講談社学術文庫作品一覧

古代インド
講談社学術文庫
苛酷な風土と東西文化の融合
仏教はこの地に興り、隆盛を極め、消滅した
レンガ造りの下水溝や大浴場を備えたモヘンジョ・ダロに代表される高度な都市文化を有したインダス文明。アジャンターの壁画に往時を伝える絢爛華麗なグプタ文化。この地に興り、隆盛を極め、消えた仏教。苛酷な風土と多様な民族・東西文化の融合が生み出した古代インド文明の全貌と、悠久の時を生きる民衆の姿を、仏教学の泰斗が鮮やかに描き出す。

正法眼蔵(三)全訳注
講談社学術文庫
道元は、精緻をきわめた思索と簡勁を尽くした表現で、仏道は無窮と、間断なき行の大切さを訴え続けた。趙州従しん(じょうしゅうじゅうしん)や天童如浄などの古(いにしえ)の仏者たちの行状を紹介し、修行の意味を深く鋭く論究した「行持」の巻。他宗教で盛んに力説・主張する奇蹟や不思議にではなく、日常茶飯の中にこそ大事があると説く「神通」の巻。真の仏教とは何かを突き詰め論じた巻々を収録する。

絵で見る幕末日本
講談社学術文庫
細密で美しい挿画140点
幕末の江戸・長崎・京都などが鮮やかに蘇る
鋭敏な観察力、才能豊かな筆の運び。1863年4月、日瑞修好通商条約締結のため来日したスイス時計業組合会長が見聞した幕末日本の諸相。長崎・京都・鎌倉など日本各地の様子、特に江戸の町を鉛筆と手帳を携えて巡り歩き、鮮やかに描き出す。床屋・本屋・武道場等の情景や武家屋敷のたたずまいがありありと蘇る。細密で美しい挿画140点を掲載。

言語と脳
講談社学術文庫
人間は、どこで、どのようにして言葉を操るのだろうか。話す、聞く、読む、書く……。人と動物を分かつ高次な精神活動、言語。ガルの骨相学、鏡映文字、ブローカ中枢など脳の機能の解明に尽力した先学の努力の成果の跡を辿りながら、人間を人間たらしめる言語と脳との複雑精妙な関係を興味深く紹介し、難問に挑む科学者の姿を描く。

アウグスティヌス
講談社学術文庫
カント、デカルトから西田幾多郎にも影響を与えたアウグスティヌス。ローマ帝国末期の北アフリカに生まれ、栄達をめざしたイタリア渡航後にキリスト教に回心。異端と論争し故郷の教会で活動する一方、膨大な著作を残した。その波乱の生涯を辿り、魂の彷徨と信仰への讃美を記す『告白録』や、歴史と国家、神と人類を論じた『神の国』など全著作を解説する。

木簡の社会史
講談社学術文庫
公文書、租税の荷札、借金の証文、出勤伝票、通行手形……
木簡が映し出す古代の様相
古代、木簡はさまざまな用途に用いられた。役人たちの出勤・給食伝票、勤務評定書、公文書、宮内への通行証、他国へのパスポート、租税の荷札、借金の証文……。そこに墨書された文言からは、名も知らぬ人々の生々しい暮らしぶりや、古代社会の諸相が浮かび上がってくる。平城京跡から出土した木簡の数々を読み解くことで明らかになる天平人の日常。

太平洋戦争の歴史
講談社学術文庫
恐慌、軍国主義、戦争と奇跡の復興――
昭和史の深層を探る
1941年12月8日未明、真珠湾奇襲に始まった太平洋戦争。緒戦の南方進撃もミッドウェーを境に戦局は一転。ガダルカナルをはじめ太平洋諸島の激戦で兵士は死線をさまよう。特攻隊も組織され、本土空襲は銃後の生活をも戦火に巻きこんだ。沖縄戦、原爆投下、そして敗戦。公文書や当時の日記類を駆使し、未曾有の戦争を臨場感あふれる筆致で描く。

上海物語
講談社学術文庫
郭沫若、佐藤春夫、金子光晴、魯迅、丁玲……
戦前・戦中の上海に展開された人間ドラマ
中国のなかの外国、租界を抜きに、上海の歴史は語れない。それは、欧米や日本による中国半植民地化の象徴であった。帝国主義対半植民地、革命対反革命。矛盾、対立が渦巻く国際都市上海には、さまざまな国の人々のさまざまな想いが交錯した。激動と混沌の街を舞台に展開された、魯迅、郭沫若、金子光晴、内山完造、スメドレーらの活動の軌跡を追う。

ヴェニスからアウシュヴィッツへ
講談社学術文庫
和辻哲郎文化賞受賞
『ヴェニスのゲットーにて』の文庫版
ナチスによるユダヤ人虐殺は何故起きたのか。ユダヤ人への過酷な差別や迫害、残忍非道な異端審問。ユダヤに寛容なイスラムに対し、血の滲む西洋の歴史。ゲットー発生の地ヴェニスなどユダヤ人殉難の地を旅し、ヨーロッパの陰の歴史、反ユダヤ主義の根源に迫り、近代思想の意外な真実と陥穽を鋭く剔出する。識者絶賛、和辻哲郎文化賞受賞作品の待望の文庫版。
私の主題はあくまでもアウシュヴィッツに極まるヨーロッパ近代の反ユダヤ主義思想をめぐるドラマであり、「アウシュヴィッツ以後」における人間の生き方にあった。私の旅は、異域への現実の旅であるとともに、歴史への想像上の旅であり、また文献の内部への旅でもあった。ただそれは……必ずしもアウシュヴィッツへの旅ではなく、アウシュヴィッツからの旅であった。――(本書「原本あとがき」より)

飛鳥の朝廷
講談社学術文庫
倭王武にはじまり、仏教伝来と聖徳太子の登場、大化の改新を経て白村江の戦い、壬申の乱と続いた動乱の時代。中国・朝鮮と濃密な関係にあった日本は、東アジア世界の激動の中、文化の飛躍的発展を背景に古代天皇制を確立し、統一国家への歩みを進めた。『日本書紀』など史料の精緻な分析により、史学界の泰斗が6~7世紀の日本の姿を鮮やかに描き出す。

禅学入門
講談社学術文庫
本書は、禅学の泰斗として名高い著者が外国人向けに英文で執筆した書を、日本人のために自ら邦訳したものである。禅は虚無主義か、単なる神秘主義か、無宗教か等々、不案内な者が抱きやすい禅への誤解を解き、禅の真実の姿を指し示している。併せて、禅の真理へ導くために用いられる公案や、禅堂における修行者の実際にも言及した、禅初学者必読の書。
禅の本質、目的、公案、修行……
初学者のためのわかりやすい禅
本書は、禅学の泰斗として名高い著者が外国人向けに英文で執筆した書を、日本人のために自ら邦訳したものである。禅は虚無主義か、単なる神秘主義か、無宗教か等々、不案内な者が抱きやすい禅への誤解を解き、禅の真実の姿を指し示している。併せて、禅の真理へ導くために用いられる公案や、禅堂における修行者の実際にも言及した、禅初学者必読の書。

古代ギリシアの歴史
講談社学術文庫
小王国分立から、外敵の侵入による混乱の時代を経て、紀元前8世紀に都市国家・ポリスの成立を見た古代ギリシア。民主主義の原点として、前5世紀に黄金期を迎えるポリスはいかに発展し衰退したか。アルファベットやオリンピア競技、ホメロスの詩、ソクラテス、プラトンの哲学など西洋文明の源流をたずね、古代ギリシアの栄光と落日をたどる名著。

長安
講談社学術文庫
前漢、唐をはじめ八王朝が都した世界最大の古都の全貌
前漢・前趙・前秦・後秦・西魏・北周・隋・唐の諸王朝が都した長安とはいかなる都市であったか。自然環境、都となる以前の歴史や文化を皮切りに、二百年余の都であった前漢の長安と、人口百万を擁する世界最大の都市として三百年近い栄華を誇った唐の長安を徹底研究。その形状、人口、行政、防備、経済、文化等の角度から、両都の姿を浮き彫りにする。
長安は洛陽とならぶ中国の代表的な古都である。前漢のときにはじめてここに都を定めてより、前趙・前秦・後秦・西魏・北周・隋・唐の諸王朝が都した。とりわけ前漢は二百年余り、唐は三百年近くの久しきにおよんだ。ただし同じく長安といっても、前漢と唐とではその位置が少しく異なる。前漢の長安城は今日の陜西省西安市の西北約10キロメートルのあたり、唐の長安城は今日の西安市のあたりである。――(本書「はじめに」より)

森の文化史
講談社学術文庫
太古、豊かな照葉樹林に囲まれていた日本列島。しかし二千年前の登呂遺跡から出土した木製品はスギ材にかわり、現在の白砂青松はさらなる森の荒廃を証明している。日本の環境破壊は弥生時代に起こっていた――。「森の文化」と呼ばれるわが国で、人びとは森林とどのように接してきたのか。そしてその先に見えてくる、文明と自然の共生関係とは何か。

古代国家と軍隊
講談社学術文庫
大伴氏などの世襲的武力に支えられた大和朝廷。その武人としての意識は、防人など地方の農民層にも浸透した。この「皇軍」に対し、皇族・貴族の政治的抗争の中から生まれた私的な武力が、平安時代には権門勢家(けんもんせいか)の武力として発展するが、やがて起こる内乱は、権門と訣別した源頼朝によって収束される。軍事力の質的変化から古代日本の変動を解いた名著。

ナポレオン(下)
講談社学術文庫
栄光の座から幽囚の身へ 英雄の末路を辿る迫真の描写
栄光の座から幽囚の身へ。破竹の勢いでヨーロッパを席捲したナポレオンは、ロシア遠征に失敗、急転直下、転落への道を突き進む。パリ開城、皇帝退位、エルバ島流刑。ウィーン会議の後、パリ帰還、百日天下、再び流刑、落魄の日々、そして死。下巻は、凋落の一途を辿る英雄の末路とその心の葛藤、および著者のナポレオン観を記す。出色の英雄伝の新訳。
著者は、希代の英雄の内面史を綴ろうと試みている。そしてその奔放な行動を史実を踏まえて追いながら、その時々の心情に迫ることにより、現実味のある、人間的なナポレオン像を生き生きと描き出した。歴史の一大転換期に生きた男の心理を克明に辿ることにより、高い志をもちながらも、その時代固有の基本的価値観やものの考え方に抗いきれず、呑み込まれてゆく様を活写している。――(本書「訳者あとがき」より)

ナポレオン(上)
講談社学術文庫
不世出の英雄を描く
戴冠200年 世界的名著
1789年に勃発したフランス革命のさなか、数々の戦功を立てて、皇帝に登り詰めたナポレオン。果敢な行動力、卓越した戦術、天性の指導力、軍事的・政治的天才の歩んだ道はいかなるものだったか。揺れ動く英雄の心の内面に光を照射し、その生誕から臨終までの全生涯を克明に描写する。人間ナポレオンの実像に迫る注目の世界的名著。
ナポレオン像を描くに当たり、筆者は、国家との関係より、道義(モラル)との関係に重きをおいた。正否を問わず彼が終生戦い続けた国家より、彼の抱いていた道義観との関わりに比重がかかっている。だが、彼を奇跡の人とみなしてはいない……人生の途上で遭遇するさまざまな場面におけるその心情の把握に、セント=ヘレナで到達する魂の昇華の過程を辿ることに、努めた。――(本書「序文」より)

日本の聖地
講談社学術文庫
熊野・四国霊場・白山・出羽三山――
日本の原風景を求め12の信仰の場をゆく
常世信仰の熊野、磨崖仏の国東半島、四国霊場、そして山岳信仰の白山・立山や修験道の出羽三山。わが国固有の風土と生命観が育んだ信仰の多様な形を追究するため、全国の聖地・霊場をつぶさに踏査。そこに見たものは、原始自然崇拝と渡来宗教が融合した姿と、それを希求した名もなき人々の信心だった――。日本の宗教の原初の世界を探る聖地紀行。

始皇帝陵と兵馬俑
講談社学術文庫
新たな発掘で次々に判明 巨大陵墓と地下帝国の驚異
兵馬俑坑・徹底図解付
2200年以上も前に中国を統一した秦の始皇帝。その巨大陵墓は二重の城壁を備え、墳丘の下には未発掘の地下宮殿が眠る。死後も皇帝の霊魂が地上で暮らすための寝殿を建て、8000体に及ぶ兵馬俑を造った帝国不滅への願望。現地踏査を続ける第一人者が最新の研究成果や遺跡の徹底図解を紹介し、地下帝国の発掘から滅亡した地上の帝国の実像に迫る。

アリストテレス
講談社学術文庫
古代ギリシア最高の知性として、プラトンと並び立つ不滅の哲人アリストテレス。「万学の祖」と呼ばれるごとく、彼は人間界、自然界から神に至るまで、森羅万象の悉くを知の対象とし、精緻な思想を展開した。壮大な学問の精髄を読み解くとともに、彼の生涯やその学問がわが国へ受容される過程等を、碩学が情熱と蘊蓄を傾けて綴るアリストテレス入門。