や孔子・孟子、仏教思想をまじえて「芸術」すなわち「武芸」と「心術」の核心に触れる話。「学問剣術ともにただ己を知るをもって専務とす。」と言い残して、大天狗は去る。 「猫の妙術」では、勝軒という剣術家の屋敷に住みつき、どんな猫も歯が立たなかった大鼠を、一見のろまな古猫がなんなく銜えてやっつけてしまう。そこで、若く元気な猫たちと勝軒は、この古猫に教えを乞う。修業とは、また、教えを授かるとはどういうことなのか――古猫は語る。 神戸女学院大学名誉教授で武道家の内田樹氏が巻末解説を執筆。
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醒睡笑 全訳注
醒睡笑 全訳注
著:安楽庵 策伝,その他:宮尾 與男
講談社学術文庫
誓願寺法主の安楽庵策伝が江戸初期に編纂し、板倉重宗京都所司代に献呈した笑話集。うつけ・文字知顔・堕落僧・上戸・うそつきなど、多様な庶民の登場人物がつくる、豊かな笑いの世界。のちの落語、近世笑話集や小咄集に大きな影響を与えた。慶安元年版・全8巻42章311話の翻刻文に、現代語訳、語注、鑑賞、解説を付した、はじめての書。(講談社学術文庫) 江戸期を代表する笑話集、これまで未刊だった版本の全訳注が登場。落語の原点がここにある。 誓願寺法主の安楽庵策伝が江戸初期に編纂し、板倉重宗京都所司代に献呈した笑話集。うつけ・文字知顔・堕落僧・上戸・うそつきなど、多様な庶民の登場人物がつくる、豊かな笑いの世界。のちの落語、近世笑話集や小咄集に大きな影響を与えた。慶安元年版・全8巻42章311話の翻刻文に、現代語訳、語注、鑑賞、解説を付した、はじめての書。
電子あり
日本の食と酒
日本の食と酒
著:吉田 元
講談社学術文庫
日本人は何を食べていたのか。本書は京都・山科家の日記や奈良・興福寺の文書をひもとくことで、中世の公家と僧侶の食生活を再現し、その背景をなす製法の歴史へと接近する。中世から近世にかけて日本酒としてのかたちを整えていく酒。醤(醤油)、味噌、納豆といった大豆発酵食品……。日本の食文化を最も特徴付ける発酵技術と発酵文化の歴史を追い、その原点に迫る。これが日本食の原型だ! (講談社学術文庫) 日本人は何を食べていたのか。本書は京都・山科家の日記や奈良・興福寺の文書をひもとくことで、中世の公家と僧侶の食生活を再現し、その背景をなす製法の歴史へと接近する。中世から近世にかけて日本酒としてのかたちを整えていく酒。醤(醤油)、味噌、納豆といった大豆発酵食品……。日本の食文化を最も特徴付ける発酵技術と発酵文化の歴史を追い、その原点に迫る。これが日本食の原型だ! 
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ローマ五賢帝 「輝ける世紀」の虚像と実像
ローマ五賢帝 「輝ける世紀」の虚像と実像
著:南川 高志
講談社学術文庫
ネルウァからマルクス・アウレリウスまで5人の「賢帝」が続いた約100年間は、ローマ帝国の最盛期とされ、「人類が最も幸福だった時代」と呼ばれる。しかし、たとえばハドリアヌス帝は、同時代の人々には非常に憎まれた暴君だった。また、賢帝を輩出した「養子皇帝制」も、かえってそのために水面下での激しい権力闘争を生じさせていたのである。繁栄の陰の部分を描きつつ、この時代が最盛期であった理由を解明する。 紀元96年に即位したネルウァ帝に始まり、トラヤヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウス、マルクス・アウレリウスの5人の「賢帝」が続いた約100年間は、ローマ帝国の最盛期とされ、イギリスの歴史家ギボンにより「人類が最も幸福だった時代」と呼ばれる。 しかし、たとえばハドリアヌスは、同時代の人々には非常に恐れられ、憎まれた「暴君」だった。また、有徳の「賢帝」を輩出した麗しい制度とされる「養子皇帝制」も、実子にたまたま恵まれなかったことから採用された場当たり的な制度であり、かえってそのために水面下での激しい権力闘争を生じさせてもいた。 著者は、こうした「輝かしい時代」の陰の部分にこそ、この時代が最盛期であった理由を解き明かす秘密がある、という。そして、碑文などの文献史料を手掛かりにして、歴史上の人物の経歴や職歴、親族関係、宗教などの個人情報を詳細に分析する「プロソポグラフィー的研究」により、明るい「平和な時代」のイメージとは相容れない、皇帝と元老たちをはじめとした帝国の政治エリートたちの暗闘を解き明かしていく。1998年刊の講談社現代新書の文庫化。
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鎌倉と京 武家政権と庶民世界
鎌倉と京 武家政権と庶民世界
著:五味 文彦
講談社学術文庫
中世とは、地方武士と都市庶民の時代だった。武士擡頭の契機となった保元の乱に筆を起こし、源頼朝とその前後の政治史をふまえて読み解く、一貫した歴史の視座。生活の場(都市・農村・家)と、その場での営為(芸能・文学・宗教・政治)から明かされる、自我がめざめた「個」の時代の相貌。十二世紀後半から十四世紀前半にかけての中世像が鮮やかに甦る。 保元の乱から鎌倉幕府滅亡へ―― 武士の擡頭とともに中世は幕をあけた 中世とは、地方武士と都市庶民の時代だった。武士擡頭の契機となった保元の乱に筆を起こし、源頼朝とその前後の政治史をふまえて読み解く、一貫した歴史の視座。生活の場(都市・農村・家)と、その場での営為(芸能・文学・宗教・政治)から明かされる、自我がめざめた「個」の時代の相貌。十二世紀後半から十四世紀前半にかけての中世像が鮮やかに甦る。 ※本書の原本は、1988年5月、小学館より「大系日本の歴史」第五巻として刊行されました。本講談社学術文庫は、1992年12月に同社より刊行された、小学館ライブラリー版を底本としています。
電子あり
幻の東京オリンピック 1940年大会 招致から返上まで
幻の東京オリンピック 1940年大会 招致から返上まで
著:橋本 一夫
講談社学術文庫
東京が招致しながら、自ら返上した1940年のオリンピック。「皇紀2600年記念」として構想されたこの大会は、招致のためのヒトラーやムソリーニとの取り引き、満洲事変への厳しい国際世論など、最初から戦争と政治に振り回された。また、「満州国」は参加できるのか、天皇の開会宣言は可能なのか、など問題山積みのまま、準備は遅れに遅れる。そんな中、招致に尽力したIOC委員・副島道正は「返上やむなし」と腹を決める。 東京がオリンピック招致に成功したのは、今回の2020年で実は3回目である。1940年(昭和15年)に開催が予定されていた第12回オリンピック東京大会は、開催都市が自ら大会を返上した史上唯一のケースとなり、「幻のオリンピック」と呼ばれることとなった。 日本国内でも当初から「皇紀2600年記念」の国家行事として構想されたこの大会は、激しい誘致合戦に勝つためのヒトラーやムソリーニとの取り引き、満洲事変と国連脱退に対する厳しい国際世論、拡大する日中戦争のなかで起こり始めるボイコットの動きなど、最初から戦争と政治に振り回されていた。また、開催しても「満州国」は参加できるのか、天皇の開会宣言は可能なのか、など問題山積みのまま、準備は遅れに遅れていた。そんななか、招致に尽力したIOC委員・副島道正は、あえて「返上やむなし」と腹を決める――。 関東大震災からの復興をアピールし、名乗りを上げてからわずか5年で招致に成功しながら、返上に追い込まれるまでの経緯と関係者の苦闘を、長くスポーツ報道に携わった著者が描き出す。 『幻の東京オリンピック』(1994年・日本放送出版協会刊)の文庫化。
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富士山の自然史
富士山の自然史
著:貝塚 爽平
講談社学術文庫
なぜあの場所に富士山があるのでしょうか? その場所は、地球の構造線、トラフ、火山帯のちょうど交点です。三方向からの大きな力が集結し、単独で聳える日本の最高峰ができました。250万年前から現の重要なイベントを追跡することで、日本の地形の成り立ちを解明します。氷河期と間氷期の海水面の変化、火山灰の堆積、地殻変動、風雨による浸食作用……が地形を造ります。ロングセラー『東京の自然史』の姉妹編です。 昨年には富士山が世界遺産(文化遺産)に選定されました。なぜあの場所に日本一高い山が聳えているのでしょうか? 富士山が立つ場所は、地球の構造線、トラフ、火山帯のちょうど交点です。三方向からの大きな力がそこに集結し、あのように単独で日本最高峰ができあがったのです。 第四紀(250万年前から現在まで)における重要なイベントを追いかけることで、日本の地形の成り立ちがわかってきました。氷河期と間氷期の海水面の移り変わり(最大で100m以上)、火山活動による火山灰の堆積、地震などによる地殻変動、風雨による浸食作用も万年のスパンでみれば、大きなものです。 本書はロングセラー『東京の自然史』の続編です。より短く、エッセイ色が強く、読みやすい本に仕上がっています。
電子あり
パンの文化史
パンの文化史
著:舟田 詠子
講談社学術文庫
豊かに実る穀物を、収穫しては挽いてこねて焼く。 そうして出来た固形物を、本書は「パン」と定義する。 この「パン」作りを、人類は遥か五千年以上前から繰り返してきた。 古来から食べものそのものを意味する特別な存在だったパン。 メソポタミア文明から現代ヨーロッパまでを、膨大な資料と調査に基づいて一望する。 貴重な写真図版も多数収録。 世界各地・諸民族・各家庭で多種多様に継承された、パンの姿と歴史と文化が、この一冊に。 日本語で書かれた、ほぼ唯一の、パンの文化人類学。
科学の解釈学
科学の解釈学
著:野家 啓一
講談社学術文庫
科学への無批判の信奉と全否定とをともに排し、ハンソンとクーンに代表される「新科学哲学」、クワインの「知識の全体論」、ウィトゲンシュタインの「アスペクト知覚論」を三本の柱に、「自然」を解読する解釈学的営為としての科学の再生を訴える。科学哲学に本来課せられた役割の「科学的理性批判」の回復を謳う、斯界の第一人者による刺戟的な論考。 「科学主義」イデオロギーの専制を廃し、多元的な「知の共和制」の確立へ 科学とは万能なのか 科学への無批判の信奉と全否定とをともに排し、ハンソンとクーンに代表される「新科学哲学」、クワインの「知識の全体論」、ウィトゲンシュタインの「アスペクト知覚論」を三本の柱に、「自然」を解読する解釈学的営為としての科学の再生を訴える。科学哲学に本来課せられた役割の「科学的理性批判」の回復を謳う、斯界の第一人者による刺戟的な論考。 本書を見え隠れに導いている問題意識は、それゆえ、科学哲学という限られた領域においてではあるが、そこに見られる「科学主義」イデオロギーを剔抉し、科学哲学に本来課せられたはずの「科学的理性批判」という課題を遂行することによって、この批判的解体の運動を継承しようとするものである。そのような企図の全体を表示するために、私は「科学の解釈学」という呼称を選ぶことにした。――<本書「まえがき」より> ※本書の原本は、1993年10月、新曜社より刊行されました。本講談社学術文庫は、同書に三篇の論文を増補し、2007年1月に筑摩書房より刊行されたちくま学芸文庫版を底本としています。
電子あり
斜線 方法としての対角線の科学
斜線 方法としての対角線の科学
著:ロジェ・カイヨワ,訳:中原 好文
講談社学術文庫
本書は、サブタイトルにある「対角線の科学」について、フランスの碩学カイヨワが論じたものです。対角線の科学とは、「既得の知識をいろいろな形で横方向に切断することによって、時として危険なまでに細分化してしまっている様々な探究分野の区分を補修する」という目的をもっています。 たとえば、蝶の翅、岩石の文様、絵画、神話になんらかの共通する構造を探り出そうとします。人間界と自然界の両方の現象の背後に潜む法則・原理を取り出しうるという方にカイヨワは賭けるのです。神話学、宗教学、社会学、人類学、動物学、鉱物学、数学、物理学などの広範な知見を統合し、「類推の極致」ともいうべき想像力の洞察に、正しさを求める営みとしての哲学を試みます。
岩波茂雄と出版文化 近代日本の教養主義
岩波茂雄と出版文化 近代日本の教養主義
著:村上 一郎,解説:竹内 洋
講談社学術文庫
岩波茂雄が起こした岩波書店の興隆は、「学歴貴族」の栄光の時代に呼応しています。近代日本のアカデミズムは外来で急ごしらえであり、「前衛」という言葉で操作可能だと見抜いていたのが、岩波茂雄であり、日本のインテリの底の浅さを見抜いています。教育社会学者の竹内洋氏は、日本のアカデミズムのありようと出版産業の構造を、問い直し、解明します。一冊で二冊分の内容を持っています。 本書は、岩波書店の創業者である岩波茂雄をめぐる分析『岩波茂雄 成らざりしカルテと若干の付箋』(村上一郎著)と、解説(竹内洋)からからなります。 信州人である岩波茂雄はいかにして出版社を起こし、出版界を牛耳っていくようになったのか? その過程で何を利用し、何を切り捨てたのか? 「岩波文化」と呼ばれる一大潮流を作り上げ、日本の教養主義を牽引したが、そこに問題はなかったのか? おりしも、岩波書店の興隆は、近代日本の「学歴貴族」の栄光の時代に呼応しています。近代日本のアカデミズムは外来で急ごしらえのところがあり、しっかりと熟成されたものではなく、見せかけの「前衛」で乗っ取ることが可能だと見抜いていたのが、岩波茂雄であると村上一郎は述べます。そして、日本のインテリゲンチャのあり方の底の浅さを見抜いています。 教育社会学者の竹内洋氏は、日本のアカデミズムのありようと教養主義の盛衰、そして出版業というものが、文化産業としてどのような構造を持つのかを、『岩波茂雄』を土台に据えて、問い直し、解明していく、一冊で二冊分の内容を持つ本です。
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フロイトとユング
フロイトとユング
著:小此木 啓吾,著:河合 隼雄
講談社学術文庫
十九世紀末、フロイトによって確立された精神分析学。彼の高弟ユングは後に袂を分かち、一派をなす――。人間存在の深層を探究した彼らの存在は、今なお我々に多大な影響を与え続けている。彼らは何を追い求め、何を明らかにしたのか。二人の巨人の思想の全容と生涯を、それぞれの孫弟子にあたり日本を代表する第一人者が語りつくした記念碑的対談。 人間存在の深層を探究した二人の巨人 その思想の全容と生涯を両派を代表する日本の第一人者が語りつくす 十九世紀末、フロイトによって確立された精神分析学。彼の高弟ユングは後に袂を分かち、一派をなす――。人間存在の深層を探究した彼らの存在は、今なお我々に多大な影響を与え続けている。彼らは何を追い求め、何を明らかにしたのか。二人の巨人の思想の全容と生涯を、それぞれの孫弟子にあたり日本を代表する第一人者が語りつくした記念碑的対談。 深層心理学は知的な理解のみでは十分ではない。人間全体としてのかかわりが、真の理解のためには必要となってくる。そのような意味で、本書もわれわれの個人的な体験からはじまって、フロイトやユングの人となりに及びつつ論を展開していったことは、今から考えてもいいアイデアであったと思っている。……この対談をヒントとして、読者は深層心理学のなかの問題点をひろいあげ、自らの思索を深めてゆかれることだろう。――<本書「対話者あとがき」より> ※本書の原本は、1978年11月、思索社より刊行され、1989年8月、第三文明社よりレグルス文庫として再度刊行されました。
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役人の生理学
役人の生理学
著:バルザック,訳・解説:鹿島 茂
講談社学術文庫
革命後、ジャーナリズムが勃興したフランスで一気にブレイクした「生理学」シリーズ。現代の「スーパー・エッセイ」のたぐいですが、バルザックの観察眼にはなかなか唸らせられます。冒頭の定義があります。「役人とは生きるために俸給を必要とし、自分の職場を離れる自由を持たず、書類作り以外なんの能力もない人間」現在と同じではありませんか!付録に、一九世紀の役人文学3篇を追加。 一九世紀の半ば頃、パリの書店は、「生理学」ものと呼ばれれる小冊子で溢れかえっていました。それは、扱う主題はさまざまで、風刺に満ちた出鱈目を書いたもので、青か黄の表紙がついており、読者を笑わせることを目的とした娯楽本でした。革命後、ジャーナリズムが勃興したフランスで一気にブレイクしました。現代の「スーパー・エッセイ」のたぐいでしょうか。 しかしその観察眼にはなかなか唸らせられます。 冒頭に定義があります。 「役人とは生きるために俸給を必要とし、自分の職場を離れる自由を持たず、書類作り以外なんの能力もない人間」 現在と同じではありませんか! 能なし役人とは「郊外に一戸建てを借りて住んでいる。中背、小太りで、ゆっくりと歩き、官吏であることを誇りにしている。どんな場合でも、体制に奉仕することに心血を注ぎ、政治音痴を自慢にしている。……『ジュルナル・デ・デバ紙』の意見をそのまま採用し、どんな権力であろうと、かならず権力の味方をする。」 この後、産業革命が起こり、金融資本が勢力を拡大してくると、民間企業で働く「サラリーマン」が誕生してくる。役人のようなライフスタイルが市民の間に広がっていくのである。『役人の生理学』で戯画化された人々は、現代のサラリーマンの原型なのです。 役人・会社員というのは、進歩していないことに驚かされます。 大文豪による抱腹絶倒のエッセイです。 付録に、一九世紀の役人文学3篇を追加。
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明治医事往来
明治医事往来
著:立川 昭二
講談社学術文庫
平均寿命三十年の時代、電灯がつき、陸蒸気が走り、煉瓦の家が立ち並ぶ繁栄の裏には汚濁、貧困、頽廃があった。栄養立国・衛生立国をめざす一方で、「女工哀史」らを蝕んだ結核や、娼婦を死に走らせた梅毒検査。そして、夏目漱石、岩倉具視、樋口一葉らを襲った病魔の数々――。死と病いを身近に抱えながら生きた有名無名の人々を綴る、明治への鎮魂曲。 平均寿命三十年の時代、電灯がつき、陸蒸気が走り、煉瓦の家が立ち並ぶ繁栄の裏には汚濁、貧困、頽廃があった。栄養立国・衛生立国をめざす一方で、「女 工哀史」らを蝕んだ結核や、娼婦を死に走らせた梅毒検査。そして、夏目漱石、岩倉具視、樋口一葉らを襲った病魔の数々――。死と病いを身近に抱えながら生きた有名無名の人々を綴る、明治への鎮魂曲。
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東京 下町山の手 1867-1923
東京 下町山の手 1867-1923
著:エドワード・サイデンステッカー,訳:安西 徹雄
講談社学術文庫
〈東京〉は、いつ生まれ、どう育ったのか。 江戸の残照を映す下町と、下町文化。 近代化を担った山の手と、山の手文化。 二つのせめぎあいと融けあいを軸として、 1867年から1923年まで―明治維新から関東大震災まで――モダン都市・東京へと変貌するさまをたどり、 江戸の香りが失われてゆく〈原・東京〉の姿を愛惜をこめて描く。 谷崎潤一郎、川端康成、永井荷風、三島由紀夫らを英訳し、源氏物語の英訳を完成させるなど数々の日本文学を世界に紹介した泰斗による東京論・近代日本論の名著。
忠臣蔵 もう一つの歴史感覚
忠臣蔵 もう一つの歴史感覚
著:渡辺 保
講談社学術文庫
日本人の心の中に「大石内蔵助」という名は一つの男の理想像として刻み込まれている。しかし、このイメージは、実は歴史上の実像とは隔たりがある。それでは、「忠臣蔵」という共同幻想をつくったのは、本当はだれなのか。そして、この壮大なフィクションは、なぜこれほど日本人に愛され続け、『仮名手本忠臣蔵』はどのようにして歌舞伎最大の古典となったのか。明晰な構成と文体で鮮やかに描き出す、第一人者による意欲作。 誰がつくったのか。 なぜ愛されるのか。 日本人の心のうちに、「大石内蔵助」という名は一つの男の理想像として刻み込まれている。このイメージは、実は歴史上の人物像とは隔たりがある。それでは「忠臣蔵」という共同幻想をつくったのは、いったいだれなのか。そしてこの壮大なフィクションは、どのようにして歌舞伎最大の古典となり、時代を超えて一つの美意識を完成させるに至ったのか。 一つの美学が完成した。その流れをみれば、三人の名優が発明したことは、それぞれの時代におけるそれぞれのかたちであって、実は一つのものの表現にしかすぎないということがわかる。(中略)三人の名優の芸の系譜は、どんな時代にも、日本人の感性が一つのものを求めていたこと、少なくとも歌舞伎の世界の中では、一つの感性がこうしてとぎすまされ、それが一人の男の肖像として結実していったことを示している。――<本書より> ※本書の原本は、1981年、白水社より刊行されました。
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吉田松陰著作選 留魂録・幽囚録・回顧録
吉田松陰著作選 留魂録・幽囚録・回顧録
著・訳:奈良本 辰也
講談社学術文庫
幕末動乱の時代、倒幕、維新を実現する長州藩の若者たちの多くが学んだ松下村塾。明治維新の精神的理論の支柱と称され、至誠と行動を貫徹した吉田松陰の思想とはなにか? 本書は、『幽囚録』『対策一道』『愚論』『回顧録』『急務四条』をはじめとする松陰の代表的な著作の原文に、平易な現代語訳を添えて丁寧な解説を施す。時代を変革する先駆者の思想の全貌を、本人の著述にもとづいて描き出した、必読の一冊。 幕末の動乱期、至誠と行動に生き、維新の原動力となった変革者の思想 身はたとひ 武蔵の野辺に朽ちぬとも 留め置かまし大和魂 至誠にして動かざる者は未だ之れ有らざるなり――。幕末動乱の時代、久坂玄瑞、高杉晋作、伊藤博文ら、倒幕・維新を実現する人材を育てあげ、明治維新の精神的理論の支柱と称された長州藩士、吉田松陰。『幽囚録』『対策一道』『回顧録』などの代表的著述に丁寧な語釈と平易な現代語訳を施した原典を通して迫る、至誠と行動を貫徹した時代の変革者の思想。 松陰は、彼自身、決して文章を飾ろうという意志などはなかった。むしろ高杉晋作などがあまりに名文を書くと、それを戒めるくらいであった。しかし、彼の自分を飾らない文章、そして何事をも一生懸命に考えて書く心の文章は、なかなかの名文章であるといってよいのである。それは、数多くの書簡、あるいは『留魂録』などを読めば解るであろう。――<「あとがき」より抜粋> ※本書の原本は、1969年5月、筑摩書房より「日本の思想」第19巻『吉田松陰集』として刊行されました。なお、原本所収の「講孟余話(抄)」は割愛しました。
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