ヨーロッパ中世の民衆教化と聖人崇敬 カロリング時代のオルレアンとリエージュ

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ヨーロッパ中世の民衆教化と聖人崇敬 カロリング時代のオルレアンとリエージュ

ヨーロッパチュウセイノミンシュウキョウカトセイジンスウケイ カロリングジダイノオルレアントリエージュ

創文社オンデマンド叢書

西ヨーロッパでは4世紀初頭のミラノ勅令を契機に、異教からキリスト教への改宗の動きが本格化し、中世初期のカロリング時代において、個人の生活習慣のキリスト教化が進展する。こうした民衆レベルのキリスト教化こそ、ヨーロッパ世界を誕生せしめた主要な前提条件であった。本書は、この時代のキリスト教化の進展を、王権と司教が主導した民衆教化の分析を通して解明する。前半では、シャルルマーニュによる勅令『一般訓令』の成立事情を考察し、そこに含まれる民衆教化プログラムがどのような仕組みで王国内の各司教区に伝達・普及されたかを解明。その上で、オルレアン司教区とリエージュ司教区において、司教が展開した応用プログラムを考察する。さらに後半では、オルレアンおよびリエージュ司教区の聖人崇敬を詳細に検討。司教が聖人崇敬を戦術的に利用した民衆教化の様相を、司教座都市と農村部に分けて析出する。カロリング朝フランク王国の広大な版図において、法・言語・習慣・民族を異にする人々を糾合する統合原理としてのキリスト教が、いかに社会に浸透していったのかを、同時代史料に基づき実証的に検討し、目下のところ停滞期にある民衆教化研究に一石を投じる業績。

【目次より】

第一章 先行研究の状況と本書の立場
第二章 『一般訓令』(一) 文書的性格・構成・内容・目的
第三章 『一般訓令』(二) 成立事情
第四章 司教区への民衆教化プログラムの普及
第五章 民衆の宗教生活に関するオルレアン司教およびリエージュ司教の把握
第六章 オルレアン司教区およびリエージュ司教区における民衆教化プログラムの展開
第七章 オルレアン司教区およびリエージュ司教区における私有教会
第八章 オルレアン司教区およびリエージュ司教区における聖人崇敬の概観
第九章 オルレアン司教区の聖人崇敬(一) 司教座都市における聖十字架崇敬
第十章 オルレアン司教区の聖人崇敬(二) 司教座都市における聖アニアヌス崇敬
第十一章 オルレアン司教区の聖人崇敬(三) 農村部における聖マクシミヌス崇敬
第十二章 リエージュ司教区の聖人崇敬 農村部における聖フベルトゥス崇敬
結論
補論 「民衆教化」とは何か
あとがき

史料・文献目録
略語一覧


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目次


第一章 先行研究の状況と本書の立場
はじめに 第一節 民衆教化の総合的研究・総合的叙述 第二節 民衆教化研究の個別専門化・細分化 第三節 宗教生活研究 第四節 本書の立場
第二章 『一般訓令』1 文書的性格・構成・内容・目的
はじめに 第一節 国王カピトゥラリアと司教カピトゥラリア 第二節 『一般訓令』の文書的性格 第三節 全体の構成と民衆教化規定の内容 第四節 民衆教化プログラムの目的 第五節 小括
第三章 『一般訓令』2 成立事情
第一節 問題の所在 第二節 成立事情 第三節 民衆教化プログラムの影響 第四節 小括
第四章 司教区への民衆教化プログラムの普及
第一節 問題の所在 第二節 予備的考察 第三節 王の個人的人脈 第四節 教会会議 第五節 国王巡察使 第六節 小括
第五章 民衆の宗教生活に関するオルレアン司教およびリエージュ司教の把握
第一節 問題の所在 第二節 司教カピトウラリアと司牧書簡 第三節 「悪しき慣習」 第四節 キリスト教的生活実践 第五節 信仰に関する知識 第六節 小括
第六章 オルレアン司教区およびリエージュ司教区における民衆教化プログラムの展開
第一節 問題の所在 第二節 司教自身による民衆教化 第三節 民衆教化の拠点としての教区教会 第四節 教区司祭による民衆教化 第五節 教区司祭の監督手段 第六節 小括
第七章 オルレアン司教区およびリエージュ司教区における私有教会
はじめに 第一節 オルレアン司教区 第二節 リエージュ司教区 第三節 小括
第八章 オルレアン司教区およびリエージュ司教区における聖人崇敬の概観
はじめに 第一節 民衆教化と聖人崇敬 第二節 オルレアン司教区 第三節 リエージュ司教区 第四節 小括
第九章 オルレアン司教区の聖人崇敬1
第一節 問題の所在 第二節 オルレアンにおける聖人崇敬 第三節 聖十字架崇敬の擁護 第四節 聖人伝の分析 第五節 エウルティウスが選ばれた理由 第六節 小括
第十章 オルレアン司教区の聖人崇敬2
第一節 問題の所在 第二節 サン=テニャン聖堂の運営組織とそれをめぐる権力関係 第三節 崇敬に関わる人びとの活動 第四節 アニアヌスの聖人イメージ 第五節 司教の多面的役割 第六節 サン=テニャン参事会教会の反応 第七節 小括
第十一章 オルレアン司教区の聖人崇敬(三) 農村部における聖マクシミヌス崇敬
第一節 問題の所在 第二節 テオドゥルフス登位前のマクシミヌス崇敬 第三節 聖遺物の「発見」か「移葬」か 第四節 聖人伝の作成 第五節 ミシー修道院を中心としたマクシミヌス崇敬の位置づけ 第六節 小括
第十二章 リエージュ司教区の聖人崇敬 農村部における聖フベルトゥス崇敬
第一節 問題の所在 第二節 再建前のアンダージュ修道院 第三節 アンダージュ修道院の再建 第四節 アルデンヌにおけるフベルトゥス崇敬の創出 第五節 クロワ・バナル 第六節 小括
結論
補論 「民衆教化」とは何か
あとがき

書誌情報

電子版

発売日

2022年02月25日

JDCN

06A0000000000397014G

著者紹介

著: 多田 哲(タダ サトシ)

西洋史研究者。中京大学教授。一橋大学社会学部卒業、東京都立大学大学院人文科学研究科修了。博士(史学)。専門は、宗教史、教会史。 著書に、『ヨーロッパ中世の民衆教化と聖人崇敬』『論点・西洋史学』(共著)『ヨーロッパ文化の再生と革新』(共著)『15のテーマで学ぶ中世ヨーロッパ史』(共著)などがある。

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