講談社学術文庫作品一覧

漫画が語る明治
漫画が語る明治
著:清水 勲
講談社学術文庫
漫画は時代のタイムカプセル! 好奇・反骨・愛情に満ちた眼に近代日本はどう映ったか 漫画は世相を写したタイムカプセルである! 洋装を受け入れながらチョンマゲを捨てきれない人々。徹底的に諷刺される伊藤博文・黒田清隆ら、為政者たち。抑圧され嘲笑される女性たち。そして公権力と戦う漫画家たち――。明治期の傑作漫画百余点を通して、激変する社会の中での戸惑いと好奇、反骨と愛着が交錯する「明治」という時代を活写する。
ゴッホ
ゴッホ
著:アルバ-ト・J・ル-ビン,訳:高儀 進
講談社学術文庫
闇から光へ 情熱の画家の心と作品の軌跡 「闇から光へ、人生は天国へ到る巡礼の旅」。 25歳の伝道師ゴッホは、教会で人々にこう説教した。心の内部に巣喰う深い悲しみと強い孤独感。ゴッホは、自己との激しい闘いを個性的な絵へと昇華させていった。暗鬱で寂寥感迫る作品、燃え上がるような情熱的な画風。本書は、人間の魂の読み手が1つ1つの絵を丹念に読み、天才画家の心の秘密と絵のもつ美しさを見事に刳(えぐ)り出す。 ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの生涯は、根深いメランコリーと孤独感を抑制し、軽減し、美化しようとする、あるいは否定しようとする果てしない闘いだった。宗教と芸術とは、この目的のために用いたふたつの手段にほかならない。メランコリーと孤独感に対する闘いは彼の人格形成に影響を与えたばかりではなく、創造への意欲を刺戟し、作品の内容とスタイルを決定するのに大きく作用した。――<本書「1 ヴィンセントの説教」より>
天下統一と朝鮮侵略
天下統一と朝鮮侵略
著:藤木 久志
講談社学術文庫
信長と一向宗、秀吉と朝鮮 統一政権への激烈な戦いの歴史 撫(なで)切り・根切りを命じ、一向一揆との徹底的対決の過程で、自らを統一権力として形作ってゆく信長。一揆鎮圧の完成後関白として「日本の治」を唱える秀吉。統一政権を目ざし抜きん出た2人の権力者が抱いた共通の構想は何か。下剋上の組織化が孕んでいた「唐国まで」という大陸侵略の衝動を解き明かし、中世末~近世初めの激動の歴史を捉えなおす。 いき(一揆)おこり、其まゝ前田又左衛門尉殿、いき千人はかり、いけとり(生捕)させられ候也。御せいはい(成敗)ハ、はつつけ、かまにいられ、あふられ候哉。如此候。一ふて(筆)、書きとゝめ候。(中略)蜂起した一揆のうち、千人ほどが前田軍に生捕りにされ、はりつけ・かまいり・焼殺しにあった。この虐殺された一揆びとの怨念をのちの世に語りついでほしいと刻む、凄絶な呪い文が浮かびあがってきたのであった。――<本書より>
オーストリア皇太子の日本日記
オーストリア皇太子の日本日記
著:フランツ・フェルディナント,訳:安藤 勉
講談社学術文庫
本邦初訳!「サラエボの悲劇」の主人公が綴る日本紀行 長崎―熊本―下関―宮島―京都―大阪―奈良―大津―岐阜―名古屋―宮ノ下―東京―日光―横浜 1892年末、オーストリア帝国帝位継承者、皇太子フェルディナントは世界周遊の旅に出た。翌年長崎に到着した彼は東京を目ざすが、その途次、各地で日本文化との出会いを堪能しつつ、のちにウィーン民族学博物館日本部門の礎をなす18000点もの美術品等の蒐集も行う。21年後、サラエボで暗殺される悲運の皇太子若き日の日本紀行。 園内は無数の提灯がまるで妖精のようにきらきらと輝き、真昼のような光に満ちあふれていた。日本人というのは、まことに照明の達人だ。簡素きわまりない装置を巧みに用い、すばらしい効果を生み出す術をじつによく心得ている。(熊本クラブの庭園にて)
電子あり
物語による日本の歴史
物語による日本の歴史
著:石母田 正,著:武者小路 穣
講談社学術文庫
英雄や庶民の物語が日本の姿を描き出す 若き日の網野善彦氏が編集担当した名著 国の始まりを説く国引き・国作り・国生みの物語。山や川に宿る神々たちの物語。国を讃え家族を想う万葉の歌。王朝時代の伝奇的あるいは絢爛たる物語。時代時代の想像力が描き出す日本の姿。古事記・風土記から源氏・竹取・平家物語まで、古典文学の中に生きる英雄や庶民の活動を読むことで歴史が浮かび上がる。 本を読む喜びを知るようになった頃、網野さんは私に歴史学の最初のレッスンをほどこしてくれた。「おみやげだよ」と言って手渡されたのは、むしゃこうじみのる(武者小路穣)と石母田正の書いた『物語による日本の歴史』(1957年)という本だった。「日本史でも、ようやくこういう本が書かれるようになったのです」と、網野さんは興味深げにその本をのぞき込んできた父に、説明をはじめた。――<中沢新一『僕の叔父さん 網野善彦』集英社刊より>
太平記<よみ>の可能性
太平記<よみ>の可能性
著:兵藤 裕己
講談社学術文庫
太平記よみの語りは、中世・近世を通じて人びとの意識に浸透し、天皇をめぐる2つの物語を形成する。その語りのなかで、楠正成は忠臣と異形の者という異なる相貌を見せ、いつしか既存のモラル、イデオロギーを掘り崩してゆく。物語として共有される歴史が、新たな現実をつむぎだすダイナミズムを究明し、戦記物語研究の画期となった秀作、待望の文庫化。 これほど、読むたびに知的興奮を覚えさせられる本は、めったにない。10年前、兵藤さんからこの本を贈られ、一気に読んでそのスリリングな議論展開のとりこになって以来、『太平記<よみ>の可能性』は、文字通り私の座右の書になった。そのときどきの私の関心に応じて、さまざまな読み方ができ、そのたびに啓発される。この本自体、豊かな<よみ>の可能性にみちているのだ。――<川田順造「解説」より> 〔原本:1995年刊行の講談社選書メチエ〕 第1章 太平記の生成 第2章 もう1つの「太平記」 第3章 天皇をめぐる2つの物語 第4章 楠合戦の論理 第5章 近世の天皇制 第6章 楠正成という隠喩(メタファー) 第7章 『大日本史』の方法 第8章 正統論から国体論へ 第9章 歴史という物語
電子あり
工藝の道
工藝の道
著:柳 宗悦
講談社学術文庫
日用雑器の中に美を発見 民藝運動始まりの衝撃の書 伊賀の種壺、朝鮮の飯鉢、下手物(げてもの)にこそ美が存する。宗教学者から民藝研究家に転じた柳宗悦は、工藝美を提唱、全く新しい美の世界を切り拓き、衆目を驚かせた。健康の美、無心の美、他力の美、恩寵の美。工藝は奉仕の道、工藝において衆生は救いの世界に入る。宗教的表現を鏤(ちりば)め、熱く明快に工藝美を語る本書は、人々に深い感銘と強い衝撃を与えた柳美学出発の書である。 民器こそは工藝の主要な領域である。人々はそれを「雑器」といい「下手物」と蔑んでいるが、……渋さの美を知りぬいていた初代の茶人たちは、貴重な彼らの茶器を雑器からのみ選んだではないか。古伊賀の水指は種壺でさえあった。あの茶碗は朝鮮の飯鉢であった。上手の華麗な美で、よく「渋さ」の域に達したものがあろうか。もとより雑器のみが工藝ではない。だが雑器において最も渋い最も自由な生命の美が冴えるのを、誰も否定することができぬ。――<本書「正しき工藝」より>
正法眼蔵(八)全訳注
正法眼蔵(八)全訳注
著:増谷 文雄
講談社学術文庫
人間の生き方を徹底的に突き詰め考えた道元は、練り上げた言葉で、仏教の本道とは何かを説き進める。諸法実相を究め仏の境地に至る道を示す「唯仏与仏」。晩年の道元の心境がにじみ出ている「供養諸仏」。坐禅は最上無為の妙術とひたすら坐禅を勧める「弁道話」。精緻な思索を重ね、その精華を印象深く語り、私たちを仏法の深みへと誘(いざな)う『正法眼蔵』は不朽の名著である。
江戸娯楽誌
江戸娯楽誌
著:興津 要
講談社学術文庫
軽業、落語、万歳、花見、蛍狩り……多彩な娯楽が彩った江戸 江戸は娯楽の宝庫であった。軽業(かるわざ)、曲独楽(きょくごま)、のぞきからくり等、修練の極をしめす街頭の芸人の至芸や珍奇さを売り物にした見世物・大道芸、宝引(ほうび)きや蛍狩りといった四季折々の好楽、大山詣りや富くじ等の信仰と結びついた行事や遊び……。江戸の暮らしに潤いとリズムを与えた娯楽の数々を、庶民の飾らない心の内を映し出す小咄・川柳を配して紹介する。
紀貫之
紀貫之
著:藤岡 忠美
講談社学術文庫
『古今集』撰進1100年 日本美を創出した偉才の歌と生涯 我が国最初の仮名文日記『土佐日記』の作者、また、『古今和歌集』の編者で、その代表的歌人、紀貫之。国風文化を隆盛に導いた平安期文人は、いかなる生涯を送り、日本文学史にどんな刻印を残したのだろうか。余情妖艶な風趣、花鳥風詠の和歌、彫琢された日本語。日記文学研究の第一人者が、先学の論考と著作を踏まえ、独自の視点から日本人の美意識誕生の秘密を解き明かす。 日本人特有の四季美意識やこまやかな心情表現の型や優雅な歌ことばの数々を創り出した『古今和歌集』ほど、古典の名にふさわしい作品は他にないといえよう。その『古今和歌集』を編集した中心人物が紀貫之である。彼は「仮名序」で和歌文学の本質と歴史について初めて明言し、理想の和歌を「心」だけでなく「言葉」との調和に求めた。晩年には、『土佐日記』を書いて仮名文日記という最初の試みに挑み、明るいユーモアと沈痛な心情とを旅日記の虚構をかりて巧みに表現した。――<本書より>
昭和天皇(下)
昭和天皇(下)
著:ハ-バ-ト・ビックス,監:吉田 裕,訳:岡部 牧夫,訳:川島 高峰,訳:永井 均
講談社学術文庫
「意思なき君主」か「意思ある大元帥」か 日本人にとっての天皇とは 2001年ピュリッツァー賞受賞作 広がる戦火、そして敗戦。天皇は帝国日本の御輿にすぎなかったのか、それとも軍事情報に精通し作戦指導にも関与する、実質を伴う大元帥だったのか。戦後の占領政策と昭和天皇像が「日米合作」によって作られたことを解明し、日本の戦後史におけるアメリカの役割を鋭く批判。そして天皇は「意思なき君主」か否かという、近現代史最大のテーマに迫る。
ハンニバル
ハンニバル
著:長谷川 博隆
講談社学術文庫
エブロ河を越えアルプスを越え、南イタリアの地カンナエでローマ軍団を打ち砕いたハンニバル。戦いに勝ちながら、最終的にローマという果実を刈り取らなかったのは何故なのか――。地中海世界の覇権をかけて大国ローマを屈服寸前まで追いつめたカルタゴの勇将、アレクサンドロス・カエサル・ナポレオンに比肩する天才の戦略と悲劇的な生涯を描く。(講談社学術文庫) 大国ローマと戦ったカルタゴの英雄の生涯。地中海世界の覇権をかけて激突した古代ローマとカルタゴ。大国ローマを屈服寸前まで追いつめたカルタゴの将軍ハンニバルの天才的な戦略と悲劇的な生涯を描く。
電子あり
海をわたる蝶
海をわたる蝶
著:日浦 勇
講談社学術文庫
海面で昼寝する蝶、18億匹の大移動 謎に満ちた蝶の生態 私たちの周りで美しく舞いながら飛ぶ蝶。人間と蝶の間には、密接で深い、意外な関係が存在する。1分間に数千匹が山を越え移動するイチモンジセセリ。日本列島をさまよいながら生きるウラナミシジミ。外国から海を越えてくる蝶、また、海面で昼寝をする蝶。なぜ旅をするのか、どのくらいの距離を動くのかなど、本書は、謎に満ちた蝶の不思議な生態を解き明かす。 「先生、イチモンジセセリが、今度はすごい数ですよ」。なるほど昨日とは桁違いの移動である。あるものは低く、露にぬれた草すれすれに、あるものは高く3メートルほどの所を、波打つようにリズミカルに、西へ西へと飛んでゆく。この大移動は数の盛衰こそあったが、午後2時ごろ私たちが下山するまで続き、最盛期には牛島君の可視範囲で1分間に3000~4000匹に達した。いったい、どれだけの蝶が葛城山を越えて奈良側から大阪側へ移動したであろうか。――<本書第1章より>
イソクラテスの修辞学校
イソクラテスの修辞学校
著:廣川 洋一
講談社学術文庫
イソクラテスの思想の真髄 「善き言論」は「善き思慮」のしるし 古代ギリシアの教養理念に一大潮流を形成したイソクラテス。プラトンらが教養の原理に数理諸学や哲学を置いたのに対し、彼は弁論・修辞学を対置し、教育を実践した。やがてイソクラテスを源泉とする修辞学的教養はローマ、ルネサンスと受け継がれ、遠く近世にまで多大な影響を及ぼすことになる。イソクラテスの理想と教育を生き生きと描いた好著。
電子あり
昭和天皇(上)
昭和天皇(上)
著:ハ-バ-ト・ビックス,監:吉田 裕,訳:岡部 牧夫,訳:川島 高峰
講談社学術文庫
神格化されたベールの下の人間像に迫る 初めて解明された昭和天皇像 2001年ピュリッツァー賞受賞作 君主としての人間形成はどのようになされたのか。明治天皇を範とする帝王教育や大元帥になるための軍事教育を受けた皇太子時代から、即位を経て政治的君主へと変貌していく過程を、新たに発表された膨大な資料をもとに克明に描出する。神秘のベールに包まれた昭和天皇をひとりの人間としてとらえ、実像に迫る出色の研究書。ピュリッツァー賞受賞作。
日本文化の形成
日本文化の形成
著:宮本 常一
講談社学術文庫
日本列島を徹底踏査した民俗学の巨人が、『古事記』『日本書紀』『万葉集』『風土記』などの古代文献を読み返し、それらと格闘の末、生まれた日本文化論。稲作を伝えた人びと、倭人の源流、畑作の起源と発展、海洋民と床住居など、東アジア全体を視野に入れた興味深い持論を展開する。長年にわたって各地の民俗を調査した著者ならではの着想を含む遺稿。(講談社学術文庫) 民俗学の巨人が遺した日本文化の源流探究。生涯の実地調査で民俗学に巨大な足跡を残した筆者が、日本文化の源流を探査した遺稿。畑作の起源、海洋民と床住居など、東アジア全体を視野に雄大な構想を掲げる。
電子あり
正法眼蔵(七)全訳注
正法眼蔵(七)全訳注
著:増谷 文雄
講談社学術文庫
道元の言葉は、何故人の心を揺り動かすのだろうか。袈裟や鉢盂を伝持する意味を深く追究した「鉢盂」。虚空をつかむことができるかどうかを論じ合う「虚空」。仏教者の融通無礙なる境地を語る「王索仙陀婆」。仏道の要諦は経巻や仏祖が正伝する知識に裏打ちされた自証自悟にこそあると説く「自証三昧」。綿密でかつ噛んで含めるように仏法を説く巻々を収める。
中世都市 鎌倉
中世都市 鎌倉
著:河野 眞知郎
講談社学術文庫
世界遺産登録を目指し、発掘調査の進む鎌倉。武家屋敷跡、陶磁器、銭貨等、出土した遺物は、国内はもとより遠く中国からも膨大な物資や技術を引き寄せ、呑み込んだ消費都市鎌倉の実相を物語る。文献史料だけでは見えてこない武士の栄華の実態、庶民生活、食文化等々、興味深い事象を考古学的洞察で究明、読者を中世史学の新たなフィールドへと誘う。
北京物語
北京物語
著:林田 槇之助
講談社学術文庫
千年の都に躍動する庶民と英雄達の実像 10世紀、契丹(きったん)人が都城を構えて以来、数々の王朝の都として繁栄した北京。元の都・大都を築いたフビライ、異民族支配を脱して紫禁城の主となった明の永楽帝など権力者の野望に迫り、『金瓶梅』『紅楼夢』などの文学から明・清時代の世相を描出。千年の都に躍動する庶民と英雄たちを活写する一方、西太后と頤和園(いわえん)など、名所旧跡の来歴も興味深くたどる。 マルコ・ポーロが描いた大都の繁栄、壮麗な紫禁城を舞台にした明・清時代の政治抗争など、10世紀に遼が都城を構えて以来の都の栄光と、フビライ、永楽帝、康熙帝など権力者の素顔を活写。また『金瓶梅』『紅楼夢』などの小説から明・清時代の世相を読み取り、老舎の作品から日中戦争に翻弄された庶民の哀感も痛切に描く。万里の長城、明の十三陵、天壇など名所旧跡の由来も解説した、北京を知るための必読書。
関東軍
関東軍
著:島田 俊彦
講談社学術文庫
日露戦争直後から太平洋戦争終結までの40年間、満州に駐屯し、日本の対中国政策の尖兵的役割を演じた関東軍。陸軍中央の統制に背いて独走し、軍事的衝突を策した彼らの行動は、日本の運命に重大な影響を及ぼした。張作霖爆殺事件や満州事変、ノモンハン事件等の歴史的大事件を中心に、膨大な史料に基づいて、関東軍の歴史と独走の実態を描き出す。(講談社学術文庫) 対中国政策の尖兵となった軍隊の実像に迫る。日露戦争直後から太平洋戦争終結までの40年間、満州に駐屯した関東軍。時代を転換させた事件と多彩な人間群像を通して実証的に描き出す、その歴史と性格、実態。
電子あり