九鬼周造 理知と情熱のはざまに立つ〈ことば〉の哲学

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電子あり

九鬼周造 理知と情熱のはざまに立つ〈ことば〉の哲学

クキシュウゾウリチトジョウネツノハザマニタツコトバノテツガク

講談社選書メチエ

独自の思索を展開した哲学者・九鬼周造(1888-1941年)。その波乱に満ちた生涯をたどりながら、「〈ことば〉の哲学」をキーワードにして、全主要著作を読み解く。『「いき」の構造』(1930年)、『偶然性の問題』(1935年)、『文芸論』(1941年)といった多彩な著作を貫くものとは? 日本哲学研究の第一人者である著者が、若き日から耽溺してきた不世出の哲学者に抱く深い想いを今ついに解き放つ。


『「いき」の構造』(1930年)で知られる哲学者・九鬼周造(1888-1941年)は、東京帝国大学を卒業したあと、ヨーロッパに留学した。ドイツではリッケルト、フッサール、ハイデガーに学び、フランスではベルクソンと知り合って対話を交わすなど、本場で哲学の訓練を受けたことが知られる。帰国後は没年まで京都大学哲学科で教授を務めてフランス哲学や現象学などを教える一方、留学中に強く認識した日本の美と文化を追求して、『「いき」の構造』を執筆するに至った。続いて発表された『偶然性の問題』(1935年)、『人間と実存』(1939年)、『文芸論』(1941年)といった著作を手に取ればすぐ分かるように、九鬼が関心をもった対象は、「偶然性」、「時間」、「美」、「押韻」など、きわめて多岐に及んでいる。
多様な姿を見せる九鬼の哲学には、しかし一貫した問題意識がある。──本書は、そのような視点から、九鬼周造という神秘と魅力に満ちた人の生涯をたどり、すべての主要著作をていねいに読み解いていく。
哲学書はもちろん、『ウパニシャッド』などの古代インド文献、『ミリンダ王の問い』や『浄土論』などの仏教文献、さらにはボードレールやヴァレリーの詩、富士谷御杖の歌論書にまで及ぶ膨大な文献から、明確な輪郭をもつ理論を彫琢していく力。さまざまな現象から聴き取ったものを論理的に把握し、緻密に構造化する力。九鬼周造という哲学者だけがもつその力のありかに、近代日本哲学研究の第一人者である著者が迫る。
 「〈ことば〉の哲学」というキーワードを手がかりにして、九鬼の生涯と全思索を魅力ある筆致で描ききった本書は、最良の入門書であるだけでなく、他では体験できない知的冒険をもたらしてくれるだろう。


目次

序 章 九鬼周造――「言葉」の哲学者
第一章 九鬼周造の生涯と思想
 1 生い立ち・家庭
 2 高校・大学時代
 3 ヨーロッパ留学
 4 京都大学時代
 5 人となり
 6 思想の源泉
 7 九鬼周造の哲学
第二章 「いき」の構造
 1 問題としての「いき」
 2 分析の方法
 3 「いき」とは何か
 4 方法論の揺れ
 5 開放性と閉鎖性のはざま
 6 概念的分析の限界と哲学の意義
第三章 偶然性の哲学
 1 なぜ九鬼は『偶然性の問題』を執筆したのか
 2 「偶然性」とは何か
 3 原始偶然
 4 九鬼の偶然論の射程──「生の論理学」をめざして
第四章 時間について
 1 東洋的時間
 2 円環としての時間――魂の輪廻と宇宙の輪廻
 3 同一性と多様性という逆説
 4 時間論に込められた意図
第五章 芸術・文化・自然
 1 無限の表現としての芸術
 2 日本文化と世界文化
 3 自 然
第六章 文学・詩・押韻
 1 文学と時間
 2 音 韻
 3 日本詩の押韻
参考文献
あとがき

書誌情報

紙版

発売日

2016年07月12日

ISBN

9784062586306

判型

四六

価格

定価:1,760円(本体1,600円)

通巻番号

627

ページ数

240ページ

シリーズ

講談社選書メチエ

電子版

発売日

2016年07月22日

JDCN

0625863000100011000T

著者紹介

著: 藤田 正勝(フジタ マサカツ)

1949年、三重県生まれ。1978年、京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。1982年、ボーフム大学(西ドイツ)大学院博士課程修了。博士(文学)。京都大学文学部教授を経て、現在、京都大学総合生存学館名誉教授。専門は、ドイツ哲学・日本哲学。著書に、『現代思想としての西田幾多郎』(講談社選書メチエ)、『西田幾多郎』(岩波新書)、『西田幾多郎の思索世界』(岩波書店)、『哲学のヒント』(岩波新書)など。編著に、『シェリング読本』(共編、法政大学出版局)など。注釈・翻訳に、九鬼周造『「いき」の構造』全注釈(講談社学術文庫)、『シェリング著作集』第4a巻(燈影舎)など。

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