講談社現代新書作品一覧

多重人格
多重人格
著:和田 秀樹
講談社現代新書
自分のなかに棲む他人──人格の解離はなぜ起きるか。幼女連続殺人・M被告の精神病理とは。最新の知見で心の闇を解き明かす。 多重人格者の責任能力──むしろ、問題なのは、多重人格患者の自殺傾向である。自分が虐待を受けたのを明確に覚えている人格がどこかにいるのであるから、苦しみのあまり自殺を図るのはもっともなことだ。現実に自殺企図や自傷行為は非常に多く多重人格患者に見られ、多重人格を示唆する所見の1つに数えられているほどだ。他の人から見て、あの人の性格からは考えられないとか、全く予兆がなかったとか、動機が考えられないなどと言う、いわゆる「魔がさす」自殺においては、多重人格でなくても、解離のメカニズムが働いている可能性は否定できないだろう。分裂病の患者などでも、殺人事件などを起こすとセンセーショナルに報じられるが、それよりはるかに多い数で、幻聴や妄想の苦しみのために自殺している患者がいるのである。多重人格患者に対しても、その診断を確実に下し適切な治療を行うことが、患者自体の生命を守るために大切なことだという側面も忘れてはいけないだろう。──本文より 多重人格は日本に伝播するか──日本でも多重人格が珍しい病気でなくなるのかどうか。まず考えなければいけないのは、多くの場合アメリカの文化病、精神病理は、10年から20年おいて、日本に伝わってきたことである。こういう病気が増えていくことがある種の社会の病理だということは、決して無視してはいけない問題だ。そして、さらに重要なことは、いじめられた子どもを支える家族のメンタルヘルスを確立することで、その予防が可能かどうかもそろそろ考えないといけない時期かもしれないということだ──本文より
ロ-マ五賢帝
ロ-マ五賢帝
著:南川 高志
講談社現代新書
ローマはなぜ栄えたか。「人類が最も幸福であった時代」とされた最盛期の帝国の闇に隠された権力闘争の真相とは。新たな視点から皇帝群像を描き、ローマ史を書きかえる。 最盛期のローマの光と陰――ここで読者に気づいていただきたいのは、次のことである。すなわち、英明で君徳ある皇帝たちが続けて現れ、ローマが平和と安定の中で繁栄を亨受した紀元2世紀、こうした輝きに満ちた時代という歴史像にはそぐわない、賢帝が実は憎悪されていたというようなこの時代の陰の部分の存在である。そして、この時代の輝く部分ではなく、むしろこの陰の部分にこそ、この時代がローマ帝国の最盛期であった理由を解き明かしてくれる秘密が隠されているのではないか、と私は考えている。これから私は、紀元96年の五賢帝時代の開幕から、180年に五賢帝最後のマルクス帝が世を去るまでの歴史を語ることになる。私が述べる紀元2世紀の様相、それは世界史の教科書で記された平和と安定の五賢帝時代像とは少々異なるものになるであろう。そして、平和な時代というイメージとは相容れない、皇帝をはじめとした帝国の政治エリートたちの暗闘を、読者は理解されることになろう。――本書より
株式会社とは何か
株式会社とは何か
著:友岡 賛
講談社現代新書
企業はもうけるために存在する。ならば、何がどこまで許されるのか。経営者の責任、株主の権利、日本企業の特殊性とは!?斬新な視点で「株式会社の掟」を問う必読の書! 企業形体の近代化プロセスの到達点――企業の目的はもうけを得ることにあって、したがって、企業形体の近代化プロセスは、いわば、より効率的にもうけを得ることのできる企業形体へのプロセス、としてみなすことができる。そうした企業形体の近代化、その要のひとつとなるのが、企業の継続化、である。株式会社に代表される近代、そして今日の企業は、いわば、継続的に事実をおこなうことによって効果的にもうけを得るための継続的な組織、として存在している。そしてまた、この企業の継続化は、企業の大規模化、と重なり合う。すなわち、企業の継続化、大規模化は、より効果的にもうけを得ることのできる企業形体への進化、である。そして、この継続化、大規模化にもっとも適したものとして考案された企業形体が、これすなわち株式会社である。――本書より
恥と意地
恥と意地
著:鑪 幹八郎
講談社現代新書
日本人の心のありよう、人と人との関係にはどんな特徴があるのだろうか。自分の存在の全体に関わる「恥」の感覚、その防衛(回復)としての「意地」のメカニズムに新たな光を当てる。 表と裏――恥の感覚によっておこる1番大きなダメージは自己意識である。「恥ずかしい人間だ」「自分はダメ人間だ」というように、自分の自尊心や自己評価に深い傷を受けてしまうのである。心の中では、立ちあがれないようなひどいダメージとなることが多い。私たちはこのようにひどく辛いダメージを何とか避けようとする。「いいわけ」をしたり、突っ張ったり、「合理化」をしたり、突き放したり、相手を攻撃したり、もともとなかったものと否認したり、この場から避けて逃げ出し、2度とその場に近づかなかったりするなど、さまざまな行動をする。これらの回避する行動を外から見ると、自分の自尊心をまもり、いたわるための「意地」(維持)になっていることが多いのではないだろうか。――本書より
私の万葉集(五)
私の万葉集(五)
著:大岡 信
講談社現代新書
文化史上の奇跡ともいうべき防人歌、名門貴族の私的生活。天平時代の人間像をいきいきと伝える巻17から巻20まで、大好評シリーズ完結篇。 人間臭いエピソード――この時代の歌にはきわめてはっきりした特徴があります。「巻17」の最初の部分を除けば、「巻20」に至るまでの4巻は、共通してその成り立ちが甚だ私的な性格のものだという点です。その中心になっているのは、……大伴家持の、いわば「歌日記」です。家持自身の歌が大量に収められているばかりでなく、彼の周囲の人々、すなわち上(かみ)は左大臣橘諸兄(もろえ)から、下(しも)は東国の兵士(防人)たちの歌まで、……これ以前の巻々ではそれほど表面に出て来てはいなかった人間臭いエピソードをまじえて、年代順に歌が並んでいます。これらの歌によって、私たちは天平時代という、古代日本でもとりわけ私たちに親しい呼び名である時代の、いわばざっくばらんにうちとけた内幕を、少なくとも大伴家持という、自家が没落しはじめていることを痛いほど意識している古代の名門貴族の目を通して、かいま見ることができると言えます。――本文より
キリスト教英語の常識
キリスト教英語の常識
著:石黒 マリーローズ
講談社現代新書
英語理解の大きな核はキリスト教的な要素と背景の理解にある。新聞、雑誌、テレビ、映画、そして日常会話に頻出する聖書由来の、ないし神にまつわる表現を紹介する。神を制する者が英語を制す。(講談社現代新書) よく目にするキリスト教的表現を抽出、解説。英語理解の一つの核はキリスト教的要素の把握にある。新聞、雑誌、テレビ、映画、そして日常会話に頻出する聖書由来の、あるいは「神」を背景とする表現を紹介。
電子あり
教養としての歴史学
教養としての歴史学
著:堀越 孝一
講談社現代新書
昔のひとは歴史をどう捉えていたのか。証拠と因果関係を重視する近代歴史学とは違う文体(スタイル)の歴史の書かれ方を読む。 中世人は歴史の予定調和を見ている──この世に起きる出来事が、すべて予表されたプロトモデルの写しであるという発想は、およそ近代人の歴史理解とは異質なものです。(中略)それでは中世人の「ヒストリオグラフィー」は全部が全部ナンセンスだということになるのか。わたしはそうは思わない。中世人は歴史にタイポロジカルな構図を見た。この構図は、わたしたち近代人が見るところ、無歴史的なものです。なにしろ歴史は常に現前しているのですから。わたしたちは「歴史は発展する」とか「歴史は因果関係で成り立っている」とか、なにしろ軽々と口にします。中世人にそんなことを話したって、かれらは困ったような顔をして、耳たぶの後ろでもかいていることでしょう。だから、かれらにはどうやら「因果関係」とか、「発展」とか、そういったキーワードが通用しないということなのです。──本書より
マンガと「戦争」
マンガと「戦争」
著:夏目 房之介
講談社現代新書
手塚治虫、水木しげるから宮崎駿、エヴァンゲリオンへ――マンガは「戦争」をいかに描いてきたか。日本人の戦争観に迫る画期的マンガ論! 『ゴルゴ13』の「戦争」――ゴルゴの、重く厚い眉に上から抑えられた細い目と、薄く下を開けた三白眼の瞳、また堅く閉じられた口やタフそうな顎は、ほとんど劇的な表情をもたない。おまけに主人公としては異様に寡黙で、吹きだしのなかに「……」しか入っていないことが多い。……これは、手塚マンガが大げさな表情や饒舌さで心理表現をつくりあげたのと、ちょうど逆の打ち消し作用をもたらす。ゴルゴの内面や自意識は意味をなさず、そのぶんだけ悲劇は軽くなる。表立っては表明しにくい脱倫理的な場所からみる相対化された「戦争」。これがゴルゴにとっての戦争であり、同時にいくぶんか読者の欲求を反映していた。全世界を相手にできる有能な個人の場所と、戦争体験に色づけられた重い倫理的戦争観の相対化の欲求である。それは70年以後の青年読者にとって潜在的な欲求だったのではないかと、今になると思う。――本書より
カントの人間学
カントの人間学
著:中島 義道
講談社現代新書
エゴイズム、親切、友情、虚栄心……人間の「姿」はいかなるものか。複雑で矛盾に満ちた存在を描き出すカントの眼差しに拠り、人間の有り様の不思議を考える。 無邪気は道徳的ではない――3歳の子供はカントの目からすれば断じて道徳的ではない。それは積極的に悪をなさないが、善をもなさないのである。まったく同じ理由により、性器を切除したために性欲に支配されなくなった男は、性欲を克服したのではない。修道院内に軟禁されている少女たちは、男遊びや飲酒や喫煙に対する欲望を克服したのではない。外形的、物理的にさまざまな欲望を除去あるいは遠ざけあるいは消去することは、いわば幼児の状態を再現することであり、決して真の意味での欲望の克服ではなく、よってこうした状況のもとにおける行為は断じて道徳的ではないのである。道徳的善は、結局自愛に行き着くさまざまな感情の傾きを物理的に抹殺ないし隔離してではなく、こうした多様な感情の傾きを徹底的にくぐり抜けて達成される。――本書より
新しい福沢諭吉
新しい福沢諭吉
著:坂本 多加雄
講談社現代新書
近代日本の先覚者とされながら毀誉褒貶半ばする思想家の本質とは。「文明」「独立」等をめぐる言説を読み解き、日本思想史に新たな枠組を提示する。 [思想家福沢]――今日、個人の自由や自発性の尊重との関連で、「自由競争」ということの意味が再認識されていることは周知の通りでしょう。無論、それは、19世紀の考え方のそのままの復活を意味しているわけではありませんが、自由と平等の関係をどのように理解するかは、様々に形を変えながら、今日、なお問題であり続けているということです。とすれば、福沢のような考え方を一時代前のものと決めつけて斥けてしまうことは有意義ではないように思われます。言い換えると、福沢は、今日では、その役割を既に終えてしまった思想家ではないし、同時に、今日から見て「自明の真理」を語っていた「先覚者」でもないのです。すなわち、今日、なお依然として、新しい課題を投げかけてくる問題的な思想家であり、私たちと等しい高さの目線で接しなければならない人物なのです。――本書より
スポ-ツ名勝負物語
スポ-ツ名勝負物語
著:二宮 清純
講談社現代新書
奇跡のプレー!感動の瞬間! 野茂英雄、伊達公子、古賀稔彦、勇利アルバチャコフ、松井秀喜、神戸製鋼、日本サッカー五輪代表……。 優勝を賭けた一投一打、奇跡のゴール、回生のトライ、チャンピオンを射止めたパンチ――野茂、松井、伊達、古賀、勇利、イチローなど名選手たちの、勝負を分けた至高の瞬間を活写する。 [主砲の責任]――私の脳裡に、ひとつの風景が甦った。この試合からちょうど1年前の日本シリーズ。ヤクルト対オリックスの第1戦。ブロス――古田のスワローズバッテリーは、イチローに対し、徹底した内角攻めを行い、彼の“振り子打法”を崩してしまった。負けず嫌いのイチローは力で牛耳られたことが悔しくて仕方ない。これを機にアウトコースを捨て、インサイドのストレート1本に狙いをしぼった。力での復讐を試みたのである。そして最終戦、ついにリベンジを果たす。ブロスのインハイのストレートを右中間スタンドに狙い打ったのだ。負けっぱなしに終わらなかったところにイチローの非凡さがうかがえた。しかし、イチローはシリーズを通して活躍することができなかった。当然だろう。復讐したい一心でゲームに臨んでいるわけだから、おこぼれのようなヒットなど欲しくもない。まったく同じことが松井にも言えた。――本書より
小説・倫理学講義
小説・倫理学講義
著:笹澤 豊
講談社現代新書
不倫は許されるか?民主主義は正しいか?プラトン、カント、ニーチェなど古今の思想から今日的テーマに斬り込む超小説! 長嶋教授失踪!?事件を巡って巻き起こる議論の嵐。不倫とは、嘘とは、民主主義とは?プラトン、ニーチェなど古今の思想を手がかりに倫理学の今日的課題を問う。 [不倫は道徳的に許されないか]――「きっとその倫理学者は考えたのね、不倫はなぜ道徳的に許されないのか、と」「それは愚問だ。道徳に反することを不倫というのだから、『不倫は道徳的に許されない』というのは、トートロジーでしかない。むしろこう問うべきなのだ。独身女性と妻子持ちとの恋愛はなぜ不倫にあたるのか、と」「倫理学者は、結局その難問を解くことができなかった」「いや、そうではない。答えは簡単だ。そうゆうことが不倫にあたらないということになると、結婚制度は意味を失って、結婚制度を土台にして築かれたこの社会は、秩序を維持できなくなり、やがて崩壊の危機にさらされることになる。道徳は神がつくったものではない。共同体が自己を維持するためにつくりあげたものだ。だから道徳は、独身女性と妻子持ちとの恋愛を禁じるのだ」――本書より
開かれた鎖国
開かれた鎖国
著:片桐 一男
講談社現代新書
唯一の国際港・長崎の知られざる事件と意外な日常とは?巧妙な物流・情報システムを詳細に分析し、鎖国観を根本から問い直す。 [唯一の海外交流の舞台]――大航海の波に乗って現われた南蛮人は異質のヨーロッパ文化を運んで来た。鎖国下、日蘭交流の時代を通じても、その流入は変わることはなかった。もたらす担い手が替わり、質的変化をみただけである。……長崎出島は鎖国・禁教下の日本における、まさに唯一の恒常的海外交流の舞台であった……。毎年、来航する入り船は、海外・世界からの人・物・情報を運んできたのである。……バタビアへ向けて帰る、毎年の出船は、鎖国日本を海外・世界に報らせる物を積み、人を乗せ、情報を運んでいったのである。――本書より
パソコン翻訳の世界
パソコン翻訳の世界
著:成田 一
講談社現代新書
人類の夢、自動翻訳が実用レベルに達してきた。翻訳ソフトの選び方と使い方、周辺ソフト紹介から機械翻訳の歴史まで、第一人者が懇切に説く。 ブリッジ翻訳で世界の情報を読む――インターネットの情報は英語だけではありません。フランス、ドイツ、スペインなど、かつてイギリスのほかにも世界中に植民地を広げた国の言葉による情報がたくさんあります。……こうした言語を英語に翻訳するソフトは欧米で開発された実用性の高いものがいくつも商品化されています。しかもこうした英語と欧州語間の翻訳は同じ言語グループ同士の翻訳なので、正解率が8割をゆうに超え9割に迫るものもあります。欧州語からの英語訳が機械翻訳で簡単に手に入れば、この英語訳をさらに英日翻訳システムで翻訳することによって、こうした言語を使う世界中の文化圏の情報を即座に日本語で読むことができるのです。――本書より
子どものトラウマ
子どものトラウマ
著:西澤 哲
講談社現代新書
身体の傷は治っても心の傷は消えない。人格を、ときには人生さえ支配してしまうトラウマとは何か。第一線での臨床活動をふまえて「子どもの虐待」の問題をとらえなおし、傷ついた子と親の心の回復を説く。(講談社現代新書) トラウマの視点から親子の関係を問い直す。なぜ子どもを傷つけてしまうのか。傷ついた心はどのように癒されるのか。現場の体験を通して子ども虐待の深層をえぐり、子と親の心の再生と回復の道を語る。
電子あり
日本の安全保障
日本の安全保障
著:江畑 謙介
講談社現代新書
「周辺有事」とは何か。ガイドライン見直しの核心とは?アジア諸国の軍拡、沖縄の米軍基地問題、シーレーンの危機――冷戦後の新しい視点からリアルに論じつくす必読書! イギリス軍を上回った自衛隊の軍事力――日本は日米防衛協力のための指針を見直してもなお、基本的には専守防衛であり、アジア・太平洋地域の平和と安定に対しては、間接的な貢献に止め、あくまでも盾としての役割に固執する方針を採っている。……それは、確かにアジア・太平洋地域においては、日本の軍事力に自分で足かせをかけるものとして、ほかの国からは歓迎されるものと言うこともできよう。日本人の多くは気づいていないが、すでに日本の自衛隊は世界でも有数の「軍事力」となっている。……ドル換算による防衛費は、明らかに米国に次ぐ世界第2位である。兵員の数は総兵力でイギリスを上回り、装備もほとんどの分野で英軍を上回っている。――本書より
白村江
白村江
著:遠山 美都男
講談社現代新書
海水みな赤し――唐・新羅連合軍の前に倭国の百済救援作戦は打ち砕かれた。日本の国家形成途上に起こった壮大なパワーゲームを検証し、古代史の通税を覆す力作。 2日間の戦闘を読み解く――倭国水軍はこの日、再度唐軍に攻撃を敢行した。しかし、この日の総攻撃に入るまでには、前夜、倭国水軍のなかで意見の分裂と対立があった。そのため、倭国水軍の攻撃は全体的な統制の採れていない、極めてちぐはぐなものであった。……唐船は倭船のなかに火矢を射込んだ。倭兵は懸命に消化につとめたが、間に合わなかった。多くの倭船が炎につつまれ、倭兵は放り出されるようにして錦江に飛び込んでいった。船より落ちた者は唐兵の放つ矢の恰好の標的となるか、あるいは溺れ死ぬしかなかった。たちまちのうちに、錦江河口の海水が倭兵の流す血に染まっていった。――本書より
ファッションの技法
ファッションの技法
著:山田 登世子
講談社現代新書
隠すこと・見せること――実際、ファッションとは他人に対して自分を「見せる」ことだ。けれども、その時わたしたちは、同時に自分を「隠して」いる――ほかでもない、衣服を身にまとうことによって。ファッションとは、着衣によって自分を隠しつつ、隠すことによって自分を見せる技法なのである。そこでは、「遠ざかる」ことが「近づく」ことであり、まなざしを「拒む」ことがまなざしを「ひきよせる」ことにひとしい。そう、ファッションは、コケットリーのように<あいだをゆれる>のだ。見えることと見えないこと、隠すことと見せること、着衣と裸体のあいだを。コケットリーという誘惑の形式は、身体の可視的な表面に生起するファッショナブルな現象なのである。それは、まなざしを惑わしながら誘惑する。――本書より
英語アナログ上達法
英語アナログ上達法
著:本田 修
講談社現代新書
日本の受験英語は、なぜ使えないのか?デジタル暗記学習法では決して教わらない「thereのこころは捨て言葉」「toのこころは到達」とは――。目からウロコのアナログ発想で基本から鍛え直す上達の決め手!
<むなしさ>の心理学
<むなしさ>の心理学
著:諸富 祥彦
講談社現代新書
心のメッセージ――むなしさは、私たちの人生に何が欠けているかを告げ知らせてくれる貴重なメッセージだ……。だから、私たちのむなしさからの出発は、自分の内側で口を開けているそのむなしさから目を逸らさずに、きちんとそれを見つめることから始めなくてはならない。あるいはこう言ってもいいかもしれない。むなしさと、しばらくの間、いっしょにいること。むなしさに、時折、やさしく触れてみること。そしてそこから、どんな声が聞こえてくるか、ていねいに問いかけてみること。…… 心のむなしさに何か大切な意味が秘められているということを、既に暗に感じとっていたはずなのだから。――本書より