講談社学術文庫作品一覧

アメリカ映画の文化史(上)
講談社学術文庫
合衆国建国から200年、映画誕生から100年。国家の歴史の優に半分に重なるアメリカ映画の歴史を語ることは、アメリカ文化を語ることである。上巻では、ユダヤ系移民を中心とした“映画の大立者(ムービー・モーガル)”たちが〈アメリカの夢と神話〉の発信基地としてのハリウッドを形成し、移民や都市労働者の支持のもとに、映画を最大の文化メディアに創り上げるまでを描く。文化史の視角からとらえた鮮烈な映画史。〈全2巻〉

西欧市民意識の形成
講談社学術文庫
「自由」「平等」「自治」など現代社会を支える重要な理念は、いつ、どこに生まれたのだろうか。筆者は西ヨーロッパの中世都市に育まれた市民意識にその根源を求め、都市の形成と発展を論究。商人仲間の主導で組織された平等な誓約団体の結成が、11世紀末から12世紀にかけて北欧諸都市に波及し、氏族的制約から解放された近代市民意識の源になったとする。西洋史の泰斗による中世都市研究の名著。

続日本紀(下) 全現代語訳
講談社学術文庫
本書は『続日本紀』全四十巻のうち神護景雲3年から延暦10年までの11巻を収める。平城京は終焉を迎え、都は長岡京へと遷る。皇位継承を巡る政争の中、皇統は天武系から天智系へと交替、時代は新たな転換期に入った。旧仏教勢力の抑制・蝦夷征討など、桓武による平安律令制への歩みはいかに運ばれたか。詔勅から些末な日常に亘る詳細な史録が語る古代史研究に必携の重要史料、待望の最終巻成る。

「新しい歴史学」とは何か
講談社学術文庫
19世紀後半からフランス歴史学界の主流を占めた実証主義に対して、アンチ・テーゼとして登場したアナール派。その主張は、限定した学問体系を別個に打ちたてることではなく、逆に歴史を狭い専門領域の囲いから解放することであった。歴史における時間と空間の多層性を認識の前提にして、「フォークロア」や「死と生」「都市空間」など多様な領域をとりあげ、歴史学を人間諸科学の総体として捉えた好著。

俳句 百年の問い
講談社学術文庫
俳句は、正岡子規以来、100年間にわたって、ときに静謐、ときに華麗、かつダイナミックに花開いてきた。日本語の輝くエッセンスとして、国の内外を問わず、老若男女をとらえつづけてきた俳句の魅力とは何か。俳人はもとより、小説家が、科学者が、そして、イギリス・フランス人が、多面体として俳句の謎に鋭いメスをふるった成果が、この1冊に集結!注目の32人が肉迫した画期的な俳論集。

科学革命の歴史構造(下)
講談社学術文庫
本下巻では、19世紀のドイツの大学における科学のスタイル形成や、現代数学の理論的概念が世界観上の対立をも孕んで形づくられたこと、更にロシアにおける歪曲の歴史的経緯にもふれながらマルクス主義の科学理論について論じる。現代科学を総合的に捉えなおすには、数学や科学の内容に歴史的に通じることが必要であり、現代数学などの学問分野の理解には、歴史的アプローチが必須と説く意欲作。

科学革命の歴史構造(上)
講談社学術文庫
科学は連続的に形成・発展するものでなく、理論が急速に変革される〈科学革命〉の時代をもつ。本書ではこの視座から、科学史研究における全体史的方法について説き起こし、17世紀の危機と科学革命の様子や、近代科学形成の主役の1人、ガリレオ・ガリレイらの知的営為の結晶化を歴史的に論じ、更にフランス革命前後の科学思想について論及する。近代科学の発展の歴史構造を説く刮目の書(全2巻)。

ドイツ・ユダヤ精神史
講談社学術文庫
フロイト、マルクス、アインシュタインに代表されるユダヤ系知識人の創造力の根源は何か。また十字軍からホロコーストに至る迫害の連続に耐えて再生する生命力の秘密とは?本書は、哲学者、音楽家を輩出したメンデルスゾーン一族や詩人ハイネなどをとりあげ、ドイツ・ユダヤ人への憎悪の歴史と彼らの知識階層などへの社会的進出を多方面に追究。日本のユダヤ研究に先鞭をつけた必読の書である。

古代文字の世界
講談社学術文庫
ロゼッタ・ストーンに記されたエジプト象形文字を解読したシャンポリオン、ペルシア楔形文字を解読したローリンソン、エーゲ海の線文字Bを解読したヴェントリス……。過去2世紀にわたる古代文字解読の輝かしい業績は、古代史はじめ学問の諸分野に貴重な貢献を果した。暗号解読のようにスリリングな謎解きの過程を、豊富な図版を駆使して詳述。古代史の神秘の扉を開いた“失われた文字”解読の歴史。

茂吉秀歌『霜』から『つきかげ』まで百首
講談社学術文庫
――写生とは象徴に達するための手段であることを茂吉は生涯をかけて証明してみせた。その意味では私にとつて、他の誰よりも親しく、敬愛おくあたはざる師であつた。――「赤光」百首以来、満10年、14000余首の歌を味読し、今日、私の脳裏に浮かぶ茂吉像は、玲瓏として、詩歌の持つべき美を悉く具へた半神の相を持つてゐる。またの日、その右に並んで更に美を更新したいものだ。(著者「跋」より)

徳川吉宗と江戸の改革
講談社学術文庫
元禄時代の空前の繁栄の後、極端な不況と財政難から徳川幕府を救った「中興の英主」8代将軍・吉宗。本書は、新田開発ほか様々な年貢増収策や側用取次という側用人の設置など、吉宗による財政再建策と人材登用の妙を多面的に論述。また大江戸の発達と大岡越前守などの活躍した江戸の市政の仕組みを平易に解説する。吉宗を中心に、新井白石から田沼意次に至る江戸の改革を独自の観点で分析した好著。

英語と日本人
講談社学術文庫
開国以来、近代化を急務とした日本では、英語の習得は必須とされ、明治以降、多くの英語名人が輩出した。その一方でナショナリズムの台頭が英語廃止論を生むなど、時代の変遷につれて英語と日本人のかかわりは大きく変化して来た。世界の先進国としての役割を担う現代日本人には、技能としての英語ではなく、文化の壁を超えて機能する国際語としての日本英語こそ必要であると説く刮目の英語論。

死の風景
講談社学術文庫
死のかたちは時代や社会により異なる。歴史にみる飢餓やペストによる死は集団的・瞬時的であり、現代のガン死や交通事故死は個別的・散発的な死因構造を持っている。人類の歴史の中で、死の諸相は文明や風土とどうかかわってきたのか。近代医学誕生の契機となった大疫病の爪痕の残る古都を歴訪、ひたすら健康を希求して死を忘れようとする現代人が見失った〈生と死の尊厳〉を感銘深く説いた名著。

大和朝廷
講談社学術文庫
大和朝廷の起源は、今も多くの謎ち包まれている。本書は古代国家成立の経緯を、2世紀後半の倭国動乱から説き起こし、卑弥呼が登場する女王の世紀を経て、4世紀三輪王権確立による倭国の発展と5世紀の河内王朝への推移を解説。さらに大伴氏など有力豪族と大王家との争いによる王統断絶と蘇我氏の進出までを、綿密な文献批判と大胆な推理で考察した。古代史研究にあらたな問題提起をした力作。

唐詩歳時記
講談社学術文庫
千年以上にわたり、その繊細優艷な魅力によりわが国で広く愛読されてきた唐詩の豊穣な世界。本書は新年および季節ごとの唐代の行事・風俗を歳時記の形式で解説し、四季折々の花や鳥などの素材の持つ詩的心象を、日本文学における和歌のイメージとも比較しながら考察する。王維・李白・杜甫から、中唐の白居易(はくきょい)、晩唐の杜牧・李商隠まで、代表作の数数を選び、原文・訓読文に現代語訳を付した好著。

東京裁判 日本の弁明
講談社学術文庫
東京裁判は、はたして公正な裁判ったのだろうか。法廷に提出すべく弁護側が作成、準備したにもかかわらず、裁判長によって却下され、または未提出に終わった厖大な資料が残された。本書は、戦後50年を期してまとめられた、その『東京裁判却下未提出弁護側資料』のうち、もっとも重要な18篇を抜粋したものである。東京裁判を正しく認識し、明日の日本の展望を拓く、現在史研究に必携の史料集。

日本語は国際語になりうるか
講談社学術文庫
武器を捨て、経済的には超大国となった日本が、この利害の錯綜する国際社会の中で自分を主張し、自分を守るためには、言語と情報の力に頼るほかに方法のないことを悟るべきである…。言語現象を人間の思想と文化に密着したものとみなす言語社会学の視角から、日本語の特性を文明史的に考察し、国際語としての日本語の可能性を探る。外国語学習法の根本的な転換をも示唆する必読の文庫オリジナル。

近代政治思想史
講談社学術文庫
人類普遍の思想として近代国家成立の中心的は支柱となった自由主義。そして、自由主義のアンチテーゼとして台頭してきた社会主義とファシズム。本書は、その自由主義のルーツたる社会契約の思想から出発し、社会進化論、さらに自由主義とファシズムの激闘を、ホッブスやシュミットらの思想をたどりながらダイナミックに論じる。西欧の政治・社会思想から戦後日本の歴史までをも論及した必携の力作。

アウグスティヌス講話
講談社学術文庫
キリスト教神学の基礎を築いた古代ローマ末期の教父・アウグスティヌス。その青年時代は、放蕩無頼だったとする通説を、筆者は名著『告白』の鋭い読解により覆し、子供までもうけて離別した内縁の女性こそ、アウグスティヌスに最も大きな影響を与えた人物と説く。「創造と悪」の章では、アウグスティヌスと道元の思想の共通点を指摘し、キリスト教と仏教の接点をも示した。キリスト教理解のための必読書。

サバンナの手帖
講談社学術文庫
かねてからアフリカを物語り風に描きながら探索してみたいと思っていたが、ここではそれを「文字を必要としなかった社会」におけるコミュニケーションと歴史の問題としてとりあげた。歴史上の人物とも対話を試み、時・空を自由に移動する旅人としての「私」の見聞を、筆者である「私」の語りとダブらせた──。アフリカの熱帯大草原サバンナに生きる人と文明を、時間を交錯させて活写した好著。