講談社現代新書作品一覧

アポト-シスとはなにか
アポト-シスとはなにか
著:田沼 靖一
講談社現代新書
“細胞の自殺”アポトーシスの発見が、がん、AIDS治療の道を拓き、老化・寿命の謎を解く。新たな生命観への招待の書。 「死」から「生」へ――アポトーシスが、これほど研究者たちに注目されているのはなぜだろうか。それは、単に、アポトーシスが生命の維持に欠かすことのできない細胞の基本的機能であり、多彩な生命現象に密接に関与しているから、というだけではない。アポトーシスが、これまでのものの見方を180度変えてしまったからである。つまり、生きているものを「生」からの視点でしか見ていなかったところに、まったく逆の「死」から見る、という発想の転換をもたらし、それによってかえって「生きている」ことの現象が、よりはっきりとらえられるようになったからである。――本書より
モンゴル帝国の興亡〈下〉
モンゴル帝国の興亡〈下〉
著:杉山 正明
講談社現代新書
陸と海を結んだ巨大帝国の軍事・行政・経済システムと、その終焉…。巨龍、墜つ。 ナヤンの挙兵・クビライ最後の出陣――三大王国は、孫の世代に移っていた。頼むべき分身の息子たちは、すでにいなかった。クビライの生涯で、最大の危機であった。……73歳の老帝クビライは、みずから迎撃を決意した。悲痛な出撃となった。しかし、クビライは果断であった。迎撃態勢の大綱を指令すると、みずから手まわりの兵団をかき集め、みずから先頭に立って突出した。ときに、陰暦5月13日。象の背に結わえ付けた輿に乗っての出撃であった。……ここで両軍、一気に決戦となった。錐の先のように激しく揉み込むクビライ突撃隊の気迫に、実戦の意欲を欠くナヤン軍は崩れ立った。しかしそれでも、少数突撃したクビライ自身のまわりに危機は迫った。クビライ突撃隊の気迫に、実戦の意欲を欠くナヤン軍は崩れ立った。しかしそれでも、少数突撃したクビライ自身のまわりに危機は迫った。クビライを乗せた戦象は、激しく集中する矢のために、後方へ逃走した。混乱する戦況を決定したのは、かねてクビライが、自分自身の「常備軍」として賛成に努めていた。キプチャク、アス、カンクリなどの諸族から成る特殊親衛軍団の威力であった。……御曹子として、実戦の経験のほとんどない青年ナヤンと、数々の修羅場を踏んできた老人クラビライの違いが、すべてを分けた。敵本営の奇襲を狙った緊急出撃といい、戦場での突出攻撃といい、クビライの采配ぶりは、まことに見事であった。彼は最大の危機を、みずからの力で切り抜けたのである。――本書より
モンゴル帝国の興亡<上>
モンゴル帝国の興亡<上>
著:杉山 正明
講談社現代新書
世界史はモンゴルを待っていた――草原の遊牧国家が、ユーラシアの東西を結ぶ。チンギスから、クビライの奪権まで。 モンゴル軍少年部隊――モンゴル遠征軍の主力は、少年部隊であった。モンゴル高原を出発する時は、10代の、それも前半の少年であることが多かった。彼らは長い遠征の過程で、さまざまな体験をし、実地の訓練を通して、次第にすぐれた大人の戦士になっていった。……こうした少年兵にとって、遠征の出発は人生への旅立ちでもあった。……彼らは遠征先で、そのまま落ち着いてしまうことも、しばしばあった。その場合、今やすっかり大人となったかつての少年兵や、さらにその子孫たちも、やはり「モンゴル」であることには変わりがなかった。はるかなるモンゴル本土の高原には、兄弟姉妹、一族親類がいた。帰るべき心のふるさとは、みなモンゴル高原であった。……今や、名実ともに世界帝国への道をたどりつつあった「イェケ・モンゴル・ウルス」にとって、モンゴル高原の千戸群こそが、すべての要であった。高原は、「祖宗興隆の地」であるとともに、まさしく「国家根本の地」であった。そして、その地とそこの牧民たちの保有こそがモンゴル大カアンたる証であり、権力のすべての根源であった。――本書より
年金の常識
年金の常識
著:久野 万太郎
講談社現代新書
迫り来る超高齢化社会。退職後、何歳からどれ程の公的年金を受けとれるのか? 複雑なシステムをわかりやすく解説。 各年金の平均月額――年金は、老後の生活の上でどの程度頼りになるのだろうか。……まず、高齢者世帯の1世帯当たりの平均所得は320万円(月額26万6667円)である。……年金は人によってずいぶん違うから、平均値というのは必ずしも実態を表すとはいい難いが……厚生年金は月額15万6000円、国民年金は月額3万7000円、国家公務員共済は20万1000円、地方公務員共済は21万7000円など……である。……現在の年金制度は若い人ほど順次「年金水準が下がっていく」設計になっている……これから定年を迎える人は老後生活の半分は年金で、あと半分は自力で考えるのが現実的であろう。――本書より
「死語」コレクション
「死語」コレクション
著:水原 明人
講談社現代新書
時代の姿を映し出し、時代と共に生き、やがて忘れられ、消えていった言葉の群れ。日本近代の激動史をたどる異色の死語辞典。 「死語」とは何か――過去、ある時代には誰もが知っている当たり前の言葉だったのに、今ではまったく使われなくなった、あるいはその存在さえ忘れられてしまった言葉がある。そういう言葉を我々は「死語」と呼んでいる。しかし、その言葉がある時期になぜ使われ、現在はなぜ忘れられてしまったのか? そこには必ず理由がある。そして、その理由を探っていくと、その裏に大きな時代の流れのあることに気づかされる。ある時代をもっとも特徴づけ、その時代とともに消えていった言葉というのは、言い方を変えれば、その時代の世相、風俗、政治、社会の姿を我々に対して雄弁に物語ってくれる貴重な証人なのである。――本書より
輪廻転生を考える
輪廻転生を考える
著:渡辺 恒夫
講談社現代新書
私はどこから来てどこへ行く。前世は何? 死後は? 自己が自己である理由を考える。 輪廻転生観の歴史――情報化文明の中で、現在の少年少女は、まだ年端もいかぬうち、宇宙的な視野の広がりに直面する。それが、「なぜ20世紀末の今というときに、ここ地球星の日本という島に生きているのか」という問いを生む。また、みんな同じような家に住み同じような服を着て同じような教育を受ける、という現代の超過密化した管理社会が、「自分は本当はいったい誰なのだろう」という、出自を求める問い、アイデンティティの問いとなる。輪廻転生観は、まさに、これら、《今》と《ここ》の問い、「私は誰か」の問いに答えるべく、忘却の淵から呼び戻されたのだ。前近代の迷妄と思われていたものが、ポストモダンの死生観の有力候補としてよみがえりつつあるのだ。――本書より
ケインズを学ぶ
ケインズを学ぶ
著:根井 雅弘
講談社現代新書
経済学者は、人間の性質や制度に関心が高く、資質において数学者、歴史家、哲学者であらねばならない。 経済学はモラル・サイエンスである――ところで、この手紙のなかには、さらに、経済学は「モラル・サイエンス」(moral science)であって、自然科学とは異なるという趣旨の文章が続くのですが、このモラル・サイエンスという言葉を直訳して「道徳科学」としたのでは、その意味を理解することはできないでしょう。モラル・サイエンスとは、かいつまんで言えば、アダム・スミスやディヴィット・ヒュームの時代から続く「モラル・フィロソフィー」(moral philosophy)の系譜に連なるもので、社会の一員としての人間を取り扱う学問を指しています。したがって、経済学が1つのモラル・サイエンスであるという場合、その意味するところは、人間社会の現象を経済的側面から研究する学問ということになるわけです。――本書より
〈子ども〉のための哲学
〈子ども〉のための哲学
著:永井 均
講談社現代新書
自分ひとり裸一貫で哲学することのすすめ。なぜ悪いことをしてはいけないのか。なぜぼくは存在するのか。この二つの大問題に答えはあるだろうか。脳に汗して考え、自分の答えを見つけるプロセスを語る。(講談社現代新書) 自分ひとり裸一貫で哲学することのすすめ。なぜ悪いことをしてはいけないのか。なぜぼくは存在するのか。この二つの大問題に答えはあるだろうか。脳に汗して考え、自分の答えを見つけるプロセスを語る。
電子あり
家族をめぐる法の常識
家族をめぐる法の常識
著:二宮 周平
講談社現代新書
不倫、離婚、介護、相続、そして自らの老いと死。いざというときに直面する法の「常識」を通し、家族の現在問う。 家族の法律についてどれだけ知っていますか――家族に関する法律や裁判は、私たちの日常生活に密接に関係するにもかかわらず、女性はともかく男性からはあまり関心をもたれていないように思われる。自分自身が離婚や親の介護、相続などに直面して、初めてこれらの法律に出会い、その仕組みや発想に驚いたり、納得したり、一喜一憂する。あるいは職場の同僚たちの話や悩みに耳を傾けるうちに、現在の家族のかかえる問題を知る。自分の大切なものは何かと聞かれて、「家族」と答える男性がけっこう多いにもかかわらず、その家族を支える法律については、案外、知られていないのではないだろうか。――本書より
パソコン入門・基礎の基礎
パソコン入門・基礎の基礎
著:山田 祥平
講談社現代新書
21世紀に不可欠な教養、パソコン。ウィンドウズを中心にマウス、キーボードからインターネットまでを徹底解説。 次代の「紙とペン」としてのパソコン――音声や映像が含まれた文書など、パソコンがなければ入手できない情報が増加する健康にある。……さらに、ゼロからモノを創り出したり、すでにある情報を整理分類加工する場合にも、紙とペンより、高い生産性を持つ道具が求められるようになり、パソコンが、それを満たす最も手軽な機械であると認識されるようになってきている。今の世の中で、紙とペンを自由にあやつれなければ、社会人としての知的生産性を確保するのは難しい。それと同時に、今後の世の中は、パソコンを自由にあやつれなければ、何も産み出せないような方向に進んでいくのだ。今、かたくなにパソコンと向き合うことを拒んだとすれば、最終的には、そのことで他人に迷惑をかけてしまうような時代が、すぐそこにやってきている。――本書より
論証のレトリック
論証のレトリック
著:浅野 楢英
講談社現代新書
説得力、論証力のある言論を展開するには何が必要か? 事柄の利害・善悪、正と不正を見分け、説得に役立つレトリックと、筋道だった議論の仕方を身につける「技術」を教示する。 「言語の技術」の必要性――何かある事柄に関する知恵や知識や技術を備えておりさえすれば、ただちにその事柄についての言論の能力も備わり、容易によく話したり書いたりできるのかというと、かならずしもそうではありません。それぞれの道の専門家が皆、自分の専門の事柄についてよく論じることができるとはかぎらないのを見ても、そのことは明らかでしょう。ある事柄について、全体として明瞭で、論証力、説得力のあるよい言論が展開できるようになるためには、当の事柄に関する知恵や知識や技術を備えるだけでなく、ものの言い方や書き方についての心得や訓練が要るのです。言い換えると、「言論の技術」といったものを何らかの仕方で学んでおく必要があるということです。――本書より
〈心配性〉の心理学
〈心配性〉の心理学
著:根本 橘夫
講談社現代新書
誠実で良心的に生きようとするとき陥りがちな心配と不安のたえまない悪循環。心の深層に光を当てながら対処法を模索する。 自分の心の内にのみ――たとえば、「上役や教授など権威ある人と会わなければならない」ことに対して感じる心配を考えてみましょう。この場合、相手の人によって身体が傷つけられるわけではありません。なにか取られるわけでもありません。自分が低く評価されるのではないか、気に入られないのではないかということを心配しているのです。低く評価されても、気に入られなくともなにかを失うわけではないのです。ですから、このときの心配とは、あなたの心の中だけのものなのです。親に気に入られないと不安を感じる無力な幼児の気持ち、これが権威ある人に対して無意識のうちに再現されてしまっただけなのです。――本書より
どこでどう老いるか
どこでどう老いるか
著:木村 栄
講談社現代新書
「超高齢社会」の到来を目前にして、医療体制や介護・福祉の備えは万全か? 老人病院の現状、各種の施設や在宅介護の問題点を探り、老いの未来を展望する。 モデルなき時代――昔、時間がもっとゆるやかに流れていた頃、周囲に普通にみられた老いのモデルはごく自然であたりまえで、怖くも惨めでもなかった。大黒柱として生活を切り回していた働き盛りの頃の暮らしそのままに、少しずつゆっくりと時間が降り積もったというふうで、自分もこうして老いるのかと素直に受け入れられる姿であった。今、長寿時代の老いの様相は一変して、身近に見聞きする老いの姿は辛いものが多く、自分がどこでどう老いるのかが一向にみえてこない。どこでどう老いるか。私たちは自分でそれを決めなければならない。――本書より
アンコ-ル・ワット
アンコ-ル・ワット
著:石澤 良昭
講談社現代新書
インドシナ半島の中央に次々と巨大な寺院を完成させたアンコール王朝。建造に費した年月は? 回廊に描かれた物語とは? なぜ密林に埋もれたのか? 遺跡研究の第1人者がカンボジア史を辿りながら東南アジア最大の謎に迫る。 アンコール王朝誕生――アンコール遺跡群は、壮大で、しかも建築装飾の素晴らしい建造物ばかりである……。訪れる人たちは、並はずれて強大な王権が存続し、王はこれらすべての建造物をつくりだした最高責任者であったと想像してきたにちがいない……。だがしかし、実際の歴史をひもといていくと、それはまったく異なる史実が判明するのである。アンコール朝の長い歴史上においては、実力のある王が次々と登位し、その王座を必死に守ろうとして、命を落とすこともあったという史実がわかっている……。新都城の造営の理由は、王の単なる虚栄心からではなく、王たる者が神から授けられた崇高な使命を遂行し、王権の確立を都城造営の形で見せる必要があったからに他ならない。――本書より
女人政治の中世
女人政治の中世
著:田端 泰子
講談社現代新書
将軍の正室、後家、あるいは生母として、武士階級の女性がどう政治と関わったか。北政所なども含めて描く。 御台所の権限――政子が想定する御台所像は、棟梁が全権を握り、無力な御台所がそのかたわらに寄り添う、というものではなかった。頼朝に知らせるべきことは、御台所にも知る権利がある、というものであった。御家人に対し住屋破却命令が出せるという検断権の掌握とならんで、内々の指示を与える権限をも、政子は主張したのである。文治元年以後、政子は頼朝とともに、正月には栗浜明神に参詣、2月には源頼朝が父義朝の冥福を祈って創建した南御堂の事始に渡御(出席)、10月、御堂供養導師本覚院公顕が鎌倉に下向したのに対面している。このように公的行事、特に神社や寺院への参詣は、頼朝と御台所の2人が出かけ、ついでに主だった御家人の家に立ち寄るなどして、主従関係の絆をより強めておくことが、以後、2人の手でなされているのに注目しておこう。――本書より
「時間」を哲学する
「時間」を哲学する
著:中島 義道
講談社現代新書
超難問「過去はどこへ行ったのか」を考える。過去体験はどこか空間的な場所に消えたのか。未来は彼方から今ここへと到来するのか。過去―現在―未来という認識の文法を疑い、過去が発生する場を見きわめる。(講談社現代新書) 超難問「過去はどこへ行ったのか」を考える。過去体験はどこか空間的な場所に消えたのか。未来は彼方から今ここへと到来するのか。過去―現在―未来という認識の文法を疑い、過去が発生する場を見きわめる。
電子あり
日光東照宮の謎
日光東照宮の謎
著:高藤 晴俊
講談社現代新書
絢爛豪華な日光東照宮は徳川家康を「神」と祀る。なぜ日光の地なのか。東照大権現とはいかなる神か。創建にまつわる謎と、彫刻群が伝える壮大なコスモロジーを解読。 江戸のほぼ真北――東照宮を江戸の真北に祀るということは、都城制における大内裏の位置を北端に設けるのと同様の意味があったのではないか。すなわち、久能山において神として再生された東照大権現が、江戸城の真北に遷座されることによって、その神格が「宇宙を主宰する神」と一体化されたことを意味しよう。つまり、東照大権現を「宇宙を主宰する神」へと昇華せしめるために、江戸城の真北に遷座しなければならなかったのである。これこそが、東照宮の日光遷座の最大の理由であったのである。――本書より
イスラム聖者
イスラム聖者
著:私市 正年
講談社現代新書
中世のイスラム社会には数多くの聖者が存在した。ある聖者は雨を降らせる奇跡を行ない、またある聖者はひとびとの病を癒した。やがて彼らは民衆を先導し、時の権力と拮抗しうる力を持ちはじめる――これまでは光の当たらなかったイスラムの民衆の生き生きとした素顔を、聖者伝から読む。 イスラム史を読み直す――聖者は治癒や雨乞いという民衆の願いをかなえてやったり、民衆の盾となって権力者に抵抗することもあった。……従来イスラムの歴史研究では、年代記は事実に基づく記録であり、年代記の史料批判による研究が重視されてきた。一方、聖者伝は、ほとんどが架空の記録とされ、歴史資料として用いることは邪道とされた。……ここで私に課せられた仕事は、「聖者伝」という「ネガの画像」に光を当て、イスラム中世に広がっていた豊かな社会と生き生きとしたひとびとの顔を映し出すこと、そしてイスラム史の読み直しを試みることである。――本書より
エイズの生命科学
エイズの生命科学
著:生田 哲
講談社現代新書
免疫とはどのようなものか? レイロウイルスとは? HIVによる免疫破壊のメカニズムを平易に説き、感染治療の原理と可能性を探る。また、日本の薬害エイズをも視野に入れ、「エイズ」を通じて知る命のサイエンス。 インターロイキン1と発熱・痛みの関係――生体の持つディフェンス・システムにおいて、発熱の役割とはいったい何であろうか?……マクロファージは外敵が侵入したことを知ると、インターロイキン1を放出して、体温を上昇させ、T細胞とB細胞を速く成長させる。これと同時に、マクロファージ自体も「飲み込む」活動が活発になる。すなわち、体温の上昇が免疫細胞を活性化している。……次に、「痛みと生体防御の関係」について述べてみよう。……インターロイキン1が筋肉組織に放出されると、筋肉のタンパク質に分解が起こることが確認された。筋肉が分解すれば、組織が破壊されるから痛みを感じるのだろう。それと同時に、化学的にはタンパク質の中に蓄えられていたエネルギーが放出される。……病気になった時に感じる不快感は、病気と戦うために必要なエネルギーをタンパク質の分解によって得ていることによる。……この痛みがあるから、私たちは免疫と外敵と戦っていることを実感できるのである。こうしてライフサイエンスが発展することによって、少しずつではあるけれども、私たちの身体に関する素朴な疑問が解けていく。――本書より
軽症うつ病
軽症うつ病
著:笠原 嘉
講談社現代新書
人はひとりでにゆううつになる。そのとき? 軽症化しつつ広範に現代人の心にしのびこむ内因性ゆううつを「気分」の障害としてとらえ、共通に見られる心身の諸症状、性格との関係、回復への道筋を明解に説く。(講談社現代新書) 生真面目で心やさしい人々をおそうゆううつ、不安。おっくう感。軽症化しつつふえている理由なき現代的うつ状態への対処法と立ち直りの道筋を明快に説く。 第3の「ゆううつ」――脳に原因があっておこる「ゆううつ」と、心理的な悩みにひきつづきおこる「ゆううつ」……実はもうひとつ、第3の「ゆううつ」があって、話をいささか複雑にするのです。私たちはこの第3を「内因性のゆううつ」と呼んでいます。内因性とは文字どおり「内側からひとりでに」「目覚まし時計が一定の時刻になると鳴るように」おこるという意味です。脳に大きな障害はない。原因となりそうな身体病もない。たとえば、うつ気分をひきおこすことの知られている内分泌疾患もない。逆にまた、そういうことがあれば誰だってゆううつになるであろうような、はっきりした心因的環境的な出来事も先行していない。ひとりでにおこってくるというしかない。そういう場合です。――本書より
電子あり