講談社学術文庫作品一覧

世紀末ドイツの若者
世紀末ドイツの若者
著:上山 安敏
講談社学術文庫
ドイツの若者のイメージを代表するワンダーフォーゲルは、反世紀末的で、反デカダン的であった。彼らは世紀末を、次の世紀への跳躍の兆候としてとらえた。若者が創り出した雑誌「ユーゲント」も未来への希望を表現した。ドイツの世紀末は、パリやウィーン風の終末論的世紀末と異なり、未来志向の世紀末転換期であった。世紀末に生きるドイツの若者の生態を文化史的観点から斬新に描いた名著。
意味と構造
意味と構造
著:エルンスト・ライズィ,訳:鈴木 孝夫
講談社学術文庫
〈意味〉の問題は、現代の言語学の中心課題である。ライズィは、単語が持つ意味の最小単位を要素(コンポネント)と名づけた。英語とドイツ語の対応語を画期的な分析分類法を駆使して具体的に比較することから出発して、個々の語においてさまざまな要素が作り出す意味の構造を解明。ソシュールに始まる〈20世紀の学問〉としての言語学の流れをもっともラジカルに進めた、意味構造論の先駆的名著。
茂吉秀歌「つゆじも」から「石泉」まで百首
茂吉秀歌「つゆじも」から「石泉」まで百首
著:塚本 邦雄,解説:芳賀 徹
講談社学術文庫
――一般には備忘録の寄せ集め風に考へられてゐる滞欧詠や、何となく埃臭い印象の満関支詠に意外に興味津津の素材が犇き、画期的な文体が散見できることに改めて目を見張った。外国語頻用も特徴の1つである。必ずしも留学作品に限らず、帰国後の日常詠も幻惑的な横綴りを鏤める。世界のいづれの地に赴いても、過たず対象の本質を直感して作品化する、あの抜群の言語感覚は羨ましい。(著者・跋より)
メインの森
メインの森
著:ヘンリ-.D・ソロ-,訳:小野 和人
講談社学術文庫
自然に学び、自然に生きたアメリカの代表的思想家ヘンリー・D・ソロー。彼はアメリカ東部メイン州の森の奥地を数度にわたり探検し、その野性にみちた大自然のすばらしさを本書にまとめた。荒々しい岩山クタードンの登山やヘラジカとの遭遇、また自然に順応して生きるインディアンのガイドとのふれあい等、興味深い体験の数々が展開される。『森の生活』とならぶ、ソローの思索の到達点を示す名篇。
現代の経済学
現代の経済学
著:根井 雅弘
講談社学術文庫
新古典派経済学の伝統的理論を否定し、20世紀の世界経済を変革したケインズ。画期的な学説となった彼の『一般理論』の核心に迫り、その思想を受けつぐケインジアンたちの理論と成果を説く一方、強力な批判勢力として立ちはだかったハイエク、フリードマンなどの主張も解説。現代経済学の潮流を明らかにして、今こそケインズの有効需要政策とシュムペーターの起業者精神が必要と唱える俊英の力作。
カトリックの信仰
カトリックの信仰
著:岩下 壮一,解説:稲垣 良典
講談社学術文庫
西洋古代・中世の哲学的伝統を豊かに取りいれて独自のキリスト教的哲学を構築した岩下壮一が、カトリックの教えを問答形式で要約した公教要理を解説。霊的実在についての生き生きした経験や洞察にもとづいたカトリックこそが、人間の真の救いと幸福につながる哲学、真の哲学であると説く。近世哲学にのみ立てこもらんとする昭和の思想界に、カトリックの真理を開示して波紋を投げかけた不朽の名著。
昭和恐慌と経済政策
昭和恐慌と経済政策
著:中村 隆英
講談社学術文庫
大戦景気の反動、金融恐慌などが続いた昭和初期、浜口内閣の大蔵大臣・井上準之助は、為替変動の安定化をめざし金輸出の解禁を断行。念願の金本位制復帰を図ったが、そのための緊縮財政は折からの世界恐慌の波をうけ、未曾有の大不況を到来させた。この昭和恐慌を引き起こした経済政策をめぐる政党間の抗争、財界の思惑、投機的行動など、秘められた歴史を明らかにした昭和経済史の泰斗による力作。
十字軍騎士団
十字軍騎士団
著:橋口 倫介
講談社学術文庫
11世紀末、聖地エルサレムをイスラム勢力から奪回せんと第1回十字軍遠征が敢行された。その中核として結成された、戦士と修道士の役割を同時に遂行する聖俗一致の〈キリストの戦士〉修道騎士団! 秘密結社的な神秘性を持ち二百年後に悲劇的結末を迎えたテンプル騎士団、強大な海軍力で地中海上に現代まで存続した聖ヨハネ騎士団等、その謎に充ちた興亡を十字軍研究の権威が興味深く描いた好著。
身体の宇宙誌
身体の宇宙誌
著:鎌田 東二
講談社学術文庫
人間の身体は、30億年にわたる生命進化の記憶をもっており、古来、身体は大宇宙(マクロ・コスモス)に対する小宇宙(ミクロ・コスモス)と考えられてきた。身体に刻印された生命進化と神話的諸観念を読み解きながら、身体にまつわる神話的宗教的詩的想像力の諸相を、さまざまな角度から探究。身体と速度、身体と異界、霊魂と肉体、死と身体など、これまであまり試みられてこなかった斬新な視点に立って、身体的知の位相を解明した野心作。
ガリア戦記
ガリア戦記
著:カエサル,訳:國原 吉之助
講談社学術文庫
前58年以降、数年にわたりカエサル率いるローマ軍が、ガリアからブリタニアにいたる広範な地域をローマの勢力下におこうとして遠征を試みた貴重な記録である。当時のガリアやゲルマニアの情勢を知る上で必読の書として知られ、また、カエサル自身の手になるラテン語で書かれた簡潔にして流暢な文体は、文学的にも高い評価を受けている。タキトゥスの『ゲルマニア』とならぶ古代研究の最重要史料。(講談社学術文庫) 前58年以降、数年にわたりカエサル率いるローマ軍が、ガリアからブリタニアにいたる広範な地域をローマの勢力下におこうとして遠征を試みた貴重な記録である。当時のガリアやゲルマニアの情勢を知る上で必読の書として知られ、また、カエサル自身の手になるラテン語で書かれた簡潔にして流暢な文体は、文学的にも高い評価を受けている。タキトゥスの『ゲルマニア』とならぶ古代研究の最重要史料。
電子あり
現代の資本主義
現代の資本主義
著:伊藤 誠
講談社学術文庫
石油ショック以降、先進資本主義諸国は執拗な経済危機と再編の時代を迎えた。市場経済を復活させたレーガン、サッチャーの新自由主義もバブル経済の崩壊で、高失業率と長期低迷の世紀末不況に直面。世界経済は8億余の失業者、困窮者を抱え、大恐慌以来の最悪の状況にある。レギュラシオン理論など最新の学説を紹介しながら現代資本主義の特質を明らかにし、危機を克服する処方箋を探る画期的論考。
宮沢賢治とドイツ文学
宮沢賢治とドイツ文学
著:植田 敏郎,解説:丸谷 才一
講談社学術文庫
賢治の「銀河鉄道」は、ドイツ自然主義のホルツが「ダフニス」で用いたdie Milch-Bahnから発想を得、「ファンタズス」で輪廻の象徴であった銀河と結びつき誕生したのではないか。著者は、賢治の広範な読書世界を渉猟するなかで、詩語の文学を狭い領域から解き放ち、言葉による実相の具現を唱えたホルツと賢治に通底するものがあるのを発見する。比較文学的視点から光を当てた、創意に富んだ賢治研究書。
西洋近代思想史(下)十九世紀の思想のうごき
西洋近代思想史(下)十九世紀の思想のうごき
著:G.ハ-バ-ト・ミ-ド,訳:魚津 郁夫,訳:小柳 正弘
講談社学術文庫
19世紀の思想の流れのなかでミードは、科学が提起した哲学の問題としてベルクソンの生気論及びプラグマティズムと実在論の両者が生まれたことを論じ、自我の問題では、自我と他我との自覚的な相互作用の過程を強調する近代的立場を導入した。更に行動心理学や個人の問題など、あらゆる分野の記述は過程という観念からなされるべきであるとした。西洋近代思想の諸問題を論じたミードの古典的名著。
西洋近代思想史(上)十九世紀の思想のうごき
西洋近代思想史(上)十九世紀の思想のうごき
著:G.H・ミ-ド,訳:魚津 郁夫,訳:小柳 正弘,装丁・その他:蟹江 征治
講談社学術文庫
20世紀のアメリカを代表する哲学「プラグマティズム」の立場にたつ思想家G・H・ミード。彼はとくに、その独創的な自我論やコミュニケイション論などによって、哲学はもとより、心理学や社会学の領域においてもひろく知られてきた。ルネサンスからカントやヘーゲル、さらにマルクスに至る「19世紀の思想のうごき」を、科学的探究を基層に捉えて斬新に展開した。待望の新訳、文庫オリジナル。
世界経済史
世界経済史
著:中村 勝己
講談社学術文庫
ギリシア・ローマの古代から中世、近世への経済発達史を、日本や中国も含めた広大な視野で解説。とくに宗教改革を契機に醸成された近代資本主義の精神と本質を明らかにする。さらに産業革命の地域別発展過程を詳細に分析し、発展途上国の近代化の問題点も鋭く指摘。また両大戦と大恐慌で露呈した資本主義の危機、社会主義の成立と崩壊の背景も論究。従来のヨーロッパ偏重を正した一般経済史の名著。
釋迢空 詩の発生と<折口学>―私領域からの接近
釋迢空 詩の発生と<折口学>―私領域からの接近
著:藤井 貞和
講談社学術文庫
日本古典学と民俗学の第一人者折口信夫は、釋迢空(しゃくちょうくう)の名で知られる歌人でもあった。本書は、「海やまのあひだ」「古代感愛集」「倭(やまと)をぐな」等の代表的歌集を読み解くことによって、釋迢空の詩魂の苦悩と求道の道程をたどり、学問と詩を融合した巨大な折口学の核心に迫らんとする。日本文学の中心に詩を回復させることをめざした〈近代批評の真の批判者〉をしての釋迢空・折口信夫の全体像を明示した野心作。
探究2
探究2
著:柄谷 行人
講談社学術文庫
『探究1』で、独我論とは私にいえることが万人に妥当するかのように想定されているような思考であると指摘した著者は、『探究2』では「この私」を単独性として見る。単独性としての個体という問題は、もはや認識論的な構えの中では考察しえない。固有名や超越論的コギト、さらに世界宗教に至る各レベルにおいて、個(特殊性)―類(一般性)という回路に閉じこめられた既成の思考への全面的批判を展開する。
近世日本国民史 維新への胎動(中)生麦事件
近世日本国民史 維新への胎動(中)生麦事件
著:徳富 蘇峰
講談社学術文庫
文久二年五月勅使大原重徳、添役島津久光東下、将軍家茂と相見し、慶喜を後見職、春嶽を総裁職に任ずべき勅旨を伝達。長藩、開国航海の看板を撤去、尊皇攘夷に転向。久光、幕府をして勅命奉承実施するに至らしめ、八月京都へ復命すべく上京の途に就く。行列川崎を過ぎ生麦へ差し掛かりし時、日本の風習を知らざる英人供先へ騎馬にて乱入。言語通ぜず、供頭一名を殺害。世にいう生麦事件を惹起す。
電子あり
せりふの構造
せりふの構造
著:佐々木 健一
講談社学術文庫
絵画が色と形の芸術であり、音楽が音の芸術であるのと同じ意味で、演劇は言語の芸術である。それは話す人のいる世界を再現するという点で、文学以上に高度の言語芸術であると言える。〈詩的言語〉に比べて、これまで論じられることの少なかった〈劇的言語〉。今世紀の言語学・記号論の飛躍的発展を踏まえ、ギリシア悲劇から現代劇に至る様々な劇的言語=せりふの類型と構造を定義・分析した意欲的論考。
星座春秋
星座春秋
著:野尻 抱影,装丁:蟹江 征治
講談社学術文庫
古来、人びとは夜空の星の美しさと神秘に心をひかれ、星にまつわる興味深い多くの神話、伝承を語りついできた。科学のめざましい発達により宇宙の不思議が解明されつつあるとはいえ、星空の魅力は増しこそすれ決して失せることはない。「天狼を射る」「北斗と南斗」「エチオピヤ王家の4星座」など、博識の著者が古今東西の神話や伝説、逸話を織りこんで四季折々の星座のロマンを抒情豊かに描いた名篇。