講談社現代新書作品一覧

利き酒入門
利き酒入門
著:重金 敦之
講談社現代新書
吟醸酒は燗の方がうまい?ウイスキーは水割りにすると味の違いがよくわかる?酒の本質を究め、食卓を10倍たのしむヒントを満載! 【国際化した日本の酒文化】――日本人が世界中の料理に興味を持ち、各国の料理を味わっているのと同じように、酒に対してもまた世界中のアルコールに興味と関心をいだいて口に入れている。結婚披露宴の席では、シャンパンで乾杯し、ビール、白ワインと赤ワイン、日本酒にウイスキーの水割りまで用意されている。……確かに昔は日本酒が、日本人に密着した酒であり、文化であったはずだ。……しかし現在、それほど日常の生活の中で重要な位置を占めているとは考えにくい。それでは、ウイスキーやワインについて詳しいかといわれると、そうでもない。……われわれが、多種の酒類や食事を摂取しているということは、広い守備範囲を持っていることであり、何についてもそれ相応の話はできる。しかし、それは逆にいえば、自分の専門がなく、何ひとつ詳しく語ることが出来ないともいえるだろう。そろそろ新しい日本の飲食文化について語るべき時代ではないかと思う。――本書より
ブラック・ム-ビ-
ブラック・ム-ビ-
著:井上 一馬
講談社現代新書
差別から平等へ、自由へ――もうひとつのアメリカ現代史 スクリーンを熱く彩る黒人パワーの100年! 分離・差別、自由へのプロテスト、リアルな自己表現、そして今、多彩な黒人スターが画面で躍る。社会の大鏡であるアメリカ黒人映画の魅力を探る。 【黒人としての使命感】――スパイク・リーは「黒人の体験をスクリーンの上で正確に描写できるのは、黒人の監督だけだ」という強い信念をもって、アメリカの映画界に登場してきた人物である。……黒人の映画監督として、「アメリカ映画の中に、豊かな広がりを持ったブラック・カルチャーを反映させる」という強い使命感ももっている。デビュー当時、リーはこう語っている。「スクリーンの上で黒人のカップルが愛し合ったり、キスしたりしているシーンを見たのはいつのことだったか覚えているかい?私は、黒人たちが映画の中で愛し合い、愛するが故に仲たがいもすることを描いた知的な映画が作りたいんだ」――本書より
ヒトはなぜことばを使えるか
ヒトはなぜことばを使えるか
著:山鳥 重
講談社現代新書
失語症研究の第一線からことばの本質を問う。心によってつくり出されたことばは、逆に心を統御し支配する。そのことばを失ったとき、心はどうなるのか。第一人者が臨床を通し、脳と心とことばの関係を探る。(講談社現代新書) 失語症研究の第一線からことばの本質を問う。心によってつくり出されたことばは、逆に心を統御し支配する。そのことばを失ったとき、心はどうなるのか。第一人者が臨床を通し、脳と心とことばの関係を探る。
電子あり
環境ホルモン・何がどこまでわかったか
環境ホルモン・何がどこまでわかったか
著:読売新聞科学部
講談社現代新書
メス化する生物、ダイオキシン、カップ麺騒動……いまや社会現象と化した問題の本質とは何か?第一線ジャーナリストの報告。 【環境ホルモンとは何か】――人間の体はおよそ60兆個の細胞でできている。これらの細胞にある種の指令を送って、それぞれの細胞が協調して働く機能が備わっている。……その重要な指令伝達を身体の中で担っているのが神経系とホルモンだ。……ホルモンは、目的のたんぱく質を合成するためには、標的細胞のレセプターに結合しなければならない。……これをよく鍵と鍵穴の関係にたとえられるが、この鍵穴(レセプター)に合い鍵がないわけではない。例えば、医薬品の中には、人工的に合い鍵の化学物質を合成した人工ホルモンが作られている。しかし、まったく意図しないで作られ、環境中に放出されている化学物質の中に、レセプターと結合しホルモンの合い鍵のように働く化学物質が見つかってきた。それが今問題になっている、環境ホルモンである。内分泌攪乱化学物質と言われる以前は、環境エストロゲンと呼ばれることが多かったが、これは体内に入ると女性ホルモンのようにふるまう化学物質が多かったからだ。――本書より
デジタル産業革命
デジタル産業革命
著:山根 一眞
講談社現代新書
モノとカネで世界が動く「商品経済」から、情報と人の情が地球を結ぶ「情品の時代」へ。ビジネスが変わる、人生が変わる! 「情品」とは何か――情報通信の革命的な進化によって、とても奇妙な、経験したことのない人間活動が始まっている。それは、かつて金銭を媒介として取り引きされていた情報やモノが、タダで、あるいはタダ同然で機能し、また取り引きされる現象である。金銭を媒介とするモノの取引は「商品経済」と呼ばれてきたが、金銭を媒介としないこの経済活動を「商品経済」と呼ぶわけにはいかない。そこで私は、この新しい経済活動を「情品経済」と名づけた。この現象が、情報の品の取引で目立っており、またその対価がカネではなく感謝や賞賛といった人の心、人の情で支払われることが多いことから、「情」の「品」としたのである。金銭を媒介としない、限りなくコストゼロで人がさまざまな活動を行える環境の登場は、個人が思いもかけない大きな社会的影響力を行使することにもつながっている。――本書より
平家物語の女たち
平家物語の女たち
著:細川 涼一
講談社現代新書
巴・祗王・祗女、建礼門院、小督……中世女人伝説をいきいきと読み解く! 巴――大力の女性の伝説――義仲軍の一方の大将として活躍してきた巴は、打出浜における東国勢との戦闘の結果、主従5騎になるまで討たれなかった。5騎の中に残った巴に、討死を決意した義仲は、おまえは女だから、戦場を離脱してどこへでも行け、と勧めたのである。しかし、巴はなおも落ちて行かなかった。そこへ、武蔵国大里郡の恩田八郎師重(もろしげ)という大力で聞こえた武者が30騎ほどで現れた。巴はその中に駆け入り、恩田師重に馬を押し並べると、むずと組んで師重を馬から引き落とし、自分の乗っている鞍の前輪に押しつけて身動きさせず、その頸をねじ切って捨ててしまった。その後、巴は物具(もののぐ)(鎧・兜)を脱ぎ捨て、東国の方へと落ちていった。以後、巴は『平家物語』に現れず、杳としてその行方を断った。『平家物語』に登場する、後世の伝説を削ぎ落とした巴の原型ともいうべき姿は、あくまでも義仲軍の一方の大将である大力の女武者としての巴である。ここでは、このような大力の女武者としての巴の像が造形化されたのはなぜか、巴の大力伝承の背景について考えてみたい。――本書より
温泉の医学
温泉の医学
著:飯島 裕一
講談社現代新書
「お湯の力」でからだを癒す、心をほぐす 「現代病」への処方箋――現代人は、体の芯に残るようなぐったりとした精神的疲労を背負った「半健康人」が多いのではないのだろうか。適度なスポーツの後に感じる“さわやか疲労”とは根本的に異なる疲労感だ。心の病に加え、アトピー性皮膚炎、気管支ぜんそく、過敏性腸症候群など、現代の社会構造が背景に潜む慢性疾患も問題になっている。温泉治療の中には、これら「現代病」に対する、ひとつの処方箋がありそうだ――。現に私たちは、温泉にはいると心身ともにリフレッシュすることを肌で感じている。西洋医学が普及する以前は、湯治という日本独特の療法が生活の中に根づいていた。ヒポクラテス(古代ギリシャ)の時代には、エーゲ海のコス島で温泉療法が試みられていたし、欧州はクアハウスを中心に温泉医療を展開する先進地でもある。そして今。温泉の効用は医学的に十分解明されたのだろうか。予防・保養・臨床の現場で、そのサイエンスは生かされているのだろうか。――本書より
演劇入門
演劇入門
著:平田 オリザ
講談社現代新書
若き天才が全て明かす「芝居作りの技術」。シェイクスピアはなぜ四世紀にわたって人気なのか? 日本で対話劇が成立しづらいのはなぜか? 戯曲の構造、演技・演出の方法を平易に解説する画期的演劇入門書! (講談社現代新書) 若き天才が全て明かす「芝居作りの技術」。シェイクスピアはなぜ四世紀にわたって人気なのか? 日本で対話劇が成立しづらいのはなぜか?戯曲の構造、演技・演出の方法を平易に解説する画期的演劇入門書!
電子あり
特捜検察の事件簿
特捜検察の事件簿
著:藤永 幸治
講談社現代新書
55年体制に守られた「政界の三悪」――ロッキード以降は、リクルート疑獄、共和汚職、佐川・ゼネコン疑獄にいたるまで、私自身が直接指揮する立場で捜査に関わった。そうした中、先に触れた「戦後の三悪」ならぬ「政界の三悪」とも呼べる面々を幾度となく追いつめたこともあったが、秘書の自殺などによって決定的な証拠をつかむことができず逮捕までこぎつけることができなかった。彼らは55年体制に守られ、ロッキード事件の轍は踏まないよう、自らの手は絶対に汚さないというあざとさも身につけていた。すでにどの事件も時効を迎えてしまったので実名を出すことはできないが、そのうちの2人は、首相経験者、もう1人も派閥の領袖だ、ということだけは言っておこう。――本書より
アジア菜食紀行
アジア菜食紀行
著:森枝 卓士
講談社現代新書
なぜ肉を食べないのか、「精進」の思想はどんな生命観に基づくのか。灼熱のアジアを旅しながら、その奥深い食文化の歴史と背景を探る。 「殺さない」ことに徹した思想──なぜ、タマネギもニンニクも食べないのか。日本の寺の精進料理で、ニンニクなどを「精がつくもの」として忌避することを思い出し、それと同じことなのかと聞いてみたら、そういうことではないらしい。要するに根っこだからということなのだ。タマネギやニンニクのような根を食べるものだと、食べることによって植物を殺すことになるからだというのである。……生命というものに対して、そこまで突きつめたものであったのかと、改めて考えさせられる。なるほど、私が食べさせてもらっているのは、植物まで含めて「殺さない」ということに徹した思想の上に成立している食の文化の体系なのだ、という驚きと納得を感じるのだ。──本書より
無限論の教室
無限論の教室
著:野矢 茂樹
講談社現代新書
数々のパラドクスに満ちた「無限」の不思議。アキレスはなぜ亀に追いつけないの? 偶数と自然数が同数って本当? 素朴な問いからゲーデルの不完全性定理まで、軽やかな笑いにのせて送る異色の“哲学教室”。(講談社現代新書) 数々のパラドクスに満ちた「無限」の不思議。アキレスはなぜ亀に追いつけないの? 偶数と自然数が同数って本当? 素朴な問いからゲ-デルの不完全性定理まで、軽やかな笑いにのせて送る異色の“哲学教室”。
電子あり
妖精学入門
妖精学入門
著:井村 君江
講談社現代新書
ケルトの小さな神々からシェイクスピア、ピーター・パンまで、妖精の誕生・分類・系譜を網羅。多彩なカラー図版も楽しめる、はじめての妖精百科! 夢魔マブ女王と17世紀の極小妖精──『ロミオとジュリエット』のマキューシオの台詞に「さて、君は一夜をマブの女王と過ごしたようだな、あいつは妖精の産婆だ」という一節がある。「妖精の産婆」とは「人間の夢を引き出す、人間に夢見させる」の意で、それをマブ女王という妖精の女王に重ねているのである。眠っている人の上に乗って悪夢を見させる夢魔(インキュバス、女はサッキュバス)とも同じに見られる。続く台詞の中でマキューシオは、マブ女王がハシバミの殻の馬車に乗った芥子粒ほどの姿で「恋人たちの頭を通れば恋の夢、宮廷人の膝を通れば敬礼の夢、弁護士の指を通れば謝礼の夢……」を見ると述べている。夢を見るのはマブ女王の仕業なのだ。──本書より
パソコンを鍛える
パソコンを鍛える
著:岩谷 宏
講談社現代新書
なぜ使いこなせないのか?OSの原理を知らないからだ。脱ウィンドウズからはじめるパソコンの「教科書」! まえがき──パソコンの場合は、ユーザ本人がコンピュータに対して全権を持っている。どんなソフトを使おうとも、ユーザの自由である。オペレーティングシステムはコンピュータの一ソフトにすぎないから、パソコンを買ったときにまるでオマケのように勝手にタダで付いてくるオペレーティングシステムを終生使い続けなければならない、という義理はまったくない。自分でもっと良いオペレーティングシステムを選んで自機の上に導入し、それをベースとして今後の自分のコンピュータ生活を築いていける。自分のコンピュータに対して自分が持っている“全権”を自覚し、またオペレーティングシステムもたかが一ソフトだ、ユーザが自由に選べるのだ、という自覚が身につくと、あなたはそれまでのあてがいぶち&受け身のユーザから、自主的主体的なパソコンユーザへと変身成長していけるようになる。──本書より
拒食症と過食症
拒食症と過食症
著:山登 敬之
講談社現代新書
痩せたい!食べてしまう!引き裂かれた少女たちの「いのちの迷宮」 大人になるための冒険の中で、少女たちは混乱し、「痩せること」「食べること」の狭間を漂いはじめる。現代のアリスたちの心の迷宮と癒しの物語をたどり、「時代の病」の本質を問う。 「拒食症回復コース」――仮に「拒食症回復コース」というような道筋があったとしても、それはゴールに向かって一直線に伸びる平坦な道ではない。そのコースは木の生い茂った山の中を通っていて、先の視界もあまり開けていないし、アップダウンも多い。そこを歩く者は、途中でいくつかの特徴的な風景に出会うが、これをしっかり見ておかないと道に迷ってしまう。ひとつの地点に立って、いろいろな風景をいっぺんに眺めなくてはいけないこともあれば、道を歩きながらひとつの風景を何度も確認しなくてはいけないこともある。やがて、うっそうと茂る林を抜けると、道は平坦になってくるのだが、そのときそれまで見てきた風景は遠くにあり、違った見え方をするか、わざわざ振り返らなくてもいいものになっている。――本書より
これで通じる超・慣用英会話
これで通じる超・慣用英会話
著:川村 善樹
講談社現代新書
テキストが教えない日常表現350 怒った時、文句を言う時、からかう時、強調したい時、言いまわしもまた過激で品がなくなりがち。使わないほうがいいが、知っておいたほうがいい、カジュアルな場で頻出する表現を臨場感豊かに解説する。
謎とき日本近現代史
謎とき日本近現代史
著:野島 博之
講談社現代新書
正しい歴史観をみがくための「なぜ?」 ●日本はなぜ植民地にならなかったか●武士はなぜみずからの特権を放棄したか●明治憲法下の内閣はなぜ短命だったか●戦前の政党はなぜ急成長し転落したか●日本はなぜワシントン体制をうけいれたか●井上財政はなぜ「失敗」したか●関東軍はなぜ暴走したか●天皇はなぜ戦犯にならなかったか●高度経済成長はなぜ持続したか 正しい歴史観をみがくための9つの「なぜ?」 関東軍はなぜ暴走したか?昭和天皇はなぜ戦犯にならなかったか? 関東軍はなぜ暴走したか――関東軍は、なぜ1930年代の初頭に満州事変をひきおこしたのでしょうか。もともとそうした侵略性をそなえていたのだといった類いの解説は、歴史上のあらゆることの説明に転用しうる便利さをもってはいるものの、運命論者以外の人の説得には役だちません。また、組織的な軍隊が中央の命令もないまま行動するには、少なくとも現場の指揮官に、十分な動機と高いレヴェルの決意が必要なはずです。あらためて述べるまでもないことですが、日本の戦争がもたらした惨禍を考えれば、到底、関東軍の行動を高らかに称賛したり全面的に正当化したりすることはできません。ただ、実は正直なところ、自分が現場にいたら指揮官の決断に同意したのではないか、あるいはひょっとすると似たようなことを指向したのではないか、と感じているのです。――本書より
電子あり
インド対パキスタン
インド対パキスタン
著:西脇 文昭
講談社現代新書
なぜ核実験は強行されたか?宗教対立と核開発の歴史、米中ロの思惑とは。独自の現地調査で真相に迫る! カシミール紛争は“なれあい”?――インドが圧倒的優位に立つ戦略バランスのうえに、両国間にはカシミール紛争という国境紛争がある。今回98年5月の両国の核実験による軍事対決も、このカシミール紛争をきっかけに核戦争に発展しうるのではないかと懸念する声が高い。だが、どうも理由はそれだけではなさそうな気配に気がついた。なかには「カシミールは、インド・パキスタンの一種の“なれあい”だよ。あそこに絶えず紛争の火種があることで、両国の政権ともそれぞれの国民を団結させ、体制引き締めにも利用できる。……」とささやくものがいて、著者は驚きのあまりことばがなかった。もうひとつ、現地調査をしてみて初めて著者が知ったことは、パキスタン側関係者が「カシミール問題などよりも、インドの存在そのものがわれわれに大変な恐怖を与えているという歴史的事実に注目してほしい」と異口同音に強調したことだった。――本書より
室内化学汚染
室内化学汚染
著:田辺 新一
講談社現代新書
急増するシックハウス症候群、あなたの家は大丈夫か? 知らないうちに住まいに蔓延し、私たちのからだを蝕む危険な化学物質。ホルムアルデヒド、トルエン、キシレンはどこから発生しているのか。どうすれば、身を守れるのか。最新データで答える緊急対策! 空気を入れ換える――壁、床、畳、日用生活品、そして住まい手自身……と、化学物質は、室内のありとあらゆるところから発生しうる。……しかし焦って壁紙や畳をはがしたりすれば、室内の化学物質濃度がかえって上昇してしまいかねない。私たちが当座取り組むべき対策は、まず「小まめな換気」。……「小まめな換気」を怠れば、室内はたちまちシックハウスと化してしまうかもしれないのだ。それでは、スカスカの住宅を設計をすればよいのだろうか。スカスカの住宅は換気がよいというより、漏気が多いと解釈した方がよい。漏気が多いと暖房効率は格段に悪くなるし、快適性も下がる。要は、自然換気や機械換気を必要なときにうまく行う仕組みを作っておくことである。そのために、住宅の気密性を高める工夫が行われている。もちろん、気密性の高い住宅というのは、潜水艦のような住宅ではない。窓や給気口を開放することによって自然換気が充分できるような住宅だ。――本書より
黒い聖母と悪魔の謎
黒い聖母と悪魔の謎
著:馬杉 宗夫
講談社現代新書
「光の国」大聖堂のうちに隠された異教・異貌の神々 目隠しされた女性像、黒い聖母、悪魔、葉人間――大聖堂の奇怪な図像はなぜ生まれたのか。もう一つのキリスト教美術を鮮やかに解読する。 ロカマドールの謎の聖母像――聖母マリアには不吉な黒色は似つかわしくない、と思いながらも、その異教的な謎にみちた姿は、われわれをとらえてはなさない。逆に黒色だからこそ神秘的な力を持って迫ってくるのかもしれない。遠くからしか見えない意外に小さな聖母像(0.76メートル)に迫力を与えているのは、確かに全身を被う黒色である。黒は不思議な力を持っているのである。(中略)ロカマドールの《黒い聖母像》については、かつて銀箔で被われていたためにその酸化作用によって黒くなったのだ、と言う人もいる。しかし、実際は、それは黒く塗られたロマネスク時代の代表的木造彫刻の1つであり、黒い聖母として崇拝されてきたことを忘れてはならない。では、なぜ黒く塗られたのであろうか。この《黒い聖母》の謎を解くためには、それが崇拝された場所について調べる必要を感じるのである。なぜなら、それらの地はケルトの伝統を残す選ばれた地だったからである。――本文より
「在日」としてのコリアン
「在日」としてのコリアン
著:原尻 英樹
講談社現代新書
民族とは?国籍とは?「日本人」とは何なのか?! 民族とは?国籍とは?差別の本質とは何か。基礎知識を踏まえて「在日」の戦後を直視し、タブーを超えて日本社会を問い直す。 祖国志向と「在日」志向――総連から北朝鮮への資金援助は、以前新聞紙上をにぎわせていたが、ソウル・オリンピックの時は民団系の「在日」を中心に約53億円の援助金が送られた。これをみると「在日」とその祖国との関係は今でも密接であることを感じさせる。……アメリカとの対比で考えればわかりやすいが、日本では帰化手続きをしない限り、あるいは日本国籍者と結婚して子どもが日本国籍にならない限り、何世代経とうとも「在日」はあくまで外国人であり、日本社会の成員とみなされてこなかった。日本社会の成員とは、「血統上」日本人であるのと同時に、日本国民でなければならないのである。「在日」のニュアンスには一時滞在の意味もあるように、ソトの人間としての外国人はほぼ一時滞在者に近い存在だと一般的にはうけとられている。このような排除の論理は、国家レヴェルから地域社会、近隣、学校など隅々まで行き渡っており、「在日」は日本国中ほとんどどこに行っても外国人、ソトの人として扱われる。――本書より