講談社選書メチエ作品一覧

源氏物語=性の迷宮へ
講談社選書メチエ
絢爛たる光源氏の物語を終えた後に、なぜ「続篇」宇治十帖が必要とされたのか。「性」の物語として読むとき、物語の隠された欲望が明らかになる。人間愛・死体愛・マゾヒズム――。「宇治」を持つことにより、「源氏」は異形の物語へと変貌する。古典文学の金字塔をラディカルに読み変える、「源氏物語」のポストモダン。
【目次】
序章 薫/匂宮 差異への欲望
1 「性の物語」としての『源氏物語』
2 同化への欲望
3 差異なき異化
第一章 光源氏の物語から宇治十帖へ
1 光源氏の物語 第一部 闇を孕んだ栄華
2 光源氏の物語 第二部 頽落する世界
3 宇治十帖 光源氏世界の脱構築
第二章 薫と大君 不能的愛の快楽
1 薫/大君・匂宮/中の君 四項関係の意味するもの
2 大君/中の君 互換的な愛人たち
3 大君のマゾヒズム
4 欲望喚起装置としての障害
5 不能的愛のエロス
第三章 さかしまの主人公 浮舟登場
1 不能的密通
2 浮舟=窮極の媒体
3 四項関係再び 破局の予感
4 排除と暴力の構造
5 溶解する薫
第四章 光源氏時代への挽歌 匂宮三帖論
1 周縁化する世界
2 斜陽貴族の美学 「竹河」巻
3 語り手は誰か
第五章 社会の欲望媒介装置=浮舟 交換される欲望
1 東国受領階級の娘 より下層に、より周縁に
2 常陸介家をめぐる欲望
3 パラサイト 仲人と弁の尼
第六章 〈情報〉としての浮舟 欲望の沸騰点
1 現れた女の身体
2 横河僧都一族の人々
3 消えた女の身体
4 最後の浮舟
5 「物語」の終わるとき 極北としての宇治十帖
註
あとがき

インド植民地官僚 大英帝国の超エリートたち
講談社選書メチエ
人口3億のインドを支配した大英帝国1300人の選良たち。「国王の王冠にはめ込まれた最大の宝石・インド」へ、イギリスの青年たちはどういう情熱に駆られて赴いたのか。選ばれた者たちの出自・エートスと統治のシステムを詳細に分析。
【目次】
序章 植民地を統治するエリート官僚集団
第一章 インド高等文官の選抜とキャリア
第1節 リクルートメントのありよう
第2節 キャリアの概観
第二章 統治システム改革とインド高等文官たち
第1節 モンタギュー=チェルムスフォード改革の策定
第2節 「改革」とインド高等文官のアイデンティティ
第3節 1935年インド統治法の制定
第三章 インド高等文官たちの生活史
第1節 高等文官たちの結婚
第2節 「官僚貴族」の社交生活
第3節 退職後の活動 再就職問題
第4節 インド高等文官の子供たち
結論
関連年表
注

漢字道楽
講談社選書メチエ
「巨」のもともとの部首は?「布什」はどこの大統領か?造字にこめられた古代中国人の知恵、極めつきの難訓字を読む面白さなど、漢字に囲まれて育った著者が綴るユニークな漢字論。

英語講座の誕生 メディアと教養が出会う近代日本
講談社選書メチエ
ラジオ放送の開始とともに生まれ、真珠湾攻撃の朝にも発信された「英語講座」。教養として難解な英文学、受験英語=解読技術をへて、総動員体制下の実用英語会話へ。電波にのる「英語」の変遷に、いかなる力が作動したのか?現代日本の英会話熱、英語教育の原点を抉りだし、メディアと英語と教養の節合過程を解明する。
【目次】
はじめに 「英語会話」はいつ始まったか
序章 放送と教養の出会い
1 一九五二年の放送たち
2 「教養」の発見
第一章 最初の「英語講座」
1 東京高等師範学校の英語教育者たち
2 「英文学」という普遍教養
3 「英語講座」への反応
第二章 「英文学」の思考様式
1 岡倉由三郎という出来事
2 「国語」から「英文学」へ
3 「英文学」の地平
第三章 英語をめぐる内戦
1 英語はもういらない
2 「英文学」の組織化
第四章 第二放送と「受験英語」
1 第二放送の新設
2 佐川春水と「受験英語」
第五章 時局化のなかの「英語会話」
1 「英語会話講座」の誕生
2 「英語会話」とEnglishの関係
3 変化していく放送
第六章 「世界」と「日本」と英語会話
1 一九三〇年代の国際主義者たち
2 「英語会話」の思考様式
3 非対称な「世界」と語る主体化
第七章 「英語」のような「国語」
1 第二言語としての「共通語」
2 二つの「共通語」の思考
3 消滅、あるいは「中断」
おわりに 英語会話の権力
注および参考文献
あとがき
索引

人はなぜ戦うのか
講談社選書メチエ
弥生時代、稲作とともに「最新思想」、戦争が到来!
膨大な発掘資料をもとに、〈戦争の考古学〉が日本人の戦いを読み解く
縄文時代にはなかった戦争が、弥生時代、「先進文化」として到来した。食糧をめぐるムラ同士の争いは、いかに組織化され、強大な「軍事力」となるのか。傷ついた人骨・副葬武器・巨大古墳など、膨大な発掘資料をもとに列島の戦いのあとを読み解き、戦争発展のメカニズムに迫る。

知の教科書 フーコー
講談社選書メチエ
知の考古学者フーコーは何を見ていたのか? 大哲学者の著作も無名の人のメモも制度に関する報告も同列の言説として、そこに浸透している知の様式に目を向けるフーコー。刺激的なその思想がよく理解できる本。
知の考古学者、フーコー。そのまなざしは、「主体」「権力」「自己」「性」の根元へと向けられる。いかにして人は服従する主体となるのか、あるいは、言説を形作っている知の様式は時代・文化によりどう変わるのか……。もっとも刺激的な思想家を、やさしく、まるごと理解するための最適教科書。(講談社選書メチエ)
【目次より】
●フーコーの生涯と思想
●フーコー思想のキーワード
●三次元で読むフーコー
●知のみなもとへ――著作解題
●フーコー最後のメッセージ
●知の道具箱

ドゥルーズ 流動の哲学
講談社選書メチエ
資本主義を読みとく鮮烈な哲学。ドゥルーズの薫陶を受けた著者がつづる創造的哲学者〈思考の伝記〉。「差異」「リゾーム」「器官なき身体」。独創的なキータームを駆使して、鮮やかにまた精緻に、〈現代〉と〈人間〉を解読しつづけたドゥルーズ。一切を〈流動の相〉からとらえるその眼差しに映った資本主義、権力、性、分裂症の姿は? 限りなく柔軟、限りなく開かれた、斬新で強烈な「民衆的」哲学の全貌。(講談社選書メチエ)
資本主義を追跡し続けた柔軟この上ない思考現代最大の怪物、資本主義。一切を解体し、回収するこの永久運動の根源=流動する欲望を、精神分析学・数学・文学など諸学を駆使して読み解く最先端思想の全貌。

日常生活のなかの禅
講談社選書メチエ
永平寺の俊英が世に問うアクチュアルな禅。禅はよりよく生きるためのラディカルなスタイルだ。釈尊・道元の教えを元に仏教思想を根幹から説き起こし、現代における禅の可能性を探る、ユニークな坐禅の勧め。
日常生活の底に突如開く深淵――無常。根拠なき生をかかえ、「このままでよいのか」という想いにとらわれるとき、禅はラディカルな技術(メチエ)となる。永平寺の若き俊英が、釈尊・道元の教えを元に仏教思想を根幹から説き起こし、現代における禅の可能性を探る、アクチュアルな坐禅のすすめ。
【目次】
第1章 「根拠」の外部へ――本当の「自己」とは何か
第2章 煩悩のトライアングル――「苦」としての実存
第3章 システムとしての存在――「縁起」の思想
第4章 「自己」とは何か――「方法」としての因果
第5章 「自己」の倫理――生き方の基準はいかに決まるか
第6章 坐禅とは何か――「非思量」を知る
第7章 生のテクニック――「恭敬」の作法

知の教科書 カルチュラル・スタディーズ
講談社選書メチエ
知の教科書シリーズ創刊
楽しい「知」の世界へようこそ――「カルチュラル・スタディーズ」を本当に知っていますか?
1970年代、英国バーミンガム大学・現代文化研究センター発。瞬く間に世界を席巻した新たな知の潮流=カルチュラル・スタディーズ。メディア、サブカルチャー、人種、セクシュアリティ、歴史をどう捉えなおすのか?領域を超えて豊饒な成果を生みつづける文化研究を、基礎から立体的に紹介する格好の入門書。

学問はおもしろい
講談社選書メチエ
忘れられぬ本との出会い、人生を変えた外国体験、異分野からの転身。哲学、歴史、文学など各学問のパラダイムを変えた〈知の達人〉たちが綴る、学問への旅立ち、格闘、魅惑。

メディチ家はなぜ栄えたか
講談社選書メチエ
したたかに政界を生きたジョヴァンニ。知識人を魅したコジモの書籍蒐集。栄華を極めたロレンツォに忍び寄る影。欧州最大の銀行家にして、君主。暴力沙汰を繰り返した弱小一族が、なぜ君主や教皇を生み出せたのか。メディチ家の栄華の秘密に迫る。
【目次】
プロローグ 栄えるということ
第一章 歴史の暗闇の中から
1 謎に包まれた素性
2 義理と人情=ジョヴァンニの処世訓
第二章 コジモの野望
1 言語明瞭、意味不明瞭 コジモの実像に迫る
2 コジモが投獄されたとき
3 フィレンツェへの凱旋
第三章 メディチ銀行の発展
1 躍進するメディチ銀行 中世後期における銀行業
2 メディチ銀行の複眼的戦略
第四章 メディチの平和
1 共和主義とメディチ党
2 国際平和という実益 ミラノ=フィレンツェ同盟へ
第五章 ルネサンスの制覇
1 「プラトン・アカデミー」の設立
2 国際ゴシック対ルネサンス
3 イタリア「ルネサンス化」計画
エピローグ メディチ王国が幕を閉じたとき
文献解題
あとがき

知の教科書 ユング
講談社選書メチエ
楽しい「知」の世界へようこそ――
魂の探求者、ユングのすべて
魂の探求者、ユング。「集合的無意識」・「元型」・「コンプレクス」――新たな概念を駆使し、より深く、人間のこころの実相に迫る。生涯から、心理技法の最前線、そしてその思想の暗部まで、メチエ内新シリーズ「知の教科書」で、立体的にユング思想の全貌を解明する。

全地球化するマネー ドル・円・ユーロを読む
講談社選書メチエ
「自由化」というパンドラの箱は、すでに開けられた。情報に翻弄された莫大な資金が、瞬時に地球を駆けめぐる。世界を支配する「不確実性」。弄流するマネーは、アメリカの陰謀なのか?市場という怪物は制御可能か?20世紀の国際金融史を総括し、起こりうる金融危機への対処を模索する。
【目次】
序章 「グローバル時代」の逆説
第1章 パンドラの箱は開けられた 情報化と自由化
1 情報革命と「グローバル化」
2 誰のための「自由化」
3 社会主義圏の崩壊
第2章 債務を抱えた基軸通貨国
1 ドルの復活?
2 乱高下するドル
3 「世界の銀行」アメリカ
第3章 途上国への資金の流れ
1 「ブーム」と「破綻」の歴史
2 中南米の債務危機
3 二つの通貨危機
4 通貨危機からの教訓
第4章 円とユーロの行末 三極化あるいは二極化
1 ユーロの登場
2 円の弱さ
終章 「グローバル資本主義」といかに共存するか
注
参考文献
あとがき
索引

漱石のユーモア 〈明治〉の構造
講談社選書メチエ
「叩かれて昼の蚊を吐く木魚かな」俳句、落語、古今東西の文学を駆使して漱石は明治を笑う。金権主義を風刺する『猫』。学校を笑う『坊っちゃん』。『それから』にこめられた文明開化へのまなざし。魯迅の笑いとの比較を通じ、漱石と彼が生きた明治という時代を捉え直す。
【目次】
プロローグ 漱石との出会い
第1章 笑いからみた漱石
1 笑う漱石・笑わない漱石
2 二つの自我
第2章 ユーモアはいかに生まれたか
1 俳句と寄席 江戸の方法
2 博学が生んだユーモア
第3章 「人間」を笑う「猫」
1 猫が見た人間
2 饒舌な猫
3 世間を笑う 苦沙弥と迷亭のユーモア
第4章 学校を笑い飛ばす 『坊ちやん』の学校論
1 正義の敗北
2 学校という聖域を笑う
第5章 都会と田舎の間
1 江戸っ子が見た地方
2 三四郎の上京
3 知識青年たちの苦悩
第6章 西洋との葛藤 漱石のまなざし
1 漱石の英国体験
2 日本の中の西洋
3 明治日本の現実
4 不自然な近代
第7章 魯迅の笑い・漱石の笑い
1 軽巧な笑い・悲憤の笑い
2 阿Qと坊っちゃん
3 漱石のユーモア観
4 ユーモアという文化
5 「東洋的近代」と向き合う
エピローグ 笑いが失われたとき
主要参考文献
あとがき
索引

<玉砕>の軍隊、<生還>の軍隊
講談社選書メチエ
降伏しない日本兵、「降伏は名誉」のアメリカ兵。「バンザイ突撃」は、「9時から5時まで戦う」GIには自殺行為だった。究極の文化衝突としての戦場で両軍兵士はお互いの認識をどう変えたか。両者の思想と行動を比較文化的観点から考察する。

江戸が東京になった日 明治二年の東京遷都
講談社選書メチエ
幕末。「公武合体」そして攘夷の熱気。政治の都・京都を志士が奔(はし)る。都を遷(うつ)すという。大坂か江戸か? 浮上する東の京。遷都をめぐるさまざまな構想……。大坂行幸、東京行幸、京都還幸、そして明治2年3月28日、東京再幸をもって帝都・東京が誕生する。新鮮な天皇イメージ。新たなる「首都」。明治日本のスタートを活き活きと描く。
【目次】
はじめに 「東京遷都」の不思議
第1章 江戸か京か――幕末の首都はどこか
1 花の田舎・洛中の風景
2 政治の都・京都へ
3 京都と江戸の幕府
4 王政復古の首都
第2章 構想のなかの帝都
1 幕府側の新首都構想
2 大久保利通の大阪遷都論
3 江戸への遷都論
4 東西両都論
第3章 天皇と新時代の演出
1 江戸を東京に
2 東京への行幸
3 東の京の天皇
4 京都還幸をめぐって
第4章 帝都東京の誕生
1 東京への再幸
2 三月二八日、遷都
3 帝都東京の出発
4 京都の再生
おわりに 首都・東京へ
あとがき
索引

ビ-トルズ
講談社選書メチエ
英国の片隅から世界へ躍り出た「若造たち」が20世紀を変えた。ルーツとしての「ケルト性」とブラックミュージックの「黒さ」――その絶妙なミクスチュア感覚こそ、彼らの「マジック」の秘密。全世界を席巻し、音楽を、文化を一変させた革命的グループを徹底解剖する。

帝王聖武
講談社選書メチエ
天皇聖武とは本当に心弱き帝王だったのか。女帝2代の後即位した天皇は各地を行幸し、大仏建立を発願する。強い意志と政治力による事業は、やがて天平の大いなる華へと結実する。民衆を結集し、「平城の天武」たらんとした勁き帝王の軌跡を描く。

二次大戦下の「アメリカ民主主義」 総力戦の中の自由
講談社選書メチエ
肥大する国家権力、抑圧される市民の自由。自由の国アメリカはこのジレンマにいかに対処したか。11万余の日系人抑留、人種問題など、アメリカの暗部に光を当て、非常時の自由主義社会をケーススタディする。
【目次】
はじめに
第1章 「新しいアメリカニズム」と市民の自由
1 「新しいアメリカニズム」の形成
2 参戦過程と戦時中の市民的自由の抑圧
第2章 日系人の強制収容とかれらの「忠誠」
1 パールハーバー奇襲攻撃と日本人社会の混乱
2 大統領行政命令9066号への道
3 日系人強制収容と日系人の対応
第3章 アメリカのディレンマ 総力戦体制下の黒人差別
1 戦争の到来とアメリカ黒人
2 平等な参加を求める運動
3 軍隊内の黒人差別と政府の対応
4 一九四三年の人種暴動とヘイト・ストライキ
第4章 戦後を見通した新たな模索 「赤狩り」の嵐を前に
1 黒人運動と政府の方向転換
2 日系人の動員と強制収容の集結
3 戦時中の女性の動員とアメリカ社会
4 米ソ協調と「赤狩り」再開の試み
註
引用文献
あとがき
索引

江戸武士の日常生活 素顔・行動・精神
講談社選書メチエ
江戸の平和が武士の多様な生き方をもたらした。小姓から家老への出世、鷹狩・花見などの趣味、出奔して第2の人生へ――。身分制社会を柔軟に生きた彼らの個性あふれる素顔を追い、江戸社会をとらえなおす。
【目次】
はじめに 新たな武士像をさぐる
第1章 中世から近世へ
1 兵農分離社会が誕生したとき
2 近世人の自国意識
第2章 武士の生活を考える
1 日記から読む武士の素顔
2 三浦氏と石橋氏
3 家老と武士の一日
4 武士が病気にかかったとき
5 結婚・子育て
6 鷹狩りから花見まで
7 家臣の作法
第3章 武士の精神をとらえなおす
1 武士社会の道理
2 出奔・仇討ち・立身出世
3 家臣としての理想像
4 『葉隠』を読み直す
5 武士の虚像と実像
おわりに 武士社会の活力が失われたとき
参考文献
関連年表