講談社学術文庫作品一覧

アリストテレス 形而上学
講談社学術文庫
〈万学の祖〉といわれるギリシア古典哲学の最大の巨人アリストテレス。本書は、彼の思想の根幹をなす「形而上学」を、哲学者・岩崎勉がギリシア語原本から初めて日本語に翻訳したものである。「存在するものとは何か」を追究して、アリストテレスは、〈質料〉〈形相〉など、個体の本質と属性を表わす用語と概念をつくり、万学の基礎を築いた。あらゆる学問の最高峰に位置づけられた古典中の古典が、いま甦る。

憑霊信仰論 妖怪研究への試み
講談社学術文庫
「憑く」という語の本来の意味は、事物としてのものにもともと内在する精霊や、異界の神霊などが、別の事物としてのものに乗り移ることを意味していた。本書は、こうした憑依現象を手懸りにして、孤憑き、犬神憑き、山姥、式神、護法、付喪神など、人間のもつ邪悪な精神領域へと踏み込み、憑依という宗教現象の概念と行為の体系を介して、日本人の闇の歴史の中にうごめく情念の世界を明らかにした好著。

現代の比較文学
講談社学術文庫
個性豊かな比較文学の研究者達が、自らの研究テーマに即して西洋と日本の文学の思想、芸術が抱える諸問題に照明をあて、さらに和洋両文明の接触や衝突などを具体的に論考。また外国の比較文学者との対談、大胆な解釈による文献紹介を併せ収めるなどさまざまな視点から日本の比較文学のあり方を考察。意欲的なテーマと内容で比較文学の可能性を探り、その多彩で実りのある発展の道をひらいた刮目の書。

三種の神器 西洋人の日本文化史観
講談社学術文庫
ドイツの経済学者ジンガーは、昭和6年に来日し、東大等で政治経済学を講じた。日本の風習と文化に深く心惹かれたジンガーは、日本人の心の深層に残る民族的遺産として三種の神器に着目し、鏡・剣・勾玉を正義・英知・敬虔という日本人の徳目の象徴と捉えた。中国と日本の生活観・芸術観を西洋人の立場から比較し、〈日本的なもの〉の本質を考察するなど、今なお新鮮さを失わない日本文化論の名著。

法華経を読む
講談社学術文庫
法華経の教えの根本思想はなにか。法華経の行者という自らの実践をとおしてこれを把握したのは、鎌倉時代の日蓮聖人である。とんな衆生も救わずにはおかないという仏陀の方便の力を説いて法華経にまさる他の経はなく、まさしく諸経の王といわれるゆえんである。わずか7巻28作品の経典の教えを、日蓮は「心の財第一なり」といった。本書こそ混迷を極める現代を生きる人々に必読の書といえよう。

カエサル
講談社学術文庫
古来、軍人として、また文人としても高く評価されてきた古代ローマの英雄カエサル。彼は形骸化した共和政から帝政への道を拓いた大政治家でもあった。ケルト人やゲルマン人と戦ったガリア遠征の赫々たる戦果をもとに、中央政界での勢力を拡大したが、「1人支配」体制の完成直前に暗殺される。その波乱万丈の生涯は、歴史的転換期に変革を進めた人物の悲劇を物語る。ローマ史の泰斗による必読の好著。

漱石と世紀末芸術
講談社学術文庫
漱石文学の原点は西洋美術との出会いにあった。ミレイ、ロートレック、ビアズリーなど、ヨーロッパの世紀末芸術との相互交渉によって形づくられ、東洋美術の神髄に覚醒していった漱石。ロンドン留学の体験を偉大なる教訓にして人生を考え、洞察し、自己を完結し東洋への回帰を図った近代人漱石。その生き様と世界を、西洋絵画との邂逅を通して明治の精神史の中にみごとに浮き彫りにした注目の書。

マキアヴェッリと『君主論』
講談社学術文庫
小国分立し戦乱が絶え間なかったルネサンス期イタリアにあって、マキアヴェッリは権力の本質、その獲得と維持の方法、喪失の原因を追究した。政変により2度も追放の憂き目を見る数奇な運命のなかで、彼が著した『君主論』は近代政治学の嚆矢となる。本書はマキアヴェッリの主著『君主論』を全訳するとともに、その生涯をとりまく華麗な歴史群像を描写しながら思想形成の背景を明らしにした力作である。(講談社文庫)
マキアヴェッリの思想と著書『君主論』全訳近代政治学の開祖マキアヴェッリの生涯と思想形成をたどりながら、混迷の時代に権力の正体を見抜いて名高い主著『君主論』とその真髄を政治学の第一人者が論述。

音楽と言語
講談社学術文庫
本書では西洋音楽史の形式をとりながら、単なる年代記的な現象記述とは趣を異にした音楽の内面史が語られる。ミサ音楽の歩みを音楽と言語とのたえざる対決の歴史として、音楽の言語化、言語の音楽化という弁証法的過程の歴史として捉えるのである。若き精神医学者としてミュンヘン大学に留学した訳者が、ゲオルギアーデスの講義を聴講して感銘を受け、敬愛をこめて訳出した西洋音楽史の歴史的名著。

芭蕉連句評釈(下)
講談社学術文庫
芭蕉の代表的歌仙10巻をえらんで、連句付け合いのドラマと言葉の重層性をあざやかに解き明かす──古典評釈を以て詩となす壮大なこころみ、全2巻。本下巻には、元禄3年(1690)、郷里伊賀上野から湖南の膳所(ぜぜ)へ出、京に入った「奥の細道」後の俳諧師が周到にくわだてた第2次の新風「花見の巻」(ひさご)「灰汁桶(あくおけ)の巻」(猿蓑)のほかに、「炭売の巻」「霜月の巻」(冬の日)、「空豆の巻」(炭俵)を併せ収める。

芭蕉連句評釈(上)
講談社学術文庫
貞享元年(1684)冬名古屋で、元禄3年(1690)晩秋京都で、同7年(1694)初春江戸で、3たび新風を宣言した、世に言う“蕉風三変”の記念すべき三歌仙(「狂句こがらしのまき」五吟・「鳶(とび)の羽の巻」四吟・「梅(むめ)が香(か)の巻」両吟)に「霽(しぐれ)の巻」「雁(かり)がねの巻」を加えた5巻の連句評釈を収録。綿密な考証と溢れる想像力で古典詩歌の解釈法に新たな展望を拓き、平成2年度芸術選奨を受けた画期的評釈。(全2巻)

ケインズ
講談社学術文庫
1930年代の世界恐慌下、大量失業を救うために低金利政策と積極的な公共投資を主張して、伝統的理論を一新したケインズ。その経済思想と彼の代表的学説『雇用・利子および貨幣の一般理論』の骨格を、豊富な図表を用いて平易に説き、ケインズ経済学の真髄を論究。欧米など先進各国の経済運営に画期的変革をもたらし、いま再び世界的な長期不況の下で注目される大経済学者の理論と影響力を描く力作。

民俗学の旅
講談社学術文庫
自らを「大島の百姓」と称し、生涯にわたり全国をくまなく歩きつづけた宮本常一。その歩みは同時に日本民俗学体系化への確かな歩みでもあった。著者の身体に強く深く刻み込まれた幼少年時代の生活体験や美しい故郷の風光と祖先の人たち、そして柳田国男や渋沢敬三など優れた師友の回想をまじえながら、その体験的実験的踏査を克明かつ感動的に綴る。宮本民俗学をはぐくんだ庶民文化探究の旅の記録。
人間交際術
講談社学術文庫
円滑な人間関係を築く社交術の古典的名著。世間と社交の場において、幸福かつ満足に他の人々と生活し、隣人を幸福かつ愉快にさせるために、人はどのように振る舞えばよいか。複雑な人間交際術の秘訣を説く

新装版 言語史原理
講談社学術文庫
19世紀後半に急速な発達をとげた「史的言語学」。本書は、言語学を言語史ととらえるパウルが、その言語研究の原理と方法を体系化し、集大成したものである。心理学的な見地から、言語の変遷はどうして起こるか、言語を規定する条件は何か、またこれらの変化や変遷はどう分類するか等、言語の史的考察の必要性を強調。現代ドイツ語を中心に出発して言語一般の史的変遷の諸原理を論究した不朽の名著。

アメリカの大学
講談社学術文庫
伝統あるドイツの大学を範としながらも、自由を重んじたアメリカの大学は、極めて多種多様な価値観と指向性をもつ新しい高等教育の場として登場、発展してきた。ハーバードやイエール、シカゴなど、アメリカを代表する大学の成立と変革の歴史をたどり、理想に燃えたアメリカの大学人の情熱と努力の軌跡をみる。複雑、かつ巨大化している今日の大学の原点を見つめ、真のあるべき姿を追求した好著。

スミス・ヘ-ゲル・マルクス
講談社学術文庫
近代市民社会を考察して、アダム・スミスは土台である経済が「見えざる手」に支配されると考えた。後にヘーゲルは経済の自律的体系は不可能で、市民社会は国家に包摂されることで存立し得ると批判し、マルクスは経済の中の宥和なき矛盾のため市民社会は社会主義に移行すると説いた。本書は、西欧三大思想家が主張した自由主義、国家主義、社会主義の生い立ちと体系を独自の視点から考察した名著である。

新しき短歌の規定
講談社学術文庫
新しい歌とは何か、なぜ歌を作るのか。本書は、まさに戦後の歴史的局面のさまざまな変貌と混乱を振り払うように、沈滞し腐敗しかかった戦後短歌に指針と光明をあたえ歌論集として、多くの短歌実作者の記憶に長くとどめられてきた。実作者は己を賭けた生の追究をせよと説く34篇の歌論には、いずれも著者の意気込みと責任の強さがみなぎっている。時流を超えて新たな光芒を放つ現代短歌の原典。

レトリックの記号論
講談社学術文庫
われわれを取り囲む文化とは、巨大な記号の体系に他ならない。言語においても単語はそれぞれの意味をそなえた記号であり、それらが集まってできる文は複合的な記号となる。想像力ないし創造力を駆使して微妙な言語現象を分析・解読するレトリックの認識こそ、記号論のもっとも重要な主題なのである。言語学を越えた〈記号論としてのレトリック〉の領野を呈示した著者のレトリック研究の集大成の書。

近世日本国民史 維新への胎動(上)寺田屋事件
講談社学術文庫
文久元年五月、長藩長井雅楽は航海遠略を公武合体の楔子とすべき旨趣の口上書を朝廷に提出、朝幕間を周旋するも同二年正月十五日、坂下門外に於て閣老安藤対馬守が水戸浪士らに要撃される事件出来で頓挫。天下の大勢は長井流の公武合体策の実現すべからざるを見、薩藩島津久光は大兵を率いて上洛、朝主幕従公武合体を主唱、同年四月二十三日、尊攘派有馬新七ら薩藩士同士の乱闘、寺田屋事件起る。