講談社学術文庫作品一覧

江戸の懐古
江戸の懐古
監:田中 優子
講談社学術文庫
奠都50年、大正の新聞に連載 去りゆく江戸、消えゆく江戸 名文で綴る江戸物語 奠都50年を記念して、大正6年、新聞に連載。江戸城の誕生、北条氏と上杉氏の攻防、家康の入城、江戸市街の形成、その繁栄など江戸の沿革を叙述。また、隅田川の都鳥、将門の首塚など興味深い逸話も盛り込み、粋で独特の情趣漂う江戸の情景が走馬灯のように巡る。漢文調・講談調の格調高い彩り豊かな名文で綴られ、去りゆく江戸、消えゆく江戸の様子が髣髴(ほうふつ)と蘇る。 本書は大正6年の2月1日から11月12日まで、報知新聞に連載された文章を1冊にまとめたものである。現代の読者には難しい漢文調の言い回しも多いが、ふりがなを頼りに、時々声を出して読んでみてほしい。読み慣れてくると、江戸という空間が目の前に拡がり、まるで講談を聞いているかのような錯覚に陥る。歴史的読み物を使っていると思われる箇所が多々あり、だいぶ著者の想像力がふくらんでいる。が、だからこそ面白いのである。――<本書「監修者まえがき」より>
マルクス・アウレリウス「自省録」
マルクス・アウレリウス「自省録」
著:マルクス・アウレリウス,訳:鈴木 照雄
講談社学術文庫
2世紀後半ローマ皇帝となったマルクス・アウレリウスはまたストア派の哲学者でもあった。万有は神的理性(ロゴス)に統率されるという合理的存在論に与する精神構造を持つ一方で、文章全体に漂う硬質の無常観はどこから来るのか。自身の心に向かって思念し、心内の軋み・分裂・矛盾をごまかすことなく真摯に生きた哲人皇帝の魂の声。碩学による待望の新訳。(講談社学術文庫) 哲人ローマ皇帝マルクスの内なる魂の独白。AD161年即位の皇帝はストア派の哲学者でもあった。合理的存在論に与する一方で憂愁の色を帯びる無常観はどこから来るのか。哲人皇帝の心の軋みに耳を澄ます
電子あり
大和物語(下)
大和物語(下)
著:雨海 博洋,著:岡山 美樹
講談社学術文庫
初の文庫版 「あはれ」の情感が漂う 歌で綴る説話集 歌にまつわる小さな物語の章段からなる『大和物語』は、前篇の宮廷歌語りから、後篇は口碑・伝説が中心となる。生田川伝承、猿沢の池の采女入水譚、安積山伝説など時代の運命に流れゆく人間のはかないさだめや憂愁、また、男と女の悲しい巡り合いが哀切に語られてゆく。全篇で実在の人物が100人余登場し、遍照の出家と放浪に終わる、「あはれ」に満ちた説話集の名作の全訳注。
大和物語(上)
大和物語(上)
著:雨海 博洋,著:岡山 美樹
講談社学術文庫
初の文庫版 貴族社会の噂話とエピソード 歌で綴る雅びの世界 「あはれ」の情感が色濃く漂う歌物語、『大和物語』は、10世紀後半に成立、173の章段からなる佳作である。王朝人の間に流伝した噂話や歌にまつわる逸話を集め、『源氏物語』『枕草子』『大鏡』等にも影響を与えた。失意と不遇、宇多天皇の退位・出家から話は始まり、としこや監(げん)の命婦(みょうぶ)など当時のスター的女性の歌が続き、宮廷を中心に悲しくも美しい魂の交流が語られてゆく。 『大和物語』は、通常173段から成る歌語り集である。宇多天皇のご退位、仏道修行に始まり、良峯宗貞(遍照)の出家と放浪に終わっている。その間に、上は天皇・皇族・貴族から僧侶、庶民、さらに女性では皇后・内親王から宮廷女房、遊女にまで及ぶといった各層の人物がちりばめられている。それらには主として失意と不遇の人生の中に、悲しくも美しい魂の交流がみられ、はかり知れない「あはれ」の情感が漂っている。――<本書「まえがき」より>
婚姻覚書
婚姻覚書
著:瀬川 清子
講談社学術文庫
女性民俗学者ならではの目で捉えた日本人の婚姻をめぐる習俗 日本の女性は、どのような婚姻のしかたをしてきたか。若者宿と娘宿、通婚圏、婚姻の諸様式と婚舎のあり方、嫁入りとその祭祀、主婦権など、女性が村や家という組織のなかで経験してきた婚姻の形態と生態を、広範なフィールド・ワークに基づいて精緻に分析。女性民俗学者ならではの視点で、日本の婚姻をめぐる習俗とそれにまつわる文化の本質を探る。 過去の人たちの生活ぶりを、いちがいに、にべもなく罵倒する非科学的な態度を警戒しよう。……善悪を云々する前に、厳粛な生活の事実として味わってみよう。1人の若者が、1人の娘が、幸福な青春時代をすごし、よい結婚生活に入るためにも、むかしはむかしなりの社会のきまりをもたなくてはならなかったということを村の婚姻が教えてくれる。――<本書「若い仲間」より)
楔形文字入門
楔形文字入門
著:杉 勇
講談社学術文庫
ハンムラピ法典やアマルナ文書を読む 古代文字が語るオリエントの社会と思想 エンテメナの碑文、ハンムラピ法典、アマルナ文書。古代オリエントの社会と思想を現代に伝える楔形文字は、どんな構成を持ち、どうやって解読されたのか――。3000年にわたりメソポタミア全域で使用された古代文字の世界を、斯界の泰斗が平易にそして深く紹介。本書は、興味深い解読史と丁寧な言語学的概説で高い評価を得る、最良の楔形文字入門である。
シュンペーター
シュンペーター
著:根井 雅弘
講談社学術文庫
「市場主義」による経済構造改革を主張する人々に好んで引用されるシュンペーター。「企業者精神」「イノヴェーション」「創造的破壊」などの概念はどのような文脈で理解されるべきなのか。ウィーンで学び、大蔵大臣・銀行頭取などを歴任、破産の憂き目に遭いながら、独創的理論を打ち立てケインズと並び称された20世紀経済学の天才の思想と生涯を追う。(講談社学術文庫) 二十世紀経済学の天才と謳われた孤高の学者。ケインズと並び称され独創的理論を立てたシュンペーター。イノベーション・企業者精神・創造的破壊などが与えた影響は? 学派を作らなかった研究者の思想と生涯。
電子あり
子守り唄の誕生
子守り唄の誕生
著:赤坂 憲雄
講談社学術文庫
子守りの「ネエヤ」とは誰か 五木の子守唄をめぐる近代の精神史 寝させ唄でも遊ばせ唄でもない、日本独特の子守り唄。甘やかな郷愁とは対極の暗さを漂わせる一群の守り子唄はどこから来たのか。年端もいかぬ子守り少女たちのモノローグ。おどま盆ぎり盆ぎり、と口ずさまれる背景はいかなるものか。五木の子守唄として採集された70余りの詞章を検討し、近代化の過程で忘れられていった精神史の風景を掘り起こす。 どうやら日本に固有と思われる、ある一群の子守り唄が存在する。子守り唄にもいくつかの種類がある。寝させ唄、遊ばせ唄、そして、子守り娘の唄である。この第三の、子守りの少女らの自己慰安のモノローグともいうべき子守り唄は、じつは欧米には存在しない。そこには「赤とんぼ」のネエヤがいなかったからだ。――<本書より>
「名」と「恥」の文化
「名」と「恥」の文化
著:森 三樹三郎
講談社学術文庫
名実一致の思想 日本人の名誉と中国人の面子(メンツ) 日本と中国の文化の本質は一体何なのか。千載の後に名を残す、中国人は殊の外名(な)を重んじた。名と恥を人間倫理の根底に置いた日本人と中国人。恥を雪(すす)ぐ――武士の伝統のある日本人の名誉感。無教養は恥――神なき文人の文化、中国人の面子(メンツ)。本書では、恥を名の裏返しとして捉え直し、日中両国人の生き方を鮮やかに解析する。
知られざる源氏物語
知られざる源氏物語
著:西村 亨
講談社学術文庫
主題・手法・作者複数説・巻の順序―― 読まれざる大作の本当の姿 長すぎる故にあまり読まれず、読まれない故に「誨淫の書」「悪文」などの謬説が蔓延する。稀有の大作源氏物語は本当は何を書いた物語なのか。どのような時代を背景に、いかに作られいかなる手法が用いられているのか。現代の生活感情による評価を退け、もののあはれ論、いろごのみ論を検討しつつ、古代の理想としての「美しい皇子の物語」の真実に迫る。
再軍備とナショナリズム
再軍備とナショナリズム
著:大嶽 秀夫
講談社学術文庫
警察予備隊の誕生、そして自衛隊へ 戦後政治最大の論点 国防問題の原点にせまる 朝鮮戦争の勃発によりアメリカの対日政策は転換し、日本は警察予備隊を創設、再軍備への道を歩きだす。そこには出発点から、その後の防衛論議を大きく歪める数々の要因を孕んでいた。吉田内閣、芦田均や鳩山一郎ら自由主義者、西尾末廣ら社会党右派はこの防衛問題をどう捉え、いかに対処したのか。戦後政治上最大の論点を原点まで遡り精緻に検証する。 本書は、1950年代初期の保守党の再軍備政策に焦点を当てて、この判断に実証的裏付けを与えようとしたものである。それは同時に、現在にも引き継がれている日本の保守主義、(右派)自由主義のもつ問題性を指摘することにもなるはずである。筆者は、以前、敗戦から朝鮮戦争勃発までの戦後史を西ドイツと比較しながら検討した著作、『アデナウアーと吉田茂』を公刊した。本書は、実質的にその続編をなすもので、前著と同様、日本の保守政治の原点を、戦後初期の保守党指導者のイデオロギーに探ることを狙いとしている。――<本書「前書き」より>
西洋近世哲学史
西洋近世哲学史
著:量 義治
講談社学術文庫
エラスムスからヘーゲルまで 近代を切り拓いた哲学 ルネサンス以降、ダイナミックに展開した西洋の哲学。現代哲学の肥沃な地盤となった近世哲学は、哲学の主題、主観に新たな理解を加え、自己意識を大きく深化させた。新しい人間、新しい神、新しい世界の発見。エラスムスからデカルト、カント、ヘーゲルに至る流れをキリスト教との関わりにおいて巨視的に見据え、現代思想へと熟成してゆく近世哲学を明解に概説する。
東洋のこころ
東洋のこころ
著:中村 元
講談社学術文庫
神・理法・慈悲・倫理・人間関係・国家…… 東洋の伝統的思想を振り返る 現代人を心の荒廃から救うには、拠って立つ精神生活の基盤を省みることこそが肝要である。それはすなわち、東洋の伝統的思想に立ち返ることである。神観、理法、倫理、宗教、国家、人間関係等の主題のもと、インドを中心に中国、朝鮮、日本等の思想を渉猟し、西洋との比較思想的観点を踏まえつつ、碩学が平易な語り口で縦横に説く「東洋のこころ」。
東西文化の交流
東西文化の交流
著:松田 壽男
講談社学術文庫
東西を結んだ三本のシルクロード ステップ=ルート、オアシス=ルート、海上ルート かつて東と西を結んだのは、いわゆる「シルクロード」だけではない。それより北のステップ地帯を貫くルート、東南アジアの沿岸諸港を中継点とする海上の道もまた「シルクロード」同様に重要なルートであり、どちらも中国の絹をはこぶ「絹の道」であった。これらのルートやそれを支えた人々が、東西のはざまでいかなる役割を演じていたかを考察する。
プラントハンター
プラントハンター
著:白幡 洋三郎
講談社学術文庫
ラン・ユリ・キク・茶―― 世界中への植物探索行がもたらした新種とヨーロッパ園芸熱の高まり 19世紀のイギリスは未知の花や珍しい樹木を求め国中が沸き立っていた。国の勢いを背景に世界中へ植物探検行に赴く「ハンター」たち。アフリカ・ジャワ・中国から植物王国日本まで新種への情熱が輸送の困難をも克服する。ヨーロッパに齎(もたら)されたラン・ユリ・キクなどが引き起こす園芸への熱狂、貿易商人の形成。植物に魅せられた人々の活動を跡づける。 彼らは珍しいものを手にしたい、集めたいというコレクションの心も持っている。まだ行ったことがない地域を探検したいというエクスプローラーの気持ちもある。けれども目的は何といっても、植物を見つけだすこと、獲物としての植物を手に入れることなのである。そこでやはり、プラントハンターという表現が、これらの人にはぴったりくるように思われるのである。――<本書より>
幕末の天皇・明治の天皇
幕末の天皇・明治の天皇
著:佐々木 克
講談社学術文庫
公卿的天皇から軍服姿の天皇へ 近代天皇像の形成過程を追う 幕末から明治へ、時代は激しく動き世の中は一変する。その中で、俄にクローズ・アップされる天皇の存在。天皇は、維新後、夥(おびただ)しい回数の行幸と巡幸を繰り広げた。雲の上の見えない存在から見える天皇・見せる天皇へ。薄化粧をした女性的天皇からヒゲを蓄えた軍服姿の天皇へ。維新の前と後の全く対照的な天皇像を通して、明治とはどのような時代であったかを解明する。 孝明天皇は、攘夷の成功を祈願するために賀茂社と石清水八幡宮に行幸した以外は、御所の外に出たことのない、一般の人びとの前には、姿をあらわしたことのない<見えない>天皇だった。いっぽう明治天皇は、巡幸や行幸などで、積極的に民衆と接したように<見える>天皇だった。父と子で、なぜこれほどまでに違ったのか。それは幕末と明治とでは、求められる天皇像が、大きく異なったからである。――<本書「はじめに」より>
電子あり
平 将門
平 将門
著:北山 茂夫
講談社学術文庫
坂東の地を揺るがした大乱はなぜ起こったか 東国独立国家を築き謀反人となった英雄の生涯 10世紀中葉、土豪・百姓を組織して坂東の地に兵を起こし、国府を陥れ「新皇」を称した平将門。時の中央政府に衝撃を与えた古代史上最大の叛乱、承平・天慶の乱である。大乱はなぜ起こり、何をもたらしたのか。乱を招来した律令制の問題点と当時の社会の諸矛盾、「武夫」の誕生を精緻に解明し、乱の歴史的意味を通して将門の実像とその時代を活写する。 坂東を舞台とした地方的争乱は、939年(天慶2)にいたって、いっきょに叛乱の様相をあらわにしてきた。1世紀を通して、地方社会の基本的部分に蓄えられていた諸矛盾が、いまや、一大叛乱のかたちをとって怒濤の勢いを示すにいたった。そこに、叛逆者に変貌した人物の姿容をくっきりと、うごきゆく歴史の前面に現わす。本書の主人公、平将門がその人である。――<本書「序章 平将門と武夫たち」より>
明治のことば
明治のことば
著:齋藤 毅
講談社学術文庫
個人、社会、会社、保険、銀行、哲学、主義、自由…… 西洋文化の概念を自国語化した明治人の努力 文明開化により急激に流入した欧米文化は、それまでの日本に存在しなかった思想、制度等をもたらした。明治の先人たちはこれらに伴う概念をいかに吸収し、自国語として表現したか。「社会」「個人」「保険」「銀行」「主義」「自由」等々、その後欠くべからざる語となる新しいことばを中心に、それらの誕生、定着の過程を豊富な資料をもとに精細に分析する。
古代インドの神秘思想
古代インドの神秘思想
著:服部 正明
講談社学術文庫
インド精神文化の本質を解明した最良のインド思想入門 眼は太陽であり、思考力は月であり、耳は方位であり、語は火であり、気息は風である――。小宇宙と大宇宙の対応の思想は、やがて個体の本質アートマンと最高実在ブラフマンの一致の自覚へと深化される。古代インドに展開された生の根源を洞察する叡知、神秘思想の本質を初期ウパニシャッドをもとに解明した、斯界の碩学による最良のインド思想入門。
パリ物語
パリ物語
著:宝木 範義
講談社学術文庫
芸術の都、ファッションの都、食の都等と形容されるように、独自の多彩な文化を花開かせたパリ。人を魅了してやまないこの町の魅力の淵源とは何か。その名が紀元前のパリジ族に由来することをはじめとして、歴史を追いつつ、広場、門、駅、キャフェ等、都市空間を構成する諸要素にも注目し、パリの魅力がいかに醸成されたかをさぐる異色の文化史。
電子あり