講談社学術文庫作品一覧

聖教要録・配所残筆
講談社学術文庫
時流に抗し、聖学の道を説く
素行の思想と自叙伝
江戸時代前期の代表的思想家、山鹿素行は、日常から遊離した官学(程朱の学)を排斥したことにより幕府の忌諱(きき)に触れ、配流の身となって波瀾の人生を送る。直接古代聖賢の教えに学ぶべしと説く古学の立場から、儒教理論の要点を纒めた「聖教要録」、遺書として、流謫地播磨赤穂(るたくちはりまあこう)で綴った異色の自叙伝「配所残筆」。素行の代表作2篇の文庫版初の全訳注。

魚食の民
講談社学術文庫
日本人は、魚を酒菜(さかな)とよび真菜(まな)とよぶほどに遙かな昔から魚に親しんできた魚食の民であり、現代に伝わる豊かな魚食文化を築きあげてきた。魚食の民は漁(すなど)りの民であり、魚食の歴史はすなわち漁りの歴史でもある。しかしかつて多彩な魚貝を育んできた豊饒の海はいまや危機に瀕し、魚貝は数も種類も少なくなった。日本人と魚のかかわりを、日本人――魚食――漁業という構図の中で考える。

イエス・キリスト(上)
講談社学術文庫
新約聖書にみられる多様なイエス・キリスト像。そのなかでマルコ、マタイ、ルカは歴史のイエスについての伝承をもとに、どのような視座から福音書を編集し、それぞれ固有のイエス・キリスト像を造型していったのか。本巻はその過程を社会的背景とともに追究。日本の新約聖書学の第一人者が著したイエス・キリストを理解するための基本的かつ必須の書である。

「いのち」とはなにか
講談社学術文庫
現代の生物学は限りない効率化の波にのみこまれ、生命全体を見つめることを忘れたのではないだろうか。本書は、このような問題意識をもって、「いのち」の全体像に、深くかつ分り易く迫っていく。古来から生命観の変遷をたどりつつ、最先端の分子生物学に至る科学者たちの挑戦と苦闘を温かいまなざしで描き出す、著書渾身の一書。

プラトンの呪縛
講談社学術文庫
【第9回読売論壇賞・第11回和辻哲郎文化賞受賞作】 第1次世界大戦後に訪れた民主主義の危機のなかで「精神の国の王」として甦り、さらにはナチズムにも利用された西欧思想の定立者・プラトン。彼は理想国家の提唱者なのか、全体主義の擁護者なのか。プラトンをめぐる激しい論戦を通して20世紀の哲学と政治思想の潮流を検証し、現代に警鐘を鳴らす注目作。(講談社文庫)
第9回読売論壇賞・第11回和辻哲郎文化賞受賞作
時空を超えて甦るプラトンの警告
極端な自由は極端な隷従に振れる
第1次世界大戦後に訪れた民主主義の危機のなかで「精神の国の王」として甦り、さらにはナチズムにも利用された西欧思想の定立者・プラトン。彼は理想国家の提唱者なのか、全体主義の擁護者なのか。プラトンをめぐる激しい論戦を通して20世紀の哲学と政治思想の潮流を検証し、現代に警鐘を鳴らす注目作。

旧約聖書の英語
講談社学術文庫
西欧言語文化の深奥には、旧約聖書の表現や登場人物が喚起する概念が強く根づいている。新聞や推理小説など社会の態様を反映する英語文献に用例をとり、ユダヤ・キリスト教の聖典の聖句がどのような意味を付加されて現代に蘇っているかを論究。姉妹編『新約聖書の英語』とともに、現代英語理解のために必読の一書。

氷川清話
講談社学術文庫
完全校訂版
江藤淳・松浦玲編、未収録談を大量増補
海舟が自在に語る談話の数々
幕藩体制瓦解の中、勝海舟は数々の難局に手腕を発揮、江戸城を無血開城に導いて次代を拓いた。晩年、海舟が赤坂氷川の自邸で、歯に衣着せず語った辛辣な人物評、痛烈な時局批判の数々は、彼の人間臭さや豪快さに溢れ、今なお興味が尽きない。本書は、従来の流布本を徹底的に検討し直し、疑問点を正し、未収録談を拾い上げ再編集した決定版。

新装版 源氏物語(一)
講談社学術文庫
与謝野晶子・谷崎潤一郎・円地文子ら、個性的な作家が現代語訳を試みた、不朽の物語文学『源氏物語』。本書は、三矢重松・坂口信夫の源氏講義に魅せられた鋭敏な言語感覚をもって知られる稀代の国語学者が、生涯をかけて取り組んだ源氏完訳本である。本巻は、光源氏の誕生から元服までを描く「桐壺」から、生涯最愛の女性・紫上と新枕を交わす「葵」までを収録。

天皇の祭り
講談社学術文庫
古代天皇制を支える思想原理は何か。天武朝に宗教改革が行なわれ、禊(みそぎ)が中心の古儀に対し、新儀には中国の易の思想と最新の天文学が導入された。北極星は天皇、北斗は宰相と位置づけ、天空の星々(=人民)を支配し、四季を司(つかさど)り、民生の安定を保証する儀式が大嘗祭。天皇即位式に潜む古代信仰の実態と論理を徹底解明する。

オランダ東インド会社
講談社学術文庫
17世紀前半、オランダは葡・西・英と東インド香料貿易の覇を競い、これを制した。その核となったのがオランダ東インド会社である。同社はジャワ土着君主の王位継承戦争に暗躍して図版を広げ、コーヒー等の栽培により栄華の時代を築き上げた。しかしそれも束の間、やがて衰退へと向かい18世紀末には消滅する。インドネシア史を背景に描くオランダ東インド会社200年の興亡。

中世再考
講談社学術文庫
日本中世史の諸説に様々な疑問を提出した小論集。「平民の自由」「民衆の生活史」「東国と西国」「百姓」「海民」など、著者が現在も徹底して追究し、多くの成果をあげている、数多くの研究主題の原点が提示されている。常民文化研究所で著者に強い影響を与えた民俗学者、宮本常一に関する論考も収録。

茶と美
講談社学術文庫
茶の心、美の本質に深く迫るには、物にじかに「触れ」、「観る」ことが大切であると説く。そして、名器「喜左衛門井戸」を観てその美を発見し、さらに日本美の共通の基準「渋み」を提唱した、初期の茶人達を高く評価する。さまざまな角度から美を論じつつ、現代の茶人に対する厳しい要求をつきつける辛口の評論集。

懐風藻
講談社学術文庫
751年に編纂された日本最古の漢詩集『懐風藻(かいふうそう)』は、『風土記』『古事記』『日本書紀』『万葉集』と並ぶ国家創成時の貴重な史料、魅力満載の文学作品である。近江朝から奈良朝時代、律令制天皇国家樹立をめざした大友皇子、大津皇子、藤原宇合(ふじわらのうまかい)や遣唐留学生などの詩、新時代への讃美や清新溌刺とした若き気漲(みなぎ)る佳品、120編の文庫版初の全訳注。

コーヒー・ハウス
講談社学術文庫
17世紀半ばから1世紀余にわたり繁栄を見せた欧州カフェ文化の先駆、コーヒー・ハウス。そこは政治議論や経済活動の拠点であると同時に、文学者たちが集い、ジャーナリズムを育んだ場として英国に多大な影響を与えた、社会の情報基地でもあった。近代都市・ロンドンを舞台にした、胡乱(うろん)で活力にみちた人間模様と、市民の日常生活を活写する。(講談社学術文庫)
17世紀半ばから1世紀余にわたり繁栄を見せた欧州カフェ文化の先駆、コーヒー・ハウス。そこは政治議論や経済活動の拠点であると同時に、文学者たちが集い、ジャーナリズムを育んだ場として英国に多大な影響を与えた、社会の情報基地でもあった。近代都市・ロンドンを舞台にした、胡乱(うろん)で活力にみちた人間模様と、市民の日常生活を活写する。

「日本人論」の中の日本人(下)
講談社学術文庫
本巻は、明治から現代までを対象とする。戦前までは、福沢諭吉、ベルツ、ハーン、漱石、タウト、和辻哲郎、三木清等の日本人論に即して展開、戦後は多様化した研究を背景に、「社会」「ことば」「こころ」「比較文化」の4側面から日本人像を探り、その全体像に迫る。はたして日本人は変ったのか。

「日本人論」の中の日本人(上)
講談社学術文庫
日本民族の特性
ザビエル、フロイス、ケンペル、シーボルト……異邦人たちが観た日本人
古来、日本人はどう観られ、自らをどう観てきたか。そして実際、日本人はどうあったのか。ザビエル以後450年の代表的日本人論をとりあげ、その分析を通じて日本人という人間集団の特性を探る。本巻はザビエルから幕末までを対象とし、フロイス、アダムス、ケンペル、シーボルト、オールコック等、主として外国人の日本人観を軸に展開する。

トロイア戦記
講談社学術文庫
『トロイア戦記』はホメーロスの『イーリアス』と『オデュッセイア』を架橋する壮大な長編叙事詩である。作者は3世紀のギリシャの詩人クイントゥス。『イーリアス』のあとを受け、アマゾーンの女王の華麗な活躍、戦争の端緒を開いた王子パリスの末路、木馬作戦の顛末、絶世の美女ヘレネーの数奇な運命等、魅力あふれる多数の挿話をちりばめつつ、トロイア崩壊までを描く。本邦初訳。

あるカトリック女性思想家の回想録
講談社学術文庫
ロシアのユダヤ人迫害を逃れ、フランスへ移住した哲学者で、詩人で、祈りの人、ライサ・マリタン。パリでの壮大な精神のドラマ、数々の出会いと友情──哲学者ベルクソン、画家ルオー、作家レオン・ブロワ。科学的実証主義万能の時代、人間存在の根源は何かをひたすら求め彷徨う、深く澄んだ魂をもつ1人の女性が、半生を回顧し、その懊悩(おうのう)の軌跡を美しい詩的文章で綴る。

栄西 喫茶養生記
講談社学術文庫
茶は養生の仙薬なり。延齢の妙術なり。
禅僧栄西が説く茶の効能
鎌倉時代、広い知識と行動力で、先進的知識人として活躍した栄西は、二度にわたり宋に入り、中国文化の摂取につとめた。そして、中国の禅院で行われていた飲茶の習慣を日本でも行うべく、当地で得た茶の実を建仁寺境内に植栽し、日本の茶の始祖になる。本書は、「養生の法」として喫茶を説いた茶書の古典。
●大きな文字で読みやすい

歎異抄
講談社学術文庫
悪人正機説や他力本願で知られる真宗の開祖・親鸞。危険思想視され烈しい弾圧にあいながらも、人々に受け入れられていった、その教えの本質とは何か。師の苦悩と信仰の極みを弟子の唯円が綴った聖典に詳細な語釈、現代語訳、丁寧な解説をほどこした。日本人の「こころ」を追究する著者の手でよみがえる流麗な文章に秘められた生命への深い思想性。
梅原学が探る日本人の「こころ」
親鸞の苦悩と信仰の極み
悪人正機説や他力本願で知られる真宗の開祖・親鸞。危険思想視され烈しい弾圧にあいながらも、人々に受け入れられていった、その教えの本質とは何か。師の苦悩と信仰の極みを弟子の唯円が綴った聖典に詳細な語釈、現代語訳、丁寧な解説をほどこした。日本人の「こころ」を追究する著者の手でよみがえる流麗な文章に秘められた生命への深い思想性。
●大きな文字で読みやすい