『改造』論文集成 革新の現象学と倫理学

『改造』論文集成 革新の現象学と倫理学

カイゾウロンブンシュウセイ カクシンノゲンショウガクトリンリガク

講談社学術文庫

本書は、ドイツの哲学者エトムント・フッサール(1859-1938年)が日本の総合雑誌『改造』のために執筆した連続論文とそれに関連する草稿を集成したものです。
1900/01年の『論理学研究』で注目されたフッサールは、独自の超越論的な哲学を追究し、『イデーンI』(1913年)によって「現象学」を確立しました。3年後にフライブルク大学の正教授に就任し、その地位を確かなものとしたフッサールは、しかし1910年代後半から20年代の大部分をほぼ何も出版せずに過ごしました。
まさにその時期にあたる1922年8月、改造社のベルリン駐在員がフッサールに宛てて書いた手紙が残されています。そこには「あなたに自己紹介なしにお手紙をお送りすることについて、お詫び申し上げます。しかし、私が今こう述べれば、あなたはおそらくそれを理解してくださるでしょう。私は日本の東京の雑誌『改造』(Reconstruction)の代表者としてベルリンに在住しており、私たちの『改造』のために、あなたにご論考を寄せていただくことを心より望んでいる、と」と書かれていました。この依頼に応えて1922年秋から翌23年初頭にかけて執筆されたのが、本書に収められた5篇の論文です。
その地位を確かなものとした哲学者がなぜ日本の雑誌に寄稿することを決めたのか――本当の理由は分かっていません。フッサールはのちに改造社に4篇の論文を送付したと述べていますが、『改造』に掲載された論文は3篇である上、5篇目の論文も残されています。
このように謎に包まれた5篇の連続論文で、フッサールは社会倫理学に属する内容を扱い、「ヨーロッパ文化の革新」を掲げました。これは、のちの『ヨーロッパ諸科学の危機と超越論的現象学』(1936年)を予告するものです。『改造』論文全5篇を、11本の草稿、および内容上の関連が深い公開講演「フィヒテの人間の理想」を合わせて集成した本書は、哲学者が晩年の思索に向かう過程を示す貴重な記録であるとともに、危機の時代における「革新」という今日につながる主題を追求した重要な作品であることは間違いありません。

[本書の内容]
〔第一論文〕革 新――その問題と方法
〔第二論文〕本質研究の方法
〔第三論文〕個人倫理学の問題としての革新
〔第四論文〕革新と学問
〔第五論文〕人間集団の発展における文化の形式的諸類型
附論I~XI
フィヒテの人間の理想[三つの講演]
訳者解説


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目次

〔第一論文〕革 新――その問題と方法
〔第二論文〕本質研究の方法
〔第三論文〕個人倫理学の問題としての革新
〔第四論文〕革新と学問
〔第五論文〕人間集団の発展における文化の形式的諸類型

附論I [革新に関する第一論文の初稿のはじめの部分]
附論II [個人の生の二つの形式]
附論III 財と作品の主体としての人間、文化の主体としての人間
附論IV 伝説や詩的な創作物がもつ宗教的な効果
附論V [教会とキリスト教的学問]
附論VI [絶対的正当化の理念について]
附論VII 徹底的(ラディカル)な批判
附論VIII [実践理性に基づく文化としての近代文化]
附論IX [根源的な文化と文明。近代科学は「浄福」をもたらしうるのか]
附論X [近代の文化と学問の発展における、ヨーロッパの人間のテロスを実現することの断念について。五つのテクスト]
附論XI バーナード・ショーと西洋の生の力

フィヒテの人間の理想[三つの講演]

訳者解説

書誌情報

紙版

発売日

2025年05月15日

ISBN

9784065398142

判型

A6

価格

定価:1,870円(本体1,700円)

通巻番号

2852

ページ数

392ページ

シリーズ

講談社学術文庫

著者紹介

著: エトムント・フッサール(エトムント・フッサール)

1859-1938年。ドイツの哲学者。現象学の創始者。代表作は『論理学研究』など。

訳: 植村 玄輝(ウエムラ ゲンキ)

1980年生。岡山大学准教授。

訳: 鈴木 崇志(スズキ タカシ)

1988年生。立命館大学准教授。

訳: 八重樫 徹(ヤエガシ トオル)

1982年生。宮崎公立大学准教授。

訳: 吉川 孝(ヨシカワ タカシ)

1974年生。甲南大学教授。

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