講談社学術文庫作品一覧

モ-ツァルト考
モ-ツァルト考
著:池内 紀
講談社学術文庫
モーツァルトには、さまざまな顔がある。むろん、彼は神童だった。生活無能者である反面、一介の音楽家という職業で生きた最初の人だった。あるときは子供のようにうつけた顔でウィーンの街頭に佇んでいる。旅の途上にいる……。フランス革命によって幕をおろした華やかな18世紀西欧文化を一身に体現した、時代の申し子としてのモーツァルト。誕生から死まで、その尽きせぬ魅力のすべてを語る。
ケルト妖精学
ケルト妖精学
著:井村 君江
講談社学術文庫
アイルランドに伝わるケルト神話では、戦いに敗れて地下に逃れた異教の神々が妖精の祖先とされる。妖精たちは、民間伝承や文学作品にどのように登場し、表現されてきたか。アーサー王伝説の湖の精やシェイクスピアの妖精王オーベロン、児童文学のピーターパンなど、妖精像の変容を神話学、民俗学、比較文学等の視点から興味深く論述。妖精研究の第一人者によるファンタジック・フォークロアの力作。
フランスことば事典
フランスことば事典
著:松原 秀一
講談社学術文庫
外国で暮らしてみると、感情生活も、事物に対する情感も異なっていることを感じさせられることが多い。著者は、永年のフランス生活の体験に基づき、「シャボン」や「パン」など日常生活の「ことば」の背景にある日本人とは異なるフランス人が持つ文化や民族性の特性を指摘しつつ、フランス語の豊かな情感と、その魅力を興味深く語る。生活文化の観点か説く生きたフランス語を学ぶための必携の書。
西洋中世世界の成立
西洋中世世界の成立
著:増田 四郎
講談社学術文庫
豊かな文化を共有するヨーロッパ世界の基盤はどのように形成されたのか。本書は紀元前1世紀のカエサル、タキトゥスの時代から、ゲルマン民族の大移動、西ローマ帝国の没落、イスラムの侵入を経て、紀元後8~9世紀のカール大帝の時代に至る1000年の経過を論述。古代ギリシア・ローマの伝統とキリスト教の世界観、ゲルマン民族の団体意識などの混交による西洋中世社会の成立を明らかにした名著。
不死のワンダ-ランド
不死のワンダ-ランド
著:西谷 修
講談社学術文庫
人間にとっての最大の暴力ないし災厄として、不安や恐怖の最後の対象である〈死〉。著者は、世界大戦による大量死の時代を背景に登場したハイデガー哲学と、それに続くバタイユ、ブランショ、レヴィナスらの〈死〉に真正面から向き合った思想を考察する。さらに〈死の抑止〉を旨とする現代医学をも視野に入れ、現代人が直面する未知の状況──〈私の死〉を死ぬことができぬ状況を的確に照射した画期的論考。
道教の神々
道教の神々
著:窪 徳忠
講談社学術文庫
中国の宗教の主流をなし、日本にも大きな影響を与えた道教。本書は、中国の人々の生活に密着している道教信仰の現状を述べると共に、道教の神々の世界を考究。道教の儀式の折に本尊としてその絵像が掛けられる元始・霊宝・道徳天尊の三神をはじめ、多くの神々及び古くから日本人に親しまれてきた鍾馗や閻魔などの由来を紹介し、気功や風水説にも論及した。わが国道教学の権威による先駆的道教入門。
現代哲学の岐路
現代哲学の岐路
著:生松 敬三,著:木田 元
講談社学術文庫
本書は、今日の一般的な思想状況の展望からはじめて、現代の思想的中心課題ともいうべき近代合理主義批判という問題に焦点をあわせた。20世紀思想のあらゆる可能性が芽生えた19世紀から1920年代までの世紀転換期の思想の動きを主眼に、ドイツの観念論から近代初期の哲学まで遡り、さらに古代ギリシア以来の哲学思想の流れを概観する。現代哲学を学ぶ人に贈る対談形式の必携の哲学ガイド。
詩人 与謝蕪村の世界
詩人 与謝蕪村の世界
著:森本 哲郎
講談社学術文庫
江戸の詩人、与謝蕪村。彼は大飢饉や倹約令が打ち続く時代に貧しい生活を送りながらも、その現実に左右されることのない独自の美の世界を俳諧や絵画の中に構築した。彼の努力と天与の才が交錯する蕪村芸術の神髄を、芭蕉や漱石の俳句、大雅の絵画などのすぐれた作品と対比しつつ説く。文明批評家として世界を舞台に活躍し続けている著者が、長年愛してやまない蕪村のすべてを情熱を傾けて描く力作。
宇宙像の変遷
宇宙像の変遷
著:村上 陽一郎
講談社学術文庫
無限の時間と空間をもつ〈宇宙〉という概念は、古来、人間を惹きつけてやまない。著者はデモクリトスやプトレイオスらのギリシャ・ローマの宇宙観から筆を起こし、コペルニクス、ケプラー、ガリレオ、デカルト、ニュートンとつづく天文学の業績を平明に解説。20世紀のアインシュタイン、ガモフらによる新たな〈宇宙神話〉ビッグ・バン理論まで、幾多の曲折を経て確立された壮大な宇宙論の歴史。
内乱記
内乱記
著:カエサル,訳:國原 吉之助
講談社学術文庫
古代ローマの運命を、内乱から平和へ、そして共和政から帝政へと大きく変えた英雄カエサルと政敵のポンペイユスとの対決を描く劇的な記録。前49年ルビコン川を渡ったカエサルは、西はスペインから東はバルカン半島まで、北はアルプスから南は地中海を渡ってエジプトまでローマ世界を東奔西走して戦う。困難を克服し勝利するまでを、カエサル自ら迫真の名文で綴る、『ガリア戦記』と並ぶ重要史料。
昭和期日本の構造
昭和期日本の構造
著:筒井 清忠
講談社学術文庫
昭和期の戦後・戦中期の日本の政治・社会をその深部から解明するために、この時代を中心的に動かした軍部、とりわけ陸軍を構造的に分析。著者はまず日本ファシズム論についての素朴な疑問から出発、陸軍の中枢部でのエリート派閥抗争を概観し、また昭和陸軍の原型に迫る。さらに、近代日本史上最大のクーデターである二・二六事件を徹底的に考究。激動の昭和を歴史社会学的に考察した画期的論考。
天使論序説
天使論序説
著:稲垣 良典
講談社学術文庫
天使とはなにか、天使というものは本当に実在するのだろうか。西洋の長い思想の歴史の中で、2000年以上に及ぶ長い期間、多くの優れた思想家が天使について様々な探究と思索を行なってきた。本書は、天使を神話やメルヘンの世界の想像力の対象としてのみならず思想史の流れに立ち返り、学問的研究の対象として捉えることによって、現代人の自己実現と認識が図れると説く卓越した書き下ろし天使論。
生命科学
生命科学
著:中村 桂子
講談社学術文庫
「生命科学」は、1970年代に日本で提唱された学問の新領域である。物理科学を基盤に生命現象の本質を追究しつつ、人文・社会科学諸部門との協調のなかで、人間がその生を全うし得る社会の建設を目的とする。環境汚染や医の倫理の乱れなど人間をとりまく状況が混迷を深めゆく今日、生命科学の提起した課題はますますその比重を増しつつある。本書は「生命科学」の全貌を見渡す絶好の入門書である。
差異としての場所
差異としての場所
著:柄谷 行人
講談社学術文庫
本書は『隠喩としての建築』と『批評とポスト・モダン』から構成した。改稿は一切ない。タイトルは、「場所についての3章」からとった。種類と時間的順序に従って再編してみると、2つの本の間の切断があるという私の思いこみは、まちがいではないとしても、それほどのものでもなかった。私は現在も似たようなことをやっていると思う。その意味でこのエッセイは、私の「差異と反復」を示すものである。
昔話の民俗学
昔話の民俗学
著:桜井 徳太郎,解説:野村 純一
講談社学術文庫
庶民の素朴な心情が率直に語られている昔ばなし。本書は、昔ばなしが、民話や神話・伝説とはどう違うかという本質論から出発し、昔ばなしの民族・地域・時代・世界性を論究、さらに異郷譚、小子譚(ちいさこばなし)、遊魂譚などに分類して、その中に日本人の思想や生活文化の特質が如実に反映されていることを実証する。日本人の心のふるさとと言われてきた昔ばなしを、新たな視点から解釈した待望の昔ばなし民俗論。
レトリックの意味論
レトリックの意味論
著:佐藤 信夫,解説:三浦 雅士
講談社学術文庫
現代の思想は言語の問題、とくに意味論を核心として展開している。著者は、現代思想の大きな潮流であるバルトやデリダの言語論の検討から出発し、言語が本来もっている遊動的な弾性に富んだ〈レトリック性〉を豊かな例証によって考察する。ことばの意味を固定した一義的なものと捉える従来の理論を斥け、現代言語学に〈意味の弾性〉という画期的視点を拓いた佐藤レトリック学の到達点を示す名著。
電子あり
飛鳥大和 美の巡礼
飛鳥大和 美の巡礼
著:栗田 勇
講談社学術文庫
民族の記憶もないはるかな昔に生まれ、仏教伝来後も民衆のなかに生き続けてきた信仰の心は、永い時間をかけて「弥勒仏」や「十一面観音」の御姿をうみ出した。仏像にしろ仏画にしろそれ自体はものでしかない。しかしひとたびそれらに向き合えば、太古からの人々の凝縮された想いが今を生きる我々になにかを訴えてくる。飛鳥大和の美しい風景と御仏たちを訪ね、日本人の心のありかを探る巡礼の旅。
近代欧州経済史入門
近代欧州経済史入門
著:大塚 久雄,解説:中村 勝己
講談社学術文庫
近代資本主義はどのように成立したか。本書は15世紀末の地理上の発見が触発した商業革命から17世紀の初期資本主義の完成までを論述。中世後期の東邦貿易の支配者ヴェニスは、東インド新航路の開拓によりポルトガル、スペインにその座を奪われ、さらに新興国のオランダ、イギリスが新大陸貿易の主要品「毛織物」の生産地として台頭する。転換期における大国の興亡と資本主義成立過程を説く名著。
世界という背理
世界という背理
著:竹田 青嗣
講談社学術文庫
小林秀雄と吉本隆明は、日本の批評において非常に象徴的な対立点に立つ2つの極である。両者の批評に共通しているのは、「文学」がどういうものであるかについての卓越した確信であって、それは現在の批評の世界では希有なものである……。現実世界への言語と思想の有効性を鋭く問い続けた小林秀雄と吉本隆明の苦闘の道程をたどり、時代の風化に耐えうる真の〈思想〉とは何かを考察した画期的論考。
蓮如
蓮如
著:笠原 一男
講談社学術文庫
さびれきった真宗本願寺のかたすみに生まれながら一代にして「仏国のごとし」とまで謳われる隆盛をもたらした第8代法主・蓮如。武力が命運を決する戦国乱世にあって、本願寺は蓮如の知恵のみを武器に、民衆教団の育成のみならず全国的な展開をも達成した。本願寺500年余におよぶ繁栄の礎を築き上げた真宗中興の英主・蓮如の不滅の精髄を、あますとこなく説き明かした期待の笠原蓮如論。