講談社学術文庫作品一覧

現代の社会科学者 現代社会科学における実証主義と理念主義
現代の社会科学者 現代社会科学における実証主義と理念主義
著:富永 健一,その他:志賀 紀子,装丁:蟹江 征治
講談社学術文庫
18世紀から現代にかけて、社会科学は実証主義と理念主義の2大潮流を形成した。前者はコント、ミルに始まり、ワルラスの均衡理論はミクロ経済学の礎となり、パーソンズの機能理論は社会学発展に寄与した。一方、ヘーゲルに発する理念主義はディルタイの歴史主義、フッサールの現象学、そしてマルクス主義を生んだ。本書はこの社会科学の大河に分け入り、源流から現代に至るまでを克明に論述する。
茂吉秀歌『あらたま』百首
茂吉秀歌『あらたま』百首
著:塚本 邦雄,解説:本林 勝夫,その他:島田 拓史,装丁:蟹江 征治
講談社学術文庫
痍となっても彼はしたたかに歌ひやまず、また歌ひおほせた。『あらたま』は作者の旺盛な創作慾とストイックな写生探究が周期的に交替しつつ、つひに一途に堅実平明な境地に行きつかうとするところで巻末を迎へる興味津津の歌集である。私は『赤光』以上に殊更に辛辣な舌鋒を弄した。それがこの作家への畏敬の念の私流の発露である。(著者・跋より)
ユートピアの幻想
ユートピアの幻想
著:川端 香男里,装丁:蟹江 征治,その他:多田 進
講談社学術文庫
ギリシア語で〈どこにもない理想郷〉を意味するトマス・モアの造語〈ユートピア〉。プラトンの「国家(ポリティア)」に始まるその古典的淵源から説き起こし、19世紀の社会主義的ユートピア志向を経て、現代のSF化された未来論に至るユートピア思想の変遷を辿る。さまざまな楽園伝説や終末論、諷刺、幻想文学などの隣接領域と対比しながら、比較文化学の視点からユートピア像の多面的な姿を考察した画期的力作。
近世日本の科学思想
近世日本の科学思想
著:中山 茂,その他:志賀 紀子,装丁:蟹江 征治
講談社学術文庫
江戸時代の天文暦学・医学・和算学を通観し、わが国の科学思想の特質が空間的法則よりも時間的変化を重視するものであることを著者は具体的に説く。すなわち幕府天文方・渋川春海は西洋流の永久的天体法則は幻想であり、万物は流転すると観じたし、『解体新書』以前の医者は解剖による局所の分析を排して動態的・全体的な治療を旨とした。功利主義に傾きがちな日本人の科学観に歴史的反省を促す好著。
群衆心理
群衆心理
著:ギュスターヴ・ル・ボン,訳:桜井 成夫
講談社学術文庫
民主主義が進展し、「群衆」が歴史をうごかす時代となった19世紀末、フランスの社会心理学者ギュスターヴ・ル・ボンは、心理学の視点に立って群衆の心理を解明しようと試みた。 フランス革命やナポレオンの出現などの史実に基づいて「群衆心理」の特徴とその功罪を鋭く分析し、付和雷同など未熟な精神に伴う群集の非合理的な行動に警告を発るに至ったのである。 社会心理学の研究発展への道を開いた古典的名著にして、「ポピュリズム」を考えるための必読書!
電子あり
アウグスチヌス『告白』講義
アウグスチヌス『告白』講義
著:矢内原 忠雄,解説:中村 勝己
講談社学術文庫
ローマ帝国崩壊期に、教父アウグスチヌスが著した『告白』は、結婚と世俗的栄達の道を捨ててキリストの教えに帰依し、光明を見出すまでの激しい内面の葛藤、母と子の物語を赤裸々に描いて名高い。本書は、その告白文学の最高傑作を、内村鑑三に師事し、軍国主義批判のため東大を追われた筆者が、自宅に開いた私塾で講義し、まとめたものである。1600年前の魂の叫びが、今いきいきとよみがえる名著。
日本文学史
日本文学史
著:小西 甚一
講談社学術文庫
文藝作品の内なる表現理念=「雅・俗」の交錯によって時代を区分したところに本書の不滅の独創がある。健康で溌溂とした「俗」を本性とする古代文藝、端正・繊細な「雅」を重んずる中世、また古代とは別種の新奇な「俗」を本質とする近代。加えて著者は、日本文学を「世界」の場に引き出し、比較文学の視点からも全体的理解に努める。長く盛名のみ高く入手困難だった「幻の名著」の待望の復刊。(解説=ドナルド・キーン)
アルチュセ-ルの思想
アルチュセ-ルの思想
著:今村 仁司,装丁:蟹江 征治,その他:多田 進
講談社学術文庫
唯物論的発展段階説、人間疎外論、社会主義革命論──マルクス主義は硬直した言説(イデオロギー)に覆い尽されている。それら矮小なレッテルを退け、アルチュセールは、マルクスの思想をその可能性の中心において読み解く。歴史と社会に関する科学的認識の理論として。空前の哲学革命・科学革命の理論としてのマルクス主義を未来へ向けて再生し、構造主義=ポスト構造主義への地平を拓いた現代思想の巨人の全体像を描く。
経済学の実際知識
経済学の実際知識
著:高橋 亀吉,装丁・その他:蟹江 征治,解説:鳥羽 欽一郎
講談社学術文庫
バブル崩壊後の大正末期の日本経済を分析し、「銀行と信用」の章では、中央銀行がその目的を完遂するには政府の干渉から独立した執行機関が必要と指摘した。さらに、資本家の貯蓄にかわって政府が財政収入を公共事業に投資し、富の管理者になったとする「富の保存および増殖」など、秀れた先見性と今も通用する経済の原則を展開する。在野の経済学者・高橋亀吉の処女作にして洛陽の紙価を高めた名著。
日本の神秘思想
日本の神秘思想
著:金岡 秀友,その他:島田 拓史,装丁:蟹江 征治
講談社学術文庫
インドに発した神秘思想の日本的な展開とは現実と実在の一如を考える密教的世界観は長い時間をかけて東アジア一帯に根づいた。日本および日本人という条件が仏教的神秘思想にいかに働いたかを考察する好著
シルクロ-ド
シルクロ-ド
著:長澤 和俊
講談社学術文庫
荒涼たる砂漠の西域を貫き、東西文化の架け橋であったシルクロード。本書は、この国際交易路研究の第一人者が、最新の成果をもとに西域における国家と民族の歴史の興亡をたどり、また、法顕や玄奘、マルコ・ポーロらの中央アジア紀行の足跡を振り返る。さらに、絹や青銅やガラスなど、東西の文物交流の軌跡を明らかにする。シルクロードをめぐる東西交渉史学の決定版。必読の文庫オリジナル!
仏教民俗学
仏教民俗学
著:山折 哲雄
講談社学術文庫
民衆に育まれてきた日本仏教の真の姿をとらえるためには、従来の仏教学はあまりにも民俗学による発見を無視して自己を主張し、民俗学もまた仏教学の蓄積を白眼視してひとり歩きをしているのではないか、と著者は危惧する。仏教に根ざした日本人の生活習慣や年中行事や民間信仰などを考察し、また外国人の信仰行動などとの比較検討を重ねて、仏教学と民俗学との緊密な関係の確立が今こと急務と説く。
江戸ことば・東京ことば辞典
江戸ことば・東京ことば辞典
著:松村 明
講談社学術文庫
あかぬけ・ごますり・しみったれ・とんちき・はすっぱ・はったり・へっぽこ・やぼてん……。人々の口から口へ伝えられたイキでイナセな庶民のことばの数々。現代人の毎日の暮らしの中でいまも使われているクチコミ語822の語源・意味・用例を明快に解説する。江戸から東京へ。国語学界の第一人者が多年にわたる近代日本語の変遷の研究のなかからまとめた「江戸ことば・東京ことば」おもしろ小辞典。
ルネサンス
ルネサンス
著:樺山 紘一
講談社学術文庫
中世の野蛮と暗黒の束縛から人間精神が新しく解放され、近代文化の基盤を開いたといわれるルネサンス。本署では、これまで異口同音に語られてきた単調で理想化されすぎるルネサンス像を退け、もっと人間くさい歴史像を「現代」というフィルターを通して考察、その華やかな時代の光の部分のみならず陰の部分にも焦点をあてて、総合的にルネサンスを捉えた。最新の知見に基づく待望のルネサンス論。
明治大正史 世相篇 新装版
明治大正史 世相篇 新装版
著:柳田 國男
講談社学術文庫
毎日われわれの眼前に出ては消える事実のみによって、立派に歴史は書けるものだという著者が、明治大正の日本人の暮し方、生き方を、民俗学的方法によって描き出した画期的な世相史。著者は故意に固有名詞を掲げることを避け、国に遍満する常人という人々が眼を開き耳を傾ければ視聴しうるもののかぎり、そうしてただ少しく心を潜めるならば、必ず思い至るであろうところの意見だけを述べたという。
言葉と悲劇
言葉と悲劇
著:柄谷 行人
講談社学術文庫
『マクベス』やギリシア悲劇を例に、「悲劇は言葉の両義性にかかわる」と指摘した「言葉と悲劇」、小説『こころ』を分析し、夏目漱石の深層心理に迫った「漱石の多様性」など、柄谷行人の代表的講演を収録。文学、思想から経済学、数学にも言及する15編は、作者の知的世界の広大さを示す。『探究1・2』執筆と並行する思想の軌跡は、現代人にとって刺激にあふれた〈柄谷理論〉への格好の入門書である。
ギリシア・ロ-マの盛衰 古典古代の市民たち
ギリシア・ロ-マの盛衰 古典古代の市民たち
著:村川 堅太郎,著:長谷川 博隆,著:高橋 秀
講談社学術文庫
2千年以上も昔の地中海世界に、民主政や共和政が成立し、香り高い文化が花開いたのはなぜか。その担い手となったのは、ギリシアやローマの都市国家に生れた平等な土地所有者たる古代市民だった。しかし、空前の大帝国を誇ったローマにも、大土地所有制の普及と市民の経済的衰退、独立精神の喪失等により滅亡の時が訪れる。現代の市民社会にも多大な示唆に富む古代文明の栄光と暗転を描いた力作。
産業主義を越えて
産業主義を越えて
著:正村 公宏,装丁:蟹江 征治
講談社学術文庫
私たちの20世紀近代文明は、産業主義・民主主義・国民国家の三大原理の上に立つ。しかし、産業主義の対価としての環境問題、民主的福祉社会の高コスト、国民国家主義に必然の破壊的ナショナリズム、といま世界中で《冷戦以後》の深刻な問題が噴出している。目前に迫った21世紀は、流血と飢餓に明け暮れる暗黒の時代ではないのか?人類焦眉の難題に立ち向かうための、新しい政治経済学の試み。
未知の次元 呪術師ドン・ファンとの対話
未知の次元 呪術師ドン・ファンとの対話
著:カルロス・カスタネダ,訳:名谷 一郎,監:青木 保,装丁:蟹江 征治
講談社学術文庫
若き人類学者カスタネダは幻覚植物の秘密を探るうちに北メキシコのヤキ・インディアンの呪術師ドン・ファンに出会い、現代文明とは別次元の〈非日常的現実〉についての教えに触れた。彼は文明人としての誇りを捨てて呪術師の弟子となる。トナール(言葉によって示すことができる世界)に対するナワール(日常性や理性をはるかに超えた世界)とは一体何か。呪術と信仰の本質を追究する実践哲学の書。
茂吉秀歌『赤光』百首
茂吉秀歌『赤光』百首
著:塚本 邦雄,装丁:蟹江 征治
講談社学術文庫
──従来の茂吉自身の「写生」の説に随順し、ひいては弟子、一門の徒としてひたすら鑽仰する「解説」も1つのタイプではあるが、これは一応さておき、私は別の角度から茂吉の歌を照射し、その秘密に肉薄したかつた。それはそのまま短歌を含めた日本の詩歌のあるべき姿を求め探ることであり、滅びてはならぬ美の典型を記念する道にも繋がらう。『赤光』鑑賞はその試みの第一歩である。(著者・跋より)