講談社選書メチエ作品一覧

ピルグリム・ファーザーズという神話 作られた「アメリカ建国」
講談社選書メチエ
1620年、厳冬。メイフラワー号はアメリカ東岸に漂着する。最初の植民者でもなく、篤信の士も少なかった102名。歴史の波間に没した最小、最弱の植民地が、「建国」説話となる逆説。神話をつくらないではやまないアメリカ精神の深層に迫る。
【目次】
はじめに――神話的プリマス植民地のイメージ
第一章 新大陸到着まで
1 エリザベス調のアメリカ
2 オランダ時代
3 出港そして上陸
4 メイフラワー・インパクト
第二章 彼らの政治、信仰、経済
1 植民地の政治体制
2 我らに牧師を
3 莫大な借金
第三章 プリマス植民地の影
1 犯罪と法
2 インディアンとの関係
3 マサチューセッツ湾岸植民地への合併
第四章 創られる神話
1 我らが輝かしき先祖
2 初期共和国時代
3 二百年祭
第五章 「感謝祭」の成立
1 ハーヴェスト・ホーム
2 国民祝日への道
おわりに――ピルグリム神話をこえて
註
参考文献
プリマス植民地および感謝祭関連年表
あとがき
索引

「伊万里」からアジアが見える 海の陶磁路と日本
講談社選書メチエ
長崎、ジャワ、イスタンブール。時は江戸。景徳鎮に代わり、「伊万里」は唐船にのって世界をかけめぐる。「海の陶磁路」が明かす、日本をつつむアジア巨大交易網。鎖国時代――その時日本はアジアだった。
【目次】
はじめに
序章 イマリ・ロード 唐船がめぐった十七世紀アジア
第一章 長崎からの出発
1 築町遺跡のクンディ水差し
2 平戸町の人びと
3 代官末次平蔵の取りつぶし
4 唐人墓と唐寺
5 唐船の航路と貿易
第二章 イマリとアンピン坪
1 オスマン帝国を見つめたイマリ
2 イマリ貿易の拠点バンテン
3 輸出イマリの誕生
4 「国姓瓶」アンビン壺の謎
第三章 ジャワ・バンテンの生活
1 ヨーロッパ人の見た「豊かな異境」
2 イスラム・バンテンの誕生
3 繁栄と対立
第四章 海を渡る人びと
1 アジア港市社会
2 華人とインド人
3 スラウェシの海洋民 はるかなる航海者たち
第五章 ヴェトナムと台湾のうねり
1 ホイアンの港
2 幻のチャムパ王国
3 海の覇者台湾鄭氏
4 三藩の乱への動揺とイギリス商人
第六章 「アジアの我ら」
1 国姓爺の救援要請 十七世紀の選択
2 アジア間の転換
参考文献
関連年表
あとがき
索引

インカ帝国の虚像と実像
講談社選書メチエ
南北4000キロを覆う強大な帝国。万世一系の「太陽の御子」が平和裡に治める黄金郷。このイメージは、スペイン人が描いた虚像だった。忘れられた記録、インディオの証言が浮かびあがらせる、不安定な王権、血塗られた戦乱、被支配民の反感。最新の史料により錯綜するイメージを解きほぐし、真のインカ像に迫る。
ヨーロッパが創った虚構を暴く
「ローマのような大帝国」「王は絶対君主」「近親婚」──通説を覆し、真のインカ像に迫る!
【目次】
プロローグ
第一章 ペルー王国の「発見」まで
1 クロニカとは何か
2 「南方の偉大な国」に関する最初の情報
3 クロニスタの「創作」
4 征服に値する「偉大な王国」
第二章 征服者たちの描いたペルー王国 一五三〇年代
1 最初のペルー王国像
2 フランシスコ・ロペス・デヘレス 最初の公式クロニスタ
3 ミゲル・デ・エステーテ 「帝国」像の萌芽
4 ペドロ・サンチェス・デ・ラ・オス インカの「起原」に関する最初の記録
5 征服者の書簡と回顧録に書かれたペルー王国
第三章 インカ「帝国」像の誕生 一五四〇~五〇年代
1 『キオウカマヨクの報告書』 「専制国家」インカ
2 アグスティン・デ・サラテ 「インカ帝国」の登場
3 ペドロ・デ・シエサ・デ・レオン 「帝国」イメージの確立
4 フワン・ディエス・デ・ペタンソス 完成された「国家」としてのイメージ
第四章 暴かれる「インカ帝国」の虚像
1 「インカ帝国」像の変遷
2 「誤読」はなぜ生じたか インカ国家の成立時期とチャンカ戦争
3 インディオの言説の不一致 インカ王の性格をめぐって
エピローグ
主たる参考文献・参照文献
注
あとがき
索引
・「専制国家」インカ
・「帝国」イメージの確立
・暴かれる「インカ帝国」の虚像

春画
講談社選書メチエ
一読瞠目のSHUNGA論!
春画はまさしくそれが性(セックス)についてのものであるがゆえに、他のどういう絵画の形式とも異なるのだ。
春画が描いたのは「現実」ではなく、江戸人士の「性的幻想」である。春画はどう使われたのか?巨大な生殖器、豆男、動植物や小道具に託された意味とは?江戸の性(セクシュアリティ)、身体、象徴、窃視、空間システムなど、多方面から、美術史の1つの特異点を創造した江戸という時代の珍らかな顔貌(かんばせ)を凝視する。

現代思想としてのギリシア哲学
講談社選書メチエ
ギリシア哲学こそ来るべき時代の哲学である!
神の死、二元論の超克、非知、非同一性……すべては考え尽くされていた。
2500年の昔より、「神の死」「二元論の超克」等、極限の思考を重ね続けたギリシア哲学。哲学の祖タレス、逆説の巨人ヘラクレイトス、ポストモダンなソクラテスたちの眼に映じた「究極の真理」とは何か?「ギリシア1000年」の膨大な知を、現代思想の光の中でスパークさせる。

中世音楽の精神史
講談社選書メチエ
中世ポリフォニーの全貌に迫る決定版
宇宙の根源的な響きを表現し、クラシック音楽の礎(いしずえ)となった中世音楽。その一大中心地・パリをめぐる知識人たちの交流が、新たな技法と楽譜を生み出した。数の学問としての「音楽(ムジカ)」とは?単声聖歌からポリフォニーへ、世俗歌曲との出会い……。豊富な譜例と資料をもとに、中世音楽の精神世界に迫る。詳細なCDリスト付き。

唐から見た遣唐使 混血児たちの大唐帝国
講談社選書メチエ
世界帝都・長安。この100万都市をめざした遣唐使5000人は、唐朝から礼節と容姿を称賛される。科挙に合格、唐高官となった阿倍仲麻呂、周囲に才能を嫉妬された吉備真備ほかのエリート。唐との架け橋となった彼らとその子たちを通し、古代300年にわたる日中交流の実態を描き出す。
【目次】
序章 遣唐使の時代
第一章 長安を闊歩した若者たち
1 異国のロマンス
2 阿倍仲麻呂の青春
3 還俗の僧たち
第二章 時代の幸運児
1 玄宗の寵を受けた弁正親子
2 万葉の歌人・羽栗吉麻呂
3 天翔ける翼
4 黒い瞳の喜娘
第三章 混血児哀話
1 吉備真備の落胤
2 古代名匠異聞
結びに 文化施設への憧れ
注
あとがき
索引

ヒトラーという男
講談社選書メチエ
全「優」の小学生。偉大な芸術家への夢だけに生きた青年。兵役忌避者。一変して、鉄十字章の「勇敢」な兵士は、戦場に「故郷」を見いだす。魔力的な演説、メディア操作。1人の天才──悪魔が、絶望のドイツを熱狂的国家へと再編する。夢と嘘と現実の間を駆け抜けた男の生涯を、あらゆるヒトラー研究を渉猟し、統括した決定版。
「ユダヤ人絶滅」「生存圏獲得」
ナチスの基本思想(イデオロギー)はいかに形成されたのか?夢想家の青年が権力の中枢にのぼりつめたドラマの中にその秘密を探る。

ヨーロッパの舌はどう変わったか 十九世紀食卓革命
講談社選書メチエ
19世紀、ヨーロッパの食卓に味曾有の変動が起きる。植民地からの誘惑の味、コーヒー・砂糖。科学の福音、缶詰。テーブルマナーの洗練、美食大衆の誕生。食の近代化が変貌させたヨーロッパ人の心と体を追う異色の歴史。
より美味しく、より便利に、より優雅に!
彼らの欲望が生み出す「近代」の食生活。
【目次】
はじめに 身長をめぐる二、三の問題
第一章 飢えからの解放
1 ヨーロッパの農業
2 飢饉の恐怖
3 栄養状態の変遷
第二章 植民地の「恩恵」
1 「コロンブスの交換」
2 貧民の食べもの
3 新しい飲みもの
第三章 食の産業化
1 食品工業の成立と工業的食品
2 流通の変化
3 献立のむこうに見えるもの
第四章 変わる食習慣
1 食事マナーの「文明化」
2 食器が人の意識を変える
3 民衆の食事
第五章 イデオロギーとしての食
1 食品化学の発達
2 インチキ食品と法規制
3 「純正な」食品とは
第六章 食の「民主化」
1 大衆の口に
2 美食の二十世紀
註
参考文献
図表出典一覧
あとがき
死海文書
講談社選書メチエ
2千年前のユダヤ教の実態が、現代に甦る。第2次大戦直後、死海のほとりの洞窟で、牧童が偶然見つけた巻物。そこには聖書学を根本から書きかえる、驚くべき内容が記されていた。世紀の発見の全容が明かに

江戸のファ-ストフ-ド
講談社選書メチエ
すし、てんぷら、そば、鰻の蒲焼、しるこ、だんご、大福……。すべては江戸の屋台から始まった!
盛り場に、辻々に、縁日に――100万都市江戸を埋め尽くしたファーストフード屋台から、日本料理を代表するてんぷら、すし、そばが生まれた。せっかち庶民の愛した江戸前の味、将軍の意外に質素な食卓、「初鰹狂奏曲」、そして究極のグルメレストラン八百善まで、多彩で華麗な江戸の食空間を読む。

さよならダーウィニズム
講談社選書メチエ
「DNA=生物」ではない!構造(システム)という概念の導入が、進化論を一新する。
生物の多様性の説明原理として誕生した進化論。なぜ哺乳類の目は2つなのか?遺伝子操作で新種ができないのはなぜか?分子生物学の発展が20世紀進化論(ネオダーウィニズム)の矛盾を暴く。生物を支配する「構造」の視点から、もう1つ(オルターナティブ)の進化論を提示する知的冒険の書。

永楽帝
講談社選書メチエ
明朝第3代、永楽帝。甥、建文帝を倒した簒奪者。その負い目(トラウマ)は彼を史上屈指の「天子」たるべく駆り立てる。鄭和に命じた南海大遠征、5度にわたるモンゴル親征、北京遷都……。華夷秩序を建てなおし、中華の「世界システム」を構想した男の見果てぬ夢を描きだす。

千メートルビルを建てる 超々高層のハードとソフト
講談社選書メチエ
地表を離れ天をめざす1000メートル超々高層は、「ビル」を超える。エネルギーを自給し、生活から仕事の場まで内蔵する「都市」として自立する。巨大都市(メガロポリス)が、防災能力を備え、豊かな職住の拠点として生まれ変わる。超々高層と大深度地下が立ち上げる、究極の垂直都市の提案。
【目次】
プロローグ 21世紀都市は立体化する
第一章 巨大都市問題としての東京
1 人口の一極集中
2 容積規制と地価高騰
3 ゴミと環境と防災
第二章 歴史のなかの立体都市 高層化への歩み
1 ヨーロッパの都市形態
2 摩天楼のアメリカ
3 アジアの超高層都市
4 日本の高さへの挑戦
第三章 二一世紀の東京像
1 一〇〇〇メートル超々高層建築の意義
2 大深度地下開発
3 超々高都市の実現
4 超々高層居住へのアプローチ
5 超々高層建築のためのテクノロジー
第四章 一〇〇〇メートル超々高層建築を建てる
1 設計の過程
2 土台作りから建設まで
3 新たな「都市」の誕生
エピローグ 夢の彼方へ
1 東京バベル構想
2 環境共生都市
参考文献
あとがき
索引

芭蕉歳時記 竪題季語はかく味わうべし
講談社選書メチエ
移ろいゆく日本の四季の、息をのむ美しさ。その繊細なイメージを、和歌以来の伝統にたたえる「竪題季語」。芭蕉はこの伝統の上に、いかに新たな美を生みだしたのか。「鶯」「春雨」「蛍」「紅葉」など代表的季語60で味わう、俳聖の豊饒な宇宙。
【目次】
季語入門
●春
立春/鶯/梅/春雨/雲雀/花/蛙/山吹/藤
●夏
更衣/卯花/郭公/菖蒲/蛍/夕顔/蝉/納涼
●秋
七夕/萩/薄/女郎花/野分/鹿/雁/月/菊
●冬
時雨/落葉/枯野/霜/千鳥/雪/埋火/歳暮
竪題季語一覧
あとがき

能に憑かれた権力者 秀吉能楽愛好記
講談社選書メチエ
「のふにひまなく候」。晩年、能に取り憑かれた秀吉は、前代未聞の禁中能を催す。宮中に、秀吉、家康、利家が舞い、輝元の小鼓が響きわたる。自らの生涯を「10番の能」に新作させ、能楽史を変えた権力者の凄まじい熱狂に迫る。
【目次】
はじめに
序章 武将の能楽愛好 秀吉まで
第一章 名護屋以前
1 周辺の能役者
2 天正十年代概観
3 先達としての秀次と秀長
第二章 文禄2年肥前名護屋
1 『甫庵太閤記』から
2 熱中のはじまり
3 名護屋での熱狂
4 熱中のなごり
第三章 文禄二年禁中能
1 文禄二年禁中能の概要
2 文禄二年禁中能の諸相
3 その後の禁中能
第四章 能楽三昧の日々
1 のふにひまなく候
2 吉野・高野での能
3 能を楽しむ日々
4 秀吉の能舞台
第五章 豊公能の新作
1 豊公能と大村由己
2 豊公能を読む
第六章 秀吉の能楽保護
1 南都両神事能の復興
2 猿楽配当米
終章 秀吉以後
注
秀吉能楽愛好関連年表
あとがき
索引

アメリカン・ファシズム ロングとローズヴェルト
講談社選書メチエ
デモクラシーの行きつくところ、ファシズムの影がしのびよる! 1930年代ルイジアナ州。不正選挙により史上空前の独裁を打ち立て、大統領の座をも狙った稀代のデマゴーグ、ヒューイ・ロング。ローズヴェルトがもっとも恐れた彼の軌跡をたどり、民主主義社会の陥穽を検証する。
【目次】
序章――アメリカにファシズムはあったのか
第一章 〈見える支配〉と〈見えない支配〉
1 ヒューイ・ロングの三大要素
2 〈見えない〉支配
3 顕在化する〈見えない支配〉
第二章 ロングVS.ローズヴェルト
1 呪われたアメリカとロングの夢
2 ローズヴェルトの憂鬱と怒り
3 「クローフィッシュ」ヒューイ・ロング
4 連邦/反対派の「響きと怒り」
5 FDR政治のロング化
第三章 ルイジアナ独裁
1 課税による検閲
2 司法権の強奪
3 もっとも恐ろしい男の反撃
4 血みどろのペリカン州
第五章 だれがロングを殺したのか
1 一九三八年九月八日
2 カール・オースチン・ワイスは犯人なのか
3 殉教と陰謀のはざまに
4 ひとつの仮説
5 なにがロングを殺したのか
終章――キングフィッシュの影の下に
註
あとがき
年表
索引

ユダヤ教の誕生
講談社選書メチエ
放浪、奴隷、捕囚――1000年もの民族的苦難のなかで、遊牧民の神は成長し、ついには全宇宙を創造・支配する唯一神ヤハウェに変貌する。キリスト教、イスラームを生み、歴史の果てにイスラエル国家をも造り上げた「奇跡の宗教」誕生の謎に、「聖書」を精緻に読み解きつつ、決定的に迫る。

ドイツ「素人医師」団 人に優しい西洋民間療法
講談社選書メチエ
18世紀ドイツが生んだ、「西洋の漢方」としてのホメオパティー。自然治癒力を重視する独自の療法は、フランス、オーストリア、アメリカへと広まっていく。19世紀、その信奉者たちが提唱し、ヨーロッパ医学界を震撼させた「素人医師」運動を軸に、近代医学の相克と、再び見直される現代の意義とを明らかにする。
【目次】
プロローグ 「西洋の漢方」ホメオパティー
第一章 ホメオパティー理論の誕生
1 近代医学はどのようにして成立したか
2 ハーネマンの修業時代
3 新らしい治療原則の発見
4 ホメオパティー理論の確立
5 戦うハーネマン
6 ホメオパティー、医学界を騒がす
7 晩年のハーネマン
第二章 近代医学の歩み
1 近代医学の夜明け
2 医学教育の改革
3 医学生の出自の特色
4 医師の「経済闘争」
5 偉くなった医師
第三章 近代医学へのアンチテーゼ
1 ホメオパティーは近代医学より効く
2 素人医協会設立さる
3 素人医協会の活動
第四章 素人医たちの反種痘運動
1 種痘は安全ではなかった
2 反種痘キャンペーン
3 近代医学批判としての反種痘運動
第五章 ホメオパティー運動の「転向」
1 素人医(ハーネマニア)協会の変質
2 ホメオパティー講座設置運動
3 奨学金財団の設立
4 ホメオパティー病院建設運動
5 素人医とホメオパティー医の対立
6 素人医運動の意義
エピローグ 現代によみがえるホメオパティー
あとがき
註
索引

北の十字軍
講談社選書メチエ
時は中世、ヨーロッパ北方をめざす「もう1つの十字軍」があった。教皇の名の下、「異教徒を根絶」すべく残虐の限りを尽くすドイツ騎士団。それを正当化した「思想」とは何か?大殺戮批判が生んだ「人権思想」とは?3世紀に及ぶゲルマン・スラブの相克から「大航海期」までをも展望し、ヨーロッパ拡大の理念とその矛盾を抉りだす。