講談社選書メチエ作品一覧

世界の小国 ミニ国家の生き残り戦略
世界の小国 ミニ国家の生き残り戦略
著:田中 義晧
講談社選書メチエ
したたかな外交戦略と個性的な経済政策。大国主導の国際社会を生き抜く術とは? ツバルのドメイン名ビジネス、バハマのオフショア金融センター、ルクセンブルクの欧州外交戦略……。大国ではありえない個性的でしたたかな国家運営をする小さな国々。最高の政治的贅沢か、それとも国際社会のお荷物なのか? 世界の国家数の2割強を占め、今後も増え続けるであろう小国の魅力と、小ささゆえの有利性と不利性を国際関係論のエキスパートが論考する。 【目次】 はじめに 新たな国際的プレーヤー 今、なぜ小国なのか/小国の定義 第1章 ツバルという国 週二便の国際線/独立への道/依存経済/ドメイン名ビジネス  第2章 小国の系譜 「小面積の共和国」という理想/古代都市国家の興亡/中世・近世ヨーロッパの小国家群/第三世界との共通点 第3章 小国の誕生 「世界最古の共和国」サンマリノ/激動のヨーロッパ史の中で/「植民地独立付与宣言」を追い風に/国連が「産婆役」/主権国家といえるのか/民族自決権の功罪 第4章 国際政治のキャスティング・ボート 「世界の良心」/京都議定書をめぐる対立/IWCをハイジャック/援助外交のコスト・パフォーマンス/共産主義を崩壊させたバチカン/保守的教義への批判 第5章 グローバリゼーションという逆説 世界のオフショア金融センターとして/「タックス・ヘイヴン」バハマ/ダーティー・マネーの温床?/タックス・ヘイヴンvs.経済協力開発機構 第6章 太平洋島嶼国をめぐる国際政治 「不穏な太平洋」/米ソ角逐を手玉に/中・台の援助競争/フィジーをゆるがせた民族主義/ソロモン諸島の「国家破綻」/変化した安全保障のパラダイム 第7章 カリブ海と太平洋の小島嶼経済 両地域の類似点、相違点/経済困難を抱える太平洋の小島嶼国/オセアニア島嶼経済の四類型/より発展したカリブ海地域/「3S」に賭ける/地域統合でさらなる発展 第8章 欧州の伝統的小国家群 経済オリンピックの勝者/成功の背景/モナコのジレンマ/リヒテンシュタインとサンマリノの経済戦略/「小国性」を武器にするルクセンブルク 第9章 アラブの小さな首長国 カタールとバーレーン/「中東のCNN」アルジャジーラ/アメリカとサウジアラビアのはざまで/「レンティア国家」/岐路に立つバーレーン 第10章 アフリカ大陸の六つのミニ途上国 小さな最貧国/「富める国と貧しい民」赤道ギニア/観光立国セーシェル 終 章 小国が拓く新時代 政治的ダーウィニズムをこえて/小国から見た世界/不安定要因か、社会の木鐸か/日本との関係 あとがき 参考文献 小国案内
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近代日本の右翼思想
近代日本の右翼思想
著:片山 杜秀
講談社選書メチエ
躓きの石としての天皇 超克されざる「近代」 ――近代日本のパラドクス 革命への赤き心は、なにゆえ脱臼され、無限の現状肯定へと転化されなければならないのか。躓きの石としての天皇、超克されざる「近代」――北一輝から蓑田胸喜まで、西田幾多郎から長谷川如是閑まで、大正・昭和前期の思想家たちを巻き込み、総無責任化、無思想化へと雪崩を打って向かってゆく、近代日本思想極北への歩みを描く。 [本書の内容] ●「超―国家主義」と「超国家―主義」 ●万世一系と「永遠の今」 ●動と静の逆ユートピア ●「口舌の徒」安岡正篤 ●西田幾多郎の「慰安の途」 ●アンポンタン・ポカン君の思想 ●現人神
「弱い父」ヨセフ キリスト教における父権と父性
「弱い父」ヨセフ キリスト教における父権と父性
著:竹下 節子
講談社選書メチエ
父は弱い だが父は強い 父の「原型」から21世紀の父親像を考える 受け入れ、養う。それが父親の役割だ。望まずしてイエス・キリストの父となった聖ヨセフ。聖書にはほとんど言及のなかった1人の「父」が、すべての「父」のモデルになったのはなぜか。ヨセフ像の変遷をたどりながら、現代に必要とされている真の父の「ありかた」を考える。 【目次】 はじめに 序章 可能性のヨセフ 第一章 ヨセフの生涯 第二章 観想のヨセフ 聖フランチェスコの馬小屋 第三章 政治のヨセフ 第四章 ヨセフが父になったわけ 第五章 不思議のヨセフ 第六章 ヨセフの二一世紀 終章 「強い父」と聖ヨセフ おわりに 主要参考文献 索引
空の実践 ブッディスト・セオロジー(4)
空の実践 ブッディスト・セオロジー(4)
著:立川 武蔵
講談社選書メチエ
宗教の実践の意味とは何か 世界的碩学による大好評講義シリーズ第4弾 仏教の中核思想「空」とは何か。自己否定とそれを通してのよみがえりという「空」の実践のプロセスから、実践行為としての仏教の本質を考究する、碩学渾身の思考。 【目次】 はじめに 第一章 空の実践 第二章 空と縁起 第三章 空性と自性 第四章 行く人は行くか 第五章 言葉を超える 第六章 『般若心経』における空 第七章 空の実践と真言 第八章 空の実践と三身仏 第九章 実践の行程──井上円了のパラダイム 第一〇章 よみがえる世界──空海におけるマンダラ 第一一章 空の実践の二方向 索引
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古代メソアメリカ文明 マヤ・テオティワカン・アステカ
古代メソアメリカ文明 マヤ・テオティワカン・アステカ
著:青山 和夫
講談社選書メチエ
知られざる「石器の都市文明」の全貌 世界は四大文明だけではなかった ゼロの概念を発明し、文字や天文学を発達させたマヤ文明。山上都市モンテ・アルバン。ローマに匹敵する国際都市テオティワカン。メソアメリカ最大の王国アステカ。世界は四大文明だけではなかった。日本人にはなじみの薄い「石器の都市文明」の全貌を明らかにし、文明とは何かを考察する。知られざる「石器の都市文明」がわかる決定版! 【目次】 序章 世界六大文明としてのメソアメリカ文明 1 「最初のアメリカ人」と世界の食文化革命 2 「世界四大文明」から「世界六大文明」へ 第一章 世界六大文明のなかの「石器の都市文明」 1 もっとも洗練された「石器の都市文明」 2 四大文明史観を覆す 3 「新石器革命」はなかった 第二章 メソアメリカ最初の文明=オルメカ文明 1 オルメカ文明の起源 2 遠距離交換網とオルメカ美術様式 3 オルメカ文明と文字 第三章 究極の石器の都市文明=マヤ文明 1 ゼロを発明した文明 2 マヤ文明の起源 先古典期マヤ文明 3 古典期マヤ文明と初期国家群の発達 4 古典期マヤ都市の盛衰 戦争と権力闘争 第四章 メソアメリカ最古の都市を生んだサポテカ文明 1 メソアメリカ最古の都市 モンテ・アルバンの起源 2 サポテカ国家の発達 3 サポテカ文明の黄金時代 第五章 古典期最大の国際都市=テオティワカン文明 1 テオティワカンの起源 2 国際都市テオティワカンと古典期メソアメリカ 第六章 群雄割拠のなかのトルテカ文明 1 トルテカ文明とメキシコ中央高地 2 発達するメソアメリカ遠距離交換網 古典期後期・終末期と後古典期前期 第七章 アステカ文明と後古典期後期メソアメリカ 1 アステカ王国と首都テノチティトラン 2 後古典期後期のメソアメリカ 終章 メソアメリカ文明とは何か 1 「未完の征服」と現在進行系の文化 2 文明とは何か 参考文献 あとがき 索引
日中戦争下の日本
日中戦争下の日本
著:井上 寿一
講談社選書メチエ
自由主義から全体主義へ。国際協調から地域主義へ。1930年代、社会システムの不調から生じた日中戦争。なぜ政党への期待が大政翼賛会を生んだのか? 労働者や農民たちは戦争に何を託したのか? 戦時下日本の知られざる「自画像」を明かす。(講談社選書メチエ) デモクラシーとしての大政翼賛会誕生の真実。日中戦争とは何だったのか。戦争景気で潤う銃後経済。社会平準化を志向する兵士たち。当時の社会システム不調の原因を探りつつ、戦前日本の自画像を捉え直す一冊。
誓いの精神史 中世ヨーロッパの<ことば>と<こころ>
誓いの精神史 中世ヨーロッパの<ことば>と<こころ>
著:岩波 敦子
講談社選書メチエ
言われた言葉には魔が宿る 誓いに込められた中世人の世界観を読み解く 誓いの言葉はなぜ間違えてはいけないのか。なぜ文書よりも言葉が重視されたのか。決闘の勝ち負けによって真偽が定まり、目撃していなくても事件の証人になることができる、その根拠はどこにあるのか。西洋中世の特異な習俗から、中世人の「こころ」に迫る。 【目次】 序 第一章 ことばの射程 ことばと文化/文字の文化と声の文化/証しのかたち/この証書が目に入らぬか/記憶に対する疑い/記憶から記録へ?/声の権威/正義はつくられるもの?/ことばと身振り/「誓い」はからだを介して行なわれる/ことばと意図のせめぎあい/いまなぜ「誓い」なのか 第二章 「誓い」の場 人を試す「誓い」/神明裁判/証明手段としての「誓い」/決闘/よろめき夫人!? 第三章 人を信じる「誓い」 信頼を基盤とする社会/雪冤宣誓/「誓い」だけで犯罪は立証可能になる/宣誓補助人と証人──名誉にかけて誓う/合意形成の場/讒訴に対する不信感/『狐物語』/勝敗より和解を/「誓い」から証言へ/なくならない決闘/『最後の決闘』/正義は決闘では決められない 第四章 人を縛る「誓い」 言葉の呪縛力/『黄金伝説』/偽誓──意図はどこに?/ブルヒャルトの『教令集』/「誓い」の解除をめぐる争い──叙任権闘争/中世の秩序をゆるがす大問題/形式から意図へ/「誓い」の「内面化」/異端審問──裁かれた乙女、ジャンヌ・ダルクの断罪/「誓い」の変容を象徴する事件 第五章 「誓い」の位相 「誓い」の本質は何か/封建制の「誓い」/「誓い」の絆/『帝国年代記』/強化される「誓い」の力/「誓い」と教会/「誓い」の禁止/二種類の「誓い」/相互盟約/ザクセン戦争/神の平和/誓われた平和/ラントフリーデ/平和令の変質/「誓い」の義務/「誓い」のかたち/臣従の誓い/「誓い」からの脱却/「誓い」の拒絶・回避/「誓い」のヒエラルヒー/代行宣誓──王の不可侵性の構築/変化のきざし/戴冠式の「誓い」/テ・デウム賛歌 結び 註 あとがき 索引
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ホワイトヘッドの哲学
ホワイトヘッドの哲学
著:中村 昇
講談社選書メチエ
超難解な思考をあざやかに解説!  ホワイトヘッドの世紀は来るか!? 本書は、ホワイトヘッドという哲学者のひじょうに偏った入門書である。読者の方々が、ホワイトヘッド自身の本を手にとってみようか、という気になられることだけを目指した。他意(?)はない。わかりやすさを重視したので、かなり強引なところもあると思う。特に入門篇は、こちらの興味にぐっとひきつけて書いた。淡々と説明だけをするというのは、どうしても性にあわない。それぞれが、1話完結のエッセイとしても読めるように工夫したつもりだ。上手くいったかどうかは、保証の限りではない。もちろん全体として一貫した流れはある。いってみれば、本書全体が、ホワイトヘッドが考えたこの宇宙とおなじあり方、つまり【非連続の連続】になっているといえ・・・といいのだが。<[まえがき]より> 【目次】 まえがき 第1章 入門以前 ホワイトヘッド哲学の見取り図 1 ホワイトヘッドの世紀 2 出会い 3 なぜかくも難解なのか 4 哲学は詩である 5 【こと】と【もの】 6 ひとつの出来事とはなにか 7 電磁気的な時代 8 相対論と量子論 9 生きいきとした自然 10 具体的なもの 第2章 入門篇 ホワイトヘッド哲学そのもの 1 唯一無二のそれ(actual entity) 2 〈わたし〉ということ 3 非連続の連続 4 かかわり方(prehension) 5 知るための手がかり(eternal object) 6 フィーリングの海 7 物質と記憶 8 象徴によるつながり(symbolic reference) 9 自己超越体(superject) 10 一元、二元、多元 11 神と世界 第3章 応用篇 エポック的時間とはなにか 1 エポックとはなにか 2 純粋持続 3 刹那滅 4 エポック的時間 あとがき
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トクヴィル 平等と不平等の理論家
トクヴィル 平等と不平等の理論家
著:宇野 重規
講談社選書メチエ
「デモクラシーこそは歴史の未来である」。誕生間もないアメリカ社会にトクヴィルが見いだしたのは、合衆国という特殊性を超えた、歴史の「必然」としての平等化だった。「平等化」をキーワードに、その思想の今日的意義を甦らせる。第29回サントリー学芸賞〈思想・歴史部門〉受賞。(講談社選書メチエ) デモクラシーの理論家の新たな可能性を探るデモクラシーこそは歴史の未来である。誕生間もないアメリカ社会にトクヴィルが見いだしたものは何か。平等化をキーワードにその思想の今日性を浮き彫りにする。
合理的とはどういうことか 愚かさと弱さの哲学
合理的とはどういうことか 愚かさと弱さの哲学
著:岡部 勉
講談社選書メチエ
私たちは本当に“理性的存在”か? なぜ私たちは、不合理な行動をしたり、意志の弱さや愚かさを見せたりしてしまうのか。それらの行為は「理性」に反したものなのだろうか。この問いから、人間であるという、そのあり方の本質が見えてくる。進化の歴史から日常的な問題まで幅広いスケールで繰り広げる「合理的である」ことをめぐる思考の冒険! 【目次】 序章 不合理な存在 日常の合理・不合理という問題/社会性と計画性/犯罪と推理/人間の愚かさと弱さ/人間性の表現/用語の説明 第一章 人間の不合理・愚かさ・弱さ 1 意志の弱さと行為の選択 自己決定という問題/意志の弱さと規範性/合理性の要求/人のあり方/基礎的合理性と規範的合理性/合理性の能力の喪失/可能性と現実性 2 こころの仕組み 価値と目的の生成/意識の必要性/行為の選択装置/感情と理性の対立図式/感情と欲求のシステム/感情の役割と儀式/感情と象徴能力 3 人間性の成熟 理性の起源/目的の実現/意志の弱さと選択された行為/成熟の三つの段階 第二章 人間だけが不合理であり得る理由 1 人間性の起源 遺伝子的な仕組み/人間になる仕組み/人間と動物の連続と不連続/理性的存在/言語と理性 2 不合理性の源泉 BBQとサバンナの風景/自然発生的な小集団社会/言語の役割/集団維持システム/言語の発達/連帯と協力 第三章 不合理・愚かさ・弱さと常識の不寛容 1 私たちが求める合理性 合理的な根拠/公正さの要求/ソクラテスの問題/意見の収斂/ソクラテスのジレンマ 2 プロフェッショナリズム 専門家モデル/認知主義者/道徳的葛藤/合理的解決/自発的能力/技術的知識と合理性 3 アマチュアリズム 自然の制約/自然言語/洗練された形而上学者/秘密を解く鍵/変更を可能にする仕組み/規則に従う/推論の一般性/日常の推論 第四章 人間の自然・不自然と不合理 1 自然・不自然・不合理 人間の自然/自然主義/第二の自然/活動・行動・行為/人間に固有の活動/身体的条件/行為の記述と評価と説明 2 自然的世界と価値の世界 反自然主義/構成主義の考え方/複数の自然言語/言語使用の正しさ/外的制約/幸福の追求/反実在論/実在論の可能性/愚かな生 註 参考文献 あとがき 索引
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未完のレーニン 〈力〉の思想を読む
未完のレーニン 〈力〉の思想を読む
著:白井 聡
講談社選書メチエ
中沢新一氏推薦! この輝くような若い日本の知性は、死せるレーニンを灰の中から立ち上がらせようと試みたのだった。ゾンビではない。失敗に帰した自らの企ての廃墟に佇みながら、ここに創造された21世紀のレーニンは、永遠に続く闘争への道を、ふたたび歩みだそうとしているかのように見える。素っ気ない手つきで差し出されたこの本が、世界へのまたとない贈り物であったことにみんなが気づくまで、そんなに時間はかかるまい。 資本主義の「外部」とは? 革命観のコペルニクス的転回とは? 『国家と革命』、『何をなすべきか?』という2つのテクストから立ち現れる、「リアルなもの」の探求者の思考の軌跡。資本主義の純粋化が進む現在、レーニンという思想史上の事件を捉え直す。
東大駒場連続講義 知の遠近法(Perspectiva)
東大駒場連続講義 知の遠近法(Perspectiva)
その他:ヘルマン・ゴチェフスキ
講談社選書メチエ
「ものの見方」を考える 人気講義録第4弾 <東京大学比較日本文化論テーマ講義> ●ペルスペクティーヴァの誕生(ヘルマン・ゴチェフスキ) ●宇宙の地図づくり(船渡陽子) ●遠近法の作図理論の発展・応用・克服(加藤道夫) ●西洋近代絵画におけるパースペクティヴの変容――フランス印象派のパラダイム転換(三浦篤) ●都市写真におけるニュー・ヴィジョン――モイ・ヴェール『パリ』をめぐって(今橋映子) ●音を見る――音楽への視覚的ペルスペクティーヴァ(ヘルマン・ゴチェフスキ) ●音楽についてのペルスペクティーヴァ(徳丸吉彦) ●小説のパースペクティヴ(菅原克也) ●ドイツ・ロマン派が切り開いた世界――多様なる遠近法(池田信雄) ●文芸批評とパースペクティヴ(井上健)
日本軍のインテリジェンス なぜ情報が活かされないのか
日本軍のインテリジェンス なぜ情報が活かされないのか
著:小谷 賢
講談社選書メチエ
暗号解読など優れたインフォメーション解読能力を持ちながら、なぜ日本軍は情報戦に敗れたか。「作戦重視、情報軽視」「長期的視野の欠如」「セクショナリズム」。日本軍最大の弱点はインテリジェンス意識の欠如にあった。インテリジェンスをキーワードに日本的風土の宿痾に迫る。第16回山本七平賞奨励賞受賞作。(講談社選書メチエ) 日本はなぜ負けたのか。必敗の原理を探る。「作戦重視、情報軽視」「長期的視野の欠如」「セクショナリズム」。日本軍最大の弱点は情報戦にあった。インテリジェンスをキーワードに日本的風土の宿痾に迫る。
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戦場に舞ったビラ 伝単で読み直す太平洋戦争
戦場に舞ったビラ 伝単で読み直す太平洋戦争
著:一ノ瀬 俊也
講談社選書メチエ
「君達の指導者は嘘つきだ!」 「馬鹿共眼ヲ醒マセ」 兵たちの太平洋戦争 「死戦を越えて誤戦となり」、「日海空軍は何処へ行つたのだらうか」、「日本降伏せり」――。太平洋戦争で撒かれた無数の伝単=宣伝ビラ。ビルマで、フィリピンで、沖縄で兵士は伝単に何を思ったか? 日米「情報戦」の実態を分析しつつ、兵それぞれにとっての「戦争」を明らかにする。 【目次】 はじめに 第一章 「蒋介石最後的運命到了」 日中戦争 第二章 「馬鹿共眼ヲ醒マセ」 日本の進撃と米軍の反攻 第三章 “ISLAND OF DECEIT” ニューギニアの戦い 第四章 「身ヲモッテ太平洋ノ防波堤タラン」 マリアナ諸島の失陥 第五章 「死戦を越えて誤戦となる」 ビルマ 第六章 「来る日の悶へ」 フィリピン戦1 第七章 「砲弾悪魔の如く将君達を見出して殺す」フィリピン戦2 第八章 「日本が老人と女子供ばかりの国となってもよいか」 本土空襲・沖縄 第九章 「大東亜戦争は遂に終了致しました」 敗戦の諸相 おわりに 図版一覧 参考文献一覧 あとがき
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仏とは何か ブッディスト・セオロジー(3)
仏とは何か ブッディスト・セオロジー(3)
著:立川 武蔵
講談社選書メチエ
宗教の本質を問う 世界的碩学による大好評講義シリーズ第3弾 あらゆる宗教の根源存在である「聖なるもの」は、仏教においてどのような姿でイメージされたのか。儀礼をキーワードに、仏・菩薩と人間との関わりかたの具体的なプロセスを通じて、いよいよ仏の本質へと迫る。 【目次】 はじめに 第一章 仏のすがた 第二章 仏への行為 第三章 ヴェーダ祭式ホーマ 第四章 ブッダの涅槃 第五章 仏塔の意味 第六章 プージャー│宗教行為の基本型 第七章 ジャータカ物語と仏の三身 第八章 大乗の仏たち│阿弥陀と大日 第九章 護摩│儀礼の内化 第一〇章 浄土とマンダラ 索引
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聖徳太子の歴史学 記憶と創造の一四〇〇年
聖徳太子の歴史学 記憶と創造の一四〇〇年
著:新川 登亀男
講談社選書メチエ
「聖徳太子」はいかにつくられ、変容してきたか? 「日の本のかやうにあしくなりたるも、皆上宮太子の愚よりはしまれり」――。遺物信仰の対象として熟成した「聖徳太子」に攻撃を加える江戸の知識人。フェノロサ、岡倉天心らの古美術調査がもたらした近代の転回。『日本書紀』の原像にはじまり、現在のコンテクストが成立するまでを描く記憶と創造の物語。 【目次】 序章 「聖徳太子」か「厩戸皇子」か 第一章 「聖徳太子」の原像 1 『日本書紀』のなかの「皇太子」 2 多くの名をもつ「皇太子」 3 聖は聖を知る 4 日本国の尸解仙 第二章 「聖」はめぐる 1 「聖徳」は、やはり「聖」 2 「上宮太子」と申す聖 3 生けるが如し 第三章 攻撃される「聖徳太子」 1 「上宮太子」の愚 2 林羅山、「春秋の法」を説く 3 檄を飛ばす荻生徂徠 4 タブーに挑む片山蟠桃 5 「笑語」する平田篤胤 第四章 法隆寺の「聖徳太子」 1 奈良博覧会 2 七種の宝物 3 梵網経に随喜の涙 4 聖霊奉還と宝物献納 5 宝物献納その後 第五章 「古美術」調査から生まれた「聖徳太子」 1 美術取調 2 仏教のコンスタンティヌス大帝 3 不世出の英傑厩戸皇子 4 近代の「聖者」 第六章 子どもたちの「聖徳太子」 1 天皇の年代記 2 小さな「聖徳太子」伝の出現 3 小さな「聖徳太子」伝の完成 4 「国民の覚悟」を担う 5 ゆるんだ政治の立て直し 終章 「聖徳太子」とは何か 参考文献 あとがき 主要人名・書名索引
中国現代アート 自由を希求する表現
中国現代アート 自由を希求する表現
著:牧 陽一
講談社選書メチエ
激動する歴史の中で人はいかに表現したか 文化大革命、毛沢東崇拝の嵐から「社会主義市場経済」へと、激動する現代史の中で、中国のアーティストたちはいかにして自由な表現を実現させてきたのか。いまや世界でもっとも注目される中国現代アートの展開をたどり、作品の数々を紹介。政治や経済の文脈からは決して知ることのできない、現代中国のエネルギーの根源を体感する! 【目次】 はじめに 第一章 中華伝統と革命伝統 中国現代アート史概観 1 二重の「負の遺産」と二つの衝撃 2 毛沢東様式の成立まで 3 文革打破 自由への宣言 4 試行錯誤の現代アート 第二章 解放を希求する表現 中国のパフォーマンス・アート 1 北京東村のパフォーマンス・アート 2 パフォーマンスと当局の介入 3 桎梏からの解放 第三章 「社会主義市場経済」下のアート 1 中華伝統と革命伝統の客体化 2 中国キッチュ 3 行為としての革命の記憶 4 大資本主義の行く末 第四章 描く女性、描かれる女性 「鉄の娘」からイノセントへ 1 プレモダンからモダンへ 商品化される女性と女性像 2 毛様式の女性たち 3 鉄の娘、アートの死滅 4 「星星」の女たち 5 イノセントからの女性アート 第五章 変革と保守 二〇〇〇年代の「前衛」アート 1 「前衛」の変容 2 アート工場の誕生、そしてミニマリズムへ 3 紅い激情への誘惑 「左手と右手」展 4 アートの異化効果 5 脳の中の自由 上海ビエンナーレ2004 6 新たな思想 終章 「世界」に参入する中国現代アート 1 救済としてのアート 2 「世界」と交わる 3 アートと自由 あとがき 主な参考文献・美術展 索引
大江戸調査網
大江戸調査網
著:栗原 智久
講談社選書メチエ
江戸の世界にアクセスしよう! 単位に貨幣に衣・食・住……。江戸の世界のあれこれを調べるための現代の諸書と江戸時代に書かれた江戸随筆を“江戸レファレンスブック”として紹介。読んで楽しく、自分で調査してなお楽しい、画期的「ツール本」の誕生! 江戸を知る手がかりが、すべてここにある! 衣食住、時間、空間、職業、言葉……。江戸の生活を知るには、どんな資料にあたればよいか。江戸随筆から現代の膨大な関連書籍の海を探索するための、読む「調査本」。 【目次】 序章 江戸レファレンスブック・江戸随筆へようこそ レファレンスの意味 質問者と図書館の関係 ツールとルーツ 江戸レファレンスブック 江戸随筆 江戸随筆の集成本 日本十進分類法(NDC) 江戸レファレンスブックの分類 第一章 単位 度量衡 長さの単位 かさの単位 重さの単位 尺貫法 置きかえてみる 距離・面積の単位 第二章 貨幣 種類と単位 両替(交換比) 一両・一文の価値 第三章 暦・時 太陰と太陽 大・小の月、閏月 年中行事 十干・十二支 時刻 不定時法 時計・時の鐘 第四章 衣 左衽と右衽 武士の衣 町人の衣 化粧 髪形 かぶりもの はきもの 第五章 食 外食(屋台) 蕎麦 うなぎ すし 天ぷら けんどん 初鰹 調味料 菓子 嗜好品 食の辞(事)典 第六章 住 明暦の大火前と大火後 人口比と面積比 武士の住 町人の住(裏長屋) 上水道 燃料 照明道具 冬の生活道具 夏の生活道具 図版・写真入りの道具本 第七章 生業 多種多様な生業 物売り・職人の絵 おもしろい物売り 看板 第八章 言葉 聞かない言葉・聞く言葉 言い方 歌舞伎用語 第九章 地図・絵図 現在との比較 江戸図 切絵図 目録 第一〇章 辞(事)典・年表 江戸の辞(事)典 全巻ものの日本史辞(事)典 一冊ものの日本史辞(事)典 人名辞(事)典 年表 終章 新世紀~江戸開府四〇〇年の江戸レファレンスブック かたちを変えたもの 辞(事)典・年表 あとがき
楊貴妃になりたかった男たち <衣服の妖怪>の文化誌
楊貴妃になりたかった男たち <衣服の妖怪>の文化誌
著:武田 雅哉
講談社選書メチエ
男は女に 女は男に 中国人の奇妙な情熱 ヘンテコな服装は妖怪である。世が乱れ礼が失われた証拠である。だが周恩来も女装した。美少年もむくつけき大男も、中国の歴史は女装に身も心も捧げた男たちで満ちている。悠久の大陸を横断する奇妙な妖怪=服妖に見る、知られざる中国の素顔。 【目次】 第一章 楊貴妃になった男たち 第二章 服妖 衣服のモンスター 第三章 麗人たちは男装する 第四章 男まさりを恐れる系譜 第五章 女装者たちの系譜 第六章 陰陽転倒の諸相 生物学的性転換の記録 第七章 男扮女装の諸事情 第八章 同性愛文学と女装趣味 第九章 近代中国の木蘭たち 清末男装事件図絵 第一〇章 女装者たちの事情 清末女装事件図絵 I 第一一章 趣味の女装者たちと性転換 清末女装事件図絵 II 第一二章 女装とパフォーマンス 反串・演劇・映画 第一三章 このごろ流行りの男扮女装 注 参考文献 図版出典 あとがき 索引
文学の誕生 藤村から漱石へ
文学の誕生 藤村から漱石へ
著:大東 和重
講談社選書メチエ
漱石は軽文学の王だった! 日露戦争は、日本の近代文学が成立するうえで、大きなターニングポイントになった。「日露戦後」文学とは、どのようにつくり出され、社会に定着していったのか。島崎藤村、国木田独歩、田山花袋、小栗風葉、夏目漱石という、当時を代表する5人の作家に焦点を当て、それぞれの評価の転変を詳細に跡づけながら、近代日本の歴史の中で、文学が文学となった時を考証する、俊秀の鮮烈なデビュー作。 【目次】 序章 文学の新紀元 日露戦後新文学の勃興 一 文学の新紀元 二 新文学と旧文学 三 新しい文学評価の座標軸 第一章 技術批評を超えて 島崎藤村『破戒』の表層と深層 一 「鬱勃たる精神」 二 技術批評 テーマ・素材・人物造型・構成・文章 三 作家への期待と作品への失望 四 作家の真面目な態度 技術批評を超えて 五 『破戒』の受難と復活 第二章 〈自己表現〉の時代 〈国木田独歩〉を読む〈私〉 一 「僕は魔法使ひではない」 二 悪文と主観の突出 「小説との命名さへ、頗る疑はしきもの」 三 作品から作者へ 「小説以上の作物」 四 作品から読者へ 〈国木田独歩〉を読む〈私〉 五 「独歩は独歩である」 第三章 読むことの規制 田山花袋『蒲団』と作者をめぐる思考の磁場 一 「空想に耽つて立尽した時雄」 二 〈告白小説〉としての『蒲団』 「大胆なる懺悔録」 三 〈客観小説〉としての『蒲団』 「客観の描写」 四 作者をめぐる思考の磁場 「自意識的な現代性格の見本」 五 『蒲団』と私小説論争 第四章 文学の〈裏切り〉 小栗風葉をめぐる・文学をめぐる物語 一 「従来の写実派では飽足らない」 二 内面の作品 活躍する「主観的」風葉 三 表面の作品 没落する「客観的」風葉 四 文学の〈裏切り〉 風葉と代作 五 「アアチスト」と「アリチザン」 第五章 軽文学の王・夏目漱石 あるいは明治四十年、文学の自己同一化 一 「美しい感じ」 二 軽文学の王・夏目漱石 三 茶番作家・夏目漱石 四 争奪戦の舞台裏 「作家と作物を混同する勿れ」 五 「近眼鏡」を掛けられて 終章 文学のための物語 文学概念・文学史 一 文学概念の規定 二 文学史の記述 三 文学のための物語 典拠・引用について 注 あとがき