講談社学術文庫作品一覧

熊野詣
熊野詣
著:五来 重
講談社学術文庫
院政期の上皇が、鎌倉時代の武士が、そして名もなき多くの民衆が、救済を求めて歩いた「死の国」熊野。記紀神話と仏教説話、修験思想の融合が織りなす謎と幻想に満ちた聖なる空間は、日本人の思想とこころの源流にほかならない。仏教民俗学の巨人が熊野三山を踏査し、豊かな自然に育まれた信仰と文化の全貌を活写した歴史的名著が、待望の文庫化。 仏教民俗学の巨人の大いなる足跡 神道・仏教・修験が融合する謎と幻想の聖なる空間 院政期の上皇が、鎌倉時代の武士が、そして名もなき多くの民衆が、救済を求めて歩いた「死の国」熊野。記紀神話と仏教説話、修験思想の融合が織りなす謎と幻想に満ちた聖なる空間は、日本人の思想とこころの源流にほかならない。仏教民俗学の巨人が熊野三山を踏査し、豊かな自然に育まれた信仰と文化の全貌を活写した歴史的名著を、待望の文庫版に。 熊野の謎はまた人の心の謎でもある。この謎は古代から中世の庶民が、われわれにむかってかけた謎である。合理主義に徹した文化人、知識人の心は、合理主義の公式で解ける。しかし非合理的、前論理的な庶民の心は、公式では解けない。熊野の謎はそのような庶民の心の謎である。それは神道理論も、仏教理論も、美学理論もうけつけない。ただわれわれは熊野三山の歴史と遺物を虚心にみつめ、熊野三山の一木一石一径をあじわうよりほかはないのである。――<本書「むすび」より>
電子あり
人類の進化史
人類の進化史
著:埴原 和郎
講談社学術文庫
500万年前、二本足で直立歩行する猿人が出現し、現代のヒト(ホモ・サピエンス)へと至る遥遠な進化の旅を始めた。著者は、形質・環境・遺伝学等にわたる広汎な知識と卓越した推理力で、20世紀に達成された数々の発見や研究を検証、進化と滅亡を繰り返したヒトのドラマを鮮やかに描出する。進化の謎解きの面白さで魅了しつつ、人類が向かうべき方向をも示唆した労作。
江戸城の宮廷政治
江戸城の宮廷政治
著:山本 博文
講談社学術文庫
江戸城大広間は大名たちにとって藩の命運をかけた戦場だった。江戸に屋敷を構え、席を江戸城に与えられた大名は、幕閣や諸大名との交際に奔走、情報収集と友好関係の構築に尽力した。大坂の陣、転封、島原の乱と藩主の急死。うち続く危難に肥後熊本の細川藩はどう対処したか。藩主父子が残した膨大な往復書簡から幕藩体制確立期の権力抗争を活写する。
諸子百家
諸子百家
著:浅野 裕一
講談社学術文庫
春秋・戦国の乱世に自らの理想を実現すべく諸国を巡った諸子百家。快楽至上主義の楊朱と兼愛の戦士・墨子の思想がなぜ天下を二分するほど支持されたのか。五徳終始説と大地理説で新王朝の出現を促進した鄒衍(すうえん)の雄大な構想、「白馬は馬に非ず」とした公孫龍(こうそんりゅう)の緻密な論理とは。新出土資料で判明した老子、孫子、孔子などの実像も、興味深く説き明かす。(講談社学術文庫) 春秋・戦国を彩る思想家たちの才智と戦略。戦乱の世に自らの構想を実現すべく諸国を遊説した諸子百家。利己と快楽優先を説いた楊朱、精緻な論理で存在の実体を問う公孫龍から老子、孔子までその実像に迫る。
電子あり
大久保利通
大久保利通
監:佐々木 克
講談社学術文庫
難局への対応から家庭での素顔まで 維新の指導者像を語る貴重な証言集 維新の立て役者、大久保利通の実像を伝える証言集。明治43年10月から新聞に96回掲載、好評を博す。討幕、新政府樹立、近代化への政策施行、西南戦争……。政治家としての姿から西郷への思いや家庭での素顔まで、興味深い秘話、逸話、情味溢れる憶い出が語られてゆく。強い責任感、冷静沈着で果断な態度、巧みな交渉術など多様で豊かな人間像がゆかりの人々の肉声から蘇る。 本書は、大久保利通に身近に接した人々によって語られた、いわば肉声で綴られた大久保メモリーである。『報知新聞』の記者松原致遠が、それぞれの人物にインタビューして記事にまとめたもので、時には会話体で、時にはモノローグのかたちで、大久保利通についての想い出が語られる。……『報知新聞』には明治43年10月1日から(翌年4月17日まで)、全部で96回にわたって掲載されたものである。――<本書「解説」より>
電子あり
経験と教育
経験と教育
著:ジョン・デュ-イ,訳:市村 尚久
講談社学術文庫
子供自身の経験を重視 デューイの教育論の掉尾を飾る名論考 子どもの才能と個性を切り拓く教育とは?子ども自身の経験が好奇心を喚起し、独創力を高め、強力な願望や目的を創出し、能動的成長を促す。経験の連続性と相互作用という2つの原理を軸に、経験の意味と教師の役割を深く分析した本書は、デューイの教育思想を凝縮した名論考であり、生きた学力をめざす総合学習の導きの書でもある。
電子あり
五代と宋の興亡
五代と宋の興亡
著:中嶋 敏,著:周藤 吉之
講談社学術文庫
唐末五代の動乱を制した北宋の皇帝権力は、科挙に合格した文人官僚が支えた。しかし北方の遼や西夏、金への防備は財政を悪化させ、大地主・大商人と結託した官僚の悪政も新法・旧法の党争を招き北宋は滅亡。杭州を都とした南宋は、金と和約後開発が進み、都市は空前の繁栄を示す。朱子学や印刷術など文化・科学の発展も目覚ましい宋代300余年の興亡。
古代朝鮮
古代朝鮮
著:井上 秀雄
講談社学術文庫
檀君神話、広開土王陵碑、任那日本府、白村江の戦いと唐との戦争――。中国・日本との軋轢と協調を背景に統一への歩を進めた古代の朝鮮。旧石器時代から統一新羅の滅亡までの朝鮮半島の政治・社会・文化とはどのようなものだったのか。『三国史記』『三国遺事』をはじめとする文献類の精査によって、その実像を鮮やかに復元した古代朝鮮史研究の傑作。(講談社学術文庫) 古朝鮮、三国時代、そして統一新羅へ 激動の朝鮮半島を生きた人々の歴史 檀君神話、広開土王陵碑、任那日本府、白村江の戦いと唐との戦争――。中国・日本との軋轢と協調を背景に統一への歩を進めた古代の朝鮮。旧石器時代から統一新羅の滅亡までの朝鮮半島の政治・社会・文化とはどのようなものだったのか。『三国史記』『三国遺事』をはじめとする文献類の精査によって、その実像を鮮やかに復元した古代朝鮮史研究の傑作。 “日本”の視点からのみ“朝鮮”を見る姿勢は誤っている。朝鮮文化は日本文化を説明するためにのみ利用されてはならない。その独立した歴史展開、さらに、古代の東アジア全体の国際関係の中への位置づけ、それをぬきにして朝鮮古代史への正しいアプローチはないと思う。そして、そうした観点からする歴史的探索・実証の上に、新たなる日本史、新たなるアジア史、さらに新たなる世界史像の形成がなされていくにちがいない。――<本書「原本あとがき」より>
電子あり
海舟語録
海舟語録
著:勝 海舟,編:江藤 淳,編:松浦 玲
講談社学術文庫
奔放自在、縦横無尽!幕末・維新を語り、明治の政局を評する海舟の炯眼と叡智 官を辞してなお、陰に陽に政治に関わった勝海舟。彼は晩年、ジャーナリスト巌本善治を相手に、幕末明治の政情や人物等について奔放に語った。本書では、『海舟餘波』『海舟座談』等として知られるそれらの談話を詳細に検討、日付順に再構成し、海舟の人柄や、その炯眼、叡智を偲ばせる肉声の復元を試みた。『氷川清話』の姉妹編をなす貴重な歴史的証言集。 これは、まったく新しい観点から編集した勝海舟の『語録』である。かつて巌本善治が編纂した『海舟餘波』、『海舟座談』に収められている談話を、あたう限り初出に遡って検討し、配列をあらため、かつ適切な注を点した。時代を超えて語りかけて来る海舟の叡智は、かくして歴史のなかにも正しく位置づけられるようになったのである。――<本書「まえがき」より>
正法眼蔵(四)全訳注
正法眼蔵(四)全訳注
著:増谷 文雄
講談社学術文庫
中国の高僧、如浄禅師の膝下で学び、得悟した道元は、生命(いのち)を吹き込んだ言葉で、人間の真の生き方を語る。心と身をもって仏道に励む大切さを説く「身心学道」。この世の時間と空間を超越して存在する悟りの世界とは何かを記す「夢中説夢」。時々刻々と躍動し続けている生と死の全風景を明かさんとする「全機」と「都機(つき)」。その他、「光明」「道得」「空華」などの巻々を収録。
落 語
落 語
著:興津 要
講談社学術文庫
落語の歴史を展開する芸と芸人の四百年史 戦国期、武将のために御伽衆(おとぎのしゅう)が語った滑稽話を淵源とする落語。それは時を経て庶民のものとなり、江戸では江戸中期に円生、幕末・明治期に円朝らの名人を輩出、隆盛の礎を築いた。明治以降、マスコミの発達に伴って落語の人気は全国的となり、多様な芸風を生みつつ、一層の繁栄へと向かう。笑いを求める民衆が育んだ話芸、その芸と芸人の四百年史。
孟 子
孟 子
著:貝塚 茂樹
講談社学術文庫
聖人の孔子と並ぶ賢者として孔孟と呼ばれ、その著述は『論語』と同様に四書のひとつとされる孟子。魏、燕、斉などの七強国が覇を争った戦国時代に、小国鄒(すう)に生まれ、諸国をめぐって説いた仁政とは何か。人材登用の要諦などあるべき君子像の提言や井田制など理想国家の構想から、人間の本性を考察したうえの修身の心得まで、賢者の教えを碩学が解説する。
古代インド
古代インド
著:中村 元
講談社学術文庫
苛酷な風土と東西文化の融合 仏教はこの地に興り、隆盛を極め、消滅した レンガ造りの下水溝や大浴場を備えたモヘンジョ・ダロに代表される高度な都市文化を有したインダス文明。アジャンターの壁画に往時を伝える絢爛華麗なグプタ文化。この地に興り、隆盛を極め、消えた仏教。苛酷な風土と多様な民族・東西文化の融合が生み出した古代インド文明の全貌と、悠久の時を生きる民衆の姿を、仏教学の泰斗が鮮やかに描き出す。
正法眼蔵(三)全訳注
正法眼蔵(三)全訳注
著:増谷 文雄
講談社学術文庫
道元は、精緻をきわめた思索と簡勁を尽くした表現で、仏道は無窮と、間断なき行の大切さを訴え続けた。趙州従しん(じょうしゅうじゅうしん)や天童如浄などの古(いにしえ)の仏者たちの行状を紹介し、修行の意味を深く鋭く論究した「行持」の巻。他宗教で盛んに力説・主張する奇蹟や不思議にではなく、日常茶飯の中にこそ大事があると説く「神通」の巻。真の仏教とは何かを突き詰め論じた巻々を収録する。
絵で見る幕末日本
絵で見る幕末日本
著:エメェ・アンベ-ル,訳:茂森 唯士
講談社学術文庫
細密で美しい挿画140点 幕末の江戸・長崎・京都などが鮮やかに蘇る 鋭敏な観察力、才能豊かな筆の運び。1863年4月、日瑞修好通商条約締結のため来日したスイス時計業組合会長が見聞した幕末日本の諸相。長崎・京都・鎌倉など日本各地の様子、特に江戸の町を鉛筆と手帳を携えて巡り歩き、鮮やかに描き出す。床屋・本屋・武道場等の情景や武家屋敷のたたずまいがありありと蘇る。細密で美しい挿画140点を掲載。
言語と脳
言語と脳
著:杉下 守弘
講談社学術文庫
人間は、どこで、どのようにして言葉を操るのだろうか。話す、聞く、読む、書く……。人と動物を分かつ高次な精神活動、言語。ガルの骨相学、鏡映文字、ブローカ中枢など脳の機能の解明に尽力した先学の努力の成果の跡を辿りながら、人間を人間たらしめる言語と脳との複雑精妙な関係を興味深く紹介し、難問に挑む科学者の姿を描く。
アウグスティヌス
アウグスティヌス
著:宮谷 宣史
講談社学術文庫
カント、デカルトから西田幾多郎にも影響を与えたアウグスティヌス。ローマ帝国末期の北アフリカに生まれ、栄達をめざしたイタリア渡航後にキリスト教に回心。異端と論争し故郷の教会で活動する一方、膨大な著作を残した。その波乱の生涯を辿り、魂の彷徨と信仰への讃美を記す『告白録』や、歴史と国家、神と人類を論じた『神の国』など全著作を解説する。
木簡の社会史
木簡の社会史
著:鬼頭 清明
講談社学術文庫
公文書、租税の荷札、借金の証文、出勤伝票、通行手形…… 木簡が映し出す古代の様相 古代、木簡はさまざまな用途に用いられた。役人たちの出勤・給食伝票、勤務評定書、公文書、宮内への通行証、他国へのパスポート、租税の荷札、借金の証文……。そこに墨書された文言からは、名も知らぬ人々の生々しい暮らしぶりや、古代社会の諸相が浮かび上がってくる。平城京跡から出土した木簡の数々を読み解くことで明らかになる天平人の日常。
太平洋戦争の歴史
太平洋戦争の歴史
著:黒羽 清隆
講談社学術文庫
恐慌、軍国主義、戦争と奇跡の復興―― 昭和史の深層を探る 1941年12月8日未明、真珠湾奇襲に始まった太平洋戦争。緒戦の南方進撃もミッドウェーを境に戦局は一転。ガダルカナルをはじめ太平洋諸島の激戦で兵士は死線をさまよう。特攻隊も組織され、本土空襲は銃後の生活をも戦火に巻きこんだ。沖縄戦、原爆投下、そして敗戦。公文書や当時の日記類を駆使し、未曾有の戦争を臨場感あふれる筆致で描く。
上海物語
上海物語
著:丸山 昇
講談社学術文庫
郭沫若、佐藤春夫、金子光晴、魯迅、丁玲…… 戦前・戦中の上海に展開された人間ドラマ 中国のなかの外国、租界を抜きに、上海の歴史は語れない。それは、欧米や日本による中国半植民地化の象徴であった。帝国主義対半植民地、革命対反革命。矛盾、対立が渦巻く国際都市上海には、さまざまな国の人々のさまざまな想いが交錯した。激動と混沌の街を舞台に展開された、魯迅、郭沫若、金子光晴、内山完造、スメドレーらの活動の軌跡を追う。