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イマジネール 想像力の現象学的心理学
イマジネールソウゾウリョクノゲンショウガクテキシンリガク
- 著: ジャン=ポール・サルトル ,
- 訳: 澤田 直 ,
- 訳: 水野 浩二

本書は、実存主義の旗手として知られるフランスの哲学者・文学者であるジャン=ポール・サルトル(1905-80年)が1940年に出版した哲学著作である。ここに待望の文庫版での新訳をお届けする。
パリに生まれ、高等師範学校で哲学を学んだサルトルは、1927年に高等教育修了論文「心的生におけるイメージ」を執筆した。指導教授に出版を勧められたその原稿は、版元のアルカン社の判断で前半部だけが出版される。それが1936年に刊行された初の単著『想像力(L’Imagination)』である。その後、哲学論文「自我の超越」(1936年)、短篇小説「壁」(1937年)を発表したサルトルは、1938年に刊行した長篇小説『嘔吐』で一躍作家として脚光を浴びることになる。翌年勃発した第二次世界大戦に従軍したため、高等教育修了論文の後半部と考えられる本書『イマジネール(L’Imaginaire)』の出版は、1940年まで待たなければならなかった。
本書の主題となっている「イメージ(イマージュ)」は、両大戦間期にシュルレアリスム運動に参加した人たち、ジョルジュ・バタイユ、ガストン・バシュラールが関心を寄せた対象だった。そのような状況の中で本書が出版されると、即座に反応してイメージ論を展開したのがモーリス・ブランショであり、エマニュエル・レヴィナスである。その後も、モーリス・メルロ=ポンティ、ミシェル・アンリ、ロラン・バルト、ジル・ドゥルーズといった人たちにとって、サルトルのイメージ論が重要な対話相手になったことを忘れてはならない。
近年、イメージや想像力に対する関心は、映像をはじめとする創作の現場も含め、新たな広がりを見せている。豊富な具体例とともに多様な方向で考察が展開される本書を、研究の最前線に立つ二人の研究者が学術文庫のために新たに訳出した。決定版となるこの新訳によって、本書はさまざまな世界で刺激をもたらし続けるだろう。
[本書の内容]
序(アルレット・エルカイム=サルトル)
第一部 確実なもの
第一章 記 述
第二章 イメージの仲間
第二部 蓋然的なもの
第三部 心的生におけるイメージの役割
第四部 想像的生
結 論
訳者解説(澤田 直)
- 前巻
- 次巻
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目次
序(アルレット・エルカイム=サルトル)
第一部 確実なもの
第一章 記 述
1 方 法
2 第一の特徴 イメージは一つの意識である
3 第二の特徴 準‐観察の現象
4 第三の特徴 想像的意識は対象を一つの無として立てる
5 第四の特徴 自発性
結 論
第二章 イメージの仲間
1 イメージ、肖像、カリカチュア
2 記号と肖像
3 記号からイメージへ 物まねの意識
4 記号からイメージへ 図式的デッサン
5 炎のなかの顔、壁の上の染み、人間の形をした岩
6 入眠時イメージ、コーヒーの模様や水晶の球のなかで見られる光景や人物
7 肖像から心的イメージへ
8 心的イメージ
第二部 蓋然的なもの
1 知
2 情感性
3 運 動
4 心的イメージにおける言葉の役割
5 心的イメージにおける事物の出現の様相について
第三部 心的生におけるイメージの役割
1 象 徴
2 象徴的図式と思考の挿絵
3 イメージと思考
4 イメージと知覚
第四部 想像的生
1 非現実的対象
2 非現実的なものを前にした諸行為
3 想像力の病理学
4 夢
結 論
1 意識と想像力
2 芸術作品
訳者解説(澤田 直)
人名索引
書誌情報
紙版
発売日
2020年05月14日
ISBN
9784065194386
判型
A6
価格
定価:2,200円(本体2,000円)
通巻番号
2568
ページ数
472ページ
シリーズ
講談社学術文庫
著者紹介
1905-80年。フランスの哲学者・文学者。主な哲学著作は、本書(1940年)のほか、『想像力』(1936年)、『存在と無』(1943年)、『弁証法的理性批判』(1960年)など。
訳: 澤田 直(サワダ ナオ)
1959年生まれ。パリ第一大学大学院哲学科博士課程修了(哲学博士)。現在、立教大学教授。主な著書に、『ジャン=リュック・ナンシー』、『サルトルのプリズム』ほか。主な訳書に、ジャン=リュック・ナンシー『自由の経験』、サルトル『自由への道』(共訳)ほか。
1952年生まれ。北海道大学大学院文学研究科博士後期課程単位修得退学。現在、札幌国際大学教授。主な著書に、『サルトルの倫理思想』、『倫理と歴史』ほか。主な訳書に、ジャン・ヴァール『具体的なものへ』、ジャン=ポール・サルトル『主体性とは何か?』(共訳)ほか。
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