講談社学術文庫作品一覧

古代殷王朝の謎
講談社学術文庫
20世紀半ば、王宮址の発見で実在が確認された中国最古の国家・殷。『史記』に描かれた伝説の王朝は、青銅器と墓跡の研究や甲骨文の解読によって、3000年余の時を超え、その姿が明らかになる。自然神信仰と祖先崇拝が示す王権の確立過程と脆弱さ。諸王の墓に葬られた殉葬者が語るもの――。中国古代史研究の画期となった幻の名著、待望の文庫化。

明治大帝
講談社学術文庫
数え16歳で践祚し、新生日本の進路をめぐる理念や思惑が交錯するなか、明治という多難な時代と一体となって生きた明治天皇。天子としての権威と天皇としての権力とを一身に体現する彼のもと、日本は内乱期を乗り越え、近代的国家体制を確立し、日清・日露の両戦争に勝利……。史上唯一「大帝」と呼ばれた天皇睦仁の生涯を照射し、その実像に迫る。

バーナード・リーチ日本絵日記
講談社学術文庫
宮川香山(みやがわこうざん)・六代乾山(けんざん)に師事、東西の伝統を融合し、独自の美の世界を想像したイギリス人陶芸家リーチ。昭和28年、19年ぶりに訪れた第2の故郷日本で、濱田庄司・棟方志功・志賀直哉・鈴木大拙らと交遊を重ね、また、日本各地の名所や窯場を巡り、絵入りの日記を綴る。随所にひらめく鋭い洞察、真に美しいものを見つめる魂。リーチの日本観・美術観が迸(ほとばし)る興趣溢れる心の旅日記。

無門関を読む
講談社学術文庫
禅書の古典としてその名も高い『無門関』は、中国南宋の僧・無門慧開(むもんえかい)が四十八の公案に評唱と頌(じゅ)を配した公案集である。禅の主眼を「無」の一字に見るこの書は、難解なことでも知られる。そこで本書では、『無門関』全文を現代語訳し、公案を易から難への順に並べかえ、平易な解説を付して、より深い理解への一助となるよう試みた。原文・訓読文つき。

「満州国」見聞記 リットン調査団同行記
講談社学術文庫
1931年9月18日、中国東北部で勃発した紛争に世界は震撼した。国際連盟は実情把握のため、リットン卿を団長とする調査団を派遣する。日本、中国、満州、朝鮮――。一行はゆく先々で昭和天皇、張学良、溥儀ら錚々たる面々と会い、また名もなき民衆の生活をまのあたりにした。調査団の一員のドイツ人政治家が見聞した、戦乱前夜の東アジアの姿。

幻想の未来 唯幻論序説
講談社学術文庫
自我も世界も幻想である
欧米人を支える「近代的自我」――それは日本人が夢見つづけた幻影だった。著者は、人間が本能の壊れた動物であり、「自我」とはその代用品として造られた幻想だと喝破する。それゆえに自我は、常に何物かに支えられずには存立できない不安定な存在である。そのラディカリズムにより、20世紀後半の日本の知に深刻な衝撃を与えた「唯幻論」の代表作。
わたしは、人間の問題は自我の問題であると思った。それでは、自我とは何か、見たところ、人間以外の動物は自我のようなものは持っていないようで、それで別に困っているわけではなく、うまく世界のなかで生きている。人間だけがなぜ、こんな面倒な煩わしいものを持っているのか。……しかし、どうも人間にとって、自我は必要不可欠らしい。なぜか。どうにかならないか。――(本書より)

新装版 源氏物語(六)
講談社学術文庫
源氏が隠れて数年が過ぎ、物語は〈宇治十帖〉へ。
宇治に隠棲する源氏の異母弟・八宮のもとへ親しく通うようになった薫は、その地で自分の出生の秘密を知らされる。そして八宮の姫君たちとの運命的な出会い――。
完訳『源氏』第6巻は「橋姫」から「東屋」までを収録。匂宮と薫、二人の貴公子が織りなす恋愛絵巻のゆくえは。

吉田松陰 留魂録 (全訳注)
講談社学術文庫
切々と愛弟子に訴える最後の訓戒
炎の教師、松蔭の遺書
読みやすい大文字版
身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも 留置まし大和魂
志高く維新を先駆した炎の思想家吉田松陰が安政の大獄に連座し、牢獄で執筆した『留魂録』。
愛弟子へ切々と訴えかける最後の訓戒で、死に直面した人間が悟り得た死生観を書き記した格調高い遺書文学の傑作を味読・精読する。

フランス語をどう学ぶか
講談社学術文庫
世界屈指の、優美にして明晰な言語であるフランス語。この洗練された言葉が生んだ馥郁たる文化を芳醇な酒のように愉しみつつ、本書は、発音・会話・単語・作文・読書の5視点から言葉の特質を解明する。流れる音楽としての発音、独特の発想から、辞書の引き方、単語の覚え方まで、フランス語をいかに学び、味わうかを追究した、香気あふれる入門書。

蔦屋重三郎 江戸芸術の演出者
講談社学術文庫
江戸中期の出版界に彗星のごとく登場し、瞬く間に頂点にまで上り詰めた版元がいる。その名は蔦屋重三郎。作家や絵師の才能を見抜く炯眼(けいがん)と、独創的企画力を併せ持つ彼は、京伝、馬琴、歌麿、写楽らを育て、黄表紙、狂歌絵本、浮世絵等に人気作を連発、時代の寵児となった。天明・寛政期に戯作文芸や浮世絵の黄金期を創出した奇才の波瀾の生涯を追う。

果てしなく美しい日本
講談社学術文庫
あふれる緑、簡素な美の文化
若きドナルド・キーンの描く日本
豊かな水と緑に満ちた山並み連なる美しい国、日本。
来日間もない若き日の著者が、瑞々しい感覚で、日本とはどのような国かを論じ、母国の人々に紹介する。
近代化による大変貌にもかかわらず依然として変わらない日本人の本質を見つめ、著しい美的趣向、豊かな感受性、比類のない多様性など日本文化の特性を刳り出す。日本への愛情溢れる日本論。

信長と天皇 中世的権威に挑む覇王
講談社学術文庫
将軍義昭の追放、一向一揆の鎮圧、そして割拠する戦国大名にも彼に伍する者はすでにいない。中世的権威を否定することで統一事業を推し進め、いまや天下を手中にせんとする覇王の前に立ちはだかった最大の障壁は正親町(おおぎまち)天皇だった――。
天下人・信長は天皇を超えようとしたのか?信長の政治構想を追究し、天皇制存続の謎と天皇の権威の実体に迫る。

平家物語 無常を聴く
講談社学術文庫
ゆれ定まらぬもの、常ならざるものと対峙した珠玉のエッセイ
〈第23回大佛次郎賞受賞作〉
驕れる平家、その専横の犠牲者・成親と俊寛。清盛なきあとの平家を京から追う義仲、壇の浦に沈める義経。騒乱の巻き添えとなった多くの者、そして生き残った平家の人々。すべては「無常」の中に流れてゆく。
平家一門の興隆から滅亡までを描いた不朽の古典を精読し、ゆれて定まらぬもの、常ならざるものと向きあった珠玉のエッセイ。
『平家』を読む。それはいつでも物の気配に聴き入ることからはじまる。身じろぎして、おもむろに動き出すものがある。それにつれて耳に聞こえはじめるのは、胸の動悸と紛らわしいほどの、ひそかな音である。『平家』が語っている一切はとっくの昔、遠い世におわっているのに、何かのはじまる予感が、胸さわぎを誘うのだろうか。それとも、何かのおわる予感から、胸がざわめきはじめるのだろうか。――(本書より)

吉原と島原
講談社学術文庫
公娼を一定区域内に集めた遊廓は、豊臣秀吉の政策下に出現し、江戸時代に発展を遂げた。やがて遊廓は、単なる性的遊興の場に止まらず、サロン的性格をもつに至る。主役たる遊女の艶姿や特異な風俗、遊女を巡る人間関係は、江戸期の文学、絵画、演劇等のモチーフとなった。
代表的遊廓、江戸の吉原、京の島原を中心に、その歴史、構造、習俗等を探る。

現代の精神分析
講談社学術文庫
人のこころには広大な無意識の領野が潜んでいる! 20世紀の思想を根源から変革した精神分析。それは、始祖フロイトのどのような発想から誕生したのか? いかに隣接諸学をまきこんで、巨大な人間学として大成したか? フロイトから現代のエリクソン、クライン、ウィニコットへ、1世紀にわたる精神医学の冒険を、斯界第一人者が総展望する待望の書。
人のこころには広大な無意識の領野が潜んでいる!
20世紀の思想を根源から変革した精神分析。それは、始祖フロイトのどのような発想から誕生したのか? いかに隣接諸学をまきこんで、巨大な人間学として大成したか?
フロイトから現代のエリクソン、クライン、ウィニコットへ、1世紀にわたる精神医学の冒険を、斯界第一人者が総展望する待望の書。

紫式部日記(下)全訳注
講談社学術文庫
敦成(あつひら)親王の誕生を中心に御堂関白家の繁栄を描く本書は、最盛期の平安朝宮廷の生活絵巻であり、作者の複雑な心境が吐露される貴重な文献でもある。紫式部は自己を冷厳に凝視し、憂愁に満ちた内面を語り、また、道長との歌の贈答、中宮彰子への新楽府御進講、和泉式部や清少納言などに対する辛口の批評も載せる。多彩な内容を盛り込む特異な日記を丁寧に読み解く。

イスラム入門
講談社学術文庫
欧米で評価の高いはじめてのイスラム
読みやすい大文字版
「他者」との交流が活発になり、あらゆる境界が消失する現代社会において、異文化としてのイスラムを理解する重要性はいよいよ高まっている。彼らはいかなる歴史を持ち、どのような理想を抱いているのか。中近東研究の泰斗が、西欧的偏見や護教的立場を離れ、1つの宗教思想・経験の自発的表現としてのイスラムを平易な言葉で解き明かした歴史的名著。

明治日本美術紀行 ドイツ人女性美術史家の日記
講談社学術文庫
訪日5度、滞日延べ10年余――ケルン東洋美術館の生みの親フリーダ・フィッシャー。彼女は、竹内栖鳳、黒田清輝、井上馨、田中光顕、住友吉左衛門、根津嘉一郎、原三渓ら美術家・蒐集家と交流して日本美術への認識を深め、それらを育んだ日本人の気息に触れんと努めた。本書は彼女の日本日記であり、近代日本美術界の消息を伝える貴重な資料でもある。待望の書、初の全訳成る。
訪日5回、滞日延べ10年余!
日本美術に魅了された女性の日記
ケルン東洋美術館創設への足跡を記す
訪日5度、滞日延べ10年余――ケルン東洋美術館の生みの親フリーダ・フィッシャー。彼女は、竹内栖鳳、黒田清輝、井上馨、田中光顕、住友吉左衛門、根津嘉一郎、原三渓ら美術家・蒐集家と交流して日本美術への認識を深め、それらを育んだ日本人の気息に触れんと努めた。
本書は彼女の日本日記であり、近代日本美術界の消息を伝える貴重な資料でもある。待望の書、初の全訳成る。
わたしたちは……東アジア人の特質、民族性、風俗習慣、それに欲求について知り、東アジア美術がひとびとに何を語りかけているのか、現地に身をおいて神髄をとらえようと考えた。その国のひとびとと交わり、芸術を目で見て、皮膚に感じ、具体的な技法はもとより、芸術作品を生み出す心性や気息というものを知りたいと願ったのである。――(本書「まえがき」より)

クルス『中国誌』―ポルトガル宣教師が見た大明帝国
講談社学術文庫
ヨーロッパ語で最初に公刊された中国専門書。
ドミニコ会士が見出した、地の果ての驚くべき巨大帝国見聞録。
16世紀。アジア大陸の果て、大明帝国に辿り着いたポルトガル宣教師は何を見たか?途方もなく広い国土、壮麗な建築物、全土を覆う舗装道路網、整然とした法、諸制度。そして、おびただしい人々の群れ、市場にあふれかえる穀物・肉・魚介から、纏足(てんそく)、骨・人糞の利用などまで。ドミニコ会士が巨細にわたり書き記した、知られざる巨大帝国見聞録。

紫式部日記(上)全訳注
講談社学術文庫
『源氏物語』の作者、紫式部の綴った宮仕え日記は、平安朝宮廷社会を克明に描写した貴重な風俗資料である。安産を願う加持祈祷、若宮誕生、初孫に目を細める道長。そして、御湯殿の儀式、豪奢華麗な御産養(うぶやしない)、一条天皇の土御門第への行幸など次々と繰り広げられる祝儀や賀宴。親王誕生の慶びに沸く御堂関白家の様子を、中宮彰子に仕えた式部が伝える注目すべき日記の全訳注。