講談社学術文庫作品一覧

慎思録
慎思録
著:貝原 益軒,訳:伊藤 友信
講談社学術文庫
なぜ人は学ばねばならないのか。人はどう生きるべきか。益軒の豊富な人生経験を踏まえて書き綴られた本書『慎思録』は、説得力に富み、味わい深い。人生の岐路に立たされたとき、そして、よりよく生きるために人は何をなすべきかを懇切丁寧に説く。今日の日本人がわすれがちな正義・信義・真実・正直・誠実など、現代にも通じる242の生き方を、原文と口語訳で平易に解説した実践的教訓書。
フッサ-ル
フッサ-ル
著:田島 節夫
講談社学術文庫
ハイデガー、メルロ=ポンティなど現代の哲学者に多大な影響を与えたフッサール。ユダヤ人の旧家に生まれ、数学に秀れた才能を発揮した学究の徒は、なぜ哲学研究に転じ、20世紀諸学に多面的な役割を果たす現象学を確立するに至ったのか。本書はその生涯をたどる一方、主著『論理学研究』『イデーエン』などを抄訳。たび重なる転回にもかかわらず、深く首尾一貫した哲学的思索を明らかにした力作。
聖なる場所の記憶
聖なる場所の記憶
著:鎌田 東二,解説:荒木 美智雄
講談社学術文庫
日本文化を考えようとする時、「聖なる場所」は特別の意味をもっており、例えば神は、ある特定の山、川、海などに鎮まるとされる。そこにはある特殊な情報や記憶が融合されて、人間の想像力というよりも、場所のもつ力が人間に憑依して、そこを特別の聖域にしていくのである。国学者・篤胤や折口の思想は、いかなる場所から現れ出たのだろうか。異能の宗教哲学者が初めて構想した日本の精神地理学。
ファウスト
ファウスト
著:小塩 節
講談社学術文庫
ドイツ文学のなかで、いちばん面白く、内容の深みと言葉の真実なみずみずしさを、もっともよく湛えているのは、ゲーテの『ファウスト』であろう。神と世界に対して自己を主張し、行動の巨人たらんとして悪魔にとりつかれた男ファウスト。死してなお真実の愛に生きた少女グレートヒェン……。本書はこのゲーテの作品を手がかりに、ヨーロッパ的人間とは何か、その実相をさぐろうと試みた刮目の書。
古代日本の女帝
古代日本の女帝
著:上田 正昭
講談社学術文庫
古代国家の創立期ともいえる飛鳥時代から奈良時代にかけては、推古、持統、元明、称徳など8代もの女帝が続出した。本書は3世紀の卑弥呼までさかのぼり、古代日本の女王・女帝の特質を、巫女王の段階、巫女王から女帝への過渡期、女帝の段階と3つに分け論述。大化の改新、壬申の乱など、有力豪族と天皇家との確執や、皇統を巡る争乱が相次ぐ古代日本の実相を、女帝の軌跡から明らかにした好著。
北一輝論
北一輝論
著:松本 健一
講談社学術文庫
昭和初期の国家主義運動の教典とされた『日本改造法案大綱』を発表、政界を揺るがす数々の事件に暗躍し、一九三六年の二・二六事件の黒幕として処刑された北一輝。著者は、新発見資料を縦横に駆使して、佐渡の多感な少年時代から、辛亥革命に始まる中国の革命運動に挺身した北一輝の足跡を辿り、その〈ロマン的革命家〉としての稀有の実像を造形した。昭和史の暗部をみごとに照射した会心の評伝。
時代の精神
時代の精神
著:ウィリアム・ヘイズリット,訳:神吉 三郎,解説:遠藤 光
講談社学術文庫
近代イギリスにおいて肖像画家として、また美術や文学の批評家として活躍したヘイズリット。彼は18世紀から19世紀初頭にかけてのイギリスを代表する詩人バイロンやワーズワースを初め、学者、政治家ら超人物25人を、過激な表現と独断で鋭く批判した。広い教養と深い学識に支えられた反骨精神をもとに歯に衣着せず裁断する姿勢は、注目に値する。批評の方法の原点を示す時代を超えた名著。
近代化の理論
近代化の理論
著:富永 健一
講談社学術文庫
資本主義的市場経済と民主主義の実現、家父長制家族から核家族への移行など、多面的に「近代化」をとりあげ、その起源を小封建領主割拠の中世から国民国家に統合された西洋の歴史に求めた。また日本と中国など非西洋の近代化も考察、中国は日本と異なり封建制をもたず、秦漢帝国から清朝まで統一専制が続いたために近代化が遅れたと指摘した。近代化の多様性と西洋と非西洋の相違を説く必読の力作。
源氏物語入門
源氏物語入門
著:藤井 貞和
講談社学術文庫
平安中期に成立した、日本古典文学の不滅の金字塔『源氏物語』。著者は、〈神話〉の古代から〈物語〉の中世への文学史の流れを見きわめ、平安貴族が愛読した『漢書』の李夫人伝や白居易『長恨歌』が『源氏物語』にどのような影響を与えたのかを具体的に指摘。『源氏物語』三部五十四巻の豊饒な世界の隅々にまで分け入り、その重層的な物語の構造を的確に解説した。最新最良の入門書、待望の文庫オリジナル。
ニーチェ
ニーチェ
著:山崎 庸佑
講談社学術文庫
近代の精神状況についての鋭い分析や、徹底した文明批判を通じて、現代思想全般にわたり強い影響をあたえた知の巨人ニーチェ。「知的誠実」さを根底にすえつつ人間の究極の拠りどころを求め苦闘し、根源の生を「ディオニュソス的」なものとして提示した哲学者ニーチェの思索と、狂を発して歿するまでの生の軌跡をあざやかに描出。多様な側面からニーチェの人と思想の全容を解明してみせた意欲的労作。
戦後日米関係の形成
戦後日米関係の形成
著:五十嵐 武士
講談社学術文庫
占領から対日講和条約、日米安保条約、そして朝鮮戦争と、米ソ冷戦構造の中で揺れ動いた戦後の日米関係。著書が独自にアメリカ国立公文書館で発見した歴史的資料を始め、日米双方の多くの外交文書や文献、また貴重な証言などを詳細に分析し、冷戦の産物ともいわれる両国関係の形成の過程を明らかにする。冷戦終焉後の新たなる日米関係の展望と、国際社会における日本のあり方をも問う画期的力作。
旧約聖書物語
旧約聖書物語
著:北森 嘉蔵
講談社学術文庫
信仰によってさえも見通し得ないような不透明な現実――神の御心の外へと背き出た人間の悪に、神はいかに働きたもうのか? 信仰とは、この神の働きへの信仰にほかならない。日本を代表する神学者が、旧約聖書の「出エジプト記」以降、「士師記」「サムエル記」等をへて「列王紀」までを読み解き、「歴史に働きたもう神」のさまざまな姿を明らかにしつつ神への信仰のあり方を改めて問い直した刮目の書。
経済史の理論
経済史の理論
著:J・リチャ-ド・ヒックス,訳:新保 博,訳:渡辺 文夫
講談社学術文庫
20世紀を代表する理論経済学の巨匠ヒックスが、「市場の勃興」を中心に世界経済史の道筋を理論的に解説。古代地中海世界の都市国家で活躍した商人がその交易活動によって「市場の浸透」の第一局面を開拓。続いて古代ローマにおける貨幣や法の整備、中世イタリアの銀行など信用制度の発達による中期の局面を経て、産業革命期の近代で市場経済が支配的になったとした。現代経済社会の理解に必携の名著。
ブル-ノ・タウト
ブル-ノ・タウト
著:高橋 英夫,解説:松山 巖
講談社学術文庫
1933年にナチスを逃れて来日、桂離宮を「日本美の極致」を具現したものと絶讃し、日光東照宮を「キッチュ(いかもの)」と評したドイツの建築家ブルーノ・タウト。3年半にわたる日本でのタウトの足跡を丹念に辿り、また「キッチェ」というドイツ語の語源に遡って、それが単なる否定概念ではないことを検証するなど、従来のタウト像に独自の光をあてる。“漂泊の人”タウトを感銘深く描いた名評伝。
日本人と浄土
日本人と浄土
著:山折 哲雄
講談社学術文庫
平安時代以降の日本仏教には、2つの強い流れがある。「生」の意味を追求した密教と「臨死」の課題を背負って発展した浄土教である。本書は、空海の密教をはじめ、法華経信仰と阿弥陀信仰、山岳修験と山中浄土、親鸞の海上浄土など、2つの伝統仏教を対比交錯させながら、浄土に往生するという思想の探索をさまざまな角度から論じる。日本人の心底深く流れている浄土信仰に光を当てた注目の書。
アメリカ映画の文化史(下)
アメリカ映画の文化史(下)
著:ロバ-ト・スクラ-,訳:鈴木 主税
講談社学術文庫
アメリカ映画は中産階級のモラルや美意識を吸収して成長し、大恐慌以来の不安定な社会情勢を背景に意識的に〈アメリカの夢と神話〉を供給して黄金時代を迎えた。スピードとユーモア、諷刺と暴力、カウボーイと実業家に代表される〈アメリカ流の価値観と生活様式〉が全世界へ波及した。ディズニー、キャプラらの映画から現代の第2の黄金時代まで、アメリカ映画の魅力を余すところなく描いた好著。
アメリカ映画の文化史(上)
アメリカ映画の文化史(上)
著:ロバ-ト・スクラ-,訳:鈴木 主税,解説:亀井 俊介
講談社学術文庫
合衆国建国から200年、映画誕生から100年。国家の歴史の優に半分に重なるアメリカ映画の歴史を語ることは、アメリカ文化を語ることである。上巻では、ユダヤ系移民を中心とした“映画の大立者(ムービー・モーガル)”たちが〈アメリカの夢と神話〉の発信基地としてのハリウッドを形成し、移民や都市労働者の支持のもとに、映画を最大の文化メディアに創り上げるまでを描く。文化史の視角からとらえた鮮烈な映画史。〈全2巻〉
西欧市民意識の形成
西欧市民意識の形成
著:増田 四郎,解説:阿部 謹也
講談社学術文庫
「自由」「平等」「自治」など現代社会を支える重要な理念は、いつ、どこに生まれたのだろうか。筆者は西ヨーロッパの中世都市に育まれた市民意識にその根源を求め、都市の形成と発展を論究。商人仲間の主導で組織された平等な誓約団体の結成が、11世紀末から12世紀にかけて北欧諸都市に波及し、氏族的制約から解放された近代市民意識の源になったとする。西洋史の泰斗による中世都市研究の名著。
続日本紀(下) 全現代語訳
続日本紀(下) 全現代語訳
訳:宇治谷 孟
講談社学術文庫
本書は『続日本紀』全四十巻のうち神護景雲3年から延暦10年までの11巻を収める。平城京は終焉を迎え、都は長岡京へと遷る。皇位継承を巡る政争の中、皇統は天武系から天智系へと交替、時代は新たな転換期に入った。旧仏教勢力の抑制・蝦夷征討など、桓武による平安律令制への歩みはいかに運ばれたか。詔勅から些末な日常に亘る詳細な史録が語る古代史研究に必携の重要史料、待望の最終巻成る。
「新しい歴史学」とは何か
「新しい歴史学」とは何か
著:福井 憲彦
講談社学術文庫
19世紀後半からフランス歴史学界の主流を占めた実証主義に対して、アンチ・テーゼとして登場したアナール派。その主張は、限定した学問体系を別個に打ちたてることではなく、逆に歴史を狭い専門領域の囲いから解放することであった。歴史における時間と空間の多層性を認識の前提にして、「フォークロア」や「死と生」「都市空間」など多様な領域をとりあげ、歴史学を人間諸科学の総体として捉えた好著。