講談社学術文庫作品一覧

中世ヨーロッパの城の生活
講談社学術文庫
牢固とまた堂々と風格を漂わせ、聳(そび)える城。西欧中世、要塞のような城が陸続と建造されていった。城作りはいついかなる理由で始まったのだろうか。城の内外ではどのような生活が営まれていたのだろうか。ウェールズ東南端の古城チェプストー城を例に挙げ、年代記、裁判記録、家計簿など豊富な資料を駆使し、中世の人々の生活実態と「中世」の全体像を描き出す。

英国人写真家の見た明治日本
講談社学術文庫
スコット南極探検隊同行写真家の100枚の写真で甦る100年前の日本
スコット南極探検隊の映像記録を残したポンティングは、世界を旅し、日本を殊の外愛し、この世の楽園と讃えた。京都の名工との交流、日本の美術工芸品への高い評価。美しい日本の風景や日本女性への愛情こもる叙述。浅間山噴火や決死の富士下山行など迫力満点の描写。江戸の面影が今なお色濃く残る100年前の明治の様子が著者自らが写した貴重な写真とともにありありと甦る。
本書の特徴は、著者自身の経験が生き生きと描かれ、さらにさまざまなエピソードが織り込まれている点であり、その意味でユニークな日本滞在記といえるだろう。保津川の急流で泳いだり、富士山の下山の途中、道なき道を下るなど、かなりの冒険もしている。浅間山の山頂で噴火に遭ったときの描写や精進湖の花火の話も大変おもしろい。随所に出てくる風景描写に、さすがに写真家ならではの細かな観察がうかがわれる。――<本書「訳者あとがき」より>

戦国策
講談社学術文庫
奇知縦横の言論、巧智・奸智が彩る戦国乱世を活写
前漢末の学者劉向(りゅうきょう)が、皇帝の書庫にあった「国策」「国事」などの竹簡を編んで作った『戦国策』。33編486章の長編を、人物編、術策編、弁説編の3編100章に再構成して平易に解説。陰謀が渦巻く戦国乱世を生き抜く巧智・奸智や説得の技法とは何か。「虎の威を借る狐」「漁夫の利」「先ず隗(かい)より始めよ」など故事名言の由来と古代中国の奥深い知恵を学ぶ。

菊と刀
講談社学術文庫
第二次大戦中の米国戦時情報局による日本研究をもとに執筆され、後の日本人論の源流となった不朽の書。日本人の行動や文化の分析からその背後にある独特な思考や気質を解明、日本人特有の複雑な性格と特徴を鮮やかに浮き彫りにする。“菊の優美と刀の殺伐”に象徴される日本文化の型を探り当て、その本質を批判的かつ深く洞察した、第一級の日本人論。(講談社学術文庫)
菊の優美と刀の殺伐。今も輝く不朽の日本論日本人の精神生活と文化を通し、その行動の根底にある独特な思考と気質を抉剔。「恥の文化」を鋭く分析し、日本人とは何者なのかを鮮やかに書き出した古典的名著

日米戦争と戦後日本
講談社学術文庫
日本が緒戦の勝利に酔っている頃、アメリカはすでに対日占領政策の立案を始めていた!
「真珠湾」から半年余、わが国が緒戦の戦勝気分に酔っていた頃、米国ではすでに対日占領政策の検討に着手していた。そして終戦。3年の歳月を要した米国による戦後日本再建の見取り図はどう描かれ、それを日本はどう受け止めたか。またそれを通じ、どう変わっていったか。米国の占領政策が戦後日本の歴史に占める意味を鳥瞰する。吉田茂賞受賞作。

旧約聖書の思想
講談社学術文庫
昏迷きわまる現代に、旧約聖書は3000年の時を超えて何を語りかけるか。ニヒリズム、愛、終末等の主題のもとに旧約から24の断章を選び、ニーチェ、キルケゴールら数多の解釈、思想史を渉猟しつつ、新たな読みを提示。時に芸術の内に旧約を見、時に旧約からエイズや援助交際等、現代が抱える諸問題をも考究する。碩学が現代に甦らせる旧約の思想世界。
【目次より】
1.隠れた神 イザヤ書四五章15節
2.ニヒリズム コーヘレス書一章2節
3.偶像禁止の根拠 出エジプト記二○章4節、申命記五章8節
4.創造 創世記一章26―27節
5.愛児の献供(1)哲学者の解釈 創世記二二章1―2節
6.愛児の献供(2)地平の融合 創世記二二章14節
7.沈黙 イザヤ書六二章6―7節
8.知恵 創世記三章4―5節
9.他宗教との関係 出エジプト記二○章2―3節、申命記五章6―7節
10.「宗教」批判 サムエル記下一二章24―25節
11.罪と赦し 詩篇五一篇5―6節
12.頑迷預言 イザヤ書六章9―10節
13.西洋精神史との関係(1)文学・絵画の場合 士師記一六章17節
14.西洋精神史との関係(2)彫刻・音楽・思想の場合 出エジプト記三四章29節
15.西洋精神史との関係(3)アモラリズム ヨブ記三一章35―37節
16.愛(1)愛の3つの形 申命記一○章17b―19節
17.愛(2)新約における愛敵 箴言二五章21―22節
18.愛(3)旧約における愛敵 レビ記一九章18節
19.愛の秩序(1)愛の7つの形 申命記六章5節
20.愛の秩序(2)統合論と代贖論 ミカ書六章8節
21.終末(1)終末論の三類型 アモス書五章18節
22.終末(2)終末論の胡散臭さ アモス書五章24節
23.終末(3)義と愛 アモス書九章14―15節
24.終末(4)苦難の神義論 イザヤ書五三章4―5節

戦後責任論
講談社学術文庫
亡霊のように甦る戦争の記憶と日本の戦後を問う
中国・重慶での反日暴動、従軍慰安婦を巡る諸問題など、ある日突然、亡霊のように甦る戦争の記憶。冷戦構造が崩れて直面したアジアの戦争被害者の声に、日本はどのように応答すべきか。ユダヤ人大量虐殺を否定する歴史修正主義や、台頭する新たなナショナリズムを鋭く批判し、アジアの民衆との信頼関係回復のため戦後責任を問い続ける俊秀の力作。
このような呼びかけに応答すること、レスポンシビリティとしての責任を果たすことは、自分の属する国家がかつて破壊したアジアの諸国民、民衆との信頼関係を回復し、新たに作り出す行為だろうと私は思います。そしてそうであるかぎり、これは被害者側だけでなく加害者側にとっても、けっして「否定的」であったり「抑圧的」であったりする行為ではなく、むしろ「肯定的」で「歓ばしい」ものになるはずではないでしょうか。――(本書<「戦後責任」再考>より)

律令制の虚実
講談社学術文庫
外来文物の日本的受容による古代国家形成と国風文化の開花
東アジアの東端に位置する日本は、大陸や半島の影響を受けつつ古代国家を形成した。しかし、その外来文化は日本的受容によって独自の展開を遂げる。律令国家の誕生から、奈良朝の変遷と絢爛たる天平文化、平安遷都、貴族社会の成立、国風文化の開花、そして武士の擡頭までを描出。奈良~平安時代の社会と文化の底流にある古代日本の特性を追究する。

君あり、故に我あり
講談社学術文庫
インド思想が説く平和をめざす新原理
9歳でジャイナ教の修行僧、ガンジー思想にも共鳴し、8000マイルの平和巡礼を行ったインド生まれの思想家は、自然に対する愛を強調した独自の平和の思想を提唱する。デカルト以降、近代の二元論的世界観は対立を助長した。分離する哲学から関係をみる哲学へ。暴力から非暴力へ。思いやりに満ちた心の大切さを力説し、地球は1つと、相互関係・共生関係に基づく平和への新しい展望を示す。
私が目撃したツイン・タワーへの攻撃のような悲劇や、軍備拡張競争、環境悪化、社会的不公正などの国際的葛藤は、デカルト的懐疑、二元論、個人主義、その他すべての「何々主義」に根ざしている。(それに対し、)私は、サンスクリットの格言「ソーハム」に要約される、新たな世界観を持っている。この格言は私のマントラになった。これは二元論ではなく、分割されない関係を表すマントラである。――<本書「はじめに」より>

正法眼蔵(六)全訳注
講談社学術文庫
『正法眼蔵』の行文は、必ずしも平易ではない。しかし、その思索はいよいよ深く、かついよいよ高い。理解が深まれば深まるほど、その魅力が一層大きくなる。先師如浄の垂示と偈頌を引用し、仏法の何たるかを論じ、私たちの生き方の核心を衝く「梅華」「眼睛」。発心のすばらしさを名文名句で綴る「発無上心」。各篇にみなぎる道元の息吹と思索の跡を丹念に辿る。

修験の世界
講談社学術文庫
大峯山、熊野三山、出羽三山、比叡山――
行場に身を置き日本人の宗教世界に迫る
大峯山の奥駈け修行、山上ケ岳岩場での捨身行、熊野三山の巡拝、出羽三山の笈からがき・梵天作法、そして比叡山の千日回峰行と十万枚大護摩供。各地の行場に身を置き、修験者の修行に同行あるいは自ら行を実践した著者は、大自然とそこに育まれた生命の共鳴を聞く。それこそが信仰の原点だった――。山岳宗教を通して探究する、日本人の宗教世界の形。

万延元年の遣米使節団
講談社学術文庫
77人のサムライ アメリカを往く
羽織、袴に二本差しでアメリカ大陸を闊歩
安政から万延と改元された年の春3月、総勢77名のサムライが、幕府初の遣米使節団としてサンフランシスコに到着した。随行船は咸臨丸、日米修好通商条約の批准書交換のためである。米国各地で熱狂的な大歓迎を受けた彼らの日記や回想録、現地の新聞記事等を駆使してその旅の全容を再現。長い鎖国の後の衝撃的な異文化体験が、生き生きと甦る。
……ニューヨークの市会議員から聞いた話では、[使節団員には]じゅうたんの上につばを吐きかけた者もいたということである。突然ゆったりしたズボン(袴)をたくし上げ、あぐらをかいて坐ったとき、御婦人方はちょっとびっくりしたし、ふくらはぎの部分があらわになったので人の注目する所となった。しかし、その男はとても落ちついていたので、婦人たちはくすくす笑い、見て見ないふりをした。(ワシントンのホテルにて。『ニューヨーク・タイムズ』紙、1860・5・16付)

蓮如上人・空善聞書
講談社学術文庫
衰微していた本願寺を一大教団へと再興した蓮如上人。教勢拡大へと導いた真宗信心の要とは一体何か。また、人々の心を大きくつかんだ秘訣とは何であったのか。上人の身辺に近侍していた法専坊空善は自らの目で見た蓮如晩年の姿と弟子たちに語りかけた教えを記録した。隠居後も変わらぬ布教への情熱、門下への思いやり等々。等身大の蓮如像を現代に伝える言行録の初の注釈書。

経済学の歴史
講談社学術文庫
『経済表』を考案したケネーはルイ15世寵妃の侍医であり、『国富論』の著者・スミスは道徳哲学の教授だった。興味深い経済学草創期からリカード、ミル、マルクス、ワルラスを経てケインズ、シュンペーター、ガルブレイスに至る12人の経済学者の評伝と理論を解説。彼らの生きた時代と社会の発展をたどり、現代経済学を支える哲学と思想を再発見する。(講談社学術文庫)
スミス以降、経済学を築いた人と思想の全貌創始者のケネー、スミスからマルクスを経てケインズ、シュンペーター、ガルブレイスに至る12人の経済学者の生涯と理論を解説。
『経済表』を考案したケネーはルイ15世寵妃の侍医であり、『国富論』の著者・スミスは道徳哲学の教授だった。興味深い経済学草創期からリカード、ミル、マルクス、ワルラスを経てケインズ、シュンペーター、ガルブレイスに至る12人の経済学者の評伝と理論を解説。彼らの生きた時代と社会の発展をたどり、現代経済学を支える哲学と思想を再発見する。
経済学の歴史を学ぶ理由の1つは、現代理論を盲信する危険性を防ぐことにあると思われる。例えば、スミスは、本来、絶妙なるバランス感覚の持ち主であり、決して極端な自由放任主義者ではなかったが、いつの間にか自由放任主義哲学の元祖として「自由至上主義者」たちに学問的にも政治的にも利用されるようになった。だが、それがわかるには、そもそもスミスが何を考えていたのか正確に知っておかなければならない。経済学史の効用の1つがここにある。――<本書「プロローグ」より>

心臓の動きと血液の流れ
講談社学術文庫
血液循環説を確立 科学革命の先鞭をつけた名著
ラテン語からの新訳
私たちの体内の血液はどのように流れているのか。広汎な解剖学的探索と精密な実験によって、血液は血管の中を絶えず循環している事実を発見、今では自明とされる血液循環説が確立した。科学革命の先鞭をつけ、近代医学への道筋を開いたハーヴィの名著のラテン語からの画期的な新訳。著者略伝、心臓血管系理解への便覧、詳細な解説付き。

雨森芳洲
講談社学術文庫
「互いに欺かず、争わず、真実をもって交わり候を誠信とは申し候」
理想の日朝外交を求めた思想家の再発見
朝鮮語と中国語を自在に操る対馬藩の儒者に、朝鮮通信使は称賛の言葉を惜しまなかった――。木下順庵に学び、新井白石・荻生徂徠との交友を通して研鑽された芳洲の思想は、言語哲学に発し、偏見を排した文化・民族の平等理念へと昇華する。江戸時代、日朝親善の先駆者となり今日的思索を展開しながら、国学の擡頭により忘れさられた思想家が現代に甦る。
雨森芳洲は、徳川時代の日本を代表する思想家の1人である。荻生徂徠、本居宣長に比して、まさるともおとらないものを持っている。対馬という辺地にいたために、彼の思想が広く知られずに終わり、それが私達の国を指導する力を持ちえなかったことを、私は本当に残念に思う。今度こそ、我々の中に1つの良き典型として、いつまでも生き続ける思想家になって欲しい。切にそう希望する。――<本書「序章」より>

道元「永平広録・上堂」選
講談社学術文庫
『正法眼蔵』と並ぶ主著
道元が全生命を賭して門下に語った説法集
法堂に上り、修行僧に真っ向から問いかける。道元の語録を集めた『永平広録』「上堂」からは、今も、道元の息遣いが聞こえ、迫力ある声が響いてくる。「依草の家風、附木の心」「空手還郷(くうしゅげんきょう)「眼横鼻直(がんのうびちょく)」。禅の奥義に迫る、簡潔で磨き上げられた言葉の数々。本書は、531回の「上堂」の中から、応時応節の代表的なものを選び、懇切丁寧な解説を施す。
上堂は、住職が法堂の法座の上から修行僧たちに法を説く禅林特有の説法形式で、……各上堂からは、道元が今、あたかも私たちの目の前に現れ、法座から私たちに直に説法しているかのような息吹と、生々しい臨場感が彷彿として伝わってくる。それは特に、道元の上堂語が、彫琢された全く無駄のない言葉、そして詩的ですらある美しい言葉から構成され、それが時には鋭い語気となって私たちに迫ってくるからである。――<本書「はじめに」より>

ギリシャ神話集
講談社学術文庫
紀元後2世紀頃、ローマの一般大衆へギリシャの神話世界を伝えるために編まれた、277話からなる神話集。壮大なギリシャ神話の全容を網羅的に扱うためか、神話の骨子や人物の事績等がきわめて簡潔に綴られていて、作者は事典的性格を意図したものと推測される。作者のみが伝える神話要素も含み、ギリシャ神話の研究者・愛好家必読の書。本邦初訳。

中世の非人と遊女
講談社学術文庫
非人や芸能民、商工民など多くの職能民が神人(じにん)、寄人(よりうど)等の称号を与えられ、天皇や神仏の直属民として特権を保証された中世。彼らの多くは関所料を免除されて遍歴し、生業を営んだ。各地を遊行し活動した遊女、白拍子の生命力あふれる実態も明らかにし、南北朝の動乱を境に非人や遊女がなぜ賤視されるに至ったかを解明する。網野史学「職人論」の代表作。
非人は清めを、遊女は「好色」を芸能に
網野史学が説く職能民の多様な姿と生命力
非人や芸能民、商工民など多くの職能民が神人(じにん)、寄人(よりうど)等の称号を与えられ、天皇や神仏の直属民として特権を保証された中世。彼らの多くは関所料を免除されて遍歴し、生業を営んだ。各地を遊行し活動した遊女、白拍子の生命力あふれる実態も明らかにし、南北朝の動乱を境に非人や遊女がなぜ賤視されるに至ったかを解明する。網野史学「職人論」の代表作。
現代のわれわれが、職人の見事な腕前に「神技」を感ずるのと同様、このころの人々はそれ以上に、職能民の駆使する技術、その演ずる芸能、さらには呪術に、人ならぬものの力を見出し、職能民自身、自らの「芸能」の背後に神仏の力を感じとっていたに相違ない。それはまさしく、「聖」と「俗」との境界に働く力であり、自然の底知れぬ力を人間の社会に導き入れる懸け橋であった。――<本書「序章」より>

愛の思想史
講談社学術文庫
西洋思想を貫く精神と性のドラマ
精神と性との間のドラマ、愛。古来、西欧の思想と文学は愛をめぐって展開してきた。ギリシア的少年愛パイデラスティア、一貴婦人に熱誠を捧げる中世の騎士道的愛、ひたすら自己充足をめざす近代的エゴティズムの愛。人間存在の永遠のテーマ、愛。その思想の歴史を追い、西洋文化の核心と特色を探り、愛とは何かを追究する。