講談社学術文庫作品一覧

生命科学
生命科学
著:中村 桂子
講談社学術文庫
「生命科学」は、1970年代に日本で提唱された学問の新領域である。物理科学を基盤に生命現象の本質を追究しつつ、人文・社会科学諸部門との協調のなかで、人間がその生を全うし得る社会の建設を目的とする。環境汚染や医の倫理の乱れなど人間をとりまく状況が混迷を深めゆく今日、生命科学の提起した課題はますますその比重を増しつつある。本書は「生命科学」の全貌を見渡す絶好の入門書である。
差異としての場所
差異としての場所
著:柄谷 行人
講談社学術文庫
本書は『隠喩としての建築』と『批評とポスト・モダン』から構成した。改稿は一切ない。タイトルは、「場所についての3章」からとった。種類と時間的順序に従って再編してみると、2つの本の間の切断があるという私の思いこみは、まちがいではないとしても、それほどのものでもなかった。私は現在も似たようなことをやっていると思う。その意味でこのエッセイは、私の「差異と反復」を示すものである。
昔話の民俗学
昔話の民俗学
著:桜井 徳太郎,解説:野村 純一
講談社学術文庫
庶民の素朴な心情が率直に語られている昔ばなし。本書は、昔ばなしが、民話や神話・伝説とはどう違うかという本質論から出発し、昔ばなしの民族・地域・時代・世界性を論究、さらに異郷譚、小子譚(ちいさこばなし)、遊魂譚などに分類して、その中に日本人の思想や生活文化の特質が如実に反映されていることを実証する。日本人の心のふるさとと言われてきた昔ばなしを、新たな視点から解釈した待望の昔ばなし民俗論。
レトリックの意味論
レトリックの意味論
著:佐藤 信夫,解説:三浦 雅士
講談社学術文庫
現代の思想は言語の問題、とくに意味論を核心として展開している。著者は、現代思想の大きな潮流であるバルトやデリダの言語論の検討から出発し、言語が本来もっている遊動的な弾性に富んだ〈レトリック性〉を豊かな例証によって考察する。ことばの意味を固定した一義的なものと捉える従来の理論を斥け、現代言語学に〈意味の弾性〉という画期的視点を拓いた佐藤レトリック学の到達点を示す名著。
電子あり
飛鳥大和 美の巡礼
飛鳥大和 美の巡礼
著:栗田 勇
講談社学術文庫
民族の記憶もないはるかな昔に生まれ、仏教伝来後も民衆のなかに生き続けてきた信仰の心は、永い時間をかけて「弥勒仏」や「十一面観音」の御姿をうみ出した。仏像にしろ仏画にしろそれ自体はものでしかない。しかしひとたびそれらに向き合えば、太古からの人々の凝縮された想いが今を生きる我々になにかを訴えてくる。飛鳥大和の美しい風景と御仏たちを訪ね、日本人の心のありかを探る巡礼の旅。
近代欧州経済史入門
近代欧州経済史入門
著:大塚 久雄,解説:中村 勝己
講談社学術文庫
近代資本主義はどのように成立したか。本書は15世紀末の地理上の発見が触発した商業革命から17世紀の初期資本主義の完成までを論述。中世後期の東邦貿易の支配者ヴェニスは、東インド新航路の開拓によりポルトガル、スペインにその座を奪われ、さらに新興国のオランダ、イギリスが新大陸貿易の主要品「毛織物」の生産地として台頭する。転換期における大国の興亡と資本主義成立過程を説く名著。
世界という背理
世界という背理
著:竹田 青嗣
講談社学術文庫
小林秀雄と吉本隆明は、日本の批評において非常に象徴的な対立点に立つ2つの極である。両者の批評に共通しているのは、「文学」がどういうものであるかについての卓越した確信であって、それは現在の批評の世界では希有なものである……。現実世界への言語と思想の有効性を鋭く問い続けた小林秀雄と吉本隆明の苦闘の道程をたどり、時代の風化に耐えうる真の〈思想〉とは何かを考察した画期的論考。
蓮如
蓮如
著:笠原 一男
講談社学術文庫
さびれきった真宗本願寺のかたすみに生まれながら一代にして「仏国のごとし」とまで謳われる隆盛をもたらした第8代法主・蓮如。武力が命運を決する戦国乱世にあって、本願寺は蓮如の知恵のみを武器に、民衆教団の育成のみならず全国的な展開をも達成した。本願寺500年余におよぶ繁栄の礎を築き上げた真宗中興の英主・蓮如の不滅の精髄を、あますとこなく説き明かした期待の笠原蓮如論。
沖縄
沖縄
著:谷川 健一
講談社学術文庫
日本国に属しながら独自の自然と歴史をもつ沖縄。沖縄を理解するのにもっとも大切なものは何か。著者は、沖縄の「根」の底に沖縄固有の「神」の存在を見る。その神を見失った場合、沖縄は日本本土との画一化という衝撃に耐えられないのではないか。今日沸騰する各種の社会問題を解決するために、沖縄は「南島自治文化圏」を設定すべきであると主張する。沖縄問題を正しくとらえるための必読の書。
惑星科学入門
惑星科学入門
著:松井 孝典
講談社学術文庫
「ガリレオ」「マジェラン」など最新の惑星探査機の成果を盛り込み、太陽系と惑星の実像を明らかにする。また隕石に込められた様々な情報から太陽系生成の過程を再現。原子太陽系星雲から固体粒子の凝縮、集積を経て微惑星が多数誕生し、それらが衝突を繰り返して現在の惑星が形成されたとする注目の「松井理論」を展開する。巨大隕石の衝突による恐龍絶滅の検証など、興味尽きない最新科学の入門書。
茶道の美学
茶道の美学
著:田中 仙翁
講談社学術文庫
室町中期に茶祖珠光(じゅこう)によって芸道化され、中興の名人紹鴎(じょうおう)をへて、利休が大成した“茶の湯の道”、茶道。日本人の生活文化に大きな影響を与えてきた茶道の風雅には、日本独自の精神性と美意識がこめられている。著者は現代の茶人としての視点から、茶室における所作の美と、茶道具をあつかう点前(てまえ)の方法を平明に説き、あわせて茶の湯の美意識と作法の時代による変遷を解説する。現代人のための茶道入門。
曹操
曹操
著:竹田 晃
講談社学術文庫
中国史上もっともドラマチックな時代――三国時代の幕を開き、その立役者となった曹操。彼は主家を奪った逆臣として悪名高く、〈乱世の奸雄〉と評されてきたが、政治家として、また詩人としてもまことに優れた人物であった。名族の出身でもない曹操が、濁流のなかから身を起こし、一時代を回転させる軸となっていく軌跡と彼の人間的魅力は、現代人の心を惹きつけてやまない。真の曹操像にせまる好著。
慎思録
慎思録
著:貝原 益軒,訳:伊藤 友信
講談社学術文庫
なぜ人は学ばねばならないのか。人はどう生きるべきか。益軒の豊富な人生経験を踏まえて書き綴られた本書『慎思録』は、説得力に富み、味わい深い。人生の岐路に立たされたとき、そして、よりよく生きるために人は何をなすべきかを懇切丁寧に説く。今日の日本人がわすれがちな正義・信義・真実・正直・誠実など、現代にも通じる242の生き方を、原文と口語訳で平易に解説した実践的教訓書。
フッサ-ル
フッサ-ル
著:田島 節夫
講談社学術文庫
ハイデガー、メルロ=ポンティなど現代の哲学者に多大な影響を与えたフッサール。ユダヤ人の旧家に生まれ、数学に秀れた才能を発揮した学究の徒は、なぜ哲学研究に転じ、20世紀諸学に多面的な役割を果たす現象学を確立するに至ったのか。本書はその生涯をたどる一方、主著『論理学研究』『イデーエン』などを抄訳。たび重なる転回にもかかわらず、深く首尾一貫した哲学的思索を明らかにした力作。
聖なる場所の記憶
聖なる場所の記憶
著:鎌田 東二,解説:荒木 美智雄
講談社学術文庫
日本文化を考えようとする時、「聖なる場所」は特別の意味をもっており、例えば神は、ある特定の山、川、海などに鎮まるとされる。そこにはある特殊な情報や記憶が融合されて、人間の想像力というよりも、場所のもつ力が人間に憑依して、そこを特別の聖域にしていくのである。国学者・篤胤や折口の思想は、いかなる場所から現れ出たのだろうか。異能の宗教哲学者が初めて構想した日本の精神地理学。
ファウスト
ファウスト
著:小塩 節
講談社学術文庫
ドイツ文学のなかで、いちばん面白く、内容の深みと言葉の真実なみずみずしさを、もっともよく湛えているのは、ゲーテの『ファウスト』であろう。神と世界に対して自己を主張し、行動の巨人たらんとして悪魔にとりつかれた男ファウスト。死してなお真実の愛に生きた少女グレートヒェン……。本書はこのゲーテの作品を手がかりに、ヨーロッパ的人間とは何か、その実相をさぐろうと試みた刮目の書。
古代日本の女帝
古代日本の女帝
著:上田 正昭
講談社学術文庫
古代国家の創立期ともいえる飛鳥時代から奈良時代にかけては、推古、持統、元明、称徳など8代もの女帝が続出した。本書は3世紀の卑弥呼までさかのぼり、古代日本の女王・女帝の特質を、巫女王の段階、巫女王から女帝への過渡期、女帝の段階と3つに分け論述。大化の改新、壬申の乱など、有力豪族と天皇家との確執や、皇統を巡る争乱が相次ぐ古代日本の実相を、女帝の軌跡から明らかにした好著。
北一輝論
北一輝論
著:松本 健一
講談社学術文庫
昭和初期の国家主義運動の教典とされた『日本改造法案大綱』を発表、政界を揺るがす数々の事件に暗躍し、一九三六年の二・二六事件の黒幕として処刑された北一輝。著者は、新発見資料を縦横に駆使して、佐渡の多感な少年時代から、辛亥革命に始まる中国の革命運動に挺身した北一輝の足跡を辿り、その〈ロマン的革命家〉としての稀有の実像を造形した。昭和史の暗部をみごとに照射した会心の評伝。
時代の精神
時代の精神
著:ウィリアム・ヘイズリット,訳:神吉 三郎,解説:遠藤 光
講談社学術文庫
近代イギリスにおいて肖像画家として、また美術や文学の批評家として活躍したヘイズリット。彼は18世紀から19世紀初頭にかけてのイギリスを代表する詩人バイロンやワーズワースを初め、学者、政治家ら超人物25人を、過激な表現と独断で鋭く批判した。広い教養と深い学識に支えられた反骨精神をもとに歯に衣着せず裁断する姿勢は、注目に値する。批評の方法の原点を示す時代を超えた名著。
近代化の理論
近代化の理論
著:富永 健一
講談社学術文庫
資本主義的市場経済と民主主義の実現、家父長制家族から核家族への移行など、多面的に「近代化」をとりあげ、その起源を小封建領主割拠の中世から国民国家に統合された西洋の歴史に求めた。また日本と中国など非西洋の近代化も考察、中国は日本と異なり封建制をもたず、秦漢帝国から清朝まで統一専制が続いたために近代化が遅れたと指摘した。近代化の多様性と西洋と非西洋の相違を説く必読の力作。