講談社学術文庫作品一覧

ヴェニスからアウシュヴィッツへ
ヴェニスからアウシュヴィッツへ
著:徳永 恂
講談社学術文庫
和辻哲郎文化賞受賞 『ヴェニスのゲットーにて』の文庫版 ナチスによるユダヤ人虐殺は何故起きたのか。ユダヤ人への過酷な差別や迫害、残忍非道な異端審問。ユダヤに寛容なイスラムに対し、血の滲む西洋の歴史。ゲットー発生の地ヴェニスなどユダヤ人殉難の地を旅し、ヨーロッパの陰の歴史、反ユダヤ主義の根源に迫り、近代思想の意外な真実と陥穽を鋭く剔出する。識者絶賛、和辻哲郎文化賞受賞作品の待望の文庫版。 私の主題はあくまでもアウシュヴィッツに極まるヨーロッパ近代の反ユダヤ主義思想をめぐるドラマであり、「アウシュヴィッツ以後」における人間の生き方にあった。私の旅は、異域への現実の旅であるとともに、歴史への想像上の旅であり、また文献の内部への旅でもあった。ただそれは……必ずしもアウシュヴィッツへの旅ではなく、アウシュヴィッツからの旅であった。――(本書「原本あとがき」より)
飛鳥の朝廷
飛鳥の朝廷
著:井上 光貞
講談社学術文庫
倭王武にはじまり、仏教伝来と聖徳太子の登場、大化の改新を経て白村江の戦い、壬申の乱と続いた動乱の時代。中国・朝鮮と濃密な関係にあった日本は、東アジア世界の激動の中、文化の飛躍的発展を背景に古代天皇制を確立し、統一国家への歩みを進めた。『日本書紀』など史料の精緻な分析により、史学界の泰斗が6~7世紀の日本の姿を鮮やかに描き出す。
禅学入門
禅学入門
著:鈴木 大拙
講談社学術文庫
本書は、禅学の泰斗として名高い著者が外国人向けに英文で執筆した書を、日本人のために自ら邦訳したものである。禅は虚無主義か、単なる神秘主義か、無宗教か等々、不案内な者が抱きやすい禅への誤解を解き、禅の真実の姿を指し示している。併せて、禅の真理へ導くために用いられる公案や、禅堂における修行者の実際にも言及した、禅初学者必読の書。 禅の本質、目的、公案、修行…… 初学者のためのわかりやすい禅 本書は、禅学の泰斗として名高い著者が外国人向けに英文で執筆した書を、日本人のために自ら邦訳したものである。禅は虚無主義か、単なる神秘主義か、無宗教か等々、不案内な者が抱きやすい禅への誤解を解き、禅の真実の姿を指し示している。併せて、禅の真理へ導くために用いられる公案や、禅堂における修行者の実際にも言及した、禅初学者必読の書。
電子あり
古代ギリシアの歴史
古代ギリシアの歴史
著:伊藤 貞夫
講談社学術文庫
小王国分立から、外敵の侵入による混乱の時代を経て、紀元前8世紀に都市国家・ポリスの成立を見た古代ギリシア。民主主義の原点として、前5世紀に黄金期を迎えるポリスはいかに発展し衰退したか。アルファベットやオリンピア競技、ホメロスの詩、ソクラテス、プラトンの哲学など西洋文明の源流をたずね、古代ギリシアの栄光と落日をたどる名著。
電子あり
長安
長安
著:佐藤 武敏
講談社学術文庫
前漢、唐をはじめ八王朝が都した世界最大の古都の全貌 前漢・前趙・前秦・後秦・西魏・北周・隋・唐の諸王朝が都した長安とはいかなる都市であったか。自然環境、都となる以前の歴史や文化を皮切りに、二百年余の都であった前漢の長安と、人口百万を擁する世界最大の都市として三百年近い栄華を誇った唐の長安を徹底研究。その形状、人口、行政、防備、経済、文化等の角度から、両都の姿を浮き彫りにする。 長安は洛陽とならぶ中国の代表的な古都である。前漢のときにはじめてここに都を定めてより、前趙・前秦・後秦・西魏・北周・隋・唐の諸王朝が都した。とりわけ前漢は二百年余り、唐は三百年近くの久しきにおよんだ。ただし同じく長安といっても、前漢と唐とではその位置が少しく異なる。前漢の長安城は今日の陜西省西安市の西北約10キロメートルのあたり、唐の長安城は今日の西安市のあたりである。――(本書「はじめに」より)
森の文化史
森の文化史
著:只木 良也
講談社学術文庫
太古、豊かな照葉樹林に囲まれていた日本列島。しかし二千年前の登呂遺跡から出土した木製品はスギ材にかわり、現在の白砂青松はさらなる森の荒廃を証明している。日本の環境破壊は弥生時代に起こっていた――。「森の文化」と呼ばれるわが国で、人びとは森林とどのように接してきたのか。そしてその先に見えてくる、文明と自然の共生関係とは何か。
古代国家と軍隊
古代国家と軍隊
著:笹山 晴生
講談社学術文庫
大伴氏などの世襲的武力に支えられた大和朝廷。その武人としての意識は、防人など地方の農民層にも浸透した。この「皇軍」に対し、皇族・貴族の政治的抗争の中から生まれた私的な武力が、平安時代には権門勢家(けんもんせいか)の武力として発展するが、やがて起こる内乱は、権門と訣別した源頼朝によって収束される。軍事力の質的変化から古代日本の変動を解いた名著。
ナポレオン(下)
ナポレオン(下)
著:エミ-ル・ル-トヴィヒ,訳:北澤 真木
講談社学術文庫
栄光の座から幽囚の身へ 英雄の末路を辿る迫真の描写 栄光の座から幽囚の身へ。破竹の勢いでヨーロッパを席捲したナポレオンは、ロシア遠征に失敗、急転直下、転落への道を突き進む。パリ開城、皇帝退位、エルバ島流刑。ウィーン会議の後、パリ帰還、百日天下、再び流刑、落魄の日々、そして死。下巻は、凋落の一途を辿る英雄の末路とその心の葛藤、および著者のナポレオン観を記す。出色の英雄伝の新訳。 著者は、希代の英雄の内面史を綴ろうと試みている。そしてその奔放な行動を史実を踏まえて追いながら、その時々の心情に迫ることにより、現実味のある、人間的なナポレオン像を生き生きと描き出した。歴史の一大転換期に生きた男の心理を克明に辿ることにより、高い志をもちながらも、その時代固有の基本的価値観やものの考え方に抗いきれず、呑み込まれてゆく様を活写している。――(本書「訳者あとがき」より)
ナポレオン(上)
ナポレオン(上)
著:エミ-ル・ル-トヴィヒ,訳:北澤 真木
講談社学術文庫
不世出の英雄を描く 戴冠200年 世界的名著 1789年に勃発したフランス革命のさなか、数々の戦功を立てて、皇帝に登り詰めたナポレオン。果敢な行動力、卓越した戦術、天性の指導力、軍事的・政治的天才の歩んだ道はいかなるものだったか。揺れ動く英雄の心の内面に光を照射し、その生誕から臨終までの全生涯を克明に描写する。人間ナポレオンの実像に迫る注目の世界的名著。 ナポレオン像を描くに当たり、筆者は、国家との関係より、道義(モラル)との関係に重きをおいた。正否を問わず彼が終生戦い続けた国家より、彼の抱いていた道義観との関わりに比重がかかっている。だが、彼を奇跡の人とみなしてはいない……人生の途上で遭遇するさまざまな場面におけるその心情の把握に、セント=ヘレナで到達する魂の昇華の過程を辿ることに、努めた。――(本書「序文」より)
日本の聖地
日本の聖地
著:久保田 展弘
講談社学術文庫
熊野・四国霊場・白山・出羽三山―― 日本の原風景を求め12の信仰の場をゆく 常世信仰の熊野、磨崖仏の国東半島、四国霊場、そして山岳信仰の白山・立山や修験道の出羽三山。わが国固有の風土と生命観が育んだ信仰の多様な形を追究するため、全国の聖地・霊場をつぶさに踏査。そこに見たものは、原始自然崇拝と渡来宗教が融合した姿と、それを希求した名もなき人々の信心だった――。日本の宗教の原初の世界を探る聖地紀行。
始皇帝陵と兵馬俑
始皇帝陵と兵馬俑
著:鶴間 和幸
講談社学術文庫
新たな発掘で次々に判明 巨大陵墓と地下帝国の驚異 兵馬俑坑・徹底図解付 2200年以上も前に中国を統一した秦の始皇帝。その巨大陵墓は二重の城壁を備え、墳丘の下には未発掘の地下宮殿が眠る。死後も皇帝の霊魂が地上で暮らすための寝殿を建て、8000体に及ぶ兵馬俑を造った帝国不滅への願望。現地踏査を続ける第一人者が最新の研究成果や遺跡の徹底図解を紹介し、地下帝国の発掘から滅亡した地上の帝国の実像に迫る。
アリストテレス
アリストテレス
著:今道 友信
講談社学術文庫
古代ギリシア最高の知性として、プラトンと並び立つ不滅の哲人アリストテレス。「万学の祖」と呼ばれるごとく、彼は人間界、自然界から神に至るまで、森羅万象の悉くを知の対象とし、精緻な思想を展開した。壮大な学問の精髄を読み解くとともに、彼の生涯やその学問がわが国へ受容される過程等を、碩学が情熱と蘊蓄を傾けて綴るアリストテレス入門。
正法眼蔵(二)全訳注
正法眼蔵(二)全訳注
著:増谷 文雄
講談社学術文庫
真の仏法を追い続けた日本曹洞宗の開祖、道元は、現代にも通ずる哲学的思索を展開した思想家であり、豊かな古典的教養をもった稀代の<詩人>でもあった。きらめく言葉、彫琢された美しい文章、漢語混じりの独特の和文で綴られた『正法眼蔵』。本書では、心の問題を追究した「心不可得」、仏教の真義に迫る「仏性」等の巻々を収録する。
鈴木大拙
鈴木大拙
著:秋月 龍ミン
講談社学術文庫
敬慕と愛情をこめて弟子が綴る<人類の教師>と呼ばれた大禅者の生涯と思想 読みやすい大文字版 生涯をかけて禅思想・大乗仏教思想の探究と、その世界的普及に尽力した鈴木大拙。<人類の教師>と称された稀代の禅者は何を語り、どのように思索したのか。大拙に二十年にわたって師事した、鈴木禅学の数少ない継承者の一人である著者が、敬慕と愛情をこめて綴る、師の生涯と思想。
中国古代の科学
中国古代の科学
著:薮内 清
講談社学術文庫
羅針盤・紙・印刷術・火薬――人類の発展をもたらした東洋科学の独創性 羅針盤・紙・印刷術・火薬。近世ヨーロッパの開幕を招来し、人類の歴史を飛躍的に発展させた発明は古代中国に生まれた。文明は東から西へ――。本書は、東アジアにおいて構築された高度な科学技術の独自性を体系的に解明し、西洋に偏向して語られてきた近代以降の科学史に楔を打つ。世界史的な視座から見た科学文明の位置づけとその交流とは何か。
渤海国
渤海国
著:上田 雄
講談社学術文庫
7世紀末、中国東北部・高句麗の故地に建国された渤海は、奈良・平安時代を通じて34回も日本に使節を派遣した。当初、唐や新羅に対する軍事上の連携から始まった交流は、北方産の毛皮と日本の絹などとの交易が主体となり、華麗な宮廷外交を展開。菅原道真と漢詩の応酬をした大使父子も登場した。200年の交流の実像に、最新の研究をふまえ迫る。
正法眼蔵(一)全訳注
正法眼蔵(一)全訳注
著:増谷 文雄
講談社学術文庫
味のある名訳、懇切な注解 禅の奥義を説く待望の名著の文庫化 磨き上げられた迫力ある名文で、禅の奥義を追究した、日本仏教思想史上、屈指の名著『正法眼蔵』。浄土宗の人でありながら、弱年より道元に傾倒、繰り返し繰り返し読み込み、爾来、五十年。味ある名現代語訳、懇切丁寧でわかりやすい注解。人間の真のあり方を求め続けた著者渾身の訳業。道元の主著の真髄とは何か、その本質に肉迫する。 (学生時代、)一夏かかって一処懸命に『正法眼蔵』を読み通した。……「学道の人は先づ須(すべから)く貧なるべし」とか、……「学道の人、衣糧(えりょう)を煩ふこと莫(なか)れ」とか、「貧なるが道(どう)に親(したし)きなり」とか、そのような一連のことばの真意を、そのころなお年若かったわたしは、どうしても理解することができなかった。そのくせ、それらのことばは、ぐっとわたしの心をつかんで、どうしても放してくれないのである。――(本書「道元をみつめて」より)
牧野富太郎自叙伝
牧野富太郎自叙伝
著:牧野 富太郎
講談社学術文庫
わが国の植物分類学を独力で切り拓いた巨人・牧野富太郎。幼少より植物に親しみ、小学校中退後の人生を独学による植物研究に捧げた彼は、権威による研究妨害や貧困に屈することなく、95年の生涯の晩年まで現役であり続けた。彼が採集した標本は実に60万点、命名した植物は2500余。「植物学の父」が独特の牧野節で綴る波瀾万丈の「わが生涯」。(講談社学術文庫) わが国の植物分類学を独力で切り拓いた巨人・牧野富太郎。幼少より植物に親しみ、小学校中退後の人生を独学による植物研究に捧げた彼は、権威による研究妨害や貧困に屈することなく、95年の生涯の晩年まで現役であり続けた。彼が採集した標本は実に60万点、命名した植物は2500余。「植物学の父」が独特の牧野節で綴る波瀾万丈の「わが生涯」。
電子あり
アジアの海の大英帝国 19世紀海洋支配の構図
アジアの海の大英帝国 19世紀海洋支配の構図
著:横井 勝彦
講談社学術文庫
極西の島国イギリスがなぜ極東の海を制し得たか 19世紀中葉、幾多の植民地をもち、世界市場の制覇を狙うイギリスにとって、海外権益の維持・拡充を保証する海洋支配体制の確立は急務であった。その柱となったのは、近代化され、整備された海軍力と造船業、事あるときに「陰の海軍」の役割をも担う海運業である。東アジアの海をも制し得た、大英帝国によるたくみな海洋支配の構造を明らかにする。
論語 <全訳注>
論語 <全訳注>
著:加地 伸行
講談社学術文庫
儒教学の第一人者の新訳で永遠の古典が鮮やかに甦る 豊富な語句索引付 孔子とその門人の言行録から成る『論語』は私たちの生き方の原点を見つめた思索の宝庫であり、人間性を磨く叡智が凝縮した永遠の古典でもある。読めば読むほど胸に深く沁み込む簡潔な言葉の数々。儒教学の第一人者の意欲的で懇切丁寧な注釈と、孔子が現前し、今にも語り出すかのような臨場感ある現代語訳。『論語』がもつ溢れる魅力と豊かな精神が一段と輝く。