講談社学術文庫作品一覧

内省と遡行
講談社学術文庫
外部に出ること、これが著者がめざした理論的仕事の課題である。ただし著者は、外部を実態的に在るものとして前提してしまうことと、詩的に語ることを自ら禁じた。むしろ、不徹底かつ曖昧な言説に止めをさすために、内部に自らを閉じこめ、徹底化することで自壊させる方法を採った。内省から始めた哲学理論の批判は、ここにぎりぎりの形で提示された。「内省と遡行」から「言語・数・貨幣」へ、さらに「探究」への転回を試みた画期的評論集。

ドイツ語とドイツ人気質
講談社学術文庫
人はことばを通じて世界を認識し、規定し、ことばによって精神のあり方を刻印づけられる。ドイツ語の、重々しく深々としたゆたかなひびきや、最後まで緊張を要する、公明正大でごまかしのきかない表現構造などは、どんな人間像をはぐくみ、また映し出すか。ドイツ人はたくましくも頑強いであり、明快かつ重厚な精神を失わず、強い自己主張と旺盛な自己実現への意欲をもつ。私たち日本人とは異質な文化世界への扉を開ける鍵がここにある。

哲学以前
講談社学術文庫
本書は、戦前戦後を通じて長い間、知的青年として不動の地置を占めていた。この爆発的に読まれ続けた理由は、何が人生にとって大切であるかを、改めて自覚させる根拠を与えてくれたこと。また、本書が哲学への巧みな入門書であると同時に、デカルトやカントと並んで西田幾多郎の「自覚に於ける直感と反省」を取りあげて、現存する日本人の思索力を高く評価し、学問的な希望を与えてくれたからである。(今道友信・解説より)

平家物語(十一)
講談社学術文庫
元暦2年2月、義経は精鋭を率い、暴風をついて屋島を奇襲し、平家を破った。壇の浦に遁れた平家勢と、これを追う源氏勢との最後の合戦が、同年3月24日関門海峡で繰広げられ、海上の激しい戦闘のはてに平家方は敗れ、二位尼に抱かれて安徳帝は入水し、知盛、教経ら武将も壮絶な自害をとげた。宗盛、建礼門院は捕えられて都へ連れ戻され、宗盛は頼朝に面謁ののち斬られ、捕虜となっていた重衡も奈良の大衆に引渡され処刑された。
仕掛けとしての文化
講談社学術文庫
人類学の視座から知と芸術の世界を切り拓くサ-カスや道化,祝祭,演劇など,日常性の秩序を打ち壊し,人々の感性を解き放つための「文化」を鋭く,かつ大胆に解明し,現代の「知」のあり方を問う好評論集

芭蕉の世界
講談社学術文庫
江戸元禄期、俳諧を単なる言葉の遊びから人生詩へと大きく発展させた芭蕉。本書は、その芭蕉の天和(てんな)期の漢詩文調から元禄期の“軽み”への道に至るまでの作品の内面的世界に焦点をあて、俳諧の座という仲間との係わりの中で、“笑い”の意味を追求し、さらに古人の詩心をたずねて『おくのほそ道』へと出立し、ついにその俳諧精神“不易流行論”を確立した過程を、広い視野からとらえた。座の文学の新視点から描いた異色の芭蕉文学論。

心と脳のしくみ
講談社学術文庫
心と脳はどうかかわりあうか。古くから、心の働きがからだのどの部分とどのような関係(かかわり)をもつのか、さまざまな憶測がなされてきた。近年の大脳生理学のめざましい進歩はこの謎を次々に解き始めた。まず、大脳皮質の、系統発生的に見て古い部分と新しい部分の役割の違いが明らかになった。人間の複雑な脳と心の働き――欲望と情動のうごめきその抑制の機制(メカニズム)が、ユーモアあふれるエピソードをまじえ、これ以上ない平明さで語られる。
外国語の研究
講談社学術文庫
明治の青年に説いた画期的な外国語の学び方内村は秀れた日本有数の英学者,英文家であった.本書はその内村が,外国語はいかに学ぶか,その意義と実際を具体的に述べたもので,今日なお古びない価値を持つ
百魔(下)
講談社学術文庫
名代の傑物杉山茂丸が語る明治・大正人物伝逆境を切拓き、幾多の苦難に打勝って近代日本を創った有名・無名の人々と自分との交遊を痛快に語った其日庵杉山茂丸一代の傑作。後人に残された教訓集でもある。

風土の構造
講談社学術文庫
人間は、人間が考えている以上に環境の産物である。そのなかでも最も大きな意味をもっているのは気候である。気候条件のちがいを全地球的(グローバル)にとらえ、人間への影響を考察してゆくと、文化の様態がいかに多く気候によって形づくられているかがわかる。たとえば、離婚と気候の関係が推定される。日本で雪の多い地方は離婚が多かったのである。著者は、気候学が発見した新しい事実から、人間文化の形成に関して、ユニークな推論を展開した。

ストレスと自己コントロ-ル
講談社学術文庫
ストレスとは何か? ここでは一口に「外部環境のうち生体に害作用を及ぼす刺激」といえよう。現代人を蝕むストレスの発生源は、仕事と人間にあると著者はいう。ストレス学の正しい知識と豊富な事例をもとに、現代人の不安や会社人間の神経症など、ストレスの心に及ぼす影響とその実態を探り、あわせて専門医の立場からストレスの現実的なコントロールの仕方を提唱した本書は、ストレス社会を生きぬく現代人必携の書といえる。

平家物語(十)
講談社学術文庫
一の谷で討たれた平家の首が都に入り、大路を渡され、捕虜となった重衡も六条通りを引き回された。朝廷では平家が安徳帝とともに持ち去った三種神器の返還をもとめ、重衡との交換を条件に折衝したが、平家はこれを峻拒した。維盛は、屋島の平家の陣を脱して高野に入り、出家をしたのち熊野に詣で、やがて那智の沖で入水をとげた。捕虜となった重衡は、頼朝の要請で鎌倉に下り、頼朝と面謁する。9月、範頼は平家追討に発向した。
百魔(上)
講談社学術文庫
其日庵杉山茂丸が痛快に語る近代日本人物伝明治・大正期の政財界の人物と一代の壮士杉山との交友録.歴史の表裏に蠢く人物の言行の奇怪さ面白さを余すところなく吐露して読む人を飽きさせない世紀の稀書.

西欧文明の原像
講談社学術文庫
西ヨーロッパは、ほぼ一千年に及ぶ各地、各国の争いを克服して、今その大陸主義の姿をあらわしつつある。本書は、12、13世紀と現代を絶えず往復しながら、ヨーロッパ文化圏に内在する根源的な要素を探り、西欧文明の原像を再構成するため、象徴的な森の意味をはじめ、農村、城(貴族)、都市の4つに視点を捉えてその歴史的な意義を明らかにした。国民国家から大陸型国家への変貌を追求する斬新な史眼が捉えた野心的な文明論。

秘術としての文法
講談社学術文庫
比喩をもって言えば、新言語学は化学であり伝統文法は薬学である。化学者は病人をなおせないが、薬学者は病人をなおす薬を提供する。伝統文法は読解力を飛躍的に向上させ、新しい知性をひらき、時空を超越した世界へわたくしたちを運んでくれる秘術的な力をもっている。また、言語は社会のありかたと係わり、習慣であると同時に規則であり、理論と習慣の折り合いをつけるという意味で、伝統文法は経験と英知の学と言うことができる。

平家物語(九)
講談社学術文庫
源頼朝による木曽追討の軍勢が派遣され、都を追われた義仲は寿永3年1月、琵琶湖畔で討死する。佐々木・梶原の宇治川先陣争い、義仲をかばって最後まで敢闘した今井四郎兼平の壮絶な自害が語られる。この間、九州を離れた平家は瀬戸内の合戦で勝利し、勢力を挽回して一の谷に城郭を構え、都の奪還を図ったが、範頼の大手の攻勢と、義経の奇襲で敗北を喫し、忠度、敦盛らが討たれ、重衡は捕虜となって、平家一門は屋島に退却した。

茶道の哲学
講談社学術文庫
茶道は今日、日本のみならず世界的に強い関心を持たれ茶道人口も急速に増加しているが、茶道の本旨を理解している人は少ない。本書は、みずから茶道を行じ茶道の玄旨たる禅を究めた著書が茶道文化の本質について透徹した思索を深め、かつ茶道の将来についての創造的な意見を熱意をもって語った、茶道史上、特筆すべき名著である。現に茶道を行じている人は勿論のこと、茶道および日本文化に関心を有する人々の必読の書といえよう。

祭りと信仰
講談社学術文庫
本書は、東北の恐山や伊豆利島、吉野・熊野の祭りと信仰など、日本の農山漁村の民衆の間に培われた伝承文化を追究した民俗採訪記である。著者の学問的な関心が当初の地理学から歴史学、そして民俗学へと移行した、その転機をなしたのが柳田国男との出会いであった。以来民俗調査へと深く沈潜し、やがて桜井民俗学の結実を見るに至る。宗教と歴史と民族を包括した複眼思考のもとに民衆の基層文化の構築を目ざす桜井民俗学への招待。

影の現象学
講談社学術文庫
影はすべての人間にあり、ときに大きく、ときに小さく濃淡の度合を変化させながら付き従ってくる。それは「もう一人の私」ともいうべき意識下の自分と見ることができる。影である無意識は、しばしば意識を裏切る。自我の意図する方向とは逆に作用し自我との厳しい対決をせまる。心の影の自覚は自分自身にとってのみならず、人間関係においてもきわめて重要である。刺激に満ちた万人必携の名著。

平家物語(八)
講談社学術文庫
破竹の勢いで進撃してきた木曽義仲は、寿永2年7月28日、比叡山に難を避けた後白河院を守護して入京し、平治の乱以来20余年見られなかった源氏の白旗が、都にひるがえった。一方、都を落ちた平家は九州にのがれたが、在地豪族緒方三郎維義に追われて、九州も脱出しなければならなかった。都の義仲勢は不法狼藉の振舞いが多く、後白河院を中心とする貴族との対立をふかめ、ついに義仲は院の御所法住寺殿を攻撃したのであった。