講談社現代新書作品一覧

武士道とエロス
講談社現代新書
男達の恋「衆道」を通して語る江戸の心性史。殿と小姓、義兄弟など、男同士の恋は武士の社会に溶け込んだおおらかなものだった。彼らの「絆」の意味と変容を新視点から捉え直し、江戸という時代を照射する。(講談社現代新書)
男達の恋「衆道」を通して語る江戸の心性史。殿と小姓、義兄弟など、男同士の恋は武士の社会に溶け込んだおおらかなものだった。彼らの「絆」の意味と変容を新視点から捉え直し、江戸という時代を照射する。

メルヘンの深層
講談社現代新書
シンデレラや赤ずきんちゃんの物語から魔女裁判、人間狼、子捨てなど、ヨーロッパ社会の忘れられた実像が見えてくる。
白雪姫と魔女裁判――白雪姫と王子の結婚披露宴に招かれた継母は、炭火で赤く熱せられた鉄製の靴をむりやりはかされ、死ぬまで踊らされたということです。継母が熱い鉄の靴をはかされた理由は、魔女として魔術をおこなったということでしょう。16、17世紀の西欧世界では、魔女や異端の審問をおこなう当局が、密告や告発を奨励するあまり、子供の証言をも得ようとして、証言能力についての年齢制限を撤廃しています。ですから年少の娘や息子が母親を魔女として告発することなど、珍しいことではありませんでした。私はむしろ、いささか虚言癖があって被害妄想の女の子が、母親の真意を曲解して魔女裁判に追いやった物語として、このメルヘンを解釈したいと思います。――本書より

ア-ユルヴェ-ダの知恵
講談社現代新書
人間にとって真の健康とは何か? 近代西洋医学の限界を補い、心身をトータルに捉えた医療体系として、新たな脚光を浴びつつある「生命の科学」。その理論と実践を平易に解説する。 知恵の再発見――アーユルヴェーダとはインドに伝わる伝統医学のことである。東洋医学が見直されるようになって久しいが、ふつう東洋医学といった場合には当然のように漢方(中国医学)だけを指すことが多い。しかし、これは正確ないい方ではない。その起源の古さからも、また、現在も脈々と生きている伝統医学という意味でも、アーユルヴェーダは漢方と並んで東洋医学の双璧をなすものでからである。むしろ漢方よりもアーユルヴェーダのほうが古く、かつ漢方の成立にアーユルヴェーダが大きな影響を与えたという説もあるくらいである。西洋医学の教育を受けた医師が東洋医学と出会い、その思想や治療法を取り入れているのはもう珍しいことではない。――本書より

高齢社会・何がどう変わるか
講談社現代新書
急テンポで進む高齢化は日本社会に何をもたらすか? 老人医療や介護、福祉や年金制度、老齢者の生きがいと社会的役割などの諸問題を、個人・家族・地域・企業の観点からとらえて、そのあるべき姿と対応策を考える。
高齢社会の到来――社会レベルの老化を「高齢化」とよぶことにすると、今日、成熟段階に至った社会のすべてが高齢化という大きな社会変動の渦中にあるといえる。高齢化が進行し、その頂点に近づくと「高齢社会」が誕生する。これは経済力が充実し、国民生活水準が向上した産業社会特有の社会形態である。特にこのような動向は、世界の先進国に共通にみられる歴史であり、20年遅れでアジア四小龍(台湾、香港、シンガポール、韓国)でも認められはじめた。また、社会主義市場経済を標榜する中国でも、「一人っ子政策」の結果、21世紀初頭には本格的な高齢社会の到来が予想されている。――本書より

スウェーデンボルグの思想
講談社現代新書
時代を先取りした宇宙論や大脳観の先見性。夢や幻視体験から得られた、独自の霊界論と、普遍宗教への希求。18世紀スウェーデンの天才の、科学と神秘をかけ渡す思想を概観。
普遍宗教への道──スウェーデンボルグの教説は、あまりに平明・直截なので、肩透かしを食ったような感じを抱かせるかもしれない。それは実際、ごく常識的な宗教であり、道徳である。こうしたあたりまえの宗教の価値は、独善・偏見・排他といった、宗教が陥りがちな歪んだ側面によって傷ついた者に、いちばんよく分かるであろう。スウェーデンボルグの宗教が素朴すぎてつまらないと考える人がいるとしたら、その人は彼にオカルト的なものを期待しすぎているか、宗教や信仰の本質を神秘的なものと思い込んでいる人である。……彼の伝統的キリスト教への批判は、ゆきすぎと思えるほど苛烈なものだったが、それは、善や愛の価値を低めて無にまで貶めようとする、あらゆる偏狭な信仰や教説を嫌悪したがゆえである。彼の説く普遍的な宗教の原理をひとことで示す、彼自身の有名な言葉がある。「宗教はすべて生命に関わるものであり、宗教の生命は善を行なうことにある」──本書より

共和党と民主党
講談社現代新書
超大国アメリカを動かす2つの巨大マシーン、「自由と競争」の共和党、「平等と公平」の民主党。世界で最もパワフルな二大政党制の実態に迫る。
二大政党制のメリット──このような制度のなかでは、統治される側の「あきらめの気持ち」が入り込む余地はない。……統治している側も、統治される側とさして変わらない人間たちなのである。そこで統治の任にあたっている者に対して統治権者に対する疑念や不服従、代替の政策の提案などは、したがってアメリカの政治の世界ではごくあたり前のことである。私たちは、合衆国議会が大統領のいうことを聞かなかったり、あるいは議会のなかで民主党と共和党が激しくあらそう様子をしばしば見聞する。世論が沸騰して多様な意見が入り乱れ、時の政権が倒れそうになるくらい反対意見がうず巻くなかで、かろうじて政策が遂行されていくのを目撃する。しかし、それがアメリカの政治の普通の姿なのである。このような国内の騒乱に似た状況が、アメリカの政治の正しい姿であり、それゆえにアメリカはかろうじて民主主義の制度を守り抜くことができているのである。──本書より

錯覚の心理学
講談社現代新書
現実には存在しえないものが描かれ、存在しないのに見えてしまうのは、なぜだろうか。視覚のメカニズム、知覚や認知の合理・不合理を考察する。
感覚は間違わないか──なぜ、たかが単純な図形の見かけ上の歪みをそんなに騒ぐのであろうか。これに対する答えの1つは「錯覚は面白い」からだ。われわれの目がこれほど簡単にだまされるということへの好奇心は誰にもある。……われわれの感覚と心の働きの間に2つの考え方が存在していた。1つは、感覚は変わりやすいし不正確なものだ。そこで心の働きが外界の正確な写しを作りだし、歪みを正すというものである。もう1つは、感覚は本来正確で環境の真実の姿をとらえるようにできている。限界があるのは心であり、間違うのも判断能力であるとするものである。錯視を研究することで、この知覚の問題を解決することができるかもしれないという期待があった。──本書より

秦・始皇帝陵の謎
講談社現代新書
始皇帝陵の側近から今世紀最大の考古学上の大発見となった“兵馬俑”の大地下軍団が発掘された。2000年の眠りがら覚めた遺物群が、語りかけるものは何か。歴史の闇に閉ざされた始皇帝と秦王朝の、真実の姿に迫る。
謎を解く鍵――4000年以上にわたる中国の王朝歴史のなかで、彗星のように現れて、初めて全国を統一した大秦帝国は、戦乱などが原因で、文字の記録や物的資料をあまり残していない。その上、続く波瀾万丈の歴史の流れのなかで、秦代の真実の姿はますます濃い霧のかなたに隠れていった。それだけに、兵馬俑、銅車馬、馬きゅう坑、珍種動物坑などの発見と発掘、および始皇帝陵地下宮に対する調査は、この歴史研究の空白を埋め、中華民族の発展史における「失われた環(ミッシング・リンク」をふたたびつなげたといえる。――本書より

キング牧師とマルコムX
講談社現代新書
対照的な二大カリスマを通して読む黒人社会。マルコムXブームの意味とは何か? 台頭するブラックナショナリズムとは? 一見相反する二人の代表的指導者の思想と足跡から「黒人運動とアメリカ」を問う。(講談社現代新書)
対照的な二大カリスマを通して読む黒人社会。マルコムXブームの意味とは何か? 台頭するブラックナショナリズムとは? 一見相反する二人の代表的指導者の思想と足跡から「黒人運動とアメリカ」を問う。

折口信夫を読み直す
講談社現代新書
民俗学・芸能史・国文学に独自の学説を立てた折口信夫。鋭い直観から生まれたその理論の魅力と欠陥は?まれびと・依代・他界などの名彙をほぐしつつ折口学の体系を検証する。
永久運動型の理論形式──まれびとの論とのかかわりのなかに形成されていった理論は、文学や芸能の発生の問題だけではない。主なものにかぎっても、常世からおとずれる神のよりつく場所から依代の論が生まれ、神が老人の姿をしていることから「翁」の誕生にたいするかれの考えがととのえられる。神の原郷である常世の論がふかめられて「妣が国」の華麗な幻想がつくりあげられている。また、神のあの世からのおとずれの旅が道行となり、原郷でおかしたあやまちのために人間界をさすらう神の辛酸の旅の記憶が、貴種流離譚という物語のパラダイムに結晶させられている。──本書より

税金の論理
講談社現代新書
それなくしては国家や社会が成立し得ない不可欠の存在。しかし、わかりにくく、なじみにくいのが税金の仕組。なぜ税金を納めねばならないのか? 公平・中立の原則は守られているのか? 税金の歴史をふり返り、所得税、消費税など現行税制のもつ問題点と今後の展望を平易に解き明かす。
公平というモノサシ――税金は、国家の徴収権と国民の納税義務の間に存在する。従って両者の納得のいく、ある種の課税の基準つまりモノサシといったものを必要としている。課税にあたり伝統的に、公平、中立の二大原則が重視されてきた。われわれは一応この課税の公平に対し、水平的公平と垂直的公平という、より詳しい二つのモノサシを用意している。水平的公平というのは、経済的にみて「等しい状況にある者は等しく取り扱われるべきである」という課税上の原則である。もう一つの垂直的公平は、水平的公平の考えを裏返しにしたものである。「異なる状況にある者は異なるように取り扱われるべきである」という原則で、累進所得税の根拠となっている。――本書より

心理テスト―人間性の謎への挑戦
講談社現代新書
「心」を解く技法とはどういうものか。性格検査・能力検査・投映法など、パーソナリティの特性を記述するための方法とパラダイムを解説。
心理臨床家の任務と倫理――心理テストは、人間理解の手段であり、臨床場面では、被検者のパーソナリティをトータルに把握するための一課程である。異常性の確認だけでなく、積極的な潜在能力の発見こそ大切なのである。これまでは、ともすれば精神病理の心理診断に傾きがちであった心理テストはもっと健全な面や心の健康の条件について探求すべきである。それには、心理臨床家がそれにふさわしい知識、経験、技量を修得しているだけでなく、積極的で肯定的な人間観をもち、人と人との関係を重視する立場から取り組むことが要請される。――本書より

社会主義市場経済の中国
講談社現代新書
「証券・株式も断固試してみよ」――変幻自在のとう小平思想によりプラグマティズムに目覚めた巨大国家中国。改革・開放の道をひた走るエネルギッシュな姿を分析し、その21世紀を展望する。
まちがったらなおせばいい――とう小平の実験主義的プラグマティズムは、「南巡講話」において頂点に達している。……「証券、株式市場、こういうものが、いったい、いいのか悪いのか、危険があるのかどうか、資本主義特有のものなのかどうか、社会主義でも使えるのかどうか、断固、試してみるべきだ。いいと思ったら、1、2年やってみて、それで大丈夫なら自由にやらせる。まちがったと思えば、なおせばいい。やめればいいんだ。やめるんだって、すぐにやめてもいいし、ゆっくりやめてもいい。少し残しておいたっていい。なにを恐れているんだ。社会主義が資本主義より優勢になるには、人類社会が創造したすべての文明的な成果を大胆に吸収し、参考にし、資本主義の先進国を含め、現代社会の先進的な生産の経営方式を吸収し、参考にしなくてはならん。」――本書より

良寛―魂の美食家
講談社現代新書
大根に百合根、友と酌む旨酒……。草庵の美味で豊かな生活。晩年に交わされた、深く、真蟄な相聞歌。「道」に生き、恋に生きた、真人の魂の贅沢。
大根鍋のゴージャス――頃はいいだろう。定珍よりプレゼントされた、とっておきの大好物である南蛮粉をふりかけて、ふうふう吹きながら、とろけるように喉元を越してゆく、大根の感触。すえものの酒を酌み交わし、内からは酒と大根、外からは囲炉裡の暖と、友と分かつ一体感。酒もあらかたなくなった。鍋には大根が2、3片残っている。そこへひと握りの托鉢米を入れ、やわらかくなったところで、大根の葉をきざみ、仕上げは雑炊に。…… なにより、良寛さんみずからの手による、季節としてもちょうど食べごろの大根。そして、越後の冷たい海でとれた昆布。あれこれ手を加えず、素材の性質に合った食べ方。日頃は一汁一菜なればこそ、この大根の味がひとしお美味なのである。だからこそ、草庵の囲炉裡に掛かった鉄鍋の大根も、つやつやと輝いて見える。なんともゴージャスな絵柄ではないだろうか。――本書より

プレイン・イングリッシュのすすめ
講談社現代新書
難しい単語は使わない。1つの文には1つの情報。まずアウトライン、次にディテール。受動態より能動態、否定形より肯定形。アメリカ発、実践派の明快英語による、Effective Communicationへの道案内。
「だから何なの?」と思わせない表現を――うっかり口をすべらせてしまった時などに、よく「聞かなかったことにしてください」などと言いますが、これを英語で表現するとどうなるでしょう。Just pretend that you never heard it.というのが、日本人の典型的な訳例です。この英文では、「聞かなかったふりをする」ということを相手に求めていますが、それでは「どういうふりをすればいいのか?」という素朴な疑問が生じることになってしまいます。「聞かなかったことにしてください」という表現にとらわると、なかなかこの日本文のideaがつかみにくいのですが、“Detach ideas from words.”で考えれば、要は「聞いたことを忘れてください」ということになります。これをPlain Englishで表現すると、Just forget what I said.となります。――本書より

江戸の遊里盛衰記
講談社現代新書
日本の裏面史に閉じ込められた遊女たちの声。暗く湿った〈郭〉のイメージに隠された真実。北は能代から南は那覇まで、往時の賑わいの痕跡と遊女たちの秘められた物語を掘り起こす歴史紀行。
刻まれた歴史――私は、人知れず忘れられた小さな遊里をおもに取り上げることにした。田舎に行けば行くほど、人々は遊里の過去を忘れようとしていることも事実である。しかし、狭い地域であればそれだけ、その地に刻まれた歴史を大切にしようとする人たちがいるのも事実である。石川県小松の串茶屋には、遊女墓を清掃する町内会の人たちがいる。近年、茨城県潮来や秋田県院内鉱山の跡地には、新しく遊女墓が建った。青森の県鰺ヶ沢には、遊女墓に遊女とともに埋葬された花魁人形を手厚く供養する人たちがいる。瀬戸内海の小島には、遊女たちの悲哀を胸の奥底にたたみながらオチョロ船の復元に意欲を燃やす大工さんがいる。……忘れられようとしている遊女たちのことを忘れてはならないと感じている人々の思いを、記しておきたいとも思った。――本書より

「怪談」の心理学
講談社現代新書
怪談はどこに生まれ、どう伝わるのか。トイレのハナコさん、こっくりさん、金縛りなど、学童たちの間に発生し広がってゆく「霊現象」のルーマーをめぐり、心理・生理・社会病理的に縦横に考察する。
すぐれたコント――芸術家は自分の感動を小説や絵画、音楽などに表現する。しかし、こうした自己を表現する才能もなく、また、最近流行の自分史や、短歌や俳句を修業するだけの根気もない団地の主婦たちは、近隣のうわさ話に浮き身をやつす。一方、未来の主婦である女の子たちは、大人以上に目を輝かせて学校のうわさ話、とりわけこわい話に熱中する。つまり、「学校の怪談」の伝承者である学童たちは、めいめいが自分の聞いた話に新しい創作を付け加えて、その伝達の話を広げていく。その世界では、よりもっともらしい、刺激的なディテイルを物語に付け加えた伝承者が子供仲間のヒーローになれるのである。――本書より

キリスト教文化の常識
講談社現代新書
毎日のあいさつや人名、地名、祝祭日、ライフスタイルなどに密接に関連したキリスト教の言葉と精神――その由来と意味を簡明に説く。欧米人の性格と価値観を伝える国際化のためのガイドブック。(講談社現代新書)
日常生活に根づいたキリスト教のエッセンス。毎日のあいさつから人名、地名、祝祭日、通貨などにも密接に関係しているキリスト教。その本来の意味を簡潔に説き、欧米人とつきあう際の基礎知識を提供する。

日本的市場経済システム
講談社現代新書
日本経済のあり方は、はたして特殊なのだろうか。バブルが去り、日米構造協議等で市場の閉鎖性を指摘される今、企業と株主、債権者、労働者、政府、技術革新などとの関係から、最新理論を駆使してあらためて問い直す。
日本の市場経済システムの特徴――日本の場合、例えば、企業とメインバンクの組み合わせも変化しうるという意味で柔軟であり、親企業と部品企業の関係も、価格、品質、納期、技術力を選定基準として随時見直しが行われ、部品企業間の競走が促進されるようになっている。日本の市場システムの特徴は、「長期的・継続的・相対的取引」を基本として、「情報」「協調」「競争」「高成長」「不透明」といった5つのキーワードで説明することができる。――本書より

森はよみがえる
講談社現代新書
生き物たちの命を育み、水の恵みをもたらす緑の森が、都市化の中で荒廃していく。失われゆく「里山」の復興をめざし、北海道苫小牧の地で進められている都市林作りの実践をリポート。
荒れる里山――戦後の経済成長が始まった昭和30年代以降になって、住民自身の里山に対する価値観も大きく変化してきた。生活様式の近代化、都市化にともなって、長く住民生活を支えてきた里山からの緑肥、飼料、薪炭や日用材などの供給が、もはや不可欠のものではなくなったのである。それによって、かつてはさまざまな生活資源を恵む宝の山だった里山の雑木林は、価値の乏しい貧弱な林としか見られなくなり、利用も手入れもされぬまま放置されるようになってしまった。住民との連帯を失った日本の里山は、いまやかつての姿をほとんど失いつつあるのが現状なのである。――本書より