講談社学術文庫作品一覧

君あり、故に我あり
講談社学術文庫
インド思想が説く平和をめざす新原理
9歳でジャイナ教の修行僧、ガンジー思想にも共鳴し、8000マイルの平和巡礼を行ったインド生まれの思想家は、自然に対する愛を強調した独自の平和の思想を提唱する。デカルト以降、近代の二元論的世界観は対立を助長した。分離する哲学から関係をみる哲学へ。暴力から非暴力へ。思いやりに満ちた心の大切さを力説し、地球は1つと、相互関係・共生関係に基づく平和への新しい展望を示す。
私が目撃したツイン・タワーへの攻撃のような悲劇や、軍備拡張競争、環境悪化、社会的不公正などの国際的葛藤は、デカルト的懐疑、二元論、個人主義、その他すべての「何々主義」に根ざしている。(それに対し、)私は、サンスクリットの格言「ソーハム」に要約される、新たな世界観を持っている。この格言は私のマントラになった。これは二元論ではなく、分割されない関係を表すマントラである。――<本書「はじめに」より>

正法眼蔵(六)全訳注
講談社学術文庫
『正法眼蔵』の行文は、必ずしも平易ではない。しかし、その思索はいよいよ深く、かついよいよ高い。理解が深まれば深まるほど、その魅力が一層大きくなる。先師如浄の垂示と偈頌を引用し、仏法の何たるかを論じ、私たちの生き方の核心を衝く「梅華」「眼睛」。発心のすばらしさを名文名句で綴る「発無上心」。各篇にみなぎる道元の息吹と思索の跡を丹念に辿る。

修験の世界
講談社学術文庫
大峯山、熊野三山、出羽三山、比叡山――
行場に身を置き日本人の宗教世界に迫る
大峯山の奥駈け修行、山上ケ岳岩場での捨身行、熊野三山の巡拝、出羽三山の笈からがき・梵天作法、そして比叡山の千日回峰行と十万枚大護摩供。各地の行場に身を置き、修験者の修行に同行あるいは自ら行を実践した著者は、大自然とそこに育まれた生命の共鳴を聞く。それこそが信仰の原点だった――。山岳宗教を通して探究する、日本人の宗教世界の形。

万延元年の遣米使節団
講談社学術文庫
77人のサムライ アメリカを往く
羽織、袴に二本差しでアメリカ大陸を闊歩
安政から万延と改元された年の春3月、総勢77名のサムライが、幕府初の遣米使節団としてサンフランシスコに到着した。随行船は咸臨丸、日米修好通商条約の批准書交換のためである。米国各地で熱狂的な大歓迎を受けた彼らの日記や回想録、現地の新聞記事等を駆使してその旅の全容を再現。長い鎖国の後の衝撃的な異文化体験が、生き生きと甦る。
……ニューヨークの市会議員から聞いた話では、[使節団員には]じゅうたんの上につばを吐きかけた者もいたということである。突然ゆったりしたズボン(袴)をたくし上げ、あぐらをかいて坐ったとき、御婦人方はちょっとびっくりしたし、ふくらはぎの部分があらわになったので人の注目する所となった。しかし、その男はとても落ちついていたので、婦人たちはくすくす笑い、見て見ないふりをした。(ワシントンのホテルにて。『ニューヨーク・タイムズ』紙、1860・5・16付)

蓮如上人・空善聞書
講談社学術文庫
衰微していた本願寺を一大教団へと再興した蓮如上人。教勢拡大へと導いた真宗信心の要とは一体何か。また、人々の心を大きくつかんだ秘訣とは何であったのか。上人の身辺に近侍していた法専坊空善は自らの目で見た蓮如晩年の姿と弟子たちに語りかけた教えを記録した。隠居後も変わらぬ布教への情熱、門下への思いやり等々。等身大の蓮如像を現代に伝える言行録の初の注釈書。

経済学の歴史
講談社学術文庫
『経済表』を考案したケネーはルイ15世寵妃の侍医であり、『国富論』の著者・スミスは道徳哲学の教授だった。興味深い経済学草創期からリカード、ミル、マルクス、ワルラスを経てケインズ、シュンペーター、ガルブレイスに至る12人の経済学者の評伝と理論を解説。彼らの生きた時代と社会の発展をたどり、現代経済学を支える哲学と思想を再発見する。(講談社学術文庫)
スミス以降、経済学を築いた人と思想の全貌創始者のケネー、スミスからマルクスを経てケインズ、シュンペーター、ガルブレイスに至る12人の経済学者の生涯と理論を解説。
『経済表』を考案したケネーはルイ15世寵妃の侍医であり、『国富論』の著者・スミスは道徳哲学の教授だった。興味深い経済学草創期からリカード、ミル、マルクス、ワルラスを経てケインズ、シュンペーター、ガルブレイスに至る12人の経済学者の評伝と理論を解説。彼らの生きた時代と社会の発展をたどり、現代経済学を支える哲学と思想を再発見する。
経済学の歴史を学ぶ理由の1つは、現代理論を盲信する危険性を防ぐことにあると思われる。例えば、スミスは、本来、絶妙なるバランス感覚の持ち主であり、決して極端な自由放任主義者ではなかったが、いつの間にか自由放任主義哲学の元祖として「自由至上主義者」たちに学問的にも政治的にも利用されるようになった。だが、それがわかるには、そもそもスミスが何を考えていたのか正確に知っておかなければならない。経済学史の効用の1つがここにある。――<本書「プロローグ」より>

心臓の動きと血液の流れ
講談社学術文庫
血液循環説を確立 科学革命の先鞭をつけた名著
ラテン語からの新訳
私たちの体内の血液はどのように流れているのか。広汎な解剖学的探索と精密な実験によって、血液は血管の中を絶えず循環している事実を発見、今では自明とされる血液循環説が確立した。科学革命の先鞭をつけ、近代医学への道筋を開いたハーヴィの名著のラテン語からの画期的な新訳。著者略伝、心臓血管系理解への便覧、詳細な解説付き。

雨森芳洲
講談社学術文庫
「互いに欺かず、争わず、真実をもって交わり候を誠信とは申し候」
理想の日朝外交を求めた思想家の再発見
朝鮮語と中国語を自在に操る対馬藩の儒者に、朝鮮通信使は称賛の言葉を惜しまなかった――。木下順庵に学び、新井白石・荻生徂徠との交友を通して研鑽された芳洲の思想は、言語哲学に発し、偏見を排した文化・民族の平等理念へと昇華する。江戸時代、日朝親善の先駆者となり今日的思索を展開しながら、国学の擡頭により忘れさられた思想家が現代に甦る。
雨森芳洲は、徳川時代の日本を代表する思想家の1人である。荻生徂徠、本居宣長に比して、まさるともおとらないものを持っている。対馬という辺地にいたために、彼の思想が広く知られずに終わり、それが私達の国を指導する力を持ちえなかったことを、私は本当に残念に思う。今度こそ、我々の中に1つの良き典型として、いつまでも生き続ける思想家になって欲しい。切にそう希望する。――<本書「序章」より>

道元「永平広録・上堂」選
講談社学術文庫
『正法眼蔵』と並ぶ主著
道元が全生命を賭して門下に語った説法集
法堂に上り、修行僧に真っ向から問いかける。道元の語録を集めた『永平広録』「上堂」からは、今も、道元の息遣いが聞こえ、迫力ある声が響いてくる。「依草の家風、附木の心」「空手還郷(くうしゅげんきょう)「眼横鼻直(がんのうびちょく)」。禅の奥義に迫る、簡潔で磨き上げられた言葉の数々。本書は、531回の「上堂」の中から、応時応節の代表的なものを選び、懇切丁寧な解説を施す。
上堂は、住職が法堂の法座の上から修行僧たちに法を説く禅林特有の説法形式で、……各上堂からは、道元が今、あたかも私たちの目の前に現れ、法座から私たちに直に説法しているかのような息吹と、生々しい臨場感が彷彿として伝わってくる。それは特に、道元の上堂語が、彫琢された全く無駄のない言葉、そして詩的ですらある美しい言葉から構成され、それが時には鋭い語気となって私たちに迫ってくるからである。――<本書「はじめに」より>

ギリシャ神話集
講談社学術文庫
紀元後2世紀頃、ローマの一般大衆へギリシャの神話世界を伝えるために編まれた、277話からなる神話集。壮大なギリシャ神話の全容を網羅的に扱うためか、神話の骨子や人物の事績等がきわめて簡潔に綴られていて、作者は事典的性格を意図したものと推測される。作者のみが伝える神話要素も含み、ギリシャ神話の研究者・愛好家必読の書。本邦初訳。

中世の非人と遊女
講談社学術文庫
非人や芸能民、商工民など多くの職能民が神人(じにん)、寄人(よりうど)等の称号を与えられ、天皇や神仏の直属民として特権を保証された中世。彼らの多くは関所料を免除されて遍歴し、生業を営んだ。各地を遊行し活動した遊女、白拍子の生命力あふれる実態も明らかにし、南北朝の動乱を境に非人や遊女がなぜ賤視されるに至ったかを解明する。網野史学「職人論」の代表作。
非人は清めを、遊女は「好色」を芸能に
網野史学が説く職能民の多様な姿と生命力
非人や芸能民、商工民など多くの職能民が神人(じにん)、寄人(よりうど)等の称号を与えられ、天皇や神仏の直属民として特権を保証された中世。彼らの多くは関所料を免除されて遍歴し、生業を営んだ。各地を遊行し活動した遊女、白拍子の生命力あふれる実態も明らかにし、南北朝の動乱を境に非人や遊女がなぜ賤視されるに至ったかを解明する。網野史学「職人論」の代表作。
現代のわれわれが、職人の見事な腕前に「神技」を感ずるのと同様、このころの人々はそれ以上に、職能民の駆使する技術、その演ずる芸能、さらには呪術に、人ならぬものの力を見出し、職能民自身、自らの「芸能」の背後に神仏の力を感じとっていたに相違ない。それはまさしく、「聖」と「俗」との境界に働く力であり、自然の底知れぬ力を人間の社会に導き入れる懸け橋であった。――<本書「序章」より>

愛の思想史
講談社学術文庫
西洋思想を貫く精神と性のドラマ
精神と性との間のドラマ、愛。古来、西欧の思想と文学は愛をめぐって展開してきた。ギリシア的少年愛パイデラスティア、一貴婦人に熱誠を捧げる中世の騎士道的愛、ひたすら自己充足をめざす近代的エゴティズムの愛。人間存在の永遠のテーマ、愛。その思想の歴史を追い、西洋文化の核心と特色を探り、愛とは何かを追究する。

歌舞伎の話
講談社学術文庫
わが国古来の伝統演劇・歌舞伎とはいかなる芸術か。著者ならではの蘊蓄を随所にちりばめつつ、批評(鑑賞の基準)、歴史、役柄、演技、劇場、脚本、芸術性、大衆性という8つの角度から、独特の様式をもつ歌舞伎という芸能の本質と魅力を検証し、あわせて現代文化における歌舞伎の位置を探る。歌舞伎評論の第一人者が説く、歌舞伎への正しい認識と鑑賞法。

源 義経
講談社学術文庫
判官びいき、美貌の若武者像、弁慶物語、雪の吉野山――
悲劇の武将は庶民によって英雄となった
源平争乱期、歴史の表舞台に彗星の如く現れ、消えていった源義経。その悲劇の生涯を悼む民衆によって彼は英雄へと昇華した。美貌の若武者、天才軍略家、弁慶物語、雪の吉野山と北国落ち――。本書は、日本人に最も愛された悲運の名将の実像を描き、文芸と歴史の間にたゆたう義経伝承の発生とそれを保持した社会的背景を解明する、異色の論考である。

呂氏春秋
講談社学術文庫
戦国末期、若き始皇帝の宰相として秦の百官を統率し、全国から3千の賓客を招集した呂不韋(りょふい)。彼が諸国に対抗し、秦の国力と文化の向上をめざし秀れた上客と編集した『呂氏春秋(りょししゅんじゅう)』は、「天下万物古今の事」を備えたいわば百科全書だった。長寿の秘訣、人物の見分け方から殷の湯王、周の武王の故事によった王者への道など、古代中国の英知の結晶を読み解く。(講談社学術文庫)
秦の宰相、呂不韋が作らせた人事教訓の書。始皇帝の宰相呂不韋と賓客三千人が編集した『呂氏春秋』は天地万物古今の事を備えた大作。天道と自然に従い人間行動を指示した内容は中国の英知を今日に伝える。

正法眼蔵(五)全訳注
講談社学術文庫
本物の仏教とは何かを一途に追い求めた道元は、思索に思索を重ね、仏法の精髄を凝縮した言葉で語る。面と面とを向け合い授かる教えが説かれる「面授」。仏道には宗派は無用、ただ世尊の教えに従うことが大切、経巻・善知識にこそすべてがあると説く「仏道」「仏経」。意識のない草木瓦礫から説法の本質に迫る「無情説法」。道元の必死な気持ちが惻々と伝わる巻々を収録する。

流言・投書の太平洋戦争
講談社学術文庫
『特高月報』、内務省警保局報告書など克明な治安史料で明かす戦時下の世相と民心
戦時下、前線に赴く兵士を見送った家族が死守した銃後の本土日本。深刻な食糧不足や激化する空襲のなか、人々は何を考え、何を感じていたのか。厳しい言論統制を行い、国民の日常会話も監視した治安当局は、民衆の流言蜚語や不穏投書を克明に記録した。『特高月報』等のこれら治安史料と日記を駆使し、庶民の心情と実態に迫る異色の戦時下日本の歴史。

君主論
講談社学術文庫
近代政治学の古典として名高い『君主論』。その著者マキアヴェッリは、都市国家が並び立つルネサンスのイタリアにあって、共和政のフィレンツェ市書記官として活躍。国際政治の荒波のなか、軍事、外交にわたり東奔西走の日々を送った。その豊かな体験を生かして権力の生態を踏まえた統治術として執筆した名著を、政治学の第一人者が全訳し解説する。(講談社学術文庫)
近代政治学の名著を平易に全訳した大文字版。乱世のルネサンス期、フィレンツェの外交官として活躍したマキアヴェッリ。その代表作『君主論』を政治学の第一人者が全訳し権力の獲得と維持、喪失の原因を探る。

ジークフリート伝説
講談社学術文庫
ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』は、多くの音楽ファンの心を烈しく揺さぶる一大傑作である。また『ニーベルンゲンの歌』は古代ゲルマンの英雄伝説を素に、13世紀初頭に成立した一大叙事詩である。両者に共通する「ニーベルング(ゲン)」は地下に住む妖精の名前である。そしてこの侏儒がとてつもない財宝を所有していた。この財宝をめぐってさまざまな闘争が繰り広げられ、壮大な物語へと発展していくのである。この物語の主人公ジークフリートのルーツはどこにあるのか。古代ゲルマンの「竜退治」「財宝獲得」の英雄伝説や北欧の伝承『歌謡エッダ』『サガ』などの系譜を辿り、また、主人公の人間像と楽劇の魅力を徹底的に読み解き、ドイツ文化の特質とその精神の核心に鋭く迫る。
〔文庫書き下ろし〕
第1章 ニーベルンゲン伝説の生成
第2章 北欧への伝承
第3章 ドイツ中世英雄叙事詩『ニーベルンゲンの歌』
第4章 新しいタイプの伝承
第5章 ドイツ・ロマン派による伝承
第6章 19世紀における戯曲作品
第7章 ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』4部作
第8章 20世紀のジークフリート伝説
結び ジークフリート伝説の系譜

『涅槃経』を読む
講談社学術文庫
死に直面したブッダは、自らの得た覚りを弟子たちに開示した。このブッダが最後に残した諸々の教えを、多彩な比喩を随所にちりばめ、明快な問答形式で記したのが『涅槃経』であり、数ある仏教経典のなかでも「仏性思想」を説いてひときわ異彩を放っている。中国・朝鮮・日本等、東アジアの仏教思想に多大な影響を与えた『涅槃経』の精髄を読み解く。(講談社学術文庫)
死に直面したブッダは、自らの得た覚りを弟子たちに開示した。このブッダが最後に残した諸々の教えを、多彩な比喩を随所にちりばめ、明快な問答形式で記したのが『涅槃経』であり、数ある仏教経典のなかでも「仏性思想」を説いてひときわ異彩を放っている。中国・朝鮮・日本等、東アジアの仏教思想に多大な影響を与えた『涅槃経』の精髄を読み解く。